税理士法人プライムパートナーズ

一筆の土地に自宅とアパートが!
小規模宅地特例の面積按分を徹底解説

2025-05-15
目次

ご自身の土地に自宅とアパートが一緒に建っている場合、「相続税の負担を軽くできる小規模宅地等の特例って、どうやって計算するんだろう?」と悩んでいませんか?一つの土地に複数の用途の建物があると、面積の計算が少し複雑になります。この記事では、一筆の土地に自宅とアパートがある場合の小規模宅地等の特例について、面積の算定方法から具体的な計算例まで、わかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

小規模宅地等の特例ってどんな制度?

まずはじめに、「小規模宅地等の特例」がどのような制度なのか、簡単におさらいしておきましょう。この特例は、亡くなった方(被相続人)が住んでいた土地や事業をしていた土地などを相続した場合に、一定の要件を満たすことで、その土地の相続税評価額を最大で80%も減額できるという、とても大きな節税効果のある制度です。土地の評価額がぐっと下がることで、相続税の負担を大幅に軽減することができます。

特定居住用宅地等(自宅の敷地)の特例

亡くなった方が住んでいたご自宅の敷地を、配偶者やお子さんなどが相続した場合に適用できる特例です。ご家族が生活の基盤を失うことがないようにという目的があります。主な要件は以下の通りです。

限度面積 330㎡(約100坪)まで
減額割合 80%

貸付事業用宅地等(アパートの敷地)の特例

亡くなった方がアパートや駐車場など、不動産貸付事業に使っていた土地を相続した場合に適用できる特例です。相続後も事業を継続する相続人の負担を軽減することを目的としています。主な要件はこちらです。

限度面積 200㎡まで
減額割合 50%

2つの特例は併用できる?

はい、「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」は併用することが可能です。ただし、単純にそれぞれの限度面積(330㎡と200㎡)を足し算できるわけではありません。2つの特例を併用する場合には、それぞれの適用面積について調整計算が必要になります。この調整計算が、今回のテーマの重要なポイントとなります。

一筆の土地に自宅とアパートがある場合の特例適用の考え方

それでは本題です。一つの土地(一筆の土地)の上に、ご自宅とアパートが一緒に建っている場合、どのように特例の適用面積を考えれば良いのでしょうか。この場合、まずはその土地全体を「自宅が建っている部分(特定居住用宅地等)」と「アパートが建っている部分(貸付事業用宅地等)」に分ける必要があります。物理的に線を引いて分けるわけではなく、計算上で按分(あんぶん)するという考え方をします。

面積の按分方法を具体的に解説!

土地を自宅部分とアパート部分に分ける際の最も一般的な方法が、「建物の床面積の割合で按分する」という方法です。とても合理的で分かりやすい方法なので、ステップに沿って見ていきましょう。

ステップ1:全体の土地面積と建物の床面積を確認する

まずは計算の元となる数字を集めましょう。法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)や、建築時の図面などで以下の情報を確認します。

  • 土地全体の面積
  • 自宅部分の床面積
  • アパート部分の総床面積(全戸室の合計)

ステップ2:建物の床面積の割合で土地を按分する

次に、建物の総床面積に対する自宅とアパートの床面積の割合を計算し、その割合を使って土地全体の面積を按分します。計算式は以下の通りです。

自宅部分の敷地面積 = 土地全体の面積 × (自宅の床面積 ÷ 建物の総床面積)

アパート部分の敷地面積 = 土地全体の面積 × (アパートの総床面積 ÷ 建物の総床面積)

ステップ3:按分した面積でそれぞれの特例を適用する

ステップ2で計算した面積が、それぞれの特例の対象となる敷地面積になります。この面積を使って、先ほど解説した「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」の限度面積や減額割合を適用していくことになります。次の章で具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。

【計算例】具体的なケースでシミュレーションしてみよう

言葉だけだと少しイメージしにくいかもしれませんので、具体的なモデルケースで計算の流れを見ていきましょう。

【モデルケース】

土地全体の面積 400㎡
自宅の床面積 120㎡
アパートの総床面積 180㎡
建物の総床面積 300㎡ (120㎡ + 180㎡)

自宅部分とアパート部分の敷地面積を計算

まずは、ステップ2の計算式を使って、土地をそれぞれの用途に按分します。

自宅部分の敷地面積:
400㎡ × (120㎡ ÷ 300㎡) = 160㎡

アパート部分の敷地面積:
400㎡ × (180㎡ ÷ 300㎡) = 240㎡

この計算により、400㎡の土地のうち、160㎡が自宅の敷地、240㎡がアパートの敷地として扱われることになります。

特例の限度面積との調整計算

次に、按分した面積に特例を適用します。このとき、2つの特例を併用するための調整計算が必要になります。計算式は少し複雑ですが、考え方は「それぞれの特例の限度面積に対する使用割合の合計が100%以内になるように調整する」というものです。

① 自宅部分(特定居住用宅地等)の適用
自宅部分の敷地面積は160㎡です。これは限度面積の330㎡よりも小さいので、160㎡すべてに特例(80%減額)を適用できます。

② アパート部分(貸付事業用宅地等)の適用可能面積を計算
自宅部分で160㎡の特例を使ったため、アパート部分で使える特例の枠には限りがあります。以下の計算式で、アパート部分で特例を適用できる面積の上限を計算します。

(自宅の適用面積 160㎡) + (アパートの適用面積 X㎡ × 330/200) ≦ 330㎡

この式を解くと、アパートの適用面積(X)の上限が求められます。
X ≦ (330 – 160) × 200 ÷ 330
X ≦ 170 × 200 ÷ 330
X ≒ 103.03㎡

アパート部分の敷地は240㎡ありますが、特例を適用できるのは103.03㎡までとなります。この103.03㎡に特例(50%減額)を適用します。残りの(240㎡ – 103.03㎡ =)136.97㎡は、特例が適用できず、通常の評価額で計算されます。

【計算結果のまとめ】

自宅部分(特定居住用宅地等) 160㎡に80%減額を適用
アパート部分(貸付事業用宅地等) 103.03㎡に50%減額を適用

このように、按分計算と調整計算を経て、特例を適用する面積が決まります。少し複雑に感じられるかもしれませんが、この計算によって相続税額が大きく変わる可能性があります。

注意すべきポイント

最後に、この特例を適用する上での注意点をいくつかご紹介します。

共有部分の床面積の取り扱い

マンションやアパートの場合、エントランスや廊下、階段といった「共有部分」があります。建物の床面積を計算する際は、この共有部分の面積を、各部屋の専有部分の床面積の割合に応じて按分し、それぞれの床面積に加算して計算するのが一般的です。

区分登記されている場合

建物が自宅部分とアパート部分で別々に登記(区分登記)されている場合もあります。この場合は、土地の権利(敷地権)も分けられていることが多いため、建物の床面積ではなく、その敷地権の割合で土地を按分することもあります。登記の状況をしっかり確認することが大切です。

相続税の申告が必須

最も重要な注意点です。小規模宅地等の特例を適用した結果、計算上の相続税額が0円になったとしても、特例の適用を受けるためには、必ず相続税の申告書を税務署に提出しなければなりません。申告を忘れてしまうと、特例は一切適用できず、多額の相続税が発生してしまう可能性がありますので、十分にご注意ください。

まとめ

一筆の土地に自宅とアパートがある場合の小規模宅地等の特例は、まず建物の床面積の割合で土地を「自宅部分」と「アパート部分」に按分し、その後、併用適用のための調整計算を行う、という流れで進めます。計算は少し複雑ですが、正しく適用できれば相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。ご自身のケースで計算が難しいと感じたり、少しでも不安に思われたりした場合は、相続税に詳しい税理士などの専門家にご相談されることを強くおすすめします。専門家と一緒に、最適な方法を見つけていきましょう。

参考文献

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

自宅兼アパートの小規模宅地の特例【面積按分と計算方法】よくある質問まとめ

Q.一つの土地に自宅とアパートがある場合、小規模宅地の特例は使えますか?

A.はい、使えます。自宅部分には「特定居住用宅地等」、アパート部分には「貸付事業用宅地等」の特例をそれぞれ適用することが可能です。

Q.自宅とアパートが建つ土地の面積は、どのように分けるのですか?

A.原則として、自宅とアパートの「建物の床面積の割合」で土地の面積を按分して計算します。

Q.特例を使える面積に上限はありますか?

A.はい。自宅部分(特定居住用宅地等)は330㎡、アパート部分(貸付事業用宅地等)は200㎡が上限です。両方の特例を併用する場合、限度面積の調整計算が必要になります。

Q.具体的な計算例を教えてください。

A.例えば土地400㎡、自宅床面積100㎡、アパート床面積100㎡の場合、土地は自宅部分200㎡、アパート部分200㎡に按分されます。この場合、自宅200㎡(上限330㎡内)、アパート200㎡(上限200㎡内)の両方に特例を適用できます。

Q.床面積で按分するのが不合理な場合はどうなりますか?

A.建物の構造や利用状況などから、床面積での按分が実態と異なる場合、利用状況など他の合理的な基準で按分することも認められています。

Q.自宅兼アパートの土地で特例を使う際の注意点は何ですか?

A.それぞれの特例要件(居住要件、事業継続要件など)を正しく満たしているか確認が必要です。計算が複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

事務所概要
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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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