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法人から個人への株式譲渡の注意点!寄附金や一時所得を解説

2025-12-20
目次

会社の株式を法人から個人へ譲渡する際、「どんな税金がかかるの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。実は、売買する価格(譲渡価額)が時価よりも高いか低いかによって、寄附金や一時所得、給与所得など、かかる税金の種類が大きく変わります。この記事では、法人から個人へ株式を譲渡する際の税務上の注意点について、具体的な金額や計算方法を交えながら優しく分かりやすく解説します。

法人から個人への株式譲渡で発生する税金の仕組み

株式譲渡で発生する税金は、売り手と買い手の組み合わせ、そして「いくらで売買したか」によって異なります。法人から個人へ株式を譲渡する場合、売る側の法人と買う側の個人のそれぞれに税金がかかる可能性があります。

株式の時価と譲渡価額の関係

税金を計算する上で非常に重要なのが、「株式の時価(本来の価値)」と「実際の譲渡価額(売買価格)」の差です。時価10,000円の株式を3,000円で売るなど、時価よりも極端に低い価格で譲渡すると、税務署から「差額分を相手にプレゼントした」とみなされ、思わぬ税金がかかることがあります。逆に、時価10,000円の株式を30,000円で売った場合も、差額に対して課税されます。

法人側(売り手)にかかる法人税

法人が株式を売却して利益が出た場合、その利益(譲渡益)に対して法人税等が課税されます。法人の実効税率は会社の規模や所得金額によって異なりますが、およそ29%〜35%程度です。個人のように株式の売却益だけを切り離して計算するのではなく、本業の儲けなど他の所得と合算して計算する「総合課税」となります。

個人側(買い手)にかかる税金の種類

買い手である個人には、原則として株式を買った時点では税金はかかりません。しかし、時価よりも著しく低い価格で買った場合や、無償でもらった場合には、「得をした金額」に対して所得税や住民税がかかることがあります。また、その個人が売り手企業の役員や従業員であるか、全くの第三者であるかによっても、税金の種類が一時所得給与所得などに変わってきます。

時価より低い価格で譲渡した場合の注意点

親族や従業員に対して、会社の株式を安く譲ってあげたいと考える経営者の方は多いです。しかし、時価よりも著しく低い価格(低額譲渡)で法人から個人へ株式を譲渡すると、税務上は厳しい課税が行われることがあります。

法人側の寄附金課税とは

例えば、時価10,000円の株式を3,000円で個人に譲渡した場合、法人側は差額の7,000円をその個人に「寄附した(贈与した)」とみなされます。法人の寄附金には経費として認められる上限額があり、上限を超えた部分は経費にならないため、結果的に法人税の負担が増えてしまいます。もし相手が役員であれば「役員賞与」とみなされ、原則として全額が経費になりません。

個人側の一時所得や給与所得の発生

安く株式を買えた個人側も、税金を払う必要があります。売り手法人との関係によって所得の区分が変わります。買い手が法人の役員や従業員であれば、差額の7,000円は会社からのボーナスと同じ給与所得として扱われ、所得税と住民税がかかります。一方、買い手が全くの第三者であれば一時所得として扱われます。一時所得には最高50万円の特別控除があるため、差額が50万円以下なら税金はかかりません。

時価より高い価格で譲渡した場合の注意点

逆に、法人が保有する株式を時価よりも高い価格で個人に買ってもらうケースもあります。この場合も、差額に対して特別な税務処理が必要になります。

法人側の受贈益課税

時価10,000円の株式を、個人に30,000円で買ってもらったとします。この場合、法人は本来の価値よりも20,000円多くお金をもらえたことになります。税務署はこれを「個人から20,000円の贈与を受けた」とみなし、この差額を受贈益として法人の利益に計上します。結果として、この受贈益に対しておよそ29%〜35%の法人税等が課税されます。

個人側の寄附金扱いとみなし譲渡

高い価格で株式を買った個人側は、差額の20,000円を法人へ寄附したことになります。ただし、個人の場合は法人に対する寄附が経費(寄附金控除)として認められる要件が厳しいため、通常は税金の計算上メリットはありません。また、将来その株式を手放す際、取得費として認められるのは実際に払った30,000円ではなく時価の10,000円となる可能性が高く、将来の売却時に不利になることがあります。

無償で株式を譲渡した場合の注意点

お金を取らずに、タダで株式をあげる場合も注意が必要です。税務上は「タダであげた・もらった」ではなく、「時価でやり取りがあった」とみなして計算が行われます。

売り手法人に発生する税金

法人が時価10,000円の株式を個人に無償でプレゼントした場合、お金をもらっていなくても「時価10,000円で譲渡した」とみなして法人税の計算を行います(みなし譲渡)。同時に、10,000円を全額寄附した扱いになるため、寄附金の損金算入限度額を超えた部分には法人税がかかってしまいます。お金が入ってこないのに税金だけ払うことになるため、非常に負担が大きくなります。

買い手個人に発生する税金

タダで株式をもらった個人側は、時価10,000円分の価値を得たことになります。この場合も、買い手が役員や従業員であれば給与所得となり、それ以外の第三者であれば一時所得として所得税と住民税がかかります。法人から個人への贈与の場合、贈与税ではなく所得税の対象となるのがポイントです。

適正な時価を算定するための方法

ここまで解説したように、法人から個人への株式譲渡では「時価」がいくらであるかが全ての基準になります。上場株式であれば毎日の株価が分かりますが、非上場株式の場合はどうすれば良いのでしょうか。

類似業種比準方式

対象となる会社と事業内容や規模が似ている上場会社の株価を参考に、1株あたりの株価を算定する方法です。上場企業の平均株価や、年間の利益、純資産、配当金などの具体的な数字をもとに計算します。比較的規模の大きい会社や、利益がしっかり出ている会社の評価に使われることが多いです。

純資産価額方式

会社が持っている資産から負債を差し引いた「純資産」をもとに株価を計算する方法です。簡単に言うと、「今会社を解散したら、株主にいくらお金が戻ってくるか」を計算します。会社の資産をすべて相続税評価額に引き直して計算するため、土地や建物などの資産を多く持っている会社でよく使われます。

法人から個人への株式譲渡にかかる税金まとめ

法人から個人への株式譲渡では、譲渡価額と時価の差によって課税される税金が大きく異なります。ここで分かりやすく表にまとめてみましょう。法人が関係する株式譲渡は、個人のみで売買する場合と比べて税務処理が非常に複雑です。思わぬ寄附金課税や給与課税を防ぐためにも、事前に適正な時価を算定し、正しい価格で譲渡することが大切です。

譲渡のパターン 個人側(買い手)の税務処理
時価より著しく低い価格で譲渡(低額譲渡) 役員・従業員は給与所得、第三者は一時所得
時価より高い価格で譲渡(高額譲渡) 法人への寄附金扱い(原則として税務上のメリットなし)
無償で譲渡(贈与) 役員・従業員は給与所得、第三者は一時所得

参考文献

国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

法人から個人への株式譲渡のよくある質問まとめ

Q.法人から個人へ株式を譲渡する場合、時価より安く売るとどうなりますか?

A.時価より著しく安く売った場合、法人側は差額を寄附したとみなされ法人税の負担が増える可能性があります。個人側も、役員・従業員なら給与所得、第三者なら一時所得として所得税がかかります。

Q.法人から個人へ無償で株式を譲渡(贈与)すると税金はかかりますか?

A.はい、かかります。法人側にはみなし譲渡による寄附金課税が、個人側には時価相当額に対して給与所得や一時所得として所得税が課税されます。

Q.買い手である個人が法人の役員の場合、安く買うとどんな所得になりますか?

A.会社の役員や従業員が時価より安く株式を買った場合、その差額分は会社からのボーナスと同じように「給与所得」として扱われ、所得税と住民税がかかります。

Q.買い手である個人が全くの第三者の場合、安く買うとどうなりますか?

A.役員や従業員以外の第三者が安く買った場合は「一時所得」となります。一時所得には最高50万円の特別控除があるため、差額が50万円以下であれば税金はかかりません。

Q.非上場株式の時価はどうやって計算するのですか?

A.上場企業と業績などを比較する「類似業種比準方式」や、会社の純資産をもとに計算する「純資産価額方式」、または配当額をもとに計算する「配当還元方式」などを用いて算定します。

Q.法人が時価より高い価格で個人に株式を売った場合、法人側はどうなりますか?

A.法人が時価よりも高く株式を売った場合、時価との差額分について個人から贈与を受けたとみなされ、「受贈益」として約29%〜35%の法人税等が課税されます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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