海外へお引っ越しをされる際、日本の住民票をそのまま残しておいてもよいのか迷われる方はとても多いですよね。この記事では、海外居住者が住民票を残す場合の具体的な影響や、税金、年金、保険などの手続きについてわかりやすく解説いたします。ご自身の状況に合わせて最適な選択ができるよう、詳しく確認していきましょう。
海外居住者が日本の住民票を残すことは可能?
結論からお伝えしますと、生活の拠点が海外にある場合、原則として日本に住民票を残したままにすることはできません。日本の法律では、生活の本拠地がどこにあるかで住民登録の可否が判断されます。
住民登録の基本的なルール
住民票は、各市区町村において住民の方々の居住関係を証明するための公的な記録です。そのため、実際にその住所に住んでいない方が住民登録をすることはできません。もし海外に生活の拠点があるにもかかわらず住民票を残していると、虚偽の申告とみなされてしまう可能性があります。
一時帰国など短期滞在の場合
海外への赴任や留学などで滞在期間が1年未満の短期となる予定であれば、生活の拠点は日本にあるとみなされ、住民票を残したままにすることが一般的です。一方で、1年以上の長期にわたって海外で生活される場合は、出発前に市区町村の役所へ海外転出届を提出して住民票を抜く必要があります。
住民票をそのままにした場合のリスク
居住実態がないにもかかわらず住民票を残し続けていると、市区町村の調査によって実態がないと判断され、職権で住民票が消されてしまう職権消除という措置がとられることがあります。また、住民票がある限り各種税金や保険料の支払い義務が毎月発生し続けるため、未納による督促状が届く原因にもなります。
住民票を残すメリットとデメリット
ここでは、一時的な海外滞在などで住民票を残す場合、具体的にどのような影響があるのかをメリットとデメリットの両面から整理してみていきましょう。
国民健康保険や介護保険の適用
住民票を残しておくと、国民健康保険や40歳以上の方が加入する介護保険の被保険者資格が継続します。これにより、一時帰国した際に日本の医療機関を3割負担で受診できるという大きなメリットがあります。ただし、日本にいない期間も毎月の保険料を支払い続けなければならない点はデメリットとなります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 一時帰国時に3割負担で医療機関を受診できる | 海外滞在中も毎月の健康保険料や介護保険料の支払い義務が生じる |
国民年金の受給資格への影響
日本に住民票がある20歳以上60歳未満の方は、国民年金保険料を支払う義務があります。令和6年度の国民年金保険料は月額16,980円です。住民票を抜いた場合は支払い義務がなくなりますが、その期間は合算対象期間と呼ばれるカラ期間となり、将来受け取る老齢基礎年金の受給額を増やす計算には反映されません。
住民税や所得税などの税金負担
住民税は、毎年1月1日時点で住民票がある市区町村に対して支払い義務が発生します。例えば前年の所得が500万円あった場合、約10%にあたる50万円ほどの住民税が課税されます。また、住民票を残していると日本の居住者として扱われる可能性が高くなり、海外で得た収入に対しても日本で所得税の申告が必要になる場合があります。
住民票を抜く(転出届を出す)ときの手続き
1年以上の海外滞在が決まり、住民票を抜くことになった際の具体的な手続き方法についてご案内いたします。出発前の忙しい時期ですが、忘れずに行いましょう。
海外転出届の提出方法
海外へ出発される日の14日前から出発日までの間に、お住まいの市区町村の窓口で海外転出届を提出します。手続きには、ご本人確認書類である運転免許証やパスポートなどが必要です。代理人の方が手続きされる場合は、委任状が必要となります。
マイナンバーカードの返納と継続利用
以前は海外転出の際にマイナンバーカードを返納する必要がありましたが、現在は法改正により、海外へ転出してもマイナンバーカードを継続して利用できるようになりました。転出の窓口手続きの際にマイナンバーカードを持参し、国外転出者向けの継続利用処理を行ってもらいましょう。
海外在住者の税金や年金の具体的な金額と要件
住民票を抜いた場合と残した場合で、具体的にどれくらいのお金が関わってくるのかを明確にしておきましょう。
年金保険料の具体的な納付額
もし住民票を抜いて海外居住者となった場合でも、将来の年金額を減らさないために国民年金に任意加入することができます。この場合の保険料も日本国内にお住まいの方と同じく、令和6年度で月額16,980円です。年間でおよそ203,760円を納付することで、将来満額の年金を受け取るための期間としてしっかりと加算されます。
住民税の発生条件
住民税の計算基準は1月1日です。そのため、12月31日までに海外転出届を提出して住民票を抜いていれば、翌年度の住民税は課税されません。例えば、前年の給与収入が600万円で住民税が約30万円かかる方の場合、年末までに手続きを済ませることで翌年の大きな負担をなくすことができます。
海外在住の方向けの具体的な対策
最終的にご自身がどうすべきか、具体的な対策と判断基準をお伝えします。
短期滞在か長期滞在かでの判断
滞在期間が1年未満の短期であれば、手続きの手間や一時帰国時の医療費を考慮して住民票を残す方が多いです。しかし、1年以上の長期滞在になる場合は、住民税の負担や保険料の二重払いを防ぐためにも、原則通り海外転出届を提出して住民票を抜くことをおすすめします。
任意加入制度の活用
住民票を抜いて海外居住者になると年金保険料の支払い義務はなくなりますが、任意加入制度を活用すれば将来の年金額を増やすことができます。ご自身の日本の銀行口座からの引き落としや、日本に住むご家族に代わりに納付してもらうことも可能ですので、老後の資金準備としてぜひご検討ください。
まとめ
海外居住者が日本の住民票を残してもよいかという疑問について解説いたしました。生活の拠点が海外に移る場合は、原則として住民票を抜く必要があります。住民票を残したままにすると、医療保険が使えるメリットがある反面、住民税や健康保険料の支払い義務が継続するデメリットが生じます。ご自身の滞在予定期間や、一時帰国の頻度などを踏まえて、出発前にお住まいの市区町村役場で適切に手続きを行いましょう。
参考文献
国税庁:No.2875 居住者と非居住者の区分
デジタル庁:よくある質問:マイナンバー(個人番号)について
海外居住者の住民票に関するよくある質問まとめ
Q.海外に1年以上住む場合、日本の住民票を残したままでもよいですか?
A.生活の拠点が海外にある場合、原則として住民票を残すことはできません。出発前に海外転出届を提出する必要があります。
Q.住民票を抜いた場合、日本の医療機関はどうやって受診すればよいですか?
A.国民健康保険の資格がなくなるため、全額自己負担(10割負担)で受診することになります。民間の海外旅行保険などを活用されることをおすすめします。
Q.住民票を抜くと年金はどうなりますか?
A.国民年金の強制加入から外れ、支払い義務がなくなります。ただし、将来の年金額を減らしたくない場合は、任意加入制度を利用してご自身で保険料を支払うことが可能です。
Q.住民税を支払わなくてよくなるのはいつからですか?
A.住民税は毎年1月1日時点の住所で課税されます。そのため、12月31日までに海外転出届を提出していれば、翌年度の住民税は発生しません。
Q.海外へ行く際、マイナンバーカードは返納しなければなりませんか?
A.以前は返納が必要でしたが、現在は手続きをすれば海外転出後もマイナンバーカードを継続してご利用いただけるようになりました。
Q.短期間の海外出張や留学でも住民票を抜くべきですか?
A.滞在期間が1年未満の短期となる予定であれば、生活の基盤は日本にあるとみなされるため、一般的には住民票を残したままで問題ありません。