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親が日本居住で子はフランス居住!相続税の納税はどうなる?

2025-09-20
目次

親御さんが日本に住んでいて、ご自身はフランスに数十年住んでいるという場合、いざ相続が発生したときにどこの国の税金がかかるのか、手続きはどうすればいいのか不安になりますよね。実は、亡くなった方と相続人の住んでいる国が違う国際相続では、日本とフランスの両方で税金がかかる可能性があります。この記事では、フランス居住の相続人が知っておくべき納税のルールや二重課税の防ぎ方について、優しくわかりやすく解説していきます。

どこの国の法律が適用される?国際相続の基本

相続が起きたとき、まずは日本とフランス、どちらの法律に従って遺産を分けるのかを決める必要があります。これを準拠法と呼びます。

日本とフランスの法律のルールの違い

日本とフランスでは、どの国の法律を適用するかのルールが異なります。日本の法律では、亡くなった方の国籍の法律に従うとされています。一方、フランスの法律では、亡くなった方の最後の住所地の法律に従うのが原則です。今回は親御さんが日本国籍で日本に住んでいるため、基本的には日本の法律に基づいて誰が相続人になるか、どのくらいの割合で相続するかが決まります。

国名 準拠法の原則
日本 亡くなった方の国籍のある国の法律
フランス 亡くなった方の最後の住所地の法律

法定相続人と相続分はどうなる?

今回のケースでは日本の法律が適用されるため、法定相続人の範囲や相続できる割合は日本の民法に従います。たとえば、亡くなった方に配偶者と子ども2人がいる場合、配偶者が2分の1、子どもたちが残りの2分の1を均等に4分の1ずつ相続することになります。フランスの法律が適用される場合は配偶者が4分の1で子どもが残りを選ぶなどルールが異なりますが、被相続人が日本居住の日本人であれば、日本のルールで遺産分割を進めることになります。

遺言書がある場合の注意点

もし親御さんが遺言書を残している場合、その内容が優先されます。ただし、日本の法律には、配偶者や子どもに最低限保障された遺産の取り分である遺留分という制度があります。配偶者と子どもが相続人の場合、遺産の2分の1が遺留分として保障されます。フランスにも似たような制度がありますが、日本の法律が適用される今回のケースでは、日本の遺留分を主張することになります。

フランスでの相続税の仕組みと課税対象

相続に関する法律は日本法が適用されても、税金の話は別になります。フランスに住んでいる方が財産を受け継ぐ場合、フランスの税制にも目を向ける必要があります。

フランス居住の相続人にかかる税金

フランスの税法では、相続人が相続開始時にフランスに住んでおり、かつ過去10年間のうち6年以上フランスに居住している場合、世界中どこにある財産であってもフランスで相続税の申告と納税をする義務が生じます。数十年フランスに居住しているとのことですので、親御さんが日本に残した預金や不動産もすべてフランスの相続税の対象となります。申告期限は、亡くなった方が日本で死亡した場合は相続開始から12ヶ月以内です。

日本の相続税との基礎控除の違い

フランスと日本では、税金がかからない非課税枠の計算方法が大きく異なります。日本では遺産全体に対して「3000万円+600万円×法定相続人の数」という共通の基礎控除がありますが、フランスでは相続人ごとに個別の控除額が設定されています。例えば、フランスでは親から子への相続の場合、子ども1人につき10万ユーロの非課税枠があります。また、配偶者は全額免除されるという特徴があります。

国名 基礎控除・非課税枠の仕組み
日本 3000万円+600万円×法定相続人数
フランス 子ども1人につき10万ユーロ(配偶者は免除)

日仏間の二重課税リスク

最も気をつけなければならないのが、日本とフランスの両方から税金をかけられてしまう二重課税の問題です。現在のところ、日本とフランスの間には相続税に関する租税条約が結ばれていません。そのため、日本の財産に対して日本で相続税を払い、さらにフランスでも同じ財産に対して相続税を払うという事態が起こり得ます。

日本の相続税はどうなる?申告のポイント

フランスでの納税義務があるからといって、日本での納税義務がなくなるわけではありません。親御さんが日本に住んでいた場合の日本の税制について確認しましょう。

日本での課税範囲と申告期限

日本の税法では、亡くなった方が日本に住所を持っていた場合、相続人がどこに住んでいようと、日本国内の財産はもちろん、海外にある財産も含めたすべての財産に対して日本の相続税がかかります。したがって、フランスに住む相続人であっても、遺産総額が日本の基礎控除を超える場合は、亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に日本で相続税の申告と納税を行う必要があります。

納税管理人の選任が必要

日本に住んでいない方が日本の相続税を申告・納税する場合、ご自身の代わりに日本で手続きを行ってくれる納税管理人を選任しなければなりません。これは、税務署からの通知を受け取ったり、税金を納めたりする代理人のような存在です。日本に住んでいる親族にお願いすることもできますし、税の専門家に依頼することも可能です。手続きを進める前に、まずは誰を納税管理人にするかを決めて税務署へ届け出を出しましょう。

二重課税を防ぐための外国税額控除

日本とフランスの両方で税金がかかる場合、そのままでは負担が大きすぎます。そこで活用したいのが、税額を差し引くことができる制度です。

外国税額控除の活用

日本の相続税の計算には外国税額控除という制度があります。これは、海外の財産に対して外国で相続税に相当する税金を支払った場合、一定の限度額の範囲内で、日本の相続税からその分を差し引くことができる仕組みです。ただし、この控除が適用されるのは「海外にある財産」に対して現地で課税された場合に限られます。日本の財産に対してフランスで課税された分を日本の税金から引くことはできないため注意が必要です。

フランス側での減額申請

反対に、日本にある財産に対して日本で相続税を支払った場合、フランスの税務当局に対して減額申請を行うことで、フランス側での税負担を調整できる可能性があります。租税条約がないため自動的に解決するわけではありませんが、一方の国で支払った税金を証明することで、もう一方の国で考慮してもらえるケースがあります。両国の制度に精通した専門家のサポートを受けながら、確実に手続きを進めることが大切です。

スムーズな手続きのために必要な準備

国をまたぐ相続手続きは、必要な書類をそろえるだけでも非常に時間がかかります。あらかじめどのような準備が必要かを知っておきましょう。

日本の書類の代わりになるもの

日本の相続手続きでは、通常、印鑑証明書や住民票が必要です。しかし、フランスに長年住んでいる場合、日本の住民票や印鑑登録は抹消されていることが多いでしょう。その代わりとして、現地の日本大使館や領事館で発行してもらえる在留証明書署名証明書を用意する必要があります。これらの書類は、日本の銀行での口座解約や不動産の名義変更に必須となります。

日本の手続きで必要な書類 海外居住者の代替書類
住民票 在留証明書
印鑑証明書 署名証明書(サイン証明)

早めの資産整理と調査

日本とフランスの両方で申告期限に間に合わせるためには、親御さんがどこにどれくらいの財産を持っているのかを正確に把握することが第一歩です。預金口座の数が多い場合は解約手続きの手間も増えますし、不動産がある場合は評価額の計算にも時間がかかります。生前のうちから財産目録を作ってもらったり、不要な口座を解約して資産をまとめておいてもらうなど、ご家族で話し合って整理しておくことをおすすめします。

まとめ

親が日本居住、子がフランスに長年居住している場合の相続では、遺産分割のルールは日本の法律に従いますが、税金に関しては日本とフランスの両方で課税される可能性が高いです。特に、過去10年間のうち6年以上フランスに居住していると全世界の財産がフランスでの課税対象となるため、日本の相続税との間で二重課税のリスクが生じます。納税管理人の選任や、在留証明書などの特殊な書類の準備も必要になるため、期限である日本での10ヶ月とフランスでの12ヶ月の申告に間に合うよう、早めに動き出すことが重要です。

参考文献

国税庁:相続人が外国に居住しているとき

フランス居住の相続に関するよくある質問まとめ

Q.日本国籍の親が日本で亡くなりました。フランスに住む私は日本の相続税を払う必要がありますか?

A.はい、親御さんが日本に住んでいた場合、相続人の居住地に関わらず、すべての財産に対して日本の相続税がかかります。遺産総額が基礎控除の3000万円+600万円×法定相続人数を超える場合は申告が必要です。

Q.フランスでも相続税を払わなければなりませんか?

A.フランスに過去10年間のうち6年以上居住している場合、世界中にある財産がフランスの相続税の課税対象となります。そのため、日本にある遺産についてもフランスで申告が必要です。

Q.日本とフランスで税金を二重に取られてしまうのでしょうか?

A.日仏間には相続税の租税条約がないため二重課税のリスクがあります。ただし、一方の国で支払った税金を証明することで、もう一方の国で減額申請や外国税額控除が認められる場合があります。

Q.日本の相続手続きのために印鑑証明書が必要と言われました。どうすればいいですか?

A.フランスにお住まいで日本の住民票がない場合、現地の日本大使館や領事館で発行してもらえる署名証明書(サイン証明)が印鑑証明書の代わりとして使用できます。

Q.日本の税務署へ書類を提出したり税金を払ったりするには、帰国しなければなりませんか?

A.帰国する必要はありません。日本国内にお住まいの方を納税管理人として選任し、税務署に届け出ることで、ご自身の代わりに申告や納税の手続きを行ってもらうことができます。

Q.日本とフランスで相続税の申告期限は同じですか?

A.異なります。日本の相続税申告は亡くなった日の翌日から10ヶ月以内ですが、被相続人が海外で亡くなった場合、フランスでの申告期限は12ヶ月以内となります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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