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親の生命保険、どう調べる?相続時に慌てないための完全ガイド

2025-04-13
目次

ご親族が亡くなられた後、やらなければならない手続きはたくさんあり、心身ともに大変な時期かと思います。そんな中で、「そういえば、親は生命保険に入っていただろうか?」と疑問に思うことはありませんか。生命保険金は、請求手続きをしないと受け取ることができません。大切なご家族が残してくれた想いを無駄にしないためにも、親が入っていた生命保険の調べ方を一緒に確認していきましょう。この記事では、ご自身で探す方法から、どうしても見つからない場合の公的な制度まで、分かりやすくステップごとに解説していきます。

まずは落ち着いて身の回りを探してみましょう

親御さんが亡くなられた直後は、精神的にも時間的にも余裕がないかもしれません。しかし、生命保険の手がかりは、意外と身近な場所に残されていることが多いです。まずは慌てずに、故人の大切な品々を整理しながら、以下のものを探してみてください。

手がかりになる書類を探す

生命保険に加入していれば、必ず関連する書類が存在します。以下のような書類がないか、重点的に探してみましょう。保管されていそうな場所は、書斎の引き出し、金庫、仏壇の引き出し、重要書類をまとめているファイルなどです。

  • 保険証券:契約内容が記載された最も重要な書類です。これが見つかれば、保険会社や契約内容がすぐにわかります。
  • ご契約内容のお知らせ:年に1~2回、保険会社から送られてくるハガキや封書です。契約が継続している証拠になります。
  • 生命保険料控除証明書:年末調整や確定申告に使う書類で、毎年10月頃に保険会社から送付されます。その年に保険料を支払っていた証明になります。

通帳の引き落とし履歴を確認する

書類がどうしても見つからない場合は、故人の預金通帳やインターネットバンキングの取引履歴を確認してみましょう。毎月や毎年、決まった日に「〇〇セイメイ」「〇〇生命」といった名前で保険料が引き落とされていないかチェックしてみてください。これが、契約している保険会社を特定する大きな手がかりになります。

郵便物やメールをチェックする

保険会社からは、契約内容のお知らせ以外にも様々な郵便物が届きます。過去の郵便物を整理してみるのも一つの方法です。また、最近ではペーパーレス化が進み、郵送ではなくメールで通知が届くことも増えています。もし可能であれば、故人のパソコンやスマートフォンのメール受信箱に、保険会社からのメールが残っていないか確認してみるのも良いでしょう。他にも、保険会社名が入ったカレンダーやタオル、ボールペンなどの粗品が残されていることもあります。

それでも見つからない時の最終手段「生命保険契約照会制度」

身の回りをくまなく探しても手がかりが全く見つからない…。そんな時に頼りになるのが、一般社団法人生命保険協会が実施している「生命保険契約照会制度」です。この制度を利用すれば、生命保険協会に加盟している全ての生命保険会社(2024年時点で42社、国内のほぼ全ての会社が加盟)に対して、一括で契約の有無を問い合わせることができます。

生命保険契約照会制度とは?

この制度は、ご家族が亡くなられた場合や、認知症などで判断能力が低下した場合に、生命保険契約に関する手がかりを失ってしまった方のために作られました。照会を申し込むことで、亡くなった方(照会対象者)が契約者または被保険者となっている生命保険契約が、どの保険会社に存在するかを調べてもらうことができます。

制度を利用できる人

誰でも照会できるわけではなく、プライバシー保護の観点から、照会できる方の範囲は厳密に定められています。亡くなられた場合、主に以下の方が利用できます。

利用できる方の区分 具体的な例
法定相続人 亡くなった方の配偶者、子、親など、法律で定められた相続人
遺言執行者 遺言書によって指定された遺言執行者
法定相続人の代理人 法定相続人から委任を受けた弁護士など(委任状が必要)

照会にかかる費用と期間

制度の利用には、費用と時間がかかります。事前に確認しておきましょう。

  • 費用:照会対象者1名につき、3,000円(税込)の手数料が必要です。
    ※2026年4月1日以降の申請分からは、WEB申請6,000円、書面申請7,000円に改定される予定です。
  • 期間:申し込み後、生命保険協会が全加盟会社へ調査依頼を行い、結果が取りまとめられます。そのため、結果の回答が届くまでには通常2週間から1ヶ月程度の時間がかかります。

照会制度の申し込み方法と必要書類

申し込みは、生命保険協会のウェブサイトからのインターネット申請、または郵送で行うことができます。申請には、いくつかの公的書類が必要になるため、事前に準備しておくとスムーズです。

項  目 内   容
申し込み方法 インターネット申請 または 郵送
主な必要書類
  • 照会者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 亡くなった事実がわかる書類(死亡診断書の写し、除籍謄本など)
  • 照会者と亡くなった方の関係がわかる書類(戸籍謄本など)

※必要書類の詳細は、申請時に生命保険協会のウェブサイトで必ず最新の情報をご確認ください。

照会制度の注意点

非常に便利な制度ですが、いくつか注意点があります。まず、この制度でわかるのは「契約の有無」と「契約がある保険会社名」までです。保険金額や保障内容といった詳細な契約内容まではわかりません。契約があることが判明したら、ご自身でその保険会社に連絡し、詳細の確認と請求手続きを進める必要があります。また、財形保険や、すでに支払いが開始されている年金保険などは照会の対象外となる場合があります。

生命保険金を受け取ったら税金はかかる?

無事に生命保険金を受け取ることができたら、次に気になるのが税金のことではないでしょうか。受け取った死亡保険金は、契約の形態によってかかる税金の種類が変わってきます。あらかじめ知っておくことで、後の手続きに備えることができます。

契約形態によって税金の種類が変わる

ポイントは、「誰が保険料を支払っていたか(契約者)」「誰が保険の対象だったか(被保険者)」「誰が保険金を受け取ったか(受取人)」の3つの関係性です。最も一般的なケースを含め、以下の表にまとめました。

契約者(保険料負担者) 被保険者 保険金受取人 税金の種類
子(相続人) 相続税
所得税(一時所得)
贈与税

このように、ご家族が亡くなられたことで受け取る保険金でも、必ずしも相続税の対象になるとは限りませんので、契約形態をしっかり確認することが大切です。

相続税の非課税枠を忘れずに

死亡保険金が相続税の対象となる場合、とても重要な非課税制度があります。これは「500万円 × 法定相続人の数」で計算される金額まで、相続税がかからないというものです。例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人いるご家庭では、「500万円 × 3人 = 1,500万円」となり、受け取った死亡保険金のうち1,500万円までは相続税の対象から外れます。この非課税枠は、相続人が受け取る生命保険金にのみ適用される大きなメリットです。

保険金の請求手続きと必要書類

契約している保険会社が特定できたら、いよいよ保険金の請求手続きに進みます。手続きは自動的には行われないため、受取人から能動的に連絡する必要があります。

保険会社への連絡と手続きの流れ

まずは、保険証券や生命保険契約照会制度の結果通知書に記載されている保険会社のコールセンターへ連絡しましょう。連絡の際は、「被保険者(亡くなった方)の氏名、生年月日」「保険証券番号」「死亡日」などを伝えるとスムーズです。一般的な手続きの流れは以下の通りです。

  1. 保険会社のコールセンターへ連絡し、死亡保険金を請求したい旨を伝える。
  2. 保険会社から請求に必要な書類が郵送されてくる。
  3. 請求書類に必要事項を記入し、その他の必要書類と共に保険会社へ返送する。
  4. 保険会社で書類の確認と支払い審査が行われる。
  5. 審査完了後、指定した口座に保険金が支払われる。

請求時に必要な主な書類

保険金の請求には、いくつかの公的な書類が必要となります。保険会社から案内がありますが、一般的に必要とされるものは以下の通りです。早めに準備を始めましょう。

  • 保険金請求書(保険会社から取り寄せます)
  • 保険証券
  • 死亡診断書 または 死体検案書の写し
  • 被保険者(亡くなった方)の除籍謄本
  • 保険金受取人の戸籍謄本
  • 保険金受取人の印鑑証明書

※契約内容や保険会社によって必要書類は異なりますので、必ず保険会社の案内に従ってください。

生命保険金の請求には時効がある!

最後に、非常に大切な注意点をお伝えします。実は、生命保険金の請求権には時効があります。保険法では、保険金を受け取る権利は、支払い事由が発生した時(この場合は、被保険者が亡くなられた時)から3年間行使しないと、時効によって消滅すると定められています。多くの保険会社では、3年を過ぎても柔軟に対応してくれるケースが多いですが、法律上の権利としては消滅してしまう可能性があるのです。そのため、契約の有無がわかったら、できるだけ速やかに請求手続きを進めることが何よりも重要です。

まとめ

親御さんが亡くなられた後の大変な時期に、生命保険の契約を探し出すのは骨の折れる作業かもしれません。しかし、故人が家族のために遺してくれた大切な想いを形にするための、最後の重要な手続きです。まずは慌てずに、身の回りにある書類や通帳から手がかりを探してみてください。それでも見つからない場合は、「生命保険契約照会制度」という心強い味方があります。請求漏れや時効によって、受け取れるはずだった保険金を受け取れなくなるという事態を避けるためにも、この記事を参考に、一歩ずつ確認を進めていただければ幸いです。そして、これを機に、ご自身の保険契約についてもご家族と情報を共有しておくことの大切さを考えてみるのも良いかもしれませんね。

参考文献

親の生命保険の調べ方に関するよくある質問

Q.親がどの生命保険会社に加入していたか分かりません。どうやって調べればいいですか?

A.まずは保険証券やご自宅への郵便物、通帳の引き落とし履歴などを探しましょう。見つからない場合は、生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用して、加盟している保険会社に一括で問い合わせることも可能です。

Q.保険証券が見つからない場合、保険金は請求できませんか?

A.いいえ、保険証券がなくても請求できます。加入している保険会社が分かれば、本人確認書類などを提出して手続きを進められます。まずは保険会社に連絡し、証券を紛失した旨を伝えてください。

Q.故人の通帳に保険料らしい引き落としがありますが、会社名が分かりません。

A.通帳の引き落とし名義から推測できる場合があります。アルファベットやカタカナの略称で記載されていることが多いです。インターネットで検索したり、引き落とし先の金融機関に問い合わせたりすると判明する可能性があります。

Q.生命保険の請求に期限はありますか?

A.はい、保険法により保険金の請求権は、支払い事由が発生した翌日から3年で時効となります。ただし、3年を過ぎても事情によっては請求が認められるケースもあるため、気づいた時点ですぐに保険会社へ連絡しましょう。

Q.受け取った死亡保険金に税金はかかりますか?

A.はい、死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。契約形態によっては所得税や贈与税の対象になる場合もあるため注意が必要です。

Q.生命保険の請求手続きにはどのような書類が必要ですか?

A.一般的に、保険金請求書、保険証券、死亡診断書(または死体検案書)、故人の戸籍謄本、請求者の本人確認書類や印鑑証明書などが必要です。保険会社や契約内容によって異なるため、事前に必ず確認しましょう。

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