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隅切りがある土地の間口距離、測り方を解説!相続税評価の重要ポイント

2025-05-10
目次

ご家族が亡くなり、土地を相続することになったけれど、その土地が道路の角にあって「隅切り(すみきり)」がされている…。このような場合、「土地の評価額はどうやって計算するの?」「特に、道路に接している部分の長さ(間口距離)はどう測ればいいの?」と悩んでしまう方も少なくありません。実は、この間口距離の測り方は、相続税の金額に大きく影響する、とても大切なポイントなんです。間違った測り方をしてしまうと、本来よりも高い相続税を納めてしまう可能性も。この記事では、隅切りがある場合の正しい間口距離の測り方について、初心者の方にも分かりやすく、丁寧にご説明していきます。

隅切りとは?なぜ土地の評価で重要になるの?

まずは、「隅切り」そのものと、なぜそれが相続税評価で重要視されるのか、基本から確認していきましょう。普段何気なく見ている道路の角にも、実は大切な意味があるんですよ。

そもそも「隅切り」って何?

「隅切り」とは、交差点やT字路など、道路が交わる角にある土地(角地)の角を、三角形に切り取って道路として利用できるように整備された部分のことを指します。これは、自動車や自転車が安全に曲がりやすくしたり、歩行者の見通しを良くしたりするために、建築基準法や各自治体の条例に基づいて設けられています。多くの場合、土地の所有者が敷地の一部を道路として提供する形で設置されます。これにより、街全体の交通の安全性が高められているのです。

なぜ「間口距離」の測り方が重要なのでしょうか?

相続税を計算する際、土地の評価額は「路線価」という国が定めた価格を基に算出されます。しかし、全ての土地がきれいな四角形ではありませんよね。そこで、土地の形や使いやすさに応じて評価額を調整するための「補正」が行われます。この補正計算の多くに「間口距離」が使われるため、その測り方が非常に重要になるのです。

例えば、以下のような補正で間口距離が影響します。

  • 間口狭小補正:間口が狭く使いにくい土地の評価額を下げる補正
  • 奥行長大補正:間口に比べて奥行きが長すぎる土地の評価額を下げる補正
  • 不整形地補正:いびつな形の土地の評価額を下げる補正

つまり、間口距離を正確に測定することが、適正な土地評価、ひいては相続税の節税につながる第一歩と言えるのです。

【最重要】隅切りがある土地の正しい間口距離の測り方

それでは、この記事の核心である、隅切りがある土地の間口距離の測り方について見ていきましょう。一見、実際に道路に接している部分だけを測ればよいように思えますが、相続税評価には特別なルールがあります。

結論:隅切りは「ないもの」として測る!

相続税の土地評価における間口距離を計算する場合、とても大切なルールがあります。それは、「隅切りがないものとした場合の長さで測定する」ということです。

つまり、隅切りによって削られてしまった部分も、元々あったかのように直線で結んで長さを測ります。例えば、隅切り部分の実際の接道長さが10mで、隅切りがなかったと仮定した場合の長さが12mだとすると、相続税評価で使う間口距離は「12m」となります。実際に道路に接している長さではない、という点をしっかり覚えておきましょう。

「建築基準法」の接道距離とは違うので注意!

ここで一つ、注意点があります。それは、建物を建てる際に必要となる建築基準法の「接道距離」と、相続税評価で使う「間口距離」は、目的も測り方も異なる場合がある、ということです。

種類 目的・ルール
間口距離(相続税評価) 土地の相続税評価額を計算するために使用します。隅切りがある場合は、隅切りがないものとして長さを測ります。
接道距離(建築基準法) その土地に建物を建てるための要件です。原則として、幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります。

このように、同じ土地でも目的によって長さの捉え方が変わることがあります。相続税の申告では、必ず「隅切りがないものとして測る」というルールを適用してください。

隅切り部分が「私道」の場合は評価が必要

隅切り部分は、自治体に寄付されて「公道」になっている場合もあれば、土地の所有者(被相続人)の名義のまま「私道」として扱われている場合もあります。もし故人の名義のままだった場合、その隅切り部分も相続財産として評価する必要があります。

  • 不特定多数の者の通行に使われている場合:公共性が高いと判断され、評価額はゼロ(非課税)になります。
  • 特定の者のみが通行に使っている場合:通常の宅地評価額の30%で評価されます。

間口距離の測定と合わせて、隅切り部分の所有権がどうなっているのか、登記簿などで確認することも忘れないようにしましょう。

間口距離の測り方【その他のケース】

隅切り以外にも、間口距離の測り方で迷いやすいケースがいくつかあります。代表的な例を知っておくことで、より複雑な土地の評価にも対応しやすくなりますよ。

ケース1:土地が2つ以上の道路に接している(角地など)

角地や二方路線地(土地の表と裏が道路に接している土地)のように、複数の道路に接している場合は、それぞれの道路に接している部分の長さを、それぞれの間口距離として測定します。どちらの道路を「正面」として評価するかによって評価額が変わるため、それぞれの間口を正確に測ることが重要です。

ケース2:1つの道路に間を空けて接している

間に他人の土地が挟まっているなどで、1つの道路に対して飛び飛びに接している土地もあります。この場合の間口距離は、接している部分の長さをすべて合計した長さとなります。例えば、3m接している部分と5m接している部分があれば、間口距離は「8m」として計算します。

ケース3:道路に対して斜めに接している

敷地が道路に対して斜めに接している場合、間口距離の測り方は原則として「道路に実際に接している長さ」となります。しかし、納税者に有利になるよう、建築基準法で定められる「接道距離(道路に対して垂線を下ろした長さ)」を選択することも認められる場合があります。一般的には、短い方の長さを間口距離として採用した方が、評価上有利になることが多いです。この判断は専門的知識を要するため、専門家への相談がおすすめです。

間口距離が土地の評価額にどう影響するの?

では、苦労して測った間口距離が、具体的にどのように土地の評価額に影響するのでしょうか。代表的な3つの補正率を見てみましょう。

間口狭小補正率

土地の間口が、その地域の標準的な土地と比べて狭い場合、建物の配置が制限されるなど利用価値が低いと判断され、評価額が減額されます。このときに使われるのが「間口狭小補正率」です。例えば、普通住宅地区で標準的な間口が8mのところ、評価対象地の間口が4mしかない場合、評価額が10%減額される(補正率0.90)といった調整が行われます。

地区区分 間口距離(例)
普通住宅地区 4m未満で補正率0.90
高度商業地区 4m未満で補正率0.80

奥行長大補正率

間口の広さに対して、奥行きが極端に長い土地も、使い勝手が悪いとされます。うなぎの寝床のような土地をイメージすると分かりやすいかもしれません。このような土地は「奥行長大補正率」を使って評価額が減額されます。この補正が適用されるかどうかの判断基準(奥行距離÷間口距離)に、間口距離が使われます。

不整形地補正率

三角形の土地や旗竿地など、きれいな四角形ではない「不整形地」は、有効に利用できない部分(かげ地)があるため、評価額が大きく減額される可能性があります。この不整形地を評価する際、「想定整形地」という理想的な四角形を想定します。そして、評価額を計算する過程で、不整形地の面積を間口距離で割って平均的な奥行きを算出する場面があります。ここでも間口距離が計算の基礎となるため、非常に重要なのです。

評価の前にもう一度確認!隅切り部分の所有権

最後に、評価を進める前に必ず確認してほしいのが、隅切り部分の「所有権」です。測り方だけでなく、誰のものかによって扱いが全く異なります。

隅切り部分が「公道」になっている場合

隅切り部分が、すでに国や市区町村へ寄付などによって所有権が移転し、「公道」として扱われているケースです。この場合、隅切り部分はそもそも相続財産ではありませんので、評価の対象外となります。ただし、残った宅地部分の間口距離は、これまで説明してきた通り、「隅切りがなかったもの」として測るルールは変わりません。

隅切り部分が「私道」のままの場合

一方で、登記簿を確認したら隅切り部分も故人の名義のままだった、というケースもよくあります。この場合、隅切り部分は「私道」として相続財産に含まれます。この私道は、利用状況に応じて評価します。不特定多数の人が自由に通行できる状態であれば「非課税財産」として評価額は0円になりますが、評価対象であることには変わりないので、申告書への記載は必要です。この確認を怠ると、財産の申告漏れを指摘される可能性があるため、注意深く確認しましょう。

まとめ

今回は、隅切りがある土地の間口距離の測り方と、それが相続税評価に与える影響について解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

    • 隅切りがある土地の間口距離は、相続税評価では「隅切りがないものとして」測るのが大原則です。
    • 間口距離は、間口狭小補正や不整形地補正など、土地の評価額を左右する多くの補正計算の基礎となります。
    • 建物を建てるための建築基準法の「接道距離」とは、測り方が違うことを理解しておきましょう。

– 評価を始める前に、隅切り部分の所有者が誰なのか(公道か私道か)を登記簿で確認することが不可欠です。

  • 土地の評価は非常に専門的で複雑です。特に隅切りや不整形地などが絡むと、計算が難しくなります。もし少しでも不安があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

正しい知識を持って、適切な相続税申告を行いましょう。

参考文献

No.4620 無道路地の評価|国税庁

隅切りがある土地の長さや面積|測り方のよくある質問まとめ

Q. そもそも「隅切り」とは何ですか?

A. 隅切り(すみきり)とは、角地の見通しを良くし、車や人の安全な通行を確保するために、敷地の角を三角形に切り取って道路状に整備した部分のことです。建築基準法で設置が義務付けられています。

Q. 隅切りがある土地の長さは、どうやって測ればいいですか?

A. 隅切りは角を頂点とする二等辺三角形になっています。測るべき長さは、その三角形の「底辺の長さ」です。一般的に、道路の交わる点から各道路に沿って2mの位置を結んだ直線が隅切り部分となります。

Q. 隅切り部分の面積の計算方法を教えてください。

A. 隅切りは直角二等辺三角形になることが多いため、辺の長さを掛け合わせて2で割ることで計算できます。例えば、2mの辺で構成される隅切りなら「2m × 2m ÷ 2 = 2㎡」となります。

Q. 隅切りとセットバックの違いは何ですか?

A. 隅切りは「角地」の角を削るのに対し、セットバックは「幅の狭い道路」に面した敷地全体で境界線を後退させるものです。目的は似ていますが、適用される土地の条件が異なります。

Q. 隅切り部分は敷地面積に含まれますか?

A. はい、隅切り部分は建ぺい率や容積率を計算する際の敷地面積に含まれます。ただし、その部分には建物を建てたり塀を設置したりすることはできません。

Q. なぜ隅切り部分は自由に利用できないのですか?

A. 隅切り部分は、法律で定められた「道路状に確保すべき空間」だからです。私有地ではありますが、公共の交通安全のために利用が制限され、建築物や工作物の設置はできません。

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