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【初心者向け】信託受益権の評価明細書の書き方をわかりやすく解説!

2025-01-24
目次

ご家族が遺した財産の中に「信託受益権」があった場合、相続税の申告で「信託受益権の評価明細書」という書類が必要になります。少し専門的な響きがあって、どう書けばいいのか戸惑ってしまいますよね。でも、安心してください。この記事では、信託受益権の評価明細書の役割から具体的な書き方、注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読めば、きっとスムーズに書類作成を進められるはずです。

信託受益権の評価明細書ってどんな書類?

まずは、この書類がどういうもので、なぜ必要なのかという基本から押さえていきましょう。相続手続きの全体像が見えると、落ち着いて取り組めますよ。

信託受益権とは?

信託受益権とは、とても簡単に言うと「信託された財産から生まれる利益を受け取る権利」のことです。例えば、お父さんが持っていたアパートを信託会社に信託した場合、そのアパート(信託財産)から入ってくる家賃収入などを受け取る権利が信託受益権にあたります。この権利は、不動産や現金、株式などと同じように、相続や贈与の対象となる財産の一つなんです。

なぜ評価明細書が必要なの?

信託受益権も財産の一つですから、相続や贈与があったときには、その価値(評価額)を計算して、相続税贈与税を納めなければなりません。その際、「この信託受益権は、これだけの価値がありますよ」という計算の根拠を税務署にきちんと示すために必要なのが、「信託受益権の評価明細書」です。この明細書を相続税申告書に添付して提出することで、適正な申告であることを証明する役割を果たします。

どこで手に入れる?提出先は?

評価明細書の様式は、国税庁のホームページからダウンロードできます。誰でも無料で手に入れることができるので、まずは一度、実際の様式を見てみるとイメージが湧きやすいかもしれませんね。作成した評価明細書は、相続税申告書と一緒に、亡くなられた方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署へ提出します。

信託受益権の評価方法のキホン

信託受益権の評価額を計算する方法は、実は信託契約の内容によって変わってきます。国税庁が定める「財産評価基本通達」というルールに基づいて評価しますが、ここでは代表的な2つのパターンを見ていきましょう。

元本の受益者と収益の受益者が同じ場合

これは最もシンプルなケースです。信託財産の元本(例えばアパートそのもの)と、そこから生まれる収益(家賃収入)を受け取る人が同じ場合、評価はとても簡単です。この場合、信託されている財産そのものの価額が、そのまま信託受益権の評価額になります。例えば、信託財産である土地の評価額が3,000万円であれば、信託受益権の評価額も3,000万円となります。

元本の受益者と収益の受益者が異なる場合

少し複雑になるのが、元本を受け取る人(元本受益者)と収益を受け取る人(収益受益者)が違うケースです。この場合は、「元本を受け取る権利(元本受益権)」と「収益を受け取る権利(収益受益権)」の価値を別々に計算する必要があります。

  • 収益受益権の評価額:将来にわたって受け取れると予想される利益の合計額を、現在の価値に割り引いて計算します。この計算には、国が定める「基準年利率」や「複利現価率」といった専門的な指標を使います。
  • 元本受益権の評価額:信託財産全体の評価額から、上記で計算した「収益受益権の評価額」を差し引いて求めます。

どちらのパターンに当てはまるかは、信託契約書に記載されているので、必ず確認してくださいね。

受益者のパターン 評価方法
元本と収益の受益者が同じ 信託財産そのものの価額で評価します。
元本と収益の受益者が違う 元本受益権と収益受益権に分けて、それぞれ評価します。

【項目別】信託受益権の評価明細書の書き方

それでは、実際の評価明細書の様式に沿って、具体的な書き方を見ていきましょう。お手元に信託契約書や財産の資料を用意すると、より分かりやすいですよ。

上段部分(基本情報)の書き方

明細書の上段には、評価の対象となる基本的な情報を記入します。

まず、「被相続人氏名」または「贈与者氏名」の欄に、亡くなられた方や財産を贈与した方の名前を書きます。

次に、「信託に関する権利を取得した人」の欄に、財産を相続または贈与された方の名前を記入します。

その下には、「信託契約の内容」として、契約日、委託者(財産を預けた人)、受託者(財産を管理する人)、信託期間などを信託契約書を見ながら正確に転記しましょう。

信託財産の明細の書き方

ここでは、信託されている財産の内容を具体的に記載します。「信託財産の明細」の欄に、財産の種類(土地、建物、現金、上場株式など)、細目、所在場所、数量、そして評価額を一つひとつ記入していきます。

大切なのは、ここに記入する評価額です。それぞれの財産に応じた正しい方法で評価した金額を記載する必要があります。例えば、土地なら路線価方式、上場株式なら相続開始日の終値など、財産ごとに評価ルールが決まっています。

財産の種類 評価方法のポイント
不動産(土地) 路線価方式または倍率方式で評価した価額を記載します。別途「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」の作成が必要です。
上場株式 課税時期(相続開始日)の終値など4つの価額のうち最も低い価額を記載します。別途「上場株式の評価明細書」を作成します。
預貯金 課税時期の預入残高と、既経過利子(源泉税控除後)の合計額を記載します。
貸付信託 元本価額に既経過収益を加算し、源泉所得税相当額と買取割引料を差し引いた価額を記載します。

評価額の計算の書き方

最後に、信託受益権の評価額を計算する欄を記入します。ここは、先ほど「評価方法のキホン」で解説した計算を行う部分です。

「元本の受益者と収益の受益者が同一人の場合」には、「信託財産の価額の合計額」をそのまま「評価額」の欄に転記します。

「元本の受益者と収益の受益者が異なる場合」には、明細書の計算式に沿って、収益受益権と元本受益権の価額をそれぞれ計算し、該当する方の評価額を記入します。

評価明細書を作成するときの3つの注意点

最後に、書類作成で失敗しないための注意点を3つお伝えします。少し気をつけるだけで、ミスを防ぎ、手続きをスムーズに進めることができますよ。

信託契約書の内容を正確に把握する

評価方法の分かれ道となる「受益者が同じか、違うか」は、すべて信託契約書に書かれています。思い込みで判断せず、契約書をしっかりと読み解くことが何よりも重要です。もし内容が複雑で理解が難しい場合は、契約を作成した専門家や、信託会社に問い合わせてみましょう。

信託財産それぞれの評価を間違えない

信託受益権の評価の元となるのは、個々の信託財産の評価額です。特に不動産や非上場株式などは評価方法が非常に専門的で、間違えやすいポイントです。それぞれの財産について、正しいルールに基づいて評価することが、正確な申告の第一歩です。財産の種類によっては、この評価明細書とは別に、土地や株式専用の評価明細書の作成も必要になることを覚えておきましょう。

専門家への相談も検討しよう

「信託契約の内容が複雑」「信託財産に不動産や非上場株式が含まれていて評価が難しい」など、少しでも不安に感じたら、無理にご自身だけで進めようとせず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。費用はかかりますが、正確な評価と申告で、後々の税務調査のリスクを減らしたり、場合によっては納める税金を抑えられたりする可能性もあります。安心して手続きを終えるための、賢い選択肢の一つですよ。

まとめ

今回は、「信託受益権の評価明細書」の書き方について解説しました。ポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 評価明細書は、信託受益権の価値を計算し、相続税申告の際に税務署へ提出するための重要な書類です。
  • 評価方法は、信託契約書に定められた「元本と収益の受益者が同じか、異なるか」によって決まります。
  • 明細書を作成するには、信託契約書の内容を正しく理解し、信託財産一つひとつの価額を正確に評価する必要があります。
  • 評価が複雑な場合や不安な点は、税理士などの専門家に相談することで、安心して手続きを進めることができます。

初めての手続きで戸惑うことも多いかと思いますが、一つひとつ手順を踏んでいけば必ず作成できます。この記事が、あなたの相続手続きの一助となれば幸いです。

参考文献

国税庁 信託受益権の評価明細書

国税庁 No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価

信託受益権の評価明細書の書き方に関するよくある質問

Q.信託受益権の評価明細書とは何ですか?何のために必要ですか?

A.信託受益権の評価明細書は、相続税や贈与税の申告時に、信託受益権の価額を計算し証明するために使用する書類です。信託財産の種類に応じて、財産評価基本通達に基づき適正な価額を算出し、税務署に提出する必要があります。

Q.信託受益権の評価明細書はどこで入手できますか?

A.信託受益権の評価明細書の様式は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。相続税申告書の手引きなどにも含まれていますので、信託財産の種類に応じた書式を選んで使用してください。

Q.信託受益権の評価はどのように行うのですか?

A.評価方法は信託財産の種類によって異なります。例えば、信託財産が土地や建物であれば相続税評価額を基に評価し、上場株式であれば課税時期の終値などを用いて評価します。専門的な知識が必要になる場合も多いです。

Q.「元本受益権」と「収益受益権」の評価方法の違いは何ですか?

A.元本受益権は、信託財産そのものの価額を評価します。一方、収益受益権は、将来受け取る収益の合計額を現在価値に割り引いて評価します。信託契約の内容によって評価方法が異なるため、契約書の確認が重要です。

Q.信託受益権の評価明細書を作成する際に注意すべき点はありますか?

A.信託契約書の内容を正確に理解することが最も重要です。信託財産の種類、受益者の範囲、信託期間、収益の分配方法などを確認し、それに基づいて評価を行う必要があります。特に、不動産が含まれる場合は評価が複雑になるため注意が必要です。

Q.専門家に依頼せず、自分で信託受益権の評価明細書を作成することはできますか?

A.知識があればご自身で作成することも可能です。しかし、信託財産の評価は専門的な知識を要する場合が多く、計算ミスや評価誤りは追徴課税のリスクがあります。不安な場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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