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【間に合わない?】年末に住宅資金贈与を受けて翌年3月に家が完成しない時の対処法

2025-02-05
目次

ご両親や祖父母からマイホームの資金援助を受ける際に、とても心強い制度が「住宅取得等資金贈与の非課税特例」ですよね。でも、年末ぎりぎりの12月31日までに贈与を受けたものの、工事の遅れなどで「翌年3月15日までに住宅が完成しないかもしれない…」と不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この特例はタイミングが非常に重要で、期限を1日でも過ぎると適用できなくなり、多額の贈与税がかかってしまう可能性があります。この記事では、そんな不安を解消するために、住宅の完成が期限に間に合わない場合の具体的な留意点や救済措置、必要な手続きについて、分かりやすく解説していきます。

住宅取得等資金贈与の非課税特例とは?

まず、この制度の基本について簡単におさらいしましょう。「住宅取得等資金贈与の非課税特例」とは、ご両親や祖父母といった直系の親族から、ご自身が住むための家を新築したり、購入したり、リフォームしたりするためのお金をもらったときに使える特別な制度です。この特例を使うと、一定の金額まで贈与税がかからなくなるという、とても大きなメリットがあります。

非課税になる金額はいくら?

非課税になる限度額は、取得する住宅の種類によって変わります。省エネ性能などが高いお家ほど、非課税枠が大きくなるんですよ。具体的には、以下の表のようになっています。

住宅の種類 非課税限度額
省エネ等住宅(※1) 1,000万円
上記以外の住宅 500万円

※1 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上などの要件を満たす住宅のことです。

さらに嬉しいことに、この特例は、もともと贈与税にある基礎控除110万円と併用が可能です。つまり、省エネ等住宅の場合、最大で1,110万円(1,000万円+110万円)まで贈与税がかからずにお金の援助を受けられるんです。

特例を使える人(受贈者)の主な要件

この特例は誰でも使えるわけではなく、お金をもらう側(受贈者)にもいくつかの条件があります。主なものを確認しておきましょう。

  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
  • お金をくれる人(贈与者)が、自分の親や祖父母など直系尊属であること。(配偶者の親や祖父母からの贈与は対象外です)
  • 原則として、日本国内に住所があること。

対象となる住宅の主な要件

贈与されたお金で購入する住宅にも、以下のような条件が定められています。

  • 日本国内にある住宅であること。
  • 登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
  • 床面積の2分の1以上が、もらった本人の居住用であること。

原則は「贈与の翌年3月15日」が期限

この特例で最も注意したいのが「期限」です。原則として、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、いくつかのことを完了させる必要があります。この期限をしっかり守ることが、特例適用の大前提となります。

贈与資金を全額使い切ること

まず、贈与されたお金は、翌年3月15日までに住宅の取得などのために全額使い切る必要があります。もしお金が余ってしまった場合、その余った分は特例の対象外となり、贈与税の課税対象になる可能性があるので注意してくださいね。

住宅を取得し、入居すること

そして最も重要なのが、翌年3月15日までにその住宅の取得を完了し、実際に住み始める(入居する)ことです。例えば、2023年12月31日に贈与を受けたとすると、2024年3月15日までに家の引渡しを受け、引越しを済ませて生活をスタートさせるのが原則的なルールとなります。

【本題】翌年3月15日までに完成・入居が間に合わない場合

「工事が遅れていて、どうしても3月15日までに完成しそうにない…」そんな時でも、諦めるのはまだ早いです。実は、一定の条件を満たせば、期限が延長される救済措置が用意されています。ただし、住宅の種類によって条件が異なるので、ご自身のケースを確認してみてください。

新築(注文住宅など)の場合:「棟上げ」が完了していればOK

ご自身で土地を買って家を建てる注文住宅などの場合、建物が完全に完成していなくても、贈与を受けた年の翌年3月15日までに「棟上げ(むねあげ)」が終わっていれば、「取得したもの」として認められます。「棟上げ」とは、建物の骨組みが完成し、屋根の一番高い場所に「棟木(むなぎ)」と呼ばれる木材が取り付けられた状態のことです。この状態になっていれば、ひとまず取得の要件はクリアしたことになります。

分譲・中古住宅の場合:「引渡し」が必須

一方で、分譲マンションや建売住宅、中古住宅を購入する場合は注意が必要です。これらの場合は「棟上げ」のような中間的な基準はなく、翌年3月15日までに鍵の受け取りや登記などを含む「引渡し」が完了している必要があります。工事の遅延などで引渡しが3月16日以降になってしまうと、残念ながらこの特例は使えなくなってしまいます。

入居が3月15日を過ぎる場合:翌年12月31日が最終期限

家の取得は3月15日までに間に合ったけれど、仕事の都合などで引越しが少し遅れてしまう、というケースもあるでしょう。その場合、入居の期限は贈与を受けた年の翌年12月31日まで延長されます。つまり、2023年中に贈与を受けたら、2024年12月31日までに入居すればセーフということです。ただし、この救済措置を使うには、贈与税の申告時に「遅滞なく入居することが確実である」と証明する書類を提出する必要があります。

間に合わない場合の具体的な手続きと注意点

救済措置を使う場合、贈与税の申告手続きで追加の対応が必要になります。また、万が一、最終期限にも間に合わなかった場合のリスクについても知っておくことが大切です。

申告時に追加で必要になる書類

贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。この期間内に、通常の申告書類に加えて、状況に応じた書類を添付して提出します。

状況 必要になる書類の例
新築で完成が間に合わない場合 3月15日までに棟上げが完了したことを証明する書類(工事の請負契約書や、建築業者からの証明書など)
入居が間に合わない場合 遅滞なく(翌年12月31日まで)入居することが確実と見込まれることを証明する書類(売買契約書に記載された引渡予定日など)

最終期限(翌年12月31日)までに入居できなかったら…

もし、救済措置を使って申告したものの、結局その年の12月31日までに入居できなかった場合は、残念ながら特例の適用が取り消されてしまいます。その場合、特例がなかったものとして贈与税を再計算し、税務署に修正申告を行って、本来納めるべきだった贈与税と、延滞税などを追加で支払わなければなりません。せっかくの非課税メリットがなくなってしまうので、スケジュール管理は非常に重要です。

年末の住宅資金贈与に関するよくある質問

最後に、この特例を利用する際によくある疑問点や注意点をまとめました。

住民票だけ先に移せば認められますか?

残念ながら、住民票を移すだけでは「入居した」とは認められません。税務署は、電気やガスの使用状況などから、実際に生活の拠点として住んでいるかという「実態」で判断します。書類上の手続きだけでなく、実際にその家で生活を始めることが必要です。

災害などで工事が遅れた場合はどうなりますか?

大規模な自然災害や、新型コロナウイルス感染症のような社会的な影響で、どうしても工事が遅れてしまうこともありますよね。そうした「災害に基因するやむを得ない事情」と認められる場合は、取得や入居の期限がさらに1年間延長されることがあります。ご自身の状況が該当するかどうかは、税務署や税理士に確認してみましょう。

年末ぎりぎりの贈与は避けた方がいいですか?

ここまで見てきたように、この特例は期限が厳格です。建築工事は天候など不測の事態で遅れることも少なくありません。そのため、12月31日など年末ぎりぎりのタイミングで贈与を受けるのは、リスクが高いと言えます。できるだけ余裕を持ったスケジュールを立て、住宅の完成や引渡しの目途が立ってから贈与を受けることをお勧めします。

まとめ

12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受けたけれど、翌年3月15日までに住宅が完成しない場合でも、救済措置があることがお分かりいただけたかと思います。

  • 原則は、贈与の翌年3月15日までに住宅を取得し、入居することが必要です。
  • 新築の場合は「棟上げ」が完了していれば、取得の期限はクリアできます。
  • 入居が遅れる場合でも、贈与の翌年12月31日までに入居すれば特例を使えます。
  • ただし、これらの救済措置を使うには、申告時に追加の書類が必要です。
  • 最終期限を過ぎてしまうと特例は使えず、修正申告と納税が必要になります。

住宅取得等資金贈与の非課税特例は、うまく活用すれば非常にメリットの大きい制度ですが、期限管理を誤ると大きな負担につながりかねません。スケジュールに不安がある方や、手続きに迷うことがある方は、お早めに税理士などの専門家にご相談くださいね。

参考文献

国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

国税庁 No.4507 住宅取得等資金で取得した家屋に居住できないとき(相続時精算課税)

国税庁 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし

住宅資金贈与で家が未完成?特例適用のためのQ&Aまとめ

Q. 12月31日までに贈与を受けましたが、翌年3月15日までに住宅が完成しません。非課税特例は受けられますか?

A. はい、一定の要件を満たせば受けられます。翌年3月15日までに、住宅が未完成であることを証明する書類などを添付して贈与税の申告を行えば、特例の適用が可能です。

Q. 住宅が未完成の場合、贈与税の申告はいつまでに必要ですか?

A. 通常通り、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に申告が必要です。住宅が完成していなくても、この期間内に手続きを行う必要があります。

Q. 申告時に必要な特別な書類は何ですか?

A. 通常の申告書類に加え、工事請負業者などが発行する「遅延等証明書」や、棟上げまで工事が進んでいることを証明する「上棟(じょうとう)の確認ができる書類」などが必要になります。

Q. 「上棟(じょうとう)」とは具体的にどの状態ですか?

A. 戸建ての場合は屋根の骨組みである「棟木」が取り付けられた状態、マンションの場合はその住戸の床や壁、天井の工事が完了した状態を指します。

Q. 最終的にいつまでに住宅が完成し、入居すればよいですか?

A. 贈与を受けた年の翌年12月31日までに完成し、入居する必要があります。この期限に間に合わないと特例が受けられなくなるため注意が必要です。

Q. もし期限までに申告や手続きを忘れた場合はどうなりますか?

A. 住宅取得等資金の贈与の非課税特例が受けられなくなり、贈与税の課税対象となります。期限内に正しい手続きを行うことが非常に重要です。

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