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なぜ手続きが違う?固定資産税と償却資産税の申告方法の謎を解説

2025-10-07
目次

「うちの会社にも固定資産税の通知書が届いたな」と中身を確認すると、土地と建物についての税額だけ。一方で、経理担当者からは「償却資産税の申告準備をしないと…」という声が聞こえてくる。同じ固定資産税なのに、なぜ土地や建物は市役所から通知が来るだけで、機械や備品はわざわざ会社で申告しないといけないのでしょうか?このブログでは、そんな素朴な疑問に分かりやすくお答えしていきます。

そもそも固定資産税と償却資産税って何が違うの?

まず、基本からおさらいしましょう。固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している「土地」「家屋」「償却資産」という3種類の固定資産に対してかかる税金です。つまり、償却資産にかかる税金も、実は固定資産税の一部なのです。ただ、手続きが大きく異なるため、実務上は土地・家屋にかかるものを「固定資産税」、償却資産にかかるものを「償却資産税」と呼び分けているんですね。

固定資産税の対象になるもの(土地・家屋)

こちらはイメージしやすいかもしれません。いわゆる不動産が対象です。

土地 田、畑、宅地、山林、原野など
家屋 住宅、店舗、工場、倉庫など、屋根と壁があって土地に定着している建物

これらの資産は、法務局にある登記簿に所有者や所在地などの情報が記録されているのが大きな特徴です。

償却資産税の対象になるもの

償却資産とは、土地と家屋以外の事業用資産で、税務会計(法人税や所得税の計算)で減価償却の対象となるものを指します。会社や個人事業主が事業のために使っている、パソコンや機械などがこれにあたります。

構築物 舗装路面、門、塀、看板(広告塔)、駐車場の設備など
機械及び装置 工場の製造設備、クレーンなどの建設機械、太陽光発電設備など
船舶・航空機 ボート、漁船、飛行機、ヘリコプターなど
車両及び運搬具 フォークリフトなど(自動車税の対象外のもの)
工具、器具及び備品 パソコン、コピー機、机、椅子、エアコン、陳列ケースなど

これらの資産は、会社の会計帳簿や固定資産台帳には記録されていますが、土地や家屋のような公的な登記制度はありません。

償却資産税の対象にならないもの

すべての事業用資産が対象になるわけではありません。次のような資産は、償却資産税の申告対象から除外されます。

自動車税・軽自動車税の対象 事業で使っている乗用車やトラックなど
無形固定資産 ソフトウェア、特許権、営業権など
少額の減価償却資産 取得価額が10万円未満で、税務会計上、一括で経費(損金)にした資産
取得価額が20万円未満で、税務会計上、3年間で均等に償却(一括償却)している資産

<要注意!30万円未満の資産の特例>
中小企業者等が使える「取得価額30万円未満の資産を一括で損金にできる特例」を適用した資産は、法人税法上は経費になりますが、固定資産税(償却資産)の上では申告対象となります。これは間違いやすいポイントなので、特に注意してくださいね。

なぜ?手続きが違う根本的な理由

さて、ここからが本題です。なぜ土地・家屋と償却資産で手続きが違うのか。その答えはとてもシンプルで、「市区町村がその資産の存在を把握できるか、できないか」という点に尽きます。

土地・家屋は市区町村が把握できるから

土地や家屋は、不動産登記制度によって、誰がどこにどんなものを所有しているかが法務局に記録されています。市区町村はこの登記情報を確認できるため、わざわざ所有者が申告しなくても、「この土地と家屋はAさんのものだから、Aさんに固定資産税を課税しよう」と判断できるのです。
また、土地や家屋は動かすことができないため、市の職員などが現地を調査して評価額を計算することも比較的簡単です。このように、役所側で税額を計算して納税者に通知する方式を「賦課課税方式」といいます。

償却資産は市区町村が把握できないから

一方で、償却資産はどうでしょうか。企業が新しくパソコンを10台買った、古い機械を1台捨てた、といった情報を市区町村がリアルタイムですべて把握するのは、現実的に不可能です。償却資産には登記のような公的な登録制度がなく、種類も膨大で、日々増えたり減ったりしているからです。
そこで、「資産を持っている納税者自身が、その内容を市区町村に申告してください」という方式が取られています。これを「申告納税方式」といいます。納税者からの申告があって初めて、市区町村は課税対象となる資産を把握し、税額を計算できるというわけです。これが、手続きが異なる最大の理由なのです。

固定資産税(土地・家屋)の課税の流れ

土地・家屋の固定資産税は、納税者から見ると非常にシンプルです。

  1. 市区町村が登記情報や現地調査をもとに資産を評価し、税額を決定します。
  2. 毎年4月~6月頃に、市区町村から納税通知書が送られてきます。
  3. 納税者は、通知書に記載された税額と納期限に従って、年4回(または一括)で納税します。

基本的に、納税者は通知を待って支払うだけで手続きは完了です。

償却資産税の課税の流れ

償却資産税は、納税者側のアクションから始まります。

  1. 納税者は、毎年1月1日時点で所有している償却資産をすべてリストアップします。
  2. 資産の種類、取得年月、取得価額などを記載した「償却資産申告書」を作成します。
  3. 毎年1月31日までに、資産が所在する市区町村へ申告書を提出します。
  4. 市区町村は、提出された申告書をもとに評価額と税額を計算します。
  5. 納税通知書が送付され、それに基づいて納税します。

この申告を忘れたり、内容を誤ったりすると、後から不足分の税金や延滞金が課されることがあるので、毎年忘れずに行うことがとても大切です。

注意!家屋と償却資産の区分で二重課税のリスクも

実務で意外と難しいのが、「これは家屋?それとも償却資産?」という判断です。例えば、自社ビルに後から取り付けた空調設備や、テナントとして入居している店舗の内装工事などは、償却資産として申告する必要があります。
もし、市区町村が家屋の一部として評価している設備を、誤って償却資産としても申告してしまうと、固定資産税と償却資産税の二重課税になってしまう恐れがあります。逆に、申告すべきものをしなければ申告漏れとなります。判断に迷う資産がある場合は、事前に市区町村の資産税課などに問い合わせて確認するのが確実です。

まとめ

固定資産税と償却資産税の手続きの違いは、市区町村が資産を「把握できるか、できないか」というシンプルな理由から生まれています。

  • 土地・家屋:登記情報があり、市区町村が把握できるため、賦課課税方式(通知を待つだけ)が採用されている。
  • 償却資産:登記などがなく、市区町村が把握できないため、申告納税方式(納税者が申告する)が採用されている。

償却資産の申告は、事業を行っている法人や個人事業主にとって毎年必要な大切な義務です。申告漏れや間違いがないよう、この記事を参考にしっかりと準備を進めてくださいね。

参考文献

固定資産税と償却資産税の申告に関するよくある質問

Q.なぜ土地や家屋は市町村が評価し、事業用の機械などは自分で申告するのですか?

A.土地や家屋は登記情報などで市町村が把握しやすいため、市町村が評価します。一方、事業用の機械(償却資産)は種類や数が多く、市町村がすべてを把握するのが困難なため、所有者である納税者が申告する制度になっています。

Q.償却資産税の対象になる資産とは具体的に何ですか?

A.会社や個人事業主が事業のために使用する、土地や家屋以外の有形固定資産です。例えば、パソコン、コピー機、工場の機械、店舗の看板、エアコン(建物と一体でないもの)などが対象になります。

Q.もし償却資産の申告を忘れたり、間違えたりしたらどうなりますか?

A.正しい申告が行われなかった場合、過去にさかのぼって税金が課されることがあります。また、延滞金が加算される場合や、正当な理由なく申告しなかった場合には過料が科される可能性もあります。

Q.固定資産税と償却資産税は別の税金ですか?

A.償却資産税は、固定資産税の一部です。固定資産税は、土地、家屋、そして償却資産の3つを対象としており、これらを合算した評価額に基づいて税額が計算されます。

Q.償却資産の申告はいつまでに行う必要がありますか?

A.毎年1月1日時点での資産状況を、その年の1月31日までに資産が所在する市町村へ申告する必要があります。

Q.取得価格が10万円未満の資産も申告対象になりますか?

A.法人税や所得税の計算で損金または必要経費に算入した資産(少額減価償却資産など)は、原則として償却資産の申告対象にはなりません。ただし、個別の資産が償却資産に該当するかどうかは、税務上の処理方法によって異なります。

事務所概要
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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。