経費の支払いをクレジットカードで済ませることは多いですよね。でも、お店でもらうクレジットカードの売上票だけでは、インボイス制度の要件を満たせず、仕入税額控除が受けられないことをご存じでしょうか。この記事では、クレジットカードの売上票がなぜインボイスとしてNGなのか、不足しがちな項目や正しい対応方法について、わかりやすく解説していきます。
クレジットカードの売上票がインボイスとして認められない理由
お店でクレジットカード決済をしたときに渡される売上票(お客様控え)は、実はそのままでは適格請求書(インボイス)として使うことができません。なぜ経理処理でNGとなってしまうのか、その具体的な理由を見ていきましょう。
インボイスの必須要件を満たしていない
インボイスとして認められるためには、消費税法で定められた具体的な項目がすべて記載されている必要があります。しかし、一般的なクレジットカードの売上票には、税率ごとに区分した消費税額や、お店の登録番号が書かれていないことがほとんどです。そのため、法的に必要な情報が足りず、証拠書類として不十分になってしまいます。
| インボイスに必要な主な項目 | 売上票によくある記載状況 |
|---|---|
| 適格請求書発行事業者の登録番号 | 記載されていないことが多い |
| 税率ごとに区分した消費税額 | 合計金額のみで詳細がない |
発行元が取引先ではなくカード会社である
もう一つの理由は、売上票を発行しているのが商品を買ったお店ではなく、決済システムを提供しているクレジットカード会社だということです。消費税法のルールでは、インボイスは商品やサービスを直接提供した事業者が発行しなければならないと決まっています。そのため、カード会社が発行した書類では要件をクリアできないのです。
領収書の代わりにはならない決済の仕組み
クレジットカード決済は、その場でお金のやり取りをするのではなく、カード会社が一時的に代金を立て替える「信用取引」という仕組みです。つまり、お店側はその場で現金を受け取っていないため、正式な領収書を発行する義務がありません。売上票はあくまで「カードを使いました」という記録にすぎず、税務上の領収書やインボイスの代わりにはならない点に注意が必要です。
インボイス要件を満たすために不足しがちな具体的な項目
それでは、クレジットカードの売上票をインボイスとして使おうとした場合、具体的にどのような項目が足りないのでしょうか。経理の現場でよく問題になる不足項目を3つピックアップして解説します。
登録番号と適用税率の記載漏れ
インボイス制度でもっとも重要なのが、発行事業者が国税庁から割り当てられた「T」から始まる13桁の登録番号です。売上票にはこの番号が印字されていないケースが大半です。また、購入した商品に8%と10%のどちらの税率が適用されているかを示す適用税率の記載も抜け落ちがちです。この2つがないだけで、仕入税額控除の対象外となってしまいます。
取引内容や軽減税率の対象である旨の欠如
何を購入したのかという詳細な取引内容も、売上票では省略されて「お品代」などとまとめられたり、そもそも印字されなかったりします。さらに、飲食料品などの軽減税率(8%)対象品目を買った場合には、「これは軽減税率の対象です」という目印が必要ですが、売上票ではそこまで詳細に印字されない仕組みになっていることが多いです。
税率ごとに区分した消費税額の未記載
お買い物の合計金額が書かれていても、8%対象商品の消費税額はいくらで、10%対象商品の消費税額はいくらなのか、それぞれ分けて計算された税率ごとの消費税額の記載が必要です。売上票の多くは税込の総合計しか表示されないため、この点でもインボイスの要件を満たすことができません。
クレジットカード決済でインボイス対応する際の注意点
クレジットカードでお支払いをする際に、インボイス制度にしっかり対応するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。後から「経費として認められない」と慌てないための注意点をお伝えします。
決済時に必ずレシートや領収書を受け取る
カード決済をしたときは、売上票だけでなく、お店が発行する詳細なレシートまたは領収書を必ず一緒に受け取るようにしましょう。レシートには、商品名や登録番号、税率ごとの消費税額などが細かく印字されているため、簡易インボイス(適格簡易請求書)として十分に使うことができます。お店の方に「レシートもください」とひとこと伝えることが大切です。
| 受け取るべき書類 | 役割 |
|---|---|
| お店が発行するレシート | インボイス(適格簡易請求書)として保管 |
| クレジットカード売上票 | カード決済の控え(インボイスにはならない) |
カード利用明細書はインボイスにならない
毎月カード会社から送られてくる、あるいはウェブで確認するクレジットカード利用明細書もインボイスにはなりません。明細書はカード会社が請求額をお知らせするためのものであり、お店ごとの登録番号や消費税の詳細が書かれていないからです。明細書があるからレシートは捨ててしまおう、というのは大変危険ですので、必ずお店でもらったレシートを保管してください。
法人カード決済時の二重計上に気をつける
事業用の法人カードを使っている場合、お店でもらったレシートと、後から届くカード会社の利用明細書の両方が手元に残ります。経理処理をするときに、両方を別々の経費として入力してしまうと、同じ支払いを2回登録する二重計上のミスにつながります。必ず「レシートを基準に帳簿をつける」などのルールを決めておきましょう。
売上票や領収書がなくても仕入税額控除ができる例外ケース
原則としてインボイスの保存が必要ですが、実は特定の条件を満たせば、領収書やレシートをもらわなくても、帳簿への記入だけで仕入税額控除が認められる例外のルールがあります。どのようなケースが該当するのか見ていきましょう。
税込1万円未満の少額特例対象取引
基準期間(2期前)の課税売上高が1億円以下、または特定期間(前年上半期など)の課税売上高が5,000万円以下の事業者の場合、税込1万円未満のお買い物であればインボイスがなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる「少額特例」が使えます。この特例は2023年10月1日から2029年9月30日までの期間限定の措置となっています。
| 少額特例の適用条件 | 詳細内容 |
|---|---|
| 対象となる金額 | 1回の取引が税込1万円未満 |
| 適用される期間 | 2029年9月30日まで |
3万円未満の公共交通機関などの特例
電車やバス、船舶などの公共交通機関に乗ったときの運賃で、3万円未満のものについては、インボイスをもらうのが難しいため、例外として帳簿への記載のみで認められます。また、自動販売機で飲み物を買った場合や、ポストに投函する郵便切手代なども、インボイスの保存義務が免除されています。帳簿には「公共交通機関特例」などの記載を忘れずに行いましょう。
ETCを利用した高速道路料金の処理方法
高速道路でETCカードを使った場合、料金所では領収書をもらえません。この場合は、クレジットカードの利用明細書と一緒に、ウェブ上の「ETC利用照会サービス」からダウンロードできる利用証明書を保存することでインボイスの要件を満たすことができます。利用証明書は1回ごとの発行ではなく、クレジットカードの明細と照合できる状態にしておけば問題ありません。
インボイス制度下での正しい経理処理のステップ
ここまで解説してきた内容を踏まえて、クレジットカードで経費を支払ったあとに、どのように経理処理を進めていけばよいのか、具体的なステップに分けて確認していきましょう。
受け取った書類がインボイス要件を満たすか確認する
まずは、お店から受け取ったレシートや領収書に、必要な情報がすべて書かれているかをチェックします。「T」から始まる13桁の登録番号はあるか、取引年月日や取引内容が書かれているか、税率ごとに分けた消費税額が記載されているかを確認してください。もし売上票しかもらえなかった場合は、早めにお店に連絡してレシートを発行してもらう必要があります。
会計ソフトを利用した正確な仕訳と保存
要件を満たしたレシートが確認できたら、会計ソフトに入力していきます。クレジットカード払いの場合は、支払った日と実際に口座からお金が引き落とされる日が違うため、まずは「未払金」として処理し、引き落とし日に預金と相殺する仕訳を行うのが一般的です。ソフトの機能を活用して、税率ごとの金額を正確に入力しましょう。
7年間の書類保存義務を守る
受け取ったインボイス(レシートや領収書)は、申告が終わったからといってすぐに捨ててはいけません。税法のルールでは、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から数えて最大7年間の保存が義務付けられています。月ごとやクレジットカードの明細ごとにまとめて、後から見返せるようにきれいに整理して保管しておきましょう。
まとめ
クレジットカードでお買い物をした際にもらう売上票は、登録番号や税率ごとの消費税額などの記載がないため、インボイスの要件を満たしません。毎月のカード利用明細書も同様です。経費として正しく処理し、仕入税額控除を受けるためには、決済時に必ずお店から詳細が記載されたレシートや領収書を受け取ることが重要です。また、税込1万円未満の少額特例など、帳簿への記載だけで済む例外ルールも上手に活用しながら、日々の経理業務を正確に進めていきましょう。
参考文献
国税庁:適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要
国税庁:No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方
クレジットカード売上票とインボイス要件のよくある質問まとめ
Q.クレジットカードの売上票はインボイスの代わりになりますか?
A.いいえ、売上票には登録番号や税率ごとの消費税額が記載されていないため、インボイスの代わりにはなりません。必ずレシートを受け取ってください。
Q.カード会社から送られてくる利用明細書は保存すれば大丈夫ですか?
A.利用明細書はカード会社が発行したものであり、商品を販売したお店が発行した書類ではないため、インボイスとして認められません。
Q.クレジットカード決済をした時に領収書をもらえなかった場合はどうすればいいですか?
A.売上票だけでなく、必ず購入したお店でインボイス要件を満たしたレシートや領収書を発行してもらうように依頼してください。
Q.税込1万円未満の少額な買い物でも必ずインボイスが必要ですか?
A.基準期間の課税売上高が1億円以下などの条件を満たせば、2029年9月30日までは税込1万円未満の取引はインボイス不要で帳簿のみで処理できます。
Q.ETCカードを利用した高速道路の料金はどのように処理すればよいですか?
A.クレジットカードの利用明細書と合わせて、ウェブ上の「ETC利用照会サービス」からダウンロードできる利用証明書を保存することで対応可能です。
Q.クレジットカード払いのレシートはどれくらいの期間保存する必要がありますか?
A.受け取ったインボイス(レシートや領収書)は、その課税期間の申告期限の翌日から最大7年間の保存が義務付けられています。