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スマホのパスワードが不明?デジタル遺品の相続手続きを徹底解説!

2025-11-19
目次

ご家族が亡くなられた後、故人のスマートフォンやパソコンを開こうとしたら「パスワードが分からなくてログインできない…」と困った経験はありませんか?現代では、ネット銀行の口座やSNS、写真データなど、大切な財産や思い出がデジタルデータとして残されていることが当たり前になりました。これらをデジタル遺品と呼びますが、その相続手続きは従来の財産とは少し勝手が違い、トラブルの原因になることも少なくありません。この記事では、デジタル遺品の相続で困らないために、その種類や具体的な手続き方法、そして今からできる生前対策まで、わかりやすくご紹介しますね。

デジタル遺品とは?相続の対象になるの?

まず、「デジタル遺品」が一体どういうもので、相続財産としてどう扱われるのかを知っておくことが大切です。法律で明確に定義されているわけではありませんが、一般的には故人が残したデジタルデータやインターネット上の権利などを指し、大きく2種類に分けられます。

オフラインのデジタル遺品

オフラインのデジタル遺品とは、パソコンやスマートフォン、USBメモリといった機器本体に保存されているデータのことです。インターネットに接続していなくても見ることができるもの、と考えると分かりやすいかもしれません。具体的には、写真や動画、作成した文書ファイル、連絡先リストなどがこれにあたります。これらのデータ自体に所有権があるわけではありませんが、データが保存されているパソコンやスマートフォンといった「モノ」の所有権を相続人が引き継ぐことで、中のデータも事実上引き継ぐことになります。

オンラインのデジタル遺品

オンラインのデジタル遺品は、インターネットを介して利用するサービス上のデータや権利を指します。こちらはオフラインのものより少し複雑です。例えば、ネット銀行の預金やネット証券の株式、SNSのアカウント、クラウドサービスに保存したデータ、ブログなどが含まれます。これらの多くは、故人とサービス提供会社との間の「契約」に基づいているため、相続手続きを進めるには、それぞれの会社の規約に従って手続きを行う必要があります。

相続できるもの・できないもの

デジタル遺品がすべて相続できるわけではない、という点が重要なポイントです。財産的な価値があるものは基本的に相続の対象となりますが、SNSアカウントのように故人の人格と強く結びついた「一身専属権」とみなされるものは、原則として相続できません。利用規約で「アカウントの譲渡・相続は認めない」と定められているケースがほとんどです。

デジタル遺品の種類 相続の可否
ネット銀行の預金、ネット証券の有価証券 可能(通常の預貯金などと同じく相続財産です)
暗号資産(仮想通貨) 可能(財産的価値があり、相続財産とみなされます)
電子マネーの残高 サービス提供会社の規約による(相続できる場合とできない場合があります)
ポイント、マイル サービス提供会社の規約による(多くは相続不可とされています)
SNSアカウント(Facebook, X, Instagramなど) 原則不可(アカウントの引き継ぎはできず、追悼アカウントへの変更や削除手続きが中心です)
有料コンテンツ(音楽、電子書籍など) 原則不可(購入した本人に利用権があるだけで、権利そのものは相続できません)

相続人がまずやるべきこと|デジタル遺品の探し方

故人がどんなデジタル遺品を持っていたのか、ご家族でも全てを把握しているケースは稀です。相続手続きを進めるためには、まずどんなデジタルサービスを利用していたのかを突き止める必要があります。やみくもに探すのではなく、効率的に手がかりを見つけましょう。

パソコンやスマートフォンの確認

最も重要な情報源は、故人が使っていたパソコンやスマートフォンです。まずはパスワードが解除できるか試してみましょう。故人が使いそうな誕生日や記念日、ペットの名前などを試したり、パスワードをメモした紙が机の引き出しなどにないか探したりしてみてください。どうしても解除できない場合は、専門業者に依頼する方法もありますが、数十万円以上の費用がかかることもあります。ロックを解除できたら、ブラウザのブックマークやアプリ一覧を確認し、利用していたサービスをリストアップしていきましょう。

紙の書類からの手がかり

デジタル遺品といっても、手がかりはアナログな場所に残っていることも多いです。故人宛ての郵便物や、机の中に保管されているファイルを確認しましょう。特に以下の書類は要チェックです。

  • クレジットカードの利用明細書:月額課金されているサービス(サブスクリプション)などが見つかります。
  • 銀行の預金通帳や取引明細:定期的な引き落としから、契約サービスが判明することがあります。
  • 確定申告の書類:ネット関連の事業収入や投資の記録が残っている可能性があります。
  • 金融機関からの年次報告書:ネット証券などに口座があると、年に一度書類が郵送されることがあります。

Eメールの受信ボックスを確認する

もしパソコンやスマートフォンにログインできたら、メールの受信ボックスは情報の宝庫です。オンラインサービスに登録すると、通常は確認メールが届きます。「登録完了」「ご注文ありがとうございます」「請求のお知らせ」といったキーワードでメールボックス内を検索してみましょう。これにより、ご家族が知らなかった多くの契約サービスを発見できる可能性があります。

種類別|デジタル遺品の具体的な相続手続き

利用していたサービスが特定できたら、次はそれぞれの手続きを進めていきます。サービスごとに手続き方法が異なるので、一つひとつ丁寧に対応しましょう。

ネット銀行・ネット証券

これらは相続財産そのものですので、必ず手続きが必要です。まずは各金融機関のカスタマーサポートに連絡し、口座名義人が亡くなったことを伝えます。その後、通常の銀行と同じように、戸籍謄本や印鑑証明書といった必要書類を提出して、預金の払い戻しや口座の解約、名義変更の手続きを行います。手続き方法は各社のウェブサイトに詳しく記載されていることが多いので、確認しながら進めましょう。

SNSアカウント(X, Facebook, Instagramなど)

先ほどお伝えした通り、SNSアカウント自体を相続して利用し続けることは基本的にできません。ご家族ができるのは、主にアカウントの削除か、追悼アカウントへの移行です。例えばFacebookには、故人のアカウントを追悼の場として残せる「追悼アカウント」という機能があります。手続きには、死亡診断書などの故人が亡くなったことを証明する書類の提出を求められることが一般的です。

サブスクリプションサービス

動画配信サービスや音楽配信サービスなどのサブスクリプション契約は、放置すると毎月料金が課金され続けてしまいます。クレジットカードの明細などから契約サービスを特定し、できるだけ早く解約手続きを行いましょう。各サービスのウェブサイトにログインして解約するか、ログイン情報が不明な場合はサポートセンターに連絡して事情を説明し、解約を依頼します。

ポイントやマイル、電子マネー

航空会社のマイルや各種ポイント、電子マネーの残高は、相続できるかどうかは各社の規約次第です。例えば、一部の航空会社ではマイルの相続を認めていますが、多くのポイントサービスでは会員の死亡により失効すると定められています。電子マネーも同様で、払い戻しに応じてもらえるケースと、失効してしまうケースがあります。これも一つずつ規約を確認し、対応する必要があります。

デジタル遺品の相続で注意すべきトラブル

デジタル遺品の相続では、特有のトラブルが起こりがちです。事前に知っておくことで、問題を未然に防ぎましょう。

パスワードが分からず財産が見つからない

最も多いのがこのケースです。故人がネット銀行に多額の預金を持っていたのに、家族が誰もその存在を知らず、パスワードも不明だったため、遺産分割協議から漏れてしまうことがあります。後から財産が見つかると、遺産分割協議をやり直したり、相続税の修正申告が必要になったりと、非常に手間がかかってしまいます。

故人のプライバシーの問題

故人のパソコンやスマートフォンの中には、日記やメール、写真など、非常にプライベートな情報が含まれていることがあります。ご家族としては見たくなかった情報に触れてしまい、精神的なショックを受ける可能性もゼロではありません。どこまでの情報を誰が見るのか、ご家族間で事前に話し合っておくことも大切かもしれません。

有料サービスの自動課金

サブスクリプションサービスの解約漏れも深刻な問題です。クレジットカードを解約しただけでは、サービスの契約自体は残っているため、未払い金として請求が続いてしまうことがあります。必ずサービス提供元との契約そのものを解約するようにしましょう。

トラブルを防ぐための生前対策「デジタル終活」

ここまで読んでいただくと、残された家族がどれだけ大変な思いをするか、想像できたのではないでしょうか。一番の対策は、ご本人が元気なうちに「デジタル終活」を進めておくことです。

ID・パスワードのリスト化

利用しているサービス名、ID、パスワード、秘密の質問などを一覧にしておくことが最も効果的です。エンディングノートに書き留めたり、パスワード管理アプリを利用したりする方法があります。ただし、その情報をどこに保管しているのかを、信頼できるご家族の誰か一人には伝えておくようにしてください。保管場所が分からなければ意味がありませんからね。

不要なアカウントの整理

もう何年も使っていないサービスや、読まなくなったメールマガジンなどは、時間のある時に整理・解約しておきましょう。情報がシンプルになるほど、残されたご家族の負担は軽くなります。これを機に、ご自身のデジタル環境を見直してみるのも良いかもしれません。

家族への情報共有

全てのパスワードを教える必要はありませんが、「ネット銀行は〇〇銀行を使っている」「大事なデータは△△というクラウドに保存している」といった情報だけでも、ご家族に伝えておくと、いざという時の大きな手がかりになります。遺言書にデジタル遺産の情報を記載しておくのも有効な方法の一つです。

まとめ

デジタル遺品の相続手続きは、これからの時代、誰にとっても避けては通れない問題です。パスワードが分からないだけで大切な財産が見つけられなくなったり、不要な支払いが続いてしまったりと、様々なリスクが潜んでいます。まずは故人がどんなサービスを使っていたかを根気強く調べ、一つひとつ丁寧に対応していくことが大切です。そして何より、ご自身が残す家族のために、元気なうちからデジタル終活を少しずつ始めておくことを強くお勧めします。大切な思い出も財産も、きちんと次の世代に引き継いでいきたいものですね。

デジタル遺品の相続手続きのよくある質問まとめ

Q.デジタル遺品とは具体的にどのようなものですか?

A.パソコンやスマートフォン内のデータ、SNSアカウント、ネット銀行の口座、暗号資産など、故人がデジタル形式で所有していた財産や情報の総称です。

Q.デジタル遺品を放置すると、どのような問題がありますか?

A.ネット銀行の預金などの財産が見つけられない、有料サービスの料金が引き落とされ続ける、SNSアカウントが乗っ取られるなどのリスクがあります。

Q.デジタル遺品の相続手続きは何から始めればよいですか?

A.まず、故人が利用していたサービスを特定するため、パソコンやスマートフォンのロック解除を試み、メールや契約書類などを確認することから始めます。

Q.故人のスマホやPCのパスワードがわからない場合はどうすればよいですか?

A.ご自身で何度も試すとデータが消去される危険があるため、データ復旧などの専門業者に相談することをおすすめします。

Q.故人のSNSアカウントはどうすればよいですか?

A.各サービスの規約に従い、追悼アカウントへの移行やアカウント削除の手続きを行います。手続きには死亡証明書などが必要になることが一般的です。

Q.ネット銀行の預金や暗号資産も相続税の対象になりますか?

A.はい。金銭的価値のあるデジタル遺品はプラスの財産として相続税の課税対象となりますので、正確に把握し申告する必要があります。

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税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。