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タイの相続財産、手続き完全ガイド!知らないと損する注意点

2025-05-25
目次

ご家族がタイに財産を残して亡くなられた場合、「タイの相続手続きってどう進めたらいいの?」「日本の法律とどう違うの?」と不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。タイでの相続は、日本の手続きとは異なる点がいくつもあり、少し複雑に感じられることもあります。でも、ご安心ください。この記事では、タイに相続財産がある場合の具体的な手続きの流れ、日本とのルールの違い、そして気になる税金の問題まで、一つひとつ丁寧に、わかりやすく解説していきます。

タイの相続、まず知っておきたい基本ルール

タイでの相続手続きを進める前に、まずは日本との違いや基本的なルールを知っておくことがとても大切です。特に「どの国の法律が適用されるのか」という点と、「誰が相続人になるのか」という点は、日本の常識とは異なる部分があるので、しっかり押さえておきましょう。

準拠法は?日本とタイ、どっちの法律が適用される?

国際的な相続で最初に問題になるのが、どの国の法律に基づいて手続きを進めるかという「準拠法」の問題です。被相続人(亡くなった方)が日本人だからといって、必ずしも日本の法律が適用されるわけではありません。タイの法律では、財産の種類によって適用される法律が異なります。

財産の種類 適用される法律(準拠法)
不動産(土地、コンドミニアムなど) 不動産がある場所の法律(つまりタイの法律
動産(預貯金、株式、自動車など) 被相続人が亡くなった時の住所地の法律

例えば、日本に住んでいる日本人の方がタイのコンドミニアムと預金を残して亡くなった場合、コンドミニアムの相続はタイの法律、預金の相続は日本の法律に従うのが原則です。しかし、実務上はタイの銀行などがタイの法律に基づいた手続きを求めてくることがほとんどなので、タイにある財産についてはタイの法律が関わってくると考えておくとスムーズです。

日本とは違う!タイの法定相続人の範囲と順位

遺言書がない場合、法律で定められた相続人(法定相続人)が財産を相続します。この法定相続人の範囲と順位が、日本とタイでは大きく異なります。特にタイでは、相続人の範囲が広いのが特徴です。

順位 タイの法定相続人
常に相続人 配偶者
第1順位 子、孫などの直系卑属
第2順位 父母
第3順位 父母を同じくする兄弟姉妹
第4順位 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹
第5順位 祖父母
第6順位 おじ・おば

日本の相続では、子が相続する場合、親は相続人になりませんよね。しかし、タイでは第1順位の「子」と第2順位の「父母」が同時に相続人になることができるという大きな違いがあります。この点はトラブルになりやすいので、ぜひ覚えておいてください。

遺言がない場合の相続分

配偶者の相続分は、他にどの順位の相続人がいるかによって変わってきます。遺言がない場合の主なケースを見てみましょう。

相続人の組み合わせ 配偶者の相続分
配偶者と子(第1順位)がいる場合 子と同じ割合で均等に分ける
配偶者と父母(第2順位)または兄弟姉妹(第3順位)がいる場合 2分の1
配偶者と祖父母(第5順位)やおじ・おば(第6順位)がいる場合 3分の2
配偶者のみで他の相続人がいない場合 すべて

このように、誰が相続人になるかによって受け取れる割合が変わるため、まずは相続人を正確に確定させることが重要になります。

タイでの相続手続きの具体的な流れ

タイの相続手続きは、日本のように相続人が直接銀行や法務局(土地局)で手続きをするのが難しいのが現状です。一般的には、タイの裁判所を通じて「遺産管理人」を選任し、その遺産管理人がすべての手続きを代行します。ここでは、その具体的な流れを解説します。

ステップ1:遺産管理人の選任申立て

タイの相続手続きにおける最初の、そして最も重要なステップが「遺産管理人」の選任です。タイの銀行や土地局は、外国人相続人による直接の手続きを認めないことがほとんどで、「裁判所が選任した遺産管理人を通して手続きしてください」と要求されます。
遺産管理人とは、亡くなった方の財産を管理し、相続人に引き渡すための手続きを行う権限を裁判所から与えられた人のことです。通常、タイ現地の弁護士に依頼し、その弁護士を遺産管理人の候補者として裁判所に申し立てるのが一般的です。
この申立てから裁判所の決定が出るまで、平均して4ヶ月から6ヶ月ほどの期間がかかります。

ステップ2:必要書類の準備と認証

遺産管理人の選任申立てや、その後の名義変更手続きには、多くの書類が必要になります。日本の役所で取得した書類は、そのままではタイで使えません。

主な必要書類

  • 被相続人の死亡を証明する書類(死亡登録証、除籍謄本など)
  • 相続人全員の身分証明書(パスポートのコピーなど)
  • 被相続人と相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本など)
  • 相続関係説明図
  • 遺産管理人選任に関する相続人全員の同意書
  • 財産を証明する書類(コンドミニアムの権利証書、預金通帳のコピーなど)

これらの日本語の書類は、まずタイ語に翻訳する必要があります。さらに、書類の信頼性を証明するために、日本の公証役場で「公証」を受け、その後、在日タイ大使館(または領事館)で「領事認証」という手続きを経る必要があります。この翻訳と認証の手続きにも時間と費用がかかることを覚えておきましょう。

ステップ3:財産ごとの名義変更手続き

無事に遺産管理人が選任されたら、いよいよ具体的な財産の名義変更手続きに進みます。これらの手続きはすべて遺産管理人が行います。

【不動産(コンドミニアムなど)の場合】
遺産管理人が管轄の土地局に出向き、名義を被相続人から相続人へ変更する登記手続きを行います。手続き自体は通常1〜2日で完了します。

【銀行預金の場合】
遺産管理人が銀行の支店で、被相続人名義の口座を解約します。解約された預金は、一度遺産管理人名義の口座に入金され、そこから日本の相続人の口座へ国際送金されるのが一般的です。この手続きには、通常1週間から3週間ほどかかります。

タイの相続税と日本の相続税

タイに財産があると、税金も気になりますよね。タイの相続税と日本の相続税、両方について考えなければならない可能性があります。しかし、二重で課税されないための仕組みもありますので、ご安心ください。

タイの相続税の基本

タイにも相続税はありますが、日本に比べて基礎控除額が非常に大きいのが特徴です。相続財産の価額が1億バーツ(約4.2億円)までは相続税がかかりません。これを超える部分に対して課税されます。

項目 内容
基礎控除額 1億バーツ
税率 ・父母や子・孫など直系尊属・卑属:5%
・それ以外の人:10%
申告・納税期限 相続開始を知った日から150日以内

多くのケースでは、この大きな控除額のおかげでタイでの相続税は発生しないことが多いです。

日本の相続税の課税対象

日本の居住者である相続人が財産を受け取る場合、たとえその財産がタイにあっても、原則として日本の相続税の課税対象となります。つまり、日本国内の財産とタイの財産をすべて合計した金額に対して、日本の相続税が計算されます。

ただし、被相続人(亡くなった方)と相続人の両方が長期間(過去10年以内)日本に住んでいないなどの特定の条件を満たす場合は、日本国内の財産のみが課税対象となることもあります。詳しい要件は国税庁のウェブサイトで確認するか、専門家に相談することをおすすめします。

二重課税を避けるための外国税額控除

「タイと日本の両方で相続税を払うの?」と心配になるかもしれませんが、国際的な二重課税を避けるための「外国税額控除」という制度があります。これは、もしタイで相続税を支払った場合に、その支払った税額を日本の相続税額から差し引くことができる制度です。これにより、同じ財産に対して二重に税金がかかるという事態を避けることができます。

タイ相続で注意すべきポイントとトラブル回避策

タイでの相続手続きは、文化や法律の違いから、予期せぬトラブルが発生することもあります。事前に注意点を知っておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。

時間と費用がかかることを覚悟する

これまで見てきたように、タイの相続手続きは裁判所での遺産管理人選任から始まるため、日本での手続きよりも時間と費用が多くかかります。遺産管理人の選任だけで半年、すべての手続きが終わるまでには1年以上かかるケースも珍しくありません。また、タイの弁護士への報酬、書類の翻訳・認証費用、裁判所への手数料など、まとまった費用が必要になることも念頭に置いておきましょう。

遺言書の作成が最善の対策

こうした複雑な手続きや相続人間のトラブルを避けるために最も有効なのが、生前に遺言書を作成しておくことです。遺言書があれば、法定相続のルールとは関係なく、誰にどの財産を渡すかを明確に指定できます。これにより、遺産管理人の選任手続きがスムーズになったり、相続人間の話し合い(遺産分割協議)が不要になったりするメリットがあります。タイにある財産については、タイの法律で有効な形式の遺言書を作成しておくことが、残されたご家族にとって何よりの安心材料になります。

まとめ

タイに相続財産がある場合の手続きについて解説してきましたが、ポイントを最後にもう一度おさらいしましょう。

  • タイの相続ルールは日本と異なり、特に法定相続人の範囲が広い点に注意が必要です。
  • 手続きにはタイの裁判所を通じた「遺産管理人」の選任が事実上必須で、時間と費用がかかります。
  • タイの相続税は控除額が1億バーツと大きいですが、日本の相続税ではタイの財産も課税対象になる可能性があります。
  • 手続きをスムーズに進め、トラブルを避けるためには、生前の遺言書作成が最も有効な対策です。

国際相続は専門的な知識が必要となるため、一人で抱え込まずに、タイの法律に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげる一助となれば幸いです。

参考文献

国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき

タイの相続に関するよくある質問まとめ

Q. タイの相続手続きは、日本の相続人が自分で行うことはできますか?

A. 法律上は可能ですが、実務上は非常に困難です。タイの銀行や土地局は、タイ語での手続きや複雑な書類を要求し、多くの場合、裁判所が選任した「遺産管理人」でなければ手続きを受け付けません。そのため、タイ現地の弁護士に依頼して遺産管理人になってもらうのが一般的です。

Q. 遺産管理人は誰がなるのですか?

A. 資格は特にありませんが、タイの法律や手続きに精通している必要があります。相続人が日本人である場合、言語や地理的な問題から現実的ではありません。通常は、手続きを依頼したタイの弁護士や、その法律事務所のスタッフが遺産管理人になることが多いです。

Q. タイの相続手続きには、どれくらいの期間がかかりますか?

A. ケースバイケースですが、手続きの第一段階である裁判所での遺産管理人選任だけで平均4ヶ月から6ヶ月かかります。すべての財産の名義変更が完了するまでには、全体で1年以上かかることも珍しくありません。早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q. タイの相続税は必ずかかりますか?

A. いいえ、必ずかかるわけではありません。タイの相続税には1億バーツ(約4.2億円)という大きな基礎控除があるため、相続財産の総額がこの金額を超えなければ相続税はかかりません。多くの場合は非課税となります。

Q. タイ人の配偶者がいる場合の相続はどうなりますか?

A. タイの法律では、配偶者は常に相続人となります。他に子や父母などの相続人がいる場合、その組み合わせによって配偶者の相続分が変わります。例えば、子がいる場合は子と同じ割合で財産を分け合います。日本とはルールが異なるため注意が必要です。

Q. 日本で作成した遺言書はタイで有効ですか?

A. 日本の法律で有効に作成された遺言書は、タイでも有効と認められる可能性があります。ただし、タイの財産に関する手続きをスムーズに進めるためには、タイの法律の要件を満たした遺言書を別途作成しておくか、日本の遺言書をタイ語に翻訳し、認証手続きを経ておくことが望ましいです。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

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