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トラブル回避!やってはいけない実家の相続と賢い対策5選

2025-03-11
目次

実家を相続する、というのは多くの方にとって初めての経験ですよね。大切なご家族が残してくれた財産だからこそ、後悔のないように、そして家族間で揉め事が起きないように進めたいものです。しかし、知識がないまま進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことも。この記事では、実家を相続する際に「やってはいけないこと」と、将来のために今からできる対策について、分かりやすく解説していきますね。

やってはいけない実家の相続!後悔につながる5つのNG行動

相続は、ただ財産を受け継ぐだけではありません。特に不動産である実家は、高額な資産であると同時に、管理の責任や税金の負担も伴います。安易な判断が、後々大きなトラブルや金銭的な負担につながることも少なくありません。ここでは、特に注意したい5つのNG行動をご紹介します。

活用方法を決めずに「とりあえず相続」する

「長男だから」「なんとなく」といった理由で、実家の活用方法を具体的に決めずに相続してしまうのは最も避けたいケースです。誰も住まない実家は、あっという間に空き家になってしまいます。空き家になると、次のようなリスクが発生します。

  • 固定資産税・都市計画税の負担: 誰も住んでいなくても、所有しているだけで毎年税金がかかります。
  • 管理の手間と費用: 定期的な清掃や庭の手入れ、修繕など、維持管理には時間もお金もかかります。
  • 資産価値の低下: 管理が行き届かない家は急速に劣化し、いざ売却しようとしても価値が下がってしまいます。
  • 特定空き家への指定: 倒壊の危険などがあると自治体から「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。さらに、改善命令に従わない場合は50万円以下の過料が科されることもあります。

誰が住むのか、貸すのか、売却するのか。相続する前に、家族でしっかりと話し合っておくことが大切です。

兄弟姉妹で「共有名義」にする

兄弟姉妹で平等に分けるため、実家を共有名義で相続するのは一見公平に見えますが、将来的なトラブルの火種になりやすいです。共有名義には、以下のようなデメリットがあります。

  • 売却や活用に全員の同意が必要: 実家を売却したり、賃貸に出したり、大規模なリフォームをしたりする際に、共有者全員の同意が必要になります。一人でも反対すると、何も進められなくなってしまいます。
  • 相続が重なると権利関係が複雑化: 共有者の一人が亡くなると、その人の相続人が新たに共有者となり、どんどん権利関係が複雑になります。会ったこともない親戚と不動産を共有する事態にもなりかねません。

遺産分割協議でしっかりと話し合い、代表者一人が相続する「代償分割(代表者が他の相続人にお金を支払う方法)」や、売却して現金を分ける「換価分割」などを検討しましょう。

相続登記をしないまま放置する

「手続きが面倒」「費用がかかる」といった理由で、亡くなった方の名義のままにしておくのは絶対にやめましょう。2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

  • 義務化による罰則: 不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となります。
  • 売却や担保設定ができない: 登記上の所有者でなければ、不動産を売却したり、ローンを組む際の担保にしたりすることはできません。
  • 権利関係の複雑化: 前述の共有名義と同様に、時間が経つほど相続人が増え、手続きが困難になります。

相続が発生したら、速やかに法務局で名義変更(相続登記)の手続きを行いましょう。

節税対策を考えずにすぐに売却する

「早く現金化したい」という気持ちは分かりますが、相続後すぐに実家を売却すると、使えるはずの税金の特例が使えなくなり、損をしてしまう可能性があります。特に注意したいのが「小規模宅地等の特例」です。

  • 小規模宅地等の特例とは: 亡くなった方が住んでいた土地などを相続した場合、一定の要件を満たすと、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。これにより、相続税が大幅に軽減されます。
  • 適用の条件: この特例を受けるためには、原則として相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)まで、その不動産を所有し続ける必要があります。

申告期限前に売却してしまうと、この特例が使えなくなり、高額な相続税を納めることになるかもしれません。どの特例が使えるか、いつ売却するのがベストか、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

無計画に建物を解体する

古い実家は解体して更地にした方が売れやすい、と考える方もいるかもしれませんが、これも注意が必要です。

  • 固定資産税の増加: 土地の上に住宅が建っていると、「住宅用地の特例」により固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。しかし、建物を解体して更地にしてしまうと、この特例が適用されなくなり、翌年から固定資産税が最大6倍に跳ね上がってしまいます。
  • 解体費用: 建物の解体には、木造住宅でも100万円~200万円程度の費用がかかります。

売却先が決まっていないのに先に解体してしまうと、売れるまでの間、高い固定資産税を払い続けることになります。解体は、売却の目処が立ってから、または購入者の意向を確認してから行うのが賢明です。

相続した実家、どうするのがベスト?3つの活用方法

では、相続した実家は具体的にどうすればよいのでしょうか。主に3つの選択肢が考えられます。それぞれのメリット・デメリットを理解して、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

自分で住む、または家族が住む

もしご自身やご家族が住むのであれば、それが一番シンプルで分かりやすい活用方法かもしれません。

  • メリット: 新たに家を購入したり借りたりする必要がなく、住居費を抑えられます。思い出の詰まった家で暮らし続けられるという精神的なメリットも大きいでしょう。
  • デメリット: 通勤・通学が不便になったり、ライフスタイルに合わなかったりする可能性があります。また、家の老朽化が進んでいる場合は、高額なリフォーム費用(数百万円~1,000万円以上)がかかることも覚悟しなければなりません。

賃貸に出して家賃収入を得る

実家を賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得るという方法です。不動産を資産として活用できます。

  • メリット: 安定した家賃収入が継続的に入ってくるため、固定資産税などの維持費を賄い、プラスの収益を生む可能性があります。
  • デメリット: 立地や建物の状態によっては、借り手が見つからないリスクがあります。また、入居者トラブルへの対応や、修繕費用の発生など、大家としての責任と手間がかかります。リフォーム費用も初期投資として必要になることが多いです。

売却して現金化する

誰も住む予定がなく、賃貸経営も難しい場合は、売却して現金化するのが最も現実的な選択肢です。

  • メリット: 維持管理の手間や固定資産税の負担から解放されます。売却で得た現金を、他の相続人と公平に分けることもできます(換価分割)。
  • デメリット: 思い出の詰まった家を手放すことになります。また、売却で利益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。売却方法には、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。
売却方法 メリットとデメリット
仲介 メリット: 市場価格に近い、比較的高値で売れる可能性がある。
デメリット: 売れるまでに時間がかかる(平均3ヶ月~半年)、売れない可能性もある。
買取 メリット: すぐに現金化できる、現状のままで買い取ってもらえることが多い。
デメリット: 仲介に比べて売却価格が安くなる傾向がある(市場価格の7~8割程度)。

将来の相続に備える!親が元気なうちにできる4つの対策

相続トラブルを防ぐためには、親御さんが元気なうちに家族で話し合い、準備を進めておくことが何よりも重要です。将来の「やってはいけない相続」を避けるために、今からできる対策をご紹介します。

遺言書を作成してもらう

誰にどの財産を相続させるか、親の意思を明確に残してもらうのが遺言書です。遺言書があれば、相続人全員で行う遺産分割協議が不要になり、「誰が実家を相続するか」で揉めるのを防げます。法的に有効な遺言書(公正証書遺言など)を作成してもらうよう、お願いしてみましょう。

生前贈与を検討する

親が元気なうちに財産を譲り受けるのが生前贈与です。相続財産そのものを減らすことができるため、相続税対策として有効です。

  • 暦年贈与: 1年間(1月1日~12月31日)に110万円までの贈与であれば、贈与税がかかりません。
  • 相続時精算課税制度: 2,500万円まで贈与税が非課税になりますが、相続時にその贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算する制度です。

ただし、制度が複雑なため、税理士などの専門家への相談が不可欠です。

家族で将来について話し合っておく

最も基本的で、最も大切なことです。親が実家を将来どうしたいのか、子供たちは実家をどうしたいのか、お互いの気持ちや考えを共有しておくことで、いざ相続が起きたときの話し合いがスムーズに進みます。実家の価値、維持費、誰が管理できるのかなど、現実的な問題についても話し合っておきましょう。

相続放棄も選択肢の一つとして知っておく

もし、実家などのプラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄をすると、すべての財産の相続権を失いますが、借金を背負うこともなくなります。相続放棄は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。選択肢の一つとして、頭の片隅に置いておきましょう。

まとめ

今回は、「やってはいけない実家の相続」をテーマに、具体的なNG行動と、その対策についてお話ししました。大切なのは、活用方法を決めずに安易に相続しないこと、そして親が元気なうちに家族でしっかり話し合っておくことです。実家の相続は、法律や税金が絡む複雑な問題です。分からないことや不安なことがあれば、一人で抱え込まずに、司法書士や税理士といった専門家に相談することも検討してくださいね。この記事が、皆さんの円満な実家相続の一助となれば幸いです。

参考文献

国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

国税庁:No.4208 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

実家の相続でやってはいけないこと|よくある質問まとめ

Q.実家の相続登記をしないとどうなりますか?

A.2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。また、売却等ができず、次の相続で権利関係が複雑になるリスクもあります。

Q.実家を相続したくない場合、どうすればいいですか?

A.相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行います。ただし、預貯金など他の財産も全て相続できなくなるため注意が必要です。

Q.兄弟で実家を相続する場合、もめないためのポイントは?

A.遺産分割協議を行い、誰がどのように相続するかを書面(遺産分割協議書)に残すことが重要です。代償分割、換価分割、共有分割などの方法から、全員が納得できる方法を選びましょう。

Q.空き家になった実家を放置するリスクは何ですか?

A.建物の倒壊リスクや犯罪の温床になるだけでなく、「特定空家」に指定されると固定資産税が最大6倍になる可能性があります。

Q.相続した実家を売却する場合、税金はかかりますか?

A.売却して利益が出た場合、所得税と住民税がかかります。ただし、「空き家の3,000万円特別控除」など、税負担を軽減できる特例が利用できる場合があります。

Q.実家の相続で、遺言書がない場合はどうなりますか?

A.法律で定められた相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分けることも可能です。

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