暗号資産(仮想通貨)への投資で利益が出た方や、長期保有で資産価値が大きく増えた方の中には、「財産債務調書」という書類を税務署に提出しなければならないケースがあります。所得税の確定申告とは別に、ご自身の保有する財産を報告する大切な手続きです。今回は、ビットコインなどの暗号資産を財産債務調書にどう記載すればよいのか、提出義務の要件や具体的な計算方法について分かりやすく解説していきます。
財産債務調書とは?提出が必要な人の具体的な要件
財産債務調書とは、基準以上の所得や財産を持っている方が、年末時点での財産や債務の状況を税務署に報告するための書類です。
提出が義務付けられる基準と金額要件
提出義務があるかどうかは、その年の所得と保有財産の金額によって決まります。以下の表にある両方の条件を満たした方が対象となります。
| 条件名 | 具体的な金額・要件 |
|---|---|
| 所得の要件 | その年の総所得金額等の合計額が2,000万円を超えること |
| 財産の要件 | 12月31日時点で、財産の合計額が3億円以上、または国外転出特例対象財産が1億円以上あること |
令和5年分以降の改正ポイント
税制改正により、令和5年分(2023年分)以降の財産債務調書からは提出要件が拡大されました。所得が2,000万円以下であっても、12月31日時点で保有する財産の合計額が10億円以上ある方は、新たに提出義務者となります。高額な暗号資産を保有している方は、所得が少なくても対象になる可能性があるため注意が必要です。
提出期限と対象となる財産の種類
財産債務調書の提出期限は、令和4年分までは翌年の3月15日でしたが、令和5年分以降は翌年の6月30日までに変更されました。対象となる財産には、現金や預貯金、不動産、株式などの有価証券のほか、ビットコインなどの暗号資産も含まれます。
暗号資産(仮想通貨)の財産債務調書への記載方法
暗号資産はどのように書類へ記入すればよいのでしょうか。具体的な記載ルールを見ていきましょう。
暗号資産は「その他の財産」として記載する
財産債務調書には財産の種類を区分して記載する欄がありますが、暗号資産は現金や有価証券の区分には当てはまりません。区分の欄では「その他の財産」として分類し、さらに細かな種類として「暗号資産」と記載することになります。
記載すべき具体的な項目
暗号資産を記載する際は、単に合計額を書くだけではなく、銘柄や用途ごとに分けて記載する必要があります。
| 記載項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 種類別 | ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)など銘柄ごとに記載 |
| 用途別 | 一般用、事業用などに分けて記載 |
| 所在別 | 財産を保有している方自身の住所を記載(取引所の所在地ではありません) |
活発な市場がある場合の時価の算定方法
財産の価額は、原則として12月31日時点の時価を記載します。ビットコインなどのように暗号資産交換業者で頻繁に取引されている銘柄であれば、ご自身が利用している取引所が公表している12月31日時点の取引価格(売却価格)を時価として計算してください。
時価の算定が困難な暗号資産の見積価額
まだ上場したばかりのマイナーな暗号資産や、企業が独自に発行した暗号資産など、活発な取引市場が存在しない場合は「見積価額」を算定して記載します。国税庁が示している合理的な計算方法をご紹介します。
売買実例価額をもとにした算定方法
まずは、12月31日時点での実際の売買事例の価格がないかを確認します。もし12月31日ちょうどに売買の実例がない場合は、年内で最も12月31日に近い日の適正な売買実例価額を採用して見積価額とします。
翌年に売却した場合の売却価額の利用
年末時点での売買実例価額も分からない場合は、年明け以降の取引価格を参考にします。具体的には、その年の翌年1月1日から財産債務調書の提出期限(翌年6月30日)までの間に、ご自身がその暗号資産を実際に売却したときの売却価額を記載することができます。
取得価額をそのまま記載するケース
年末の売買実例もなく、翌年に売却もしていない場合はどうすればよいのでしょうか。その場合は最終的な手段として、その暗号資産を取得したときの「取得価額(購入した時の価格)」をそのまま見積価額として記載して問題ありません。
国外の取引所を利用している場合の注意点
暗号資産の取引では、海外の取引所を利用している方も多くいらっしゃいます。その際の記載の取り扱いについて整理しておきましょう。
暗号資産の所在地の判定基準
財産債務調書には財産の「所在」を記載しますが、暗号資産の場合、利用している取引所の所在地は関係ありません。暗号資産の所在は「その財産を保有している方の住所」となります。つまり、日本にお住まいの方であれば、海外の取引所に預けていても国内にある財産として扱われます。
国外財産調書との違いと記載のルール
似た制度に、国外の財産が5,000万円を超える場合に提出する「国外財産調書」があります。しかし、前述の通り暗号資産は国内財産として扱われるため、海外の取引所にある暗号資産であっても国外財産調書に記載する必要はありません。すべて財産債務調書の対象として計算と記載を行ってください。
財産債務調書を提出しなかった場合のペナルティ
もし財産債務調書の提出を忘れたり、内容に誤りがあったりした場合には、税金面でのペナルティが用意されています。
未提出や記載漏れによる加算税の加重措置
提出期限までに財産債務調書を提出しなかったり、暗号資産の記載を漏らしてしまったりした場合に、後から税務調査などで所得税や相続税の申告漏れが発覚すると重いペナルティが課されます。本来支払うべき過少申告加算税や無申告加算税などの税率に、さらに5%が上乗せされる加重措置が適用されてしまいます。
期限内提出による加算税の軽減措置
逆に、期限内に正しく財産債務調書を提出し、暗号資産の記載も適切に行っていた場合はメリットがあります。万が一、後になって所得の計算間違いなどで申告漏れが発覚した場合でも、過少申告加算税などの税率が5%軽減されるという優遇措置が受けられます。正しく提出しておくことで、いざという時のリスクを減らすことができます。
まとめ
ビットコインをはじめとする暗号資産は、一定の所得や財産の基準を超えた場合、財産債務調書への記載が必要です。とくに、令和5年分以降は所得にかかわらず財産が10億円以上ある方も対象となるため、資産の評価額には十分注意してください。記載する際は「その他の財産」として分類し、年末時点での時価や合理的な見積価額を計算して、期限までに税務署へ提出するように心がけましょう。
参考文献
暗号資産と財産債務調書に関するよくある質問まとめ
Q. 暗号資産(仮想通貨)は財産債務調書に記載する必要がありますか?
A. はい、所得額や保有財産額が一定の要件を満たし財産債務調書を提出する場合、保有する暗号資産の価額も記載する必要があります。
Q. 財産債務調書の提出義務の基準はいくらですか?
A. 所得2,000万円超かつ財産3億円以上(または国外転出特例対象財産1億円以上)の方、もしくは所得に関わらず財産が10億円以上ある方が対象です。
Q. 暗号資産の価額はいつの時点のものを記載しますか?
A. 原則として、その年の12月31日時点での時価(取引所の取引価格など)を記載します。
Q. 海外の取引所に預けている暗号資産は国外財産調書に書くのですか?
A. いいえ、暗号資産の所在は保有者の住所で判定されるため、海外の取引所にあっても国内財産として財産債務調書に記載します。
Q. 時価がわからない暗号資産はどう計算すればよいですか?
A. 年末に近い日の売買実例価額や、翌年の売却価額、もしくは取得価額などを用いて合理的に算定した見積価額を記載します。
Q. 提出しなかった場合ペナルティはありますか?
A. 未提出や記載漏れがあり、後から申告漏れが発覚した場合、加算税が通常よりも5%重くなる加重措置があります。