食品ロスを減らすために、売れ残ってしまった食品や規格外の食品をフードバンクへ寄付しようとお考えの方もいらっしゃると思います。そのときに気になるのが「寄付した食品の費用は経費として計上できるのか」ということですよね。実は、しっかりとした手順を踏めば、寄付した食品の仕入代金や製造原価を全額費用計上することが可能です。今回は、フードバンクへの食品寄付で費用計上するための条件や具体的な手続きについて、わかりやすくお話ししていきますね。
フードバンクへの食品寄付と費用計上の関係
費用計上は全額できるの?
フードバンクへ食品を寄付した場合、通常は寄附金という扱いになります。しかし、寄附金には税務上で経費(損金)にできる金額に上限があります。たとえば資本金が1,000万円で所得が500万円の企業の場合、経費にできる寄附金の上限額は約37,500円です。もし10万円分の食品を寄付しても、基本的には全額を経費にすることはできません。ですが、国が定めたルールをきちんと守って提供した場合は、上限に関係なく10万円全額を広告宣伝費や廃棄損などとして費用計上することができます。
寄附金扱いと全額経費扱いの違い
通常の寄附金として処理するのと、全額経費として処理するのでは、税金面で大きな違いが出てきます。以下の表に違いをまとめました。
| 項目 | 取り扱いの違い |
|---|---|
| 通常の寄附金扱い | 経費にできる上限額が決まっているため、超えた分は税金の計算上、経費にならず税負担が増える |
| 要件を満たした場合 | 寄付した食品の帳簿価額(仕入値など)が全額経費として認められ、節税につながる |
このように、ルールを満たして全額経費として処理できれば、税金面でも大きなメリットがあります。無駄に税金を払うことなく、社会貢献に取り組むことができるのです。
どのような目的でこの制度があるのか
国としても、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、いわゆる食品ロスを減らしたいという強い思いがあります。そのため、企業が廃棄するのではなく、生活に困っている方々へ無償で届けるフードバンク活動を支援するために、税務上の負担が少なくなるような取り扱いを認めています。社会のためになる行動が、企業にとっても負担にならないように配慮されているのですね。
全額経費として費用計上するための具体的な3つの条件
転売を防ぐための合意書を交わす
全額を費用計上するためのもっとも重要な条件が、寄付した食品が転売されない仕組みを作ることです。具体的には、フードバンク団体との間で「提供した食品を第三者に販売したり、本来の目的以外に使用したりしないこと」を約束する合意書や確認書を取り交わす必要があります。この書類がないと、ただの寄附金とみなされてしまう可能性がありますので、必ず書面で残しておきましょう。
情報の記録と保存を徹底する
寄付を行った際は、いつ、どのような食品を、どれだけ提供したのかをしっかりと記録し、保存しておくことが求められます。たとえば、令和5年10月1日に、仕入値が1個500円のレトルトカレーを200個提供した場合、合計10万円の帳簿価額になります。このような提供年月日、品名、数量、金額を一覧表などにしておき、合意書と一緒に保管してくださいね。
フードバンク側での適正な管理がされていること
寄付を受け取るフードバンク団体側も、提供された食品をどのように配ったのかを管理し、その記録を保存している必要があります。そのため、きちんとした活動実績があり、管理体制が整っている団体を選ぶことが大切です。信頼できる団体にお渡しすることで、税務調査の際にも自信を持って説明することができますよ。
会計処理と具体的な仕訳のやり方
寄付をしたときの仕訳の基本
実際に寄付をしたときの帳簿の付け方についてご説明します。要件を満たした場合は、寄付した食品の帳簿価額(仕入値や製造原価)を全額経費として処理します。勘定科目は、企業のルールに合わせて「広告宣伝費」や「見本品費」「廃棄損」などを使うことができます。大切なのは、原価のまま処理することであり、販売価格で売上を立てるわけではないという点です。
仕入値が10万円の食品を寄付したときの例
たとえば、仕入値が10万円分の食品をフードバンクに寄付した場合の仕訳は以下のようになります。
| 借方(左側) | 貸方(右側) |
|---|---|
| 広告宣伝費 100,000円 | 商品(棚卸資産) 100,000円 |
このように処理をすることで、通常の販売とは区別しつつ、しっかりと経費として10万円をマイナスすることができます。
個人事業主の場合の必要経費について
ここまでは法人のケースを中心にお話ししましたが、個人事業主の方でも基本的な考え方は同じです。事業で販売するために仕入れた食品をフードバンクに寄付する場合、同じように転売防止の合意書などを取り交わしていれば、その仕入金額を事業の必要経費として計上することができます。個人の場合も、寄付金控除などの複雑な計算をすることなく、全額を経費にできるのは嬉しいポイントですね。
フードバンクへ食品を寄付する企業のメリット
廃棄にかかる費用の削減
食品を廃棄するためには、ごみ処理業者に依頼するなどのお金がかかります。たとえば、1トンの食品を廃棄するのに数万円の処理費用がかかることも珍しくありません。しかし、フードバンクに寄付をすれば、この廃棄費用をまるまる削減することができます。もちろん運搬費用などはかかる場合がありますが、総合的に見るとコストカットにつながることが多いのです。
社会貢献と企業イメージの向上
フードバンクへの寄付は、困窮している方々を助ける素晴らしい活動です。この活動に参加していることをホームページやSNSで発信することで、企業の社会的責任(CSR)を果たしていると評価され、企業イメージの向上につながります。お客様からの信頼も厚くなり、結果として会社のファンを増やすことにも結びつきますよ。
従業員のモチベーションアップ
自分たちが心を込めて作った食品や販売している食品が、捨てられるのではなく誰かの役に立っているということは、従業員にとっても大きな喜びになります。「社会の役に立つ仕事をしている」という誇りを持つことができれば、働く意欲も高まりますよね。社内の雰囲気も良くなり、会社全体が明るい方向へ進んでいくきっかけにもなります。
気をつけるべき税務上の注意点
消費税の取り扱いはどうなる?
費用計上する際に気になるのが消費税です。事業者が商品を無償で提供した場合、通常は消費税の計算上「売上」として扱われることはありません。フードバンクへの提供は「無償による譲渡」となり、消費税の課税対象外となるのが一般的です。ただし、個人事業主が自家消費したような場合には特別な計算が必要になることもあるため、不安な場合は専門家に相談して正確な処理を行うようにしてくださいね。
寄付する食品の品質と安全性
費用計上できるからといって、どんな食品でも良いわけではありません。消費期限が切れているものや、パッケージが破損して中身が傷んでいるなど、安全に食べられないものは寄付の対象外です。受け取る側が安心して食べられる状態であることが大前提ですので、賞味期限まで1か月以上の余裕があるものを提供するなど、品質管理には十分気をつけてください。
税務調査に備えた書類の準備
税務調査が入ったときに「本当に要件を満たしているか」を証明するのは企業側です。そのため、フードバンク団体との合意書、受領書、提供した食品の明細書の3点は、いつでも提出できるようにしっかりとファイリングして保存しておきましょう。この書類が揃っていれば、税務署からの質問にも落ち着いて対応することができますよ。
まとめ
フードバンクへ食品を寄付したときの費用計上についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?「転売しないという合意書を交わす」「記録をしっかり残す」といった条件を満たせば、寄付した食品の帳簿価額を全額経費として計上することができます。廃棄費用を減らせるだけでなく、社会貢献にもつながる素晴らしい取り組みです。ぜひ、ルールを守りながらフードバンクへの寄付を活用し、企業と社会の両方にとってプラスになる活動を進めていってくださいね。
参考文献
フードバンクへの食品寄付と費用計上のよくある質問まとめ
Q. フードバンクに寄付した食品は経費になりますか?
A. はい、転売防止などの合意書を取り交わすことで、食品の仕入値などを全額費用計上することが可能です。
Q. 全額費用計上するための条件は何ですか?
A. フードバンク団体と転売防止や目的外使用禁止の合意書を交わし、提供した食品の種類や金額の記録を保存することが条件です。
Q. 食品を寄付した場合の勘定科目は何を使えばいいですか?
A. 企業のルールに合わせて、広告宣伝費や見本品費、廃棄損などの勘定科目を使って処理することができます。
Q. 個人事業主でも寄付した食品を必要経費にできますか?
A. はい、個人事業主の場合も、法人のときと同じように転売防止などの要件を満たすことで必要経費に計上できます。
Q. 消費期限が切れた食品も寄付して経費にできますか?
A. いいえ、消費期限が切れたものや安全に食べられない食品は寄付の対象外となります。安全性が確保されていることが大前提です。
Q. 寄付をしたときに保存しておくべき書類は何ですか?
A. フードバンク団体と交わした合意書、食品の受領書、提供した食品の数量や金額がわかる明細書を必ず保存しておきましょう。