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マレーシアの相続財産、手続きはどう進める?専門家が徹底解説

2025-05-27
目次

マレーシアに不動産や預金などの財産をお持ちの方が亡くなられた場合、残されたご家族は日本とは異なる相続手続きに戸惑うかもしれません。この記事では、マレーシアに相続財産がある場合の相続手続きの流れや日本との違い、注意点などを分かりやすく解説します。突然のことで慌てないためにも、事前に知識を備えておきましょう。

マレーシアの相続手続き「プロベート」とは?

マレーシアで相続手続きを進めるには、「プロベート(Probate)」という裁判所を通した手続きが必要です。これは、亡くなられた方(被相続人)の財産を法的に清算し、相続人に分配するための手続き全般を指します。日本では相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で進められることが多いですが、マレーシアでは原則として裁判所の関与が必須となる点が大きな違いです。

なぜプロベートが必要なの?

プロベートは、故人の遺産を正当な相続人に確実に引き継がせるために行われます。具体的には、遺言書の有効性を確認したり、遺言書がない場合には法定相続人を確定したりします。また、遺産の管理人を正式に任命し、その管理人が故人の財産(不動産、預金など)や債務をすべて把握・整理し、税金などを支払った上で、最終的に相続人に財産を分配するまでの一連の流れを監督する大切な役割があります。

プロベートにかかる期間と費用

マレーシアのプロベートは、手続きが複雑で時間がかかるのが特徴です。遺言書がある場合でも半年から1年程度、遺言書がない場合は1年以上、時には数年かかることも珍しくありません。費用は、遺産総額や手続きの複雑さによって変動しますが、弁護士費用や裁判所への手数料などが発生します。一般的には、遺産総額の2%程度、最低でもRM8,000(約25万円)程度が目安とされていますが、事案によっては交渉が可能な場合もあります。

日本の相続手続きとの大きな違い

日本とマレーシアの相続手続きの最も大きな違いは、裁判所の関与が必須かどうかという点です。日本では遺産分割協議書に相続人全員が署名・捺印すれば、銀行預金の解約や不動産の名義変更が可能ですが、マレーシアではそれができません。

手続きのポイント マレーシア
裁判所の関与 原則必須(プロベート)
手続き期間 半年~数年
手続き中の財産 原則として凍結
手続きのポイント 日本
裁判所の関与 原則不要(遺産分割協議)
手続き期間 数週間~数ヶ月
手続き中の財産 協議がまとまれば処分可能

この違いから、マレーシアの相続手続きは日本の感覚でいると「時間がかかりすぎる」「すぐに財産を使えない」といった問題に直面しがちです。

マレーシアの相続手続きの具体的な流れ

マレーシアの相続手続き(プロベート)は、大きく分けて5つのステップで進みます。遺言書の有無によって手続きが少し異なりますが、大まかな流れは同じです。一つずつ確認していきましょう。

ステップ1:遺産管理人の任命

まず、故人の財産を管理・清算する「遺産管理人」を裁判所に任命してもらう必要があります。遺言書で遺産管理人が指定されていれば、その人が就任するための申立て(Grant of Probate)を行います。遺言書がない場合は、相続人の代表者などが遺産管理人になるための申立て(Letter of Administration)をします。この申立てには、死亡証明書や相続人であることを証明する書類などが必要です。

ステップ2:相続人の確定

次に、法的に財産を受け取る権利のある「相続人」を確定させます。遺言書があれば、その内容に従います。遺言書がない場合は、マレーシアの相続法(1958年遺産分配法)に基づいて法定相続人とその相続分が決定されます。日本人の方が亡くなった場合、日本の法律が適用されるかマレーシアの法律が適用されるか、国際私法の問題が絡むため非常に複雑になることがあります。

ステップ3:財産・債務の整理

任命された遺産管理人は、故人がマレーシアに所有していた全ての財産(不動産、預金、株式など)と債務(ローンなど)を調査し、リストアップします。銀行や関係各所に問い合わせて、財産の全体像を正確に把握することが重要な任務です。

ステップ4:税金等の納付

財産の整理が終わったら、必要な税金や債務を支払います。マレーシアには相続税や贈与税はありませんが、不動産を売却して利益が出た場合には不動産譲渡益税(RPGT)が課されます。また、株式の名義変更などには印紙税(Stamp Duty)がかかることがあります。これらの支払いをすべて完了させないと、相続人に財産を分配することはできません。

ステップ5:残余財産の分配

すべての債務と税金の支払いが終わった後、残った財産(残余財産)を遺言書または法律の定めに従って相続人に分配します。不動産の名義変更や預金の解約・送金手続きを行い、すべての手続きが完了するとプロベートは終結します。

マレーシアの相続税は本当にゼロ?注意すべき税金

「マレーシアは相続税がない」とよく言われますが、これは事実です。しかし、日本人が関わる相続では注意が必要です。また、相続税以外にも関連する税金が存在しますので、詳しく見ていきましょう。

日本の相続税がかかるケース

マレーシアに相続税がなくても、日本の居住者である相続人が財産を受け取る場合は、原則として日本の相続税の課税対象となります。マレーシアにある財産も日本の財産と合算して相続税を計算し、申告・納税しなければなりません。日本の相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。マレーシアのプロベートは長引くことが多いため、納税資金を別途用意する必要が出てくる可能性が高いことを覚えておきましょう。

日本の相続税が非課税になるための厳しい要件

日本の相続税がかからなくなるのは、非常に限定的なケースです。具体的には、亡くなった方(被相続人)と財産を受け取る相続人の双方が、相続開始前の10年間、日本に住所を持っていないなどの厳しい要件を満たす必要があります。単に被相続人がマレーシアに移住していただけでは、日本の相続税を免れることはできないのです。

要件 詳細
住所要件 被相続人・相続人ともに10年以上日本非居住者であること
国籍要件 相続人が日本国籍の場合、さらに複雑な要件あり
国内財産 日本国内に財産がある場合は、その財産は課税対象

相続税以外にかかる税金

前述の通り、マレーシアには相続税はありませんが、手続きの過程で以下の税金がかかる場合があります。

  • 不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax, RPGT): 相続した不動産を売却して利益が出た場合に課税されます。保有期間に応じて税率が異なります。
  • 印紙税(Stamp Duty): 不動産や株式の名義変更手続きの際に課税されます。

生前にできる対策!遺言書の重要性

複雑で時間のかかるマレーシアの相続手続きをスムーズに進めるためには、生前の対策が非常に重要です。特に「遺言書」の作成は最も有効な手段の一つといえます。

なぜマレーシアで遺言書を作成すべきか

遺言書があれば、遺産管理人の指定や財産の分配方法が明確になるため、裁判所の手続きが大幅に簡素化され、期間も短縮されます。遺言書がない場合、相続人の確定や遺産管理人の選任だけで多くの時間を要し、相続人間でのトラブルに発展する可能性も高まります。マレーシアの財産については、マレーシアの法律に準拠した遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。

遺言書作成の費用

マレーシアで弁護士に依頼して遺言書を作成する場合の費用は、内容の複雑さにもよりますが、RM420~RM1,500(約1.3万円~4.8万円)程度が目安です。遺言書の保管サービスを利用する場合は、別途費用がかかることもあります。将来の手間や費用を考えれば、安心のための投資と言えるでしょう。

日本の遺言書は有効か?

日本で作成した遺言書(例えば公正証書遺言)も、マレーシアで法的な手続きを踏めば有効と認められる可能性はあります。しかし、翻訳や認証手続きが必要となり、かえって時間と手間がかかることが多いです。そのため、日本の財産は日本の遺言書、マレーシアの財産はマレーシアの遺言書、と分けて作成するのが最も確実でスムーズな方法と言えるでしょう。

専門家への相談が不可欠

マレーシアの相続手続きは、法律や言語、文化の違いから、ご自身だけで進めるのは非常に困難です。国際相続に詳しい専門家のサポートが不可欠となります。

どこに相談すればいい?

まずは、マレーシアの法律に詳しく、日本語での対応が可能な弁護士やコンサルタントに相談するのが良いでしょう。日本の相続税についても関わってくるため、日本の税理士とも連携できる専門家を選ぶことが重要です。初期相談で、手続き全体の流れ、期間の見込み、費用の見積もりなどを確認しましょう。

専門家に依頼するメリット

専門家に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 煩雑な裁判所手続きを代行してもらえる
  • 必要書類の収集や作成をサポートしてもらえる
  • 現地の金融機関や役所とのやり取りを任せられる
  • 日本の相続税申告も考慮したアドバイスがもらえる
  • 結果的に、時間と費用の節約、そして精神的な負担の軽減につながる

まとめ

マレーシアに相続財産がある場合の手続きは、日本の常識が通用しない部分が多く、「プロベート」という裁判所手続きが必須となります。遺言書がないと手続きが長期化し、費用もかさむ傾向にあります。また、マレーシアに相続税はありませんが、日本の相続税が課税されるケースがほとんどです。残されたご家族の負担を減らすためにも、生前のうちからマレーシアの法律に準拠した遺言書を作成し、国際相続に詳しい専門家に相談しておくことが何よりも重要です。早めの準備で、スムーズな資産承継を実現しましょう。

参考文献

国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき

国税庁 No.7400 法定調書の提出義務者

マレーシアの相続手続きに関するよくある質問

Q.マレーシアに相続税はないと聞きましたが、本当ですか?

A.はい、マレーシアには相続税や贈与税の制度はありません。しかし、財産を受け取る相続人が日本に住んでいる場合、その財産は日本の相続税の課税対象になりますので注意が必要です。

Q.マレーシアの相続手続きにはどのくらいの時間がかかりますか?

A.「プロベート」という裁判所手続きが必要で、遺言書がある場合で半年から1年、ない場合は1年以上かかるのが一般的です。財産の内容によっては数年を要することもあります。

Q.日本の遺言書はマレーシアで使えますか?

A.法的な手続きを踏めば有効と認められる可能性はありますが、翻訳や認証に手間と時間がかかります。マレーシア国内の財産については、マレーシアの法律に基づいた遺言書を別途作成することをお勧めします。

Q.プロベート手続き中は、故人の預金を引き出すことはできますか?

A.いいえ、原則としてできません。裁判所から遺産管理人が正式に任命され、手続きが完了するまで、故人の銀行口座は凍結されます。そのため、手続き期間中の生活費や納税資金は別途準備する必要があります。

Q.遺言書がない場合、マレーシアの財産はどうなりますか?

A.遺言書がない場合は、マレーシアの「1958年遺産分配法」という法律に基づいて法定相続人に分配されます。この法律と日本の民法では相続人の範囲や相続分が異なるため、意図しない人に財産が渡る可能性もあります。

Q.マレーシアの相続で、相続税以外にかかる費用は何ですか?

A.主な費用として、裁判所に支払う手数料、弁護士費用があります。また、相続した不動産を売却した場合は不動産譲渡益税(RPGT)、不動産や株式の名義変更の際には印紙税(Stamp Duty)がかかります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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