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マンション相続の節税術!小規模宅地等の特例でどうなるか具体例で解説

2025-08-01
目次

ご家族が遺してくれた賃貸併用マンション。ありがたい一方で、「相続税は一体いくらかかるんだろう…」と不安に感じていませんか?実は、「小規模宅地等の特例」という制度をうまく活用することで、相続税の負担を大幅に減らせる可能性があります。今回は、具体的なモデルケースを使って、この特例がどのように適用されるのか、誰でもわかるようにステップバイステップで解説していきますね。

小規模宅地等の特例ってどんな制度?

「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった方(被相続人)が住んでいた土地や、事業をしていた土地などを相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%も減額できる、とても心強い制度です。土地の評価額が下がれば、それにかかる相続税もぐっと抑えられます。そして、この特例はご自宅だけでなく、今回のような自宅と賃貸部分が一緒になった「賃貸併用住宅」の敷地にも適用できるのが大きなポイントです。

特例の種類と減額割合

小規模宅地等の特例には、土地の利用状況によっていくつかの種類があります。賃貸併用住宅で主に関係するのは、次の2種類です。

宅地の種類 内   容
特定居住用宅地等 被相続人が住んでいた自宅の敷地です。最大330㎡まで、評価額を80%減額できます。
貸付事業用宅地等 アパートやマンション、駐車場など、人に貸していた事業用の土地です。最大200㎡まで、評価額を50%減額できます。

賃貸併用住宅の場合は、この「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」を組み合わせて適用を考えることになります。

特例を使うための主な要件

この強力な特例を使うためには、誰が土地を相続するかによって、いくつかの条件をクリアする必要があります。

相続する人 主 な 要 件
配偶者 特に厳しい要件はなく、取得するだけで適用対象となります。
同居の親族 相続税の申告期限までその土地を所有し、その家に住み続けることが必要です。
別居の親族(家なき子特例) 被相続人に配偶者や同居親族がおらず、相続開始前3年以内に持ち家に住んでいないなど、非常に厳しい要件があります。

また、賃貸部分(貸付事業用宅地等)の特例を受けるには、相続人がその賃貸事業をしっかりと引き継ぎ、申告期限後も事業を継続することが求められます。

具体例で見る!小規模宅地等の特例の計算方法

それでは、いよいよ今回のモデルケースを使って、実際に小規模宅地等の特例を適用するとどうなるのかをシミュレーションしてみましょう。少し計算が出てきますが、一つひとつ見ていけば難しくありませんよ。

今回のモデルケース

まず、今回のシミュレーションの前提条件を整理します。

項  目 内  容
敷地全体の面積 200㎡
建物の総床面積 400㎡(4階建て、各階100㎡)
居住部分(1階) 100㎡
賃貸部分(2階~4階) 300㎡

土地を「居住用」と「賃貸用」に按分する

賃貸併用住宅の場合、最初に行うのが敷地を「居住用」と「賃貸用(貸付事業用)」に分ける作業です。これは、建物の床面積の割合に応じて按分するのが一般的です。

【計算】
居住部分の割合:100㎡(居住部分) ÷ 400㎡(総床面積) = 1/4
賃貸部分の割合:300㎡(賃貸部分) ÷ 400㎡(総床面積) = 3/4

この割合を使って、敷地200㎡を按分します。

用    途 計 算 式
居住用の土地(特定居住用宅地等) 200㎡ × 1/4 = 50㎡
賃貸用の土地(貸付事業用宅地等) 200㎡ × 3/4 = 150㎡

この結果、50㎡が「特定居住用宅地等」、150㎡が「貸付事業用宅地等」として特例の対象になります。

特例を適用できる限度面積を計算する

特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の両方に特例を使う場合、単純にそれぞれの限度面積(330㎡と200㎡)まで使えるわけではなく、調整計算が必要です。計算式は少し複雑ですが、ご自身のケースで限度面積内に収まるかを確認することが重要です。

【限度面積の判定式】
(特定居住用宅地等の適用面積 × 200/330) + (貸付事業用宅地等の適用面積) ≦ 200㎡

今回のケースで計算してみましょう。

【計算】
(50㎡ × 200/330) + 150㎡ ≒ 30.3㎡ + 150㎡ = 180.3㎡

計算結果は180.3㎡となり、限度である200㎡を下回りました。これは、居住用に対応する50㎡と賃貸用に対応する150㎡の両方すべてに特例を適用できることを意味します。

評価額の減額を計算する

では、実際に土地の評価額がいくら減額されるのか計算してみましょう。仮に、この土地全体の評価額(自用地としての評価額)が8,000万円(1㎡あたり40万円)だったとします。

まず、居住用と賃貸用の土地評価額を算出します。

用途別の土地評価額 計 算 式
居住用部分の土地(50㎡) 8,000万円 × (50㎡ / 200㎡) = 2,000万円
賃貸用部分の土地(150㎡) 8,000万円 × (150㎡ / 200㎡) = 6,000万円

次に、それぞれの部分に特例を適用して、減額される金額を計算します。

用  途 減額される金額
特定居住用宅地等 2,000万円 × 80%減 = 1,600万円
貸付事業用宅地等 6,000万円 × 50%減 = 3,000万円

なんと、合計で4,600万円もの評価額が減額されることになります。その結果、相続税を計算する際の土地の評価額は、8,000万円から4,600万円を差し引いた3,400万円まで圧縮されるのです。これは非常に大きな節税効果ですね。

誰が相続するかで結果は変わる!注意点

ここまで、特例が最大限に活用できるケースを見てきましたが、誰がこの賃貸併用マンションを相続するかによって、使える特例が変わってくるため注意が必要です。

配偶者や同居の子供が相続する場合

亡くなった方の配偶者や、一緒に住んでいた子供が相続する場合、「特定居住用宅地等」の適用要件を満たしやすいため、これまで計算したような大きな節税効果が期待できます。ただし、同居の子供の場合は、相続税の申告期限までその家に住み続け、土地も保有し続ける必要があります。

別居していた子供が相続する場合

ここが最も注意したいポイントです。もし、亡くなった方とは別に家を持って暮らしていた子供が相続する場合、原則として「特定居住用宅地等」は使えません。適用できるのは「貸付事業用宅地等」の部分のみになる可能性が高く、その場合、居住用部分の土地評価額(このケースでは2,000万円)は減額されず、節税効果が大きく下がってしまいます。

特例を受けるための手続き

この特例は、何もしなくても自動的に適用されるわけではありません。相続税の申告の際に、ご自身で「この特例を使います」と意思表示をする必要があります。

申告期限と遺産分割

小規模宅地等の特例を使う大前提として、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割協議がまとまっていることが必要です。誰がどの財産を相続するかが決まっていないと、特例は適用できません。相続が発生したら、早めに相続人全員で話し合いを始めることが大切です。

必要な書類

申告時には、相続税申告書に加えて、特例の適用を受けるための明細書など、追加の書類を税務署に提出する必要があります。

主な必要書類 概   要
相続税の申告書 特例の適用を受ける旨を記載します。
小規模宅地等についての課税価格の計算明細書 特例計算の詳細を記載する必須書類です。
遺産分割協議書の写し、または遺言書の写し 誰がその土地を相続したかを証明します。
相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書が本物であることを証明します。

まとめ

今回は、賃貸併用マンションを相続した場合の小規模宅地等の特例について、具体的なモデルケースで解説しました。最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • 賃貸併用住宅でも、居住用部分と賃貸用部分に分けて小規模宅地等の特例を併用できます。
  • 土地は建物の床面積の割合で「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」に按分して計算します。
  • 誰が相続するか(配偶者、同居親族、別居親族)によって、適用できる特例や節税効果が大きく変わるため注意が必要です。
  • 特例の適用には、申告期限内に遺産分割を終え、適切な申告手続きをすることが必須です。

小規模宅地等の特例は、相続税を大幅に軽減できる可能性がある強力な制度ですが、その要件は非常に複雑です。ご自身の状況でどのように適用されるか、少しでも不安に感じたら、相続税に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

自宅兼賃貸マンションの小規模宅地等の特例 よくある質問まとめ

Q. 自宅兼賃貸マンションですが、小規模宅地等の特例は適用できますか?

A. はい。ご自宅として使っている居住部分と、賃貸している部分の両方で、それぞれの要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。

Q. 特例の対象となる敷地の面積はどのように計算しますか?

A. 建物の床面積の割合で敷地全体を按分します。この場合、敷地200㎡のうち、居住用が50㎡(200㎡×居住部分100㎡/総床面積400㎡)、貸付用が150㎡(200㎡×賃貸部分300㎡/総床面積400㎡)となります。

Q. 土地の評価額はどれくらい減額されますか?

A. 居住用部分の敷地(50㎡)に対応する評価額は80%減額され、貸付用部分の敷地(150㎡)に対応する評価額は50%減額されます。

Q. 居住用と貸付用を併用する場合、面積の上限は超えませんか?

A. はい。特例を併用する場合、一定の計算式で限度面積を判定します。今回のケースでは「居住用50㎡+貸付用150㎡」で合計200㎡となり、併用した場合の限度面積200㎡(※)内に収まるため、按分した面積の全てで特例が適用できます。※調整計算後の限度面積

Q. 具体的な評価額の減額を計算するとどうなりますか?

A. 例えば敷地全体の評価額が6,000万円の場合、居住部分の評価額は1,500万円、貸付部分は4,500万円です。減額される額は合計で2,850万円(居住用1,200万円+貸付用1,650万円)となり、納税対象の評価額は3,150万円まで下がります。

Q. 特例を受けるにはどうすればよいですか?

A. 自動的に適用されるわけではありません。相続税の申告書にこの特例の適用を受ける旨を記載し、計算明細書などの必要書類を添付して税務署に提出する必要があります。

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