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マンション相続税評価、どっちの面積?登記簿と納税通知書の違いを解説

2025-06-02
目次

ご家族からマンションを相続したとき、「相続税の評価額を計算したいけれど、どの書類のどの面積を使えばいいの?」と迷ってしまうことはありませんか?手元には市役所から届く「納税通知書」と、法務局で取得する「登記簿謄本(登記事項証明書)」があり、それぞれに面積が書かれていますが、数字が微妙に違っていて混乱してしまいますよね。実は、区分マンションの相続税評価では、この両方の書類が必要になり、場面によって使い分けるのが正解なんです。この記事では、どちらの面積をいつ使うのか、そしてなぜ面積が違うのか、2024年から始まった新しい評価ルールも交えて、わかりやすく解説していきますね。

マンション相続税評価額の基本的な考え方

まず、マンションの相続税評価額は、「お部屋そのもの」である建物部分(専有部分)と、「その建物が建っている土地の権利」である土地部分(敷地権)の2つに分けて、それぞれ評価額を計算し、最後に合計するという仕組みになっています。建物と土地で評価の仕方が違うので、使う書類や面積も変わってくるんですよ。

建物(専有部分)の評価は「納税通知書」が基本

建物部分の評価はとてもシンプルです。原則として、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書(または課税明細書)に記載されている「固定資産税評価額」をそのまま使います。固定資産税評価額は、市町村(東京23区の場合は都)が定めた公的な価格なので、自分で難しい計算をする必要はありません。つまり、建物の評価については、納税通知書に書かれている情報がベースになる、と覚えておきましょう。

土地(敷地権)の評価は「登記簿」がカギ

一方、土地部分の評価は少し計算が必要です。土地の評価には、国税庁が定めている「路線価」という価格を使います。計算の流れは以下のようになります。

  1. マンションが建っている土地全体の評価額を計算する。(路線価 × 土地全体の面積)
  2. その土地全体のうち、自分がどれくらいの権利を持っているかを計算する。

この「自分がどれくらいの権利を持っているか」を示す割合が「敷地権割合」です。そして、この敷地権割合が書かれているのが、登記簿謄本なんです。土地全体の評価額に、登記簿に記載された敷地権割合を掛けることで、ご自身の土地部分の相続税評価額が計算できます。

【結論】納税通知書と登記簿、どちらの面積を使う?

ここまでの話をまとめると、マンションの相続税評価では、以下のように書類を使い分けることになります。

  • 建物(専有部分)の評価納税通知書に記載の「固定資産税評価額」を使う。
  • 土地(敷地権)の評価:路線価と、登記簿に記載の「敷地全体の面積」および「敷地権割合」を使って計算する。

このように、どちらか一方だけを使うのではなく、両方の書類に書かれた情報を組み合わせて評価額を算出するのが正解です。特に面積については、土地全体の面積を知るために登記簿を確認する必要があります。

なぜ納税通知書と登記簿で面積が違うの?

「でも、どうして同じ部屋なのに面積が違うの?」と疑問に思いますよね。これは、面積の測り方に違いがあるからなんです。この違いを知っておくと、書類を見たときに混乱しなくなりますよ。

納税通知書の面積は「壁心面積」が基準

納税通知書に記載されている「課税床面積」は、一般的に「壁心(へきしん・かべしん)面積」を基に計算されています。これは、壁や柱の厚みの中心線で囲まれた部分の面積です。さらに、マンションの廊下やエレベーター、階段といった共用部分の面積も、各部屋の面積に応じて按分され、上乗せされています。そのため、次にご紹介する登記簿の面積よりも広くなるのが普通です。

登記簿の面積は「内法面積」

一方、登記簿謄本に記載されている面積は「内法(うちのり)面積」です。これは、壁の内側の線で囲まれた部分の面積で、実際に生活スペースとして使える広さを表しています。不動産の広告などで見かける「専有面積」はこちらの内法面積を指していることが多いです。共用部分の面積は含まれていないため、納税通知書の面積よりも小さくなります。

面積の違いまとめ

それぞれの面積の違いを、簡単な表にまとめてみました。

書類の種類 面積の測り方
固定資産税納税通知書 壁心面積(+共用部分)
壁の中心線で測る面積。共用部分の持ち分も含まれるため、広めの数字になります。
登記簿謄本 内法面積
壁の内側で測る面積。実際に使用できるスペースの広さです。

令和6年開始!マンション相続税評価の新ルール

これまでご説明した基本ルールに加えて、2024年(令和6年)1月1日以降に発生した相続からは、新しい評価ルールが適用されることになりました。これは、いわゆる「タワマン節税」のように、市場での売買価格と相続税評価額の差が大きくなりすぎるのを防ぐための改正です。そして、この新ルールでは登記簿の面積がさらに重要な役割を担うことになったんです。

新ルール導入の背景

特にタワーマンションの高層階などは、市場では非常に高値で取引される一方で、相続税評価額は比較的低く抑えられていました。この価格差を利用した節税が問題視されたため、市場価格と評価額のバランスをとる目的で、新しい計算方法が導入されました。

「区分所有補正率」で評価額を調整

新ルールでは、これまでの方法で計算した評価額に「区分所有補正率」というものを掛けて、最終的な評価額を算出します。この補正率は、マンションの「築年数」「総階数」「所在階」、そして「敷地持分狭小度」という4つの要素から計算される「評価乖離率」を基に決まります。少し複雑ですが、要は「市場価格と評価額が離れやすい物件ほど、評価額を高く補正しましょう」という仕組みです。

新ルールで登記簿の面積がより重要になる理由

ここで注目したいのが、補正率の計算で使う要素の一つ、「敷地持分狭小度(しきちもちぶんきょうしょうど)」です。これは、お部屋の広さに対して、持っている土地の権利がどれくらい狭いかを示す指標です。この敷地持分狭小度を計算するときに、『登記簿謄本に記載された専有部分の面積(内法面積)』を使います。

つまり、新しいルールのもとで正確な相続税評価額を出すためには、登記簿に記載された「内法面積」が不可欠になったのです。これまでは主に土地の評価で登記簿の情報を使っていましたが、これからは建物の評価にも深く関わってくる、と覚えておいてくださいね。

マンション評価額の計算シミュレーション

では、実際にどれくらい評価額が変わるのか、簡単なモデルケースで見てみましょう。

計算の前提条件

  • 建物(専有部分)の固定資産税評価額:2,000万円
  • 土地(敷地権)の路線価方式による評価額:1,500万円
  • (補正前の評価額合計:3,500万円)
  • 築年数:10年
  • 総階数:30階
  • 所在階:25階
  • 登記簿上の専有部分面積(内法面積):70㎡
  • 敷地権の面積:35㎡

実際の計算手順

1. 評価乖離率の計算
上記の前提条件(築年数、総階数、所在階、そして登記簿の面積から計算する敷地持分狭小度)を使って評価乖離率を計算します。少し複雑な計算式ですが、国税庁の計算明細書を使うと算出できます。このケースでは、評価乖れい離り率が「2.392」になったとします。

2. 評価水準の計算
評価水準は「1 ÷ 評価乖離率」で計算します。
1 ÷ 2.392 = 0.418

3. 区分所有補正率の適用
評価水準が0.6を下回る場合、評価額は「補正前の評価額 × 評価乖離率 × 0.6」で計算されます。
3,500万円 × 2.392 × 0.6 = 5,023万2,000円

このように、補正前の3,500万円だった評価額が、新ルールの適用によって約5,023万円となり、1,500万円以上も評価額が上がることになります。この計算からも、登記簿の面積がいかに重要かがわかりますね。

評価額を抑える特例も忘れずにチェック

相続税評価額を計算したら、次にその評価額を下げられる特例がないか確認することがとても大切です。要件に当てはまれば、相続税の負担を大きく減らすことができますよ。

小規模宅地等の特例

亡くなった方が住んでいたご自宅の土地などを相続した場合、一定の要件を満たせば、土地部分の評価額を最大で80%も減額できる強力な特例です。もちろん、マンションの敷地権も対象になります。例えば、配偶者や同居していたご家族が相続し、そのまま住み続ける場合などに適用できる可能性があります。土地の評価額が1,500万円なら、300万円まで評価額を圧縮できる可能性があるということです。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

亡くなった方の配偶者が財産を相続する場合には、最低でも1億6,000万円までは相続税がかからないという制度です。ほとんどの場合、配偶者の方はこの制度を使えば相続税を納める必要がなくなります。ただし、この制度を利用して一次相続(今回の相続)での税負担をゼロにすると、二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)で、お子さんたちの税負担が重くなってしまうケースもあるため、慎重な検討が必要です。

まとめ

今回は、区分マンションの相続税評価で使う面積について、納税通知書と登記簿のどちらを見ればよいのかを解説しました。最後にポイントをおさらいしましょう。

  • マンションの相続税評価では、納税通知書と登記簿の両方の書類が必要です。
  • 建物の評価は、主に納税通知書の固定資産税評価額を基にします。
  • 土地の評価は、路線価と登記簿の敷地権割合などを使って計算します。
  • 2024年からの新ルールでは、評価額を補正するための計算で登記簿の専有部分面積(内法面積)が必須となり、その重要性が増しました。

基本的な評価はご自身でも確認できますが、新ルールの計算は複雑で、特例の適用判断も専門的な知識が求められます。もし評価額の計算や相続税申告で不安な点があれば、相続に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。大切な財産を正しく評価し、安心して手続きを進めていきましょう。

参考文献

区分マンションの相続税評価額と面積のよくある質問まとめ

Q.マンションの相続税評価で使う面積は、固定資産税納税通知書と登記簿のどちらですか?

A.登記簿に記載されている面積(内法面積)を使用します。固定資産税納税通知書に記載の面積(壁芯面積)ではないため注意が必要です。

Q.なぜ登記簿と納税通知書で面積が違うのですか?

A.面積の計算方法が異なるためです。登記簿は壁の内側で測る「内法(うちのり)面積」、納税通知書は壁の中心線で測る「壁芯(へきしん)面積」が使われており、一般的に壁芯面積の方が大きくなります。

Q.どちらの面積を使った方が相続税は安くなりますか?

A.面積が小さい「登記簿面積(内法面積)」を使って評価額を計算するため、壁芯面積で計算するよりも評価額が下がり、結果的に相続税が安くなる可能性があります。

Q.正しい面積(登記簿面積)はどこで確認できますか?

A.法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」で確認できます。書類の「表題部」にある「床面積」の欄に記載されています。

Q.間違えて納税通知書の面積で相続税申告をしてしまったらどうなりますか?

A.本来より大きい面積で評価額を計算したことになるため、相続税を過大に納めている可能性があります。その場合、申告期限から5年以内であれば「更正の請求」という手続きで税金の還付を受けられることがあります。

Q.タワーマンションの相続税評価ルールが変わりましたが、面積の考え方も変わりましたか?

A.いいえ、評価額の計算方法は変わりましたが、評価の基礎となる面積は、従来通り「登記簿面積(内法面積)」を使用します。面積の考え方に変更はありません。

事務所概要
社名
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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