「実家をきれいにリフォームした矢先に親が亡くなってしまった…」そんなとき、建物の相続税評価額はどうなるのか気になりますよね。今回は、リフォームをした年に相続が発生した場合の家屋の評価について、具体的な計算方法や注意点を分かりやすく解説していきます。
リフォームした建物の相続税評価額の基本
相続税を計算する際、建物の価値はどのように決まるのでしょうか。まずは基本となるルールを見ていきましょう。
建物の評価は固定資産税評価額を使います
建物の相続税評価額は、原則として市区町村が決定する固定資産税評価額と同じ金額を使います。固定資産税の納付書と一緒に届く課税明細書に記載されている金額ですね。この金額は、新築時の建築費用の約70%ほどの目安となり、その後は建物の経年劣化に合わせて3年に1回のペースで見直しが行われて徐々に下がっていきます。
増築などの大規模リフォームは評価額が改定されます
床面積が増えるような増築や、建物の構造が変わるような大規模なリフォームを行った場合、市区町村の家屋調査が入り、固定資産税評価額が高く改定されます。もし、相続税の申告期限(お亡くなりになった日の翌日から10ヶ月以内)までに新しい固定資産税評価額が決定していれば、その改定された新しい評価額を使って相続税を申告することになります。
評価額が改定されない場合はリフォーム費用を加算します
一方で、リフォームをしたけれど市区町村の評価替えが申告期限までに間に合わなかった場合や、固定資産税評価額が改定されない規模のリフォームだった場合は注意が必要です。この場合、建物の価値が上がっているのに評価額がそのままになってしまうため、リフォーム前の固定資産税評価額にリフォーム費用を自分で計算して加算して申告しなければなりません。
相続税評価額にリフォーム費用を加算する計算方法
では、具体的にどのようにリフォーム費用を加算すればよいのでしょうか。実際の計算式をご紹介します。
費用を加算する場合の具体的な計算式
国税庁のルールによると、リフォーム費用の全額をそのまま足すわけではありません。リフォームにかかった費用から、時間の経過によって目減りした価値(償却費相当額)を差し引き、さらにその金額の70%を掛けた金額を加算します。
| 計算式 | (リフォーム費用 - 償却費相当額) × 70% |
|---|---|
| 償却費相当額 | リフォーム費用 × 90% × 経過年数 ÷ 耐用年数 |
例えば、木造住宅(耐用年数22年)で500万円のリフォームを行い、1年後に相続が発生した場合、償却費相当額は「500万円 × 90% × 1年 ÷ 22年 = 約20万4,500円」となります。加算する金額は「(500万円 - 20万4,500円) × 70% = 335万6,850円」です。
マンションをリフォームした場合の評価方法
マンションの内装をフルリノベーションした場合なども、リフォーム費用を加算する必要があります。マンションの場合、増築が行われないため固定資産税評価額は改定されません。そのため、先ほどの計算式を使って、ご自身でリフォーム費用の70%相当額をマンションの建物部分の固定資産税評価額にプラスして申告を行います。
評価額に加算しなくてよいリフォームとは?
すべてのリフォーム費用を加算するわけではありません。建物の価値を高めない工事であれば加算は不要です。
通常の修繕費にあたる工事は加算不要です
壊れた部分を元に戻すための通常の修繕の範囲内であれば、相続税評価額に費用を加算する必要はありません。例えば、雨漏りの修理、外壁の塗り直し、剥がれた壁紙の張り替えなどが該当します。これらの工事に数百万円かかったとしても、建物の価値が新築時より高まったわけではないため、リフォーム前の固定資産税評価額だけで申告できます。
修繕費と資本的支出の違いと判定基準
相続税の計算では、リフォームが「修繕費」になるか「資本的支出(価値を高める工事)」になるかの判断がとても重要です。
| 修繕費(加算不要) | 雨漏り修理、外壁塗装、壁紙の張り替え、壊れた給湯器の交換など |
|---|---|
| 資本的支出(加算必要) | 間取りの変更、耐震補強工事、システムキッチンの最新型への総入れ替えなど |
もし判断に迷う場合は、見積書や工事明細書を細かく確認し、どこからが現状回復でどこからが価値の向上にあたるかを分ける必要があります。
相続税対策として有効なリフォームのポイント
生前にリフォームをすることが、結果的に相続税を安くする対策になることもあります。
小規模宅地等の特例を活用する増改築
土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例を活用するために、ご実家を増改築するのは非常に有効です。例えば、ご実家を二世帯住宅にリフォームして親と子が同居すれば、330平方メートルまでの土地の評価額が80%オフになります。また、賃貸併用住宅にリフォームして人に貸し出せば、200平方メートルまでの土地の評価額が50%オフになります。
建物の価値を上げない修繕にとどめる
手元の現金預金を減らしつつ、建物の評価額を上げないようにするには、修繕費にあたるリフォームを行うのがコツです。外壁の塗装や屋根の補修などに300万円を使った場合、現金は300万円減りますが、建物の評価額は上がりません。そのため、結果として遺産総額が300万円減り、相続税を安く抑えることができます。
リフォーム後に相続税を申告する際の注意点
リフォームが完了した後に相続が発生した場合、申告手続きで気をつけるべきポイントがあります。
費用を負担した人が誰かで贈与税に注意
ご実家の名義が親のままで、子どもが自分の預金からリフォーム費用500万円を支払った場合、子どもから親へ500万円の贈与があったとみなされ、親に贈与税がかかってしまいます。さらに、その家を子どもが相続すると相続税もかかり、二重に税金で苦労することになりかねません。親の家をリフォームする費用は、必ず家の所有者である親自身の預金から支払うようにしてください。
リフォーム費用の申告漏れは税務調査で指摘されます
「役所に申告していない内装工事だから、税務署にはバレないだろう」と思うのはとても危険です。税務署は亡くなった方の過去数年分の通帳の履歴をしっかりと確認します。リフォーム業者へ数百万円の振り込み履歴があれば、すぐにリフォームの事実が発覚します。加算すべきリフォーム費用を申告から漏らしてしまうと、後から本来の税金に加えて最大40%の重加算税などの重いペナルティを支払うことになりますので、正直に正しく申告しましょう。
まとめ
リフォームをした年に相続が発生した場合、間取り変更や最新設備への入れ替えなど建物の価値を高める工事であれば、リフォーム前の固定資産税評価額にリフォーム費用の約70%を加算して評価します。一方で、雨漏り修理などの現状回復にとどまる修繕費であれば加算は不要です。現金をそのまま残すよりもリフォームに使うことで節税効果が期待できますが、費用の負担者によっては贈与税がかかるリスクもありますので、工事内容と資金の出し方には十分注意して進めてくださいね。
参考文献
国税庁 No.4602 土地家屋の評価
国税庁 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価
リフォームをした年に相続が発生した場合の家屋の評価のよくある質問まとめ
Q.建物の相続税評価額はどのように決まりますか?
A.原則として、市区町村が決定する固定資産税評価額と同じ金額を相続税評価額として使用します。
Q.リフォームをした場合、建物の評価額は上がりますか?
A.間取り変更などの建物の価値を高めるリフォーム(資本的支出)をした場合、固定資産税評価額にリフォーム費用の約70%を加算するため評価額が上がります。
Q.雨漏りの修理費用も相続税評価額に加算されますか?
A.雨漏り修理や外壁塗装など、現状を回復するための通常の修繕費にあたる場合は、建物の価値を高めるものではないため加算する必要はありません。
Q.マンションをリフォームした場合も評価額は変わりますか?
A.マンションはリフォームによる固定資産税評価額の改定はありませんが、価値を高める工事をした場合はリフォーム費用の約70%を自分で計算して加算して申告する必要があります。
Q.リフォーム費用を子どもが負担しても大丈夫ですか?
A.親名義の家のリフォーム費用を子どもが負担すると、子どもから親への贈与とみなされ、親に贈与税がかかるリスクがあるため注意が必要です。
Q.リフォーム費用を加算しないで申告するとどうなりますか?
A.税務署は通帳の振込履歴などからリフォームの事実を把握するため、申告漏れが発覚すると最大40%の重加算税など重いペナルティが課される可能性があります。