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一人っ子相続で損しない!知っておくべき注意点と賢い相続税対策

2026-01-10
目次

ご自身が一人っ子の場合、「兄弟がいないから、親の相続は揉めずにスムーズだろう」と考えていらっしゃるかもしれませんね。確かに、兄弟姉妹間での遺産分割トラブルがないのは大きなメリットです。しかし、実は一人っ子ならではの注意点も存在します。例えば、相続税の負担が重くなりやすかったり、すべての手続きを一人で進めなければならない大変さがあったりします。この記事では、一人っ子の相続で後悔しないために、メリット・デメリットから具体的な手続きの流れ、そして今からできる賢い相続税対策まで、わかりやすく解説していきます。

一人っ子相続のメリットとデメリット

一人っ子の相続は、兄弟姉妹がいる場合と比べて、良い面もあれば注意が必要な面もあります。まずは、その両方をしっかりと理解しておくことが大切です。ご自身の状況と照らし合わせながら、どんな準備が必要か考えてみましょう。

メリット:遺産分割トラブルが起こりにくい

一人っ子相続の最大のメリットは、遺産分割で揉める可能性が極めて低いことです。相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどれだけ受け取るかを話し合う「遺産分割協議」が必要になりますが、これがトラブルの原因になることが少なくありません。しかし、相続人がご自身一人の場合、この協議は不要です。ご両親が亡くなった後の相続では、すべての財産を一人で受け継ぐことになります。また、親のどちらかが亡くなった場合でも、相続人は残された親とご自身の二人だけなので、話し合いがまとまりやすい傾向にあります。これにより、預貯金の解約や不動産の名義変更といった手続きも、自分のペースでスムーズに進めることができます。

デメリット①:相続税が高額になりやすい

一方で、一人っ子の相続には税金面でのデメリットがあります。それは、兄弟姉妹がいる場合に比べて相続税が高額になりやすいという点です。相続税には、財産から差し引くことができる「基礎控除」というものがあり、この金額は法定相続人の数によって決まります。

【相続税の基礎控除額】
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

例えば、母親が亡くなり、父親と子どもが相続する場合で考えてみましょう。

  • 一人っ子の場合(法定相続人2人):3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
  • 子どもが二人兄弟の場合(法定相続人3人):3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

このように、法定相続人が一人少ないだけで、基礎控除額が600万円も変わってきます。また、生命保険金にも「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があるため、ここでも差が生まれます。相続財産が多い場合は、この差が納税額に大きく影響してくるのです。

デメリット②:すべての手続きを一人で対応する必要がある

もう一つのデメリットは、すべての相続手続きを一人で対応しなければならない負担の大きさです。相続が始まると、亡くなった親の財産調査から戸籍謄本の収集、金融機関での手続き、法務局での登記申請、そして税務署への申告まで、やるべきことがたくさんあります。兄弟姉妹がいれば、これらの作業を分担したり、相談しながら進めたりできますが、一人っ子の場合はすべてご自身でこなさなければなりません。わからないことがあった時に気軽に聞ける相手がいないという精神的な負担も、決して小さくはないでしょう。

一人っ子相続の手続き、基本の流れを解説

親が亡くなった後、具体的にどのような流れで手続きを進めていけばよいのでしょうか。期限が定められている手続きも多いので、全体の流れを把握しておくことが大切です。ここでは、基本的な6つのステップをご紹介します。

STEP1:遺言書の有無を確認する

相続が始まったら、まず最初に被相続人(亡くなった親)の遺言書がないかを確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って財産を分けることになります。遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、自宅の金庫や引き出し、貸金庫のほか、公正証書遺言なら公証役場、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言なら法務局で保管されている可能性があります。自宅などで見つかった封印された遺言書は、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要がありますので注意しましょう。

STEP2:相続人を調査・確定する

「自分は一人っ子だから相続人は一人」と思い込まず、必ず相続人の調査を行いましょう。親に離婚歴があり、ご自身の知らない異母・異父兄弟がいたり、養子縁組をしていたり、認知した子どもがいたりする可能性もゼロではありません。これらの人も法律上の相続人になります。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本も含む)をすべて取り寄せることで、正確な相続関係を確定させることができます。

STEP3:相続財産を調査する

次に、被相続人がどのような財産をどれだけ持っていたかを正確に把握します。預貯金、不動産、株式などのプラスの財産はもちろん、借金やローン、誰かの連帯保証人になっていないかといったマイナスの財産もすべて調査する必要があります。プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、「相続放棄」を検討する必要があるため、この調査は非常に重要です。相続放棄の手続きは原則として「相続の開始を知った時から3か月以内」と期限が短いため、迅速に行いましょう。

STEP4:遺産分割協議を行う(他の相続人がいる場合)

相続人調査の結果、ご自身以外にも相続人(例えば、存命の親や異母兄弟など)がいる場合は、全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名・実印を押印します。この書類は、後の不動産登記や預貯金解約の手続きで必要になります。相続人がご自身一人の場合は、この手続きは不要です。

STEP5:相続税の申告・納税

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合は、税務署に相続税の申告と納税を行う必要があります。この期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。期限を過ぎると延滞税などのペナルティが課されるため、計画的に進めましょう。相続税は原則として現金一括で納付します。

STEP6:各種名義変更手続き

最後に、相続した財産の名義をご自身のものに変更します。預貯金は金融機関で解約・名義変更の手続きを、不動産は法務局で「相続登記」を行います。特に不動産の相続登記は、2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく怠ると過料が科される可能性がありますので、忘れずに行いましょう。

一人っ子の相続で特に注意したい「二次相続」

ご両親のうち、どちらか一方が先に亡くなった時の相続を「一次相続」、その後、残された親が亡くなった時の相続を「二次相続」と呼びます。一人っ子の場合、この二次相続での税負担が重くなりがちなので、特に注意が必要です。

なぜ二次相続で相続税が高くなるのか?

二次相続で税負担が重くなる主な理由は2つあります。一つは、一次相続で使えた「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」が使えないことです。この制度により、配偶者は最低でも1億6,000万円までの財産を相続しても相続税がかかりません。しかし、二次相続では相続人が子どもだけになるため、この強力な特例は適用されません。
もう一つの理由は、基礎控除額が減ることです。一次相続では相続人が「配偶者+子」の2人以上いるため基礎控除額が大きくなりますが、二次相続では「子」1人だけになるケースが多く、基礎控除額がその分少なくなってしまいます。

一次相続での遺産分割が鍵

こうした理由から、一次相続の際に「相続税がかからないから」と、すべての財産を配偶者(残された親)が相続してしまうと、その財産が二次相続の際にまるごと一人っ子に引き継がれ、結果的に多額の相続税がかかってしまうことがあります。ご家庭の財産状況にもよりますが、一次相続の段階から二次相続のことも見据えて、バランスの良い遺産分割を検討することが、家族全体で見た時の納税額を抑える重要なポイントになります。

親ができる!一人っ子のための賢い相続税対策

相続税の負担を少しでも軽くするためには、親が元気なうちから対策を始めることが非常に効果的です。相続が起きてからではできることが限られてしまいます。ここでは、代表的な生前対策をいくつかご紹介します。

生前贈与を計画的に活用する

最も一般的な対策が「生前贈与」です。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内での贈与であれば贈与税はかかりません。毎年コツコツと贈与を続けることで、将来の相続財産を非課税で減らしていくことができます。ただし、相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与は段階的に7年以内に延長)に受けた贈与は、相続財産に持ち戻して計算されるルール(生前贈与加算)があるので注意が必要です。

贈与税の非課税特例を利用する

まとまった資金を目的別に贈与する場合、期間限定で大きな非課税枠が使える特例制度があります。これらを活用するのも有効な手段です。

制度名 非課税限度額
教育資金の一括贈与 最大1,500万円(2026年3月31日まで)
結婚・子育て資金の一括贈与 最大1,000万円(2025年3月31日まで)
住宅取得等資金の贈与 最大1,000万円(2026年12月31日まで)

これらの制度にはそれぞれ細かい要件がありますので、利用を検討する際は専門家に相談することをおすすめします。

生命保険を活用する

生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という相続税の非課税枠があります。例えば、父親が亡くなり、相続人が一人っ子1人の場合、500万円までは相続税がかかりません。現金のまま残すよりも、一部を生命保険に変えておくことで、相続財産の評価額を下げることができます。また、保険金は受取人固有の財産とされるため、遺産分割協議の対象外となり、他の相続手続きが終わる前にスムーズに現金を受け取れるというメリットもあります。

小規模宅地等の特例の準備

親が住んでいた自宅の土地などを相続する場合、一定の要件を満たすと、その土地の評価額を最大で80%も減額できる「小規模宅地等の特例」という非常に強力な制度があります。例えば、5,000万円の土地の評価額が1,000万円になる計算です。この特例が使えるかどうかで相続税額は劇的に変わります。将来、この特例が使えるように、例えば親と同居するなど、適用要件を意識した準備をしておくことも有効な対策の一つです。

親に借金が…?相続放棄という選択肢

相続は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産もすべて引き継ぐのが原則です。もし、調査の結果、プラスの財産よりも明らかにマイナスの財産の方が多い場合は、「相続放棄」という手続きを検討する必要があります。

相続放棄とは?

相続放棄とは、家庭裁判所に申し立てを行うことで、相続人としての権利・義務をすべて手放す手続きです。これが認められると、初めから相続人ではなかったことになり、プラスの財産を一切相続できない代わりに、親の借金を返済する義務もなくなります。

手続きの期限と注意点

相続放棄の手続きには、「自分が相続人であることを知った時から3か月以内」という非常に厳しい期限があります。この期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできず、多額の借金を背負うことになりかねません。そのため、相続が始まったら、できるだけ早く財産調査に着手し、相続するか放棄するかの判断をする必要があります。また、一度相続放棄をすると、後から「価値のある財産が見つかった」となっても、撤回することはできないので、慎重な判断が求められます。

まとめ

一人っ子の相続は、兄弟姉妹間の争いがないという大きなメリットがある一方で、相続税が高額になりやすい手続きの負担が一人に集中するといった、特有の難しさがあることをお分かりいただけたでしょうか。特に、一次相続だけでなく二次相続まで見据えた長期的な視点での対策が、ご家族全体の負担を軽くする鍵となります。
親が元気なうちに、相続について家族で話し合い、生前贈与や生命保険の活用など、できることから対策を始めておくことが、いざという時の不安を解消し、スムーズで円満な相続につながります。もし手続きに不安を感じたり、相続税がいくらになるか心配な場合は、一人で抱え込まずに、早めに税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4152 相続税の計算

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

法務局 相続登記の申請の義務化について

一人っ子相続のよくある質問まとめ

Q.一人っ子相続の最大のメリットは何ですか?

A.相続人が一人だけなので、他の兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がなく、手続きがスムーズに進む点です。財産を巡るトラブルが起こりにくいのが大きなメリットです。

Q.一人っ子だと相続手続きは簡単になりますか?

A.はい、遺産分割協議が不要なため、他の相続人がいる場合に比べて手続きは簡素化されます。ただし、戸籍謄本の収集や財産調査、相続登記などの手続きは通常通り必要です。

Q.一人っ子の場合、遺産分割協議書は不要ですか?

A.はい、相続人が一人だけなので、遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)は発生しません。そのため、遺産分割協議書の作成も不要です。

Q.一人っ子だと相続税が高くなるというのは本当ですか?

A.相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。一人っ子の場合、法定相続人が少なくなるため基礎控除額が減り、結果的に相続税の負担が大きくなる可能性があります。

Q.親に借金があった場合、一人っ子だとすべて相続しなければなりませんか?

A.いいえ、必ずしも相続する必要はありません。財産よりも借金が多い場合などは、家庭裁判所に「相続放棄」の手続きをすることで、借金を含めたすべての財産を相続しない選択ができます。

Q.一人っ子でも親に遺言書を書いてもらうメリットはありますか?

A.はい、メリットはあります。遺言書があれば、不動産の名義変更(相続登記)などの手続きがよりスムーズになります。また、特定の財産を特定の人に渡したい場合や、寄付したい場合など、親の意思を明確に実現できます。

事務所概要
社名
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