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一般社団法人活用のメリットを徹底解説!設立から節税対策まで

2025-12-28
目次

「一般社団法人」という言葉を聞いたことはありますか?株式会社やNPO法人とは少し違う、この法人形態には実はたくさんのメリットが隠されています。これから事業を始めたい方、社会貢献活動を形にしたい方、あるいは資産管理や事業承継をお考えの方にとって、一般社団法人は非常に魅力的な選択肢になるかもしれません。この記事では、一般社団法人の活用で得られるメリットについて、分かりやすく丁寧にご紹介していきますね。

一般社団法人とは?まず基本をおさえましょう

まずは、「一般社団法人」がどのような法人なのか、基本的な特徴から一緒に見ていきましょう。株式会社などとは異なる、ユニークな性質を持っていますよ。

非営利法人だけど、収益事業もOKなんです

一般社団法人は「非営利法人」に分類されます。「非営利」と聞くと、「利益を出してはいけないのかな?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。ここでの非営利とは、「事業で得た利益を、社員や役員に分配(配当)してはいけない」という意味なんです。ですから、株式会社のように収益を目的とした事業を行うこともできますし、そこで働いてくれる従業員に給与を支払ったり、役員が報酬を受け取ったりすることも全く問題ありません。得た利益は、法人のさらなる活動のために使われる、というイメージですね。

株式会社やNPO法人との違いは?

他の法人格と何が違うのか、気になりますよね。特に設立の手軽さや事業内容の自由度が、一般社団法人の大きな特徴です。簡単に表で比較してみましょう。

法人形態 特徴
一般社団法人 登記のみで設立でき、比較的簡単。事業内容に制限がなく、公益的な活動から収益事業まで幅広く行える。
株式会社 営利を目的とし、株主に利益を配当できる。設立には資本金が必要。
NPO法人 法律で定められた20分野の特定非営利活動が目的。設立には所轄庁の認証が必要で、時間がかかる。

設立に必要な要件と費用

「法人設立って、手続きが大変そう…」と感じるかもしれませんが、一般社団法人の設立は意外とシンプルです。具体的に必要な人数や費用は以下の通りです。

設立要件 具体的な内容
社員 最低2名以上が必要です。法的な意思決定を行う構成員のことです。
理事 最低1名以上が必要です。法人の業務執行を担当します。社員が理事を兼任することも可能です。
設立費用(法定費用) 合計で約11万円かかります。内訳は、定款認証手数料が約5万円、法務局への登録免許税が6万円です。株式会社と違い、資本金は必要ありません。

【必見】一般社団法人を設立する5つのメリット

ここからは、一般社団法人を設立することで得られる具体的なメリットを、5つのポイントに絞って詳しくご紹介します。あなたの目的と合っているか、ぜひチェックしてみてくださいね。

設立手続きが簡単でスピーディー

最大のメリットの一つが、設立手続きの手軽さです。NPO法人のように所轄庁からの認証を待つ必要がなく、公証役場で定款の認証を受け、法務局へ登記申請をすれば設立が完了します。設立にかかる期間は、準備がスムーズに進めば1〜2週間程度。法人格をスピーディーに取得したい場合にとても有利です。

事業内容に制限がなく自由度が高い

一般社団法人は、法律や公序良俗に反しない限り、行う事業内容に制限がありません。地域の活性化などの公益的な活動はもちろん、資格認定ビジネス、会員制のコミュニティ運営、コンサルティング事業など、株式会社と同じように様々な収益事業を展開することが可能です。活動の自由度が高いのは大きな魅力ですね。

税制上の優遇措置を受けられる可能性がある

一般社団法人は、その性質によって「非営利型法人」と「普通法人(非営利型以外)」の2種類に分けられます。そして、一定の要件を満たして「非営利型法人」として認められると、税制上の大きなメリットを受けられます。具体的には、法人税が課されるのは収益事業から生じた所得のみとなり、会費や寄付金といった収益事業以外の所得には原則として課税されません。これは運営において非常に大きなアドバンテージになります。

社会的信用度がアップする

「法人格」を持つことで、個人事業主や法人格のない任意団体(サークルや同窓会など)と比べて、社会的な信用度が格段にアップします。団体名義で銀行口座を開設したり、不動産を契約したり、補助金の申請をしたりと、法的な主体として活動できるようになります。取引先や顧客からの信頼も得やすくなり、事業を円滑に進める上で大きな助けとなるでしょう。

事業承継や相続税対策に活用できる

一般社団法人には、株式会社の「株式」のような「持分」という概念がありません。そのため、理事長(設立者)が亡くなっても、法人が所有する財産は個人の相続財産には含まれず、原則として相続税の対象になりません。この仕組みを利用して、事業用の資産や不動産をあらかじめ法人に移し、後継者を理事にすることで、相続税の負担なくスムーズに事業を引き継ぐことが可能になります。ただし、後述する税制改正には注意が必要です。

知っておきたいデメリットと注意点

メリットがたくさんある一方で、もちろんデメリットや注意すべき点も存在します。設立してから「こんなはずじゃなかった」とならないように、事前にしっかり確認しておきましょう。

利益を分配(配当)できない

これは一般社団法人の最も大きな特徴であり、人によってはデメリットと感じる点です。事業でどれだけ大きな利益が出ても、その剰余金を社員に分配(配当)することは法律で禁止されています。利益はあくまで、法人の次なる活動の資金として活用されることになります。

設立に最低2名の社員が必要

株式会社や合同会社は1人でも設立できますが、一般社団法人は必ず2名以上の社員が必要です。一人で事業を始めたいと考えている場合は、協力してくれる人を探す必要があります。

2018年税制改正による相続税の課税リスク

以前は相続税対策の万能薬のように考えられていた一般社団法人ですが、2018年の税制改正で状況が変わりました。「特定一般社団法人等」という制度が設けられ、理事が亡くなった時点で、その親族などが理事の総数の2分の1を超えているなど一定の要件を満たす場合には、法人の純資産額を基礎として計算された金額が、相続税の課税対象とされることになったのです。節税目的で活用する際は、この点を十分に理解し、税理士などの専門家に相談することが不可欠です。

一般社団法人の具体的な活用事例

それでは、実際に一般社団法人はどのような場面で活躍しているのでしょうか。具体的な活用事例をいくつかご紹介します。

協会ビジネス・資格認定事業

特定の専門知識やスキルを体系化し、それを広めるための協会を設立するケースです。講座やセミナーを開催して受講料を得たり、独自の資格を発行して認定料を得たりします。非営利型法人であれば、会費や寄付金収入に対する税制優遇を受けられるため、非常に相性の良いビジネスモデルです。

同窓会や学術団体、スポーツクラブの法人化

これまで任意団体として活動してきた同窓会やサークル、研究会などが、活動規模の拡大に伴い法人格を取得するケースも多いです。法人になることで、団体名義で不動産を所有したり、大規模なイベントの契約主体になったりと、活動の幅が大きく広がります。

資産管理・事業承継

個人で所有している不動産や株式などの資産を一般社団法人に移管し、その法人を通じて管理・運用する方法です。これにより、個人の所得税や将来の相続税の負担を計画的に軽減しながら、資産を安定的に次世代へ引き継ぐことが可能になります。

税制優遇を受ける「非営利型法人」になるための要件

税制上のメリットが大きい「非営利型法人」ですが、認められるためにはいくつかの厳しい要件をクリアし、定款にその旨を定める必要があります。

2つの類型:「非営利徹底型」と「共益的活動型」

非営利型法人には、2つのタイプがあります。一つは、剰余金を分配しないなど、非営利性を徹底することを定款に定めている「非営利徹底型」。もう一つは、会員に共通する利益を図る活動を主目的とし、会費によって運営される「共益的活動型」です。どちらを目指すかによって、定款に記載する内容が変わってきます。

非営利型法人の主な要件

どちらの類型を目指すにしても、クリアすべき重要な要件があります。特に以下の3点は必ず押さえておきましょう。

主な要件 具体的な内容
剰余金の分配 いかなる理由があっても、剰余金の分配を行わない旨を定款に定めていること。
解散時の残余財産 法人が解散したときに残った財産は、国や地方公共団体、あるいは他の公益的な団体に贈与する旨を定款に定めていること。
親族制限 理事のうち、その理事と配偶者および三親等内の親族である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。

まとめ

いかがでしたでしょうか。一般社団法人は、設立が比較的簡単で、株式会社のように事業内容の自由度が高いという、とても使い勝手の良い法人形態です。特に、非営利型法人の要件を満たした際の税制上の優遇措置は大きな魅力と言えるでしょう。一方で、利益の分配ができないことや、相続対策として利用する場合には2018年の税制改正を十分に理解しておく必要があります。ご自身の事業や活動の目的が、一般社団法人という器に合っているかどうか、この記事がその判断の一助となれば幸いです。

参考文献

法務省:一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A

国税庁:一般社団法人・一般財団法人と法人税

国税庁:特定の一般社団法人等に対する課税のあらまし

一般社団法人のメリットに関するよくある質問まとめ

Q.一般社団法人とは、どんな法人ですか?

A.営利を目的としない非営利法人の一種です。株式会社と異なり、設立者に剰余金の分配は行われません。事業内容は公益的なものに限らず、自由に行うことができます。

Q.一般社団法人は簡単に設立できますか?

A.はい、社員2名以上、資本金0円から設立が可能です。公証役場での定款認証と法務局への登記で設立でき、株式会社に比べて手続きが比較的簡素です。

Q.一般社団法人の税金面でのメリットは何ですか?

A.「非営利型法人」の要件を満たすと、法人税は収益事業から生じた所得のみに課税されます。会費や寄付金などは非課税となり、税負担を軽減できる可能性があります。

Q.どのような事業を行うことができますか?

A.法律や公序良俗に反しない限り、事業内容に制限はありません。公益的な活動はもちろん、収益を目的とした事業も自由に行うことが可能です。

Q.一般社団法人を設立すると社会的信用は上がりますか?

A.はい、法人格を取得することで、個人事業主よりも高い社会的信用を得やすくなります。金融機関からの融資や各種契約、人材採用の面で有利に働くことがあります。

Q.相続税対策として活用できるというのは本当ですか?

A.はい、一般社団法人には持分がないため、法人が所有する財産は代表者個人の相続財産に含まれず、相続税の課税対象になりません。この仕組みが事業承継などで活用されます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。