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上場会社創業家の相続対策で自社株を賢く引き継ぐ方法を解説

2026-03-05
目次

上場会社の創業家にとって、自社株の相続対策は非常に重要な課題です。株価が市場で決まるため、思いがけない高評価となり、莫大な相続税が発生してしまうことも少なくありません。この記事では、上場会社創業家の皆さまに向けて、相続税の負担を少しでも減らし、スムーズに資産を引き継ぐための具体的な対策を分かりやすくお話ししていきます。

上場会社創業家の相続で生じる3つの大きな課題

上場会社の株式を持っていると、未上場企業とは違った特有の悩みが出てきます。ここでは、創業家が直面しやすい3つの課題について詳しく見ていきましょう。

累進課税による多額の相続税負担

日本の相続税は、財産が多くなるほど税率が上がる累進課税という仕組みを取っています。具体的には、法定相続分に応じた取得金額が6億円を超える部分については、最高税率である55%が課せられます。上場会社の株式は評価額が数十億円、数百億円となることも珍しくないため、財産の半分以上を税金として納めなければならないケースも出てくるのです。

自社株式の流動性不足による納税資金の不足

相続税は原則として、相続開始から10か月以内に現金で一括納付しなければなりません。しかし、創業家が保有する上場株式は、経営権の維持や市場への影響を考えると、簡単に市場で売却して現金化することができません。そのため、手元に十分な現金がないと、多額の相続税を支払えなくなるという納税資金の不足に陥る危険性があります。

相続発生後の株価下落リスク

創業社長など、会社のカリスマ的な存在だった方がお亡くなりになると、経営への不安から株価が下落する可能性があります。また、相続税を支払うために遺族が大量の株式を売却するのではないかという予測が市場に広がると、さらに株価を下げる原因になってしまいます。相続税の計算は亡くなった日の株価などを基準にするため、その後に株価が下がっても税額は安くならず、負担だけが重くのしかかることになります。

資産管理会社を活用した節税対策

上場会社の創業家によく利用されるのが、資産管理会社を設立する対策です。個人の財産を法人に移すことで、さまざまなメリットが得られます。

役員報酬による所得の分散と納税資金の確保

個人の配当所得などは高い所得税率が適用されることがありますが、資産管理会社を設立し、家族を役員にして役員報酬を支払うことで、所得を家族に分散させることができます。これにより、家族全体の所得税の負担を抑えつつ、将来の相続人となるご家族に少しずつ現金を移すことができ、相続税の納税資金を無理なく準備していくことが可能になります。

法人税率との差を活かした税負担の軽減

個人の所得税は最高で45%、住民税を合わせると55%になりますが、法人税の実効税率は約23%から33%程度と低く設定されています。資産管理会社に株式を持たせて配当金を受け取るようにすれば、税率の差額分だけ手元に残るお金が増え、効率よく資産を増やしていくことができます。

税金の種類 最高税率の目安
個人の所得税と住民税の合計 55%
法人税等の実効税率 約33%

相続時の株価評価を下げる効果

資産管理会社に上場株式を持たせている場合、相続が発生したときには上場会社の株式ではなく資産管理会社の株式を相続することになります。資産管理会社の株式を純資産価額方式で評価する際、保有する上場株式に含み益があれば、その含み益に対する法人税等相当額である37%を控除することができます。これにより、個人で直接上場株式を相続するよりも、財産の評価額を大きく引き下げることができるのです。

MBOによる非上場化を活用した相続対策

経営の自由度を高めつつ、強力な相続対策として注目されるのがMBOを活用した株式の非上場化です。

MBOとはどのような手法か

MBOとは、会社の経営陣が金融機関や投資ファンドなどから資金を借り入れ、市場に出回っている自社の株式を買い集めて上場を廃止する手法です。これにより、株主が創業家や経営陣のみとなり、外部の株主に気兼ねなく中長期的な経営戦略を進めることができるようになります。

非上場化がもたらす評価額引き下げ効果

上場していると、株価は市場での取引価格で評価されます。しかし、MBOによって非上場会社になれば、相続税の計算上は取引相場のない株式として評価されます。一般的に、非上場株式の評価額は上場しているときの時価よりも低く算定されることが多いため、大幅な相続税の節税効果が期待できます。

銀行借入を活用した純資産の圧縮

MBOを行う際、特別目的会社を設立して銀行から多額の資金を借り入れ、その資金で上場株式を買い取ります。その後、特別目的会社と対象会社を合併させることで、会社に多額の借入金が残ります。この借入金が会社の純資産を減らす要因となるため、結果として非上場株式としての評価額をさらに大きく引き下げる効果が生まれます。

生命保険や不動産を活用した確実な対策

資産管理会社やMBO以外にも、確実な相続対策として生命保険や不動産がよく活用されます。

生命保険の非課税枠の活用

生命保険の死亡保険金には、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの非課税枠が用意されています。例えば法定相続人が3人いれば、1,500万円までは相続税がかかりません。さらに、死亡保険金は相続発生後すぐに現金として受け取れるため、流動性の低い上場株式ばかりを持っている創業家にとって、非常に有効な納税資金の確保策となります。

不動産投資による財産評価の引き下げ

現金を不動産に換えることで、相続税の評価額を下げる方法もあります。例えば、1億円の現金をそのまま持っていれば1億円として評価されますが、1億円で建物を建てた場合、固定資産税評価額は建築費の約50%から70%程度になります。さらに人に貸していれば貸家として借家権割合の30%などが差し引かれるため、評価額を現金の半分以下に下げることも可能です。

早めの生前贈与で資産を次世代へ引き継ぐ

相続対策は、元気なうちから時間をかけて行うことが何より大切です。

暦年贈与の活用

暦年贈与とは、1年間に110万円までの財産をもらっても贈与税がかからない基礎控除を活用した方法です。毎年少しずつ、複数の子どもや孫に現金を贈与していくことで、将来の相続財産を確実に減らすことができます。ただし、亡くなる前7年間に行われた贈与は相続財産に持ち戻して計算されるため、できるだけ早いうちから始めることがポイントです。

相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する際に、累計2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。令和6年からは、これとは別に年110万円の基礎控除も新設されました。贈与した財産は相続のときに相続財産に足して計算されますが、計算される価値は贈与したときの価値になります。そのため、将来値上がりしそうな自社株式などを今のうちに贈与しておくことで、値上がり分の相続税を節税できる効果があります。

贈与税の制度 特徴と非課税枠
暦年贈与 受贈者1人あたり年間110万円まで非課税
相続時精算課税 累計2,500万円まで非課税(別途年110万円の控除あり)

まとめ

上場会社の創業家が抱える相続税の悩みは、対策をしないと会社の存続さえ脅かしかねない重大な問題です。しかし、資産管理会社の活用やMBOによる非上場化、生命保険や不動産の活用、そして早めの生前贈与など、取り得る対策はいくつもあります。どの方法がご自身の状況に合っているかはケースバイケースですので、早い段階から信頼できる専門家と一緒に計画を立て、大切な資産と会社を次の世代へしっかりと引き継いでいきましょう。

参考文献

国税庁 No.4155 相続税の税率

国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

上場会社創業家の相続対策のよくある質問まとめ

Q.上場会社創業家の相続対策で最も重要なことは何ですか?

A.最も重要なのは、多額になる傾向がある相続税の納税資金の確保と自社株の評価額引き下げを計画的に行うことです。

Q.資産管理会社を作るメリットは何ですか?

A.家族への所得分散により納税資金を準備できる点や、純資産価額方式の37%控除ルールを活用して株価評価を下げられる点が大きなメリットです。

Q.MBOによる非上場化は相続対策になりますか?

A.はい、なります。上場株式から非上場株式になることで評価方法が変わり、さらに銀行借入による借入金が会社の純資産を圧縮するため、大幅な評価減が期待できます。

Q.生命保険はどのように活用すればよいですか?

A.500万円に法定相続人の数を掛けた非課税枠を利用して非課税で財産を残せるほか、すぐに現金化できるため納税資金として非常に有効です。

Q.相続税の最高税率は何パーセントですか?

A.法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超える部分について、最高税率の55%が適用されます。

Q.贈与税の暦年課税と相続時精算課税はどちらが良いですか?

A.毎年少しずつ無税で現金を移転したい場合は暦年課税、将来値上がりが見込まれる自社株などを今の低い評価額でまとめて渡したい場合は相続時精算課税が適しています。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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