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不動産セキュリティトークンとは?1口100万円からの新しい不動産投資を徹底解説

2025-11-27
目次

「不動産投資に興味はあるけれど、高額な初期費用や管理の手間が心配…」と感じていませんか?そんな方にこそ知っていただきたいのが、新しい不動産投資の形、不動産セキュリティトークン(ST)です。この記事では、不動産STの仕組みからメリット・デメリット、税金の話まで、わかりやすく解説していきますね。

そもそも不動産セキュリティトークン(ST)って何?

なんだか難しそうな名前ですが、仕組みは意外とシンプルなんですよ。不動産セキュリティトークンとは、ひと言でいうと「デジタル化された不動産の証券」のことです。これまで紙や電子データで管理されていた株式や債券のように、不動産への投資の権利をデジタル化し、ブロックチェーンという技術を使って管理するものを指します。

セキュリティ・トークン(ST)の仕組み

まず、特定の不動産(例えば、都心のオフィスビルや人気のホテルなど)から得られる賃料収入や売却益を受け取る権利を、小口の「トークン」というデジタルデータに分割します。このトークンを投資家が購入することで、その不動産のオーナーの一人のような形になれる、という仕組みです。資金調達のためにこのトークンを発行することをSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)と呼びます。

ブロックチェーン技術の役割とは?

ブロックチェーンと聞くと仮想通貨をイメージするかもしれませんが、不動産STで使われるのは、より安全性が高い「プライベート型」や「コンソーシアム型」と呼ばれるものです。この技術は、取引の記録を複数のコンピューターで共有して管理するため、データの改ざんが非常に難しく、透明性と安全性が高いのが特徴です。誰がどのトークンを保有しているか、という権利の記録が正確かつ安全に行われるので、安心して取引ができるんですよ。

なぜ今、注目されているの?

注目されている理由は、大きく2つあります。1つ目は、2020年5月に施行された改正金融商品取引法で、セキュリティトークンが「電子的記録移転有価証券表示権利等」として法的に位置づけられ、投資家保護のルールが整備されたこと。2つ目は、これにより、これまで機関投資家などプロの世界が中心だった大規模な不動産への投資が、個人でも100万円程度の少額から参加できるようになったことです。資産形成の新しい選択肢として、期待が集まっているんですね。

不動産STと他の不動産投資との違いは?

不動産STは、これまでの不動産投資とどう違うのでしょうか?代表的な「現物不動産投資」や「J-REIT」と比較しながら、その特徴を見ていきましょう。

現物不動産投資との比較

現物不動産投資は、マンションの一室や一棟アパートなどを実際に購入する方法です。不動産STは、この現物不動産投資の「特定の物件に投資する」という感覚に近いですが、大きな違いがいくつかあります。

比較項目 不動産セキュリティトークン(ST)
投資単位 小口(1口100万円程度から)
物件の選択 専門家が厳選した優良物件
運用・管理 専門家(アセットマネージャー)に任せられる
流動性(換金しやすさ) 限定的(市場がまだ発展途上)

J-REIT(不動産投資信託)との比較

J-REITも少額から始められる不動産への投資商品ですが、投資対象が異なります。J-REITは数十〜数百の物件をまとめた「詰め合わせパック」のようなもの。一方、不動産STは「このビル」「このホテル」といった特定の物件にピンポイントで投資できるのが大きな違いです。

比較項目 不動産セキュリティトークン(ST)
投資対象 単一または少数の特定物件
価格変動要因 主に裏付けとなる不動産の価値や収益力
市場の影響 株式市場などの金融市場全体の動きの影響は受けにくい傾向

不動産小口化商品との比較

不動産特定共同事業法に基づく「不動産小口化商品」も、特定の不動産に少額から投資できる点で不動産STと似ています。不動産STは、ブロックチェーン技術を活用することで、権利の移転や管理の効率化・透明化を図っている点が大きな特徴です。将来的には、二次流通市場が整備されることで、不動産小口化商品よりも高い流動性が期待されています。

不動産セキュリティトークンのメリット

では、投資家にとって不動産STには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主なポイントを3つご紹介します。

少額から始められる手軽さ

最大のメリットは、やはり少額から投資できることでしょう。通常であれば数千万円から数億円といった資金が必要な都心の一等地のオフィスビルや高級ホテル、大規模な物流施設などにも、1口100万円程度から投資が可能です。これにより、不動産投資へのハードルがぐっと下がります。

運用・管理の手間がかからない

現物不動産投資では、賃貸募集や入居者対応、建物の修繕管理など、オーナー自身が行うべき業務がたくさんあります。しかし、不動産STでは、物件の運用・管理はすべて不動産のプロであるアセットマネージャーが行ってくれます。投資家は、面倒な手間をかけることなく、分配金(配当)を受け取ることができるのです。

魅力的な物件に投資できる

個人では到底手の届かないような、希少性の高い優良物件に投資できるのも大きな魅力です。例えば、有名ブランドのホテルや都心のランドマーク的な商業施設など、専門家が厳選した質の高い不動産が投資対象となるケースが多くあります。自分の好きな施設や応援したい事業の不動産を選んで投資する、といった楽しみ方もできますね。

不動産セキュリティトークンのデメリットと注意点

魅力的な不動産STですが、もちろん注意すべき点もあります。投資を始める前には、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。

流動性がまだ低い

不動産STは比較的新しい市場のため、株式やJ-REITのように「売りたいときにいつでも売れる」というわけではありません。二次流通(中古売買)の市場はまだ整備の途上にあり、銘柄によっては譲渡が制限されている場合もあります。そのため、基本的には運用期間満了まで持ち続けることを前提とした、中長期的な視点での投資が求められます。

元本保証ではない

これはあらゆる投資に共通することですが、不動産STも元本が保証されているわけではありません。不動産市況の悪化や金利の変動、賃料収入の減少などにより、投資対象不動産の価値が下落する可能性があります。その結果、分配金が予想より少なくなったり、運用期間終了時の償還額が投資した元本を下回ったりするリスクがあります。

ブロックチェーン技術への理解

ブロックチェーンは安全性の高い技術ですが、100%リスクがないわけではありません。プラットフォームの運営に不確実性があったり、システム障害が発生したりする可能性もゼロではありません。新しい技術であるため、こうした技術的な側面のリスクについても、ある程度は理解しておく必要があります。

不動産セキュリティトークンにかかる税金

投資で利益が出たら、税金のことも考えなければなりません。不動産STから得られる利益は、主に「分配金」と「譲渡益」の2つに分けられます。

分配金(インカムゲイン)の税金

運用期間中に受け取る分配金は、所得税法上「雑所得」として扱われるのが一般的です。雑所得は他の所得(給与所得など)と合算して税額を計算する「総合課税」の対象となります。税率は所得金額に応じて変動し、住民税と合わせて15%から最大55%となります。ただし、分配金の支払いの際に、20.42%(所得税および復興特別所得税)が源泉徴収されることが多いため、原則として確定申告が必要です。

譲渡益(キャピタルゲイン)の税金

保有している不動産STを売却して得た利益(譲渡益)については、その取引が営利目的で継続的に行われているかによって所得区分が変わります。

  • 譲渡所得:値上がり益(キャピタルゲイン)を目的とした譲渡の場合。総合課税の対象となり、所有期間が5年以内か5年を超えるかで税率が変わります。
  • 雑所得または事業所得:営利を目的として継続的に売買を行っている場合。

個々のケースによって判断が異なるため、詳しくは税務署や税理士などの専門家にご相談ください。

相続した場合の税金

不動産STは相続財産にもなります。相続税を計算する際の評価額は、個別の銘柄や取引状況によって異なりますが、基本的には金融商品取引所に上場されている有価証券の評価方法に準じて評価されると考えられます。現物不動産のように小規模宅地等の特例は適用できないため、注意が必要です。

まとめ

不動産セキュリティトークンは、ブロックチェーン技術を活用することで、これまで個人には難しかった大規模で優良な不動産への投資を、少額から手軽に始められるようにした画期的な仕組みです。運用管理の手間がかからないという大きなメリットがある一方で、流動性が低いなどのデメリットも存在します。新しい投資の選択肢として、その特性やリスクをよく理解したうえで、ご自身の資産ポートフォリオに加えることを検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係|国税庁

NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)|国税庁

不動産セキュリティトークンのよくある質問まとめ

Q.不動産セキュリティトークン(STO)とは何ですか?

A.ブロックチェーン技術を活用して、不動産の権利を小口のデジタル証券(トークン)にしたものです。これにより、従来は難しかった高額な不動産への投資を少額から始めることができます。

Q.不動産クラウドファンディングとの違いは何ですか?

A.不動産セキュリティトークンは金融商品取引法上の「有価証券」として扱われ、理論上は二次市場での売買が可能です。一方、不動産クラウドファンディングは匿名組合契約に基づく出資が一般的で、原則として満期まで換金が難しい点が大きな違いです。

Q.どのようなメリットがありますか?

A.一番のメリットは「少額から投資できる手軽さ」です。また、スマートフォンなどで資産管理がしやすい「利便性の高さ」や、将来的にはトークンを売買できる「流動性の向上」も期待されています。

Q.デメリットやリスクはありますか?

A.不動産そのものの価格変動リスクや空室リスクが存在します。また、まだ市場が新しいため、希望するタイミングで売買できない流動性リスクも考えられます。

Q.どうすれば始められますか?

A.まずは不動産セキュリティトークンを取り扱うプラットフォーム(証券会社など)で口座を開設する必要があります。その後、募集されているファンドを選び、投資の申し込みを行うのが一般的な流れです。

Q.税金はどうなりますか?

A.分配金から得られる利益は、多くの場合「雑所得」として総合課税の対象となります。売却による利益については課税関係が異なる場合があるため、詳細は専門家にご確認ください。

事務所概要
社名
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