最近よく耳にする「不動産M&A」。なんだか難しそう…と感じていませんか?実は、不動産M&Aは、通常の不動産売買よりも税金の面で大きなメリットがある、とても賢い選択肢なんです。この記事では、不動産M&Aの仕組みから具体的な手法、メリット・デメリットまで、専門的な内容を誰にでも分かりやすく、優しく解説していきますね。
不動産M&Aとは?通常の不動産売買との違い
まず、不動産M&Aがどんなものか、基本的なところからお話ししましょう。一般的なM&Aは、会社そのもの(事業)を手に入れるために行われますよね。一方、不動産M&Aは、「特定の不動産を手に入れること」を一番の目的として、その不動産を所有している会社ごと買収する方法なんです。
なぜ会社ごと買収するの?
「不動産だけ欲しいのに、なぜ会社ごと?」と不思議に思いますよね。その一番の理由は、税金がお得になるケースが多いからです。不動産そのものを売買すると、不動産取得税や登録免許税など、さまざまな税金がかかります。しかし、不動産M&Aは会社の株式を売買する形をとるので、これらの税金がかからず、売り手側も買い手側もコストを抑えられる可能性があるんです。
通常の不動産売買との違いを整理
ここで、通常の不動産売買と不動産M&Aの違いを分かりやすく表で比べてみましょう。一番大きな違いは、取引の対象が「不動産そのもの」か「不動産を持つ会社の株式」かという点です。
比較項目 | 内 容 |
取引の対象 | 通常の不動産売買では「不動産そのもの」、不動産M&Aでは「不動産を持つ会社の株式」です。 |
売り手への課税 | 不動産売買では売却益に法人税など(約30%~34%)、不動産M&Aでは株式譲渡益に所得税など(約20.315%)が課されます。 |
買い手への課税 | 不動産売買では不動産取得税や登録免許税がかかりますが、不動産M&Aでは原則としてかかりません。 |
不動産M&Aの主な手法(スキーム)
不動産M&Aには、大きく分けて2つの代表的な方法があります。どちらの方法を選ぶかによって、手続きや税金の扱いが変わってくるので、それぞれの特徴を掴んでおきましょう。
株式譲渡
株式譲渡は、最もシンプルで分かりやすい方法です。これは、不動産を所有している会社の株式の全部または大部分を買い手が買い取ることで、会社の経営権を取得する手法です。買い手は、子会社となった会社を通じて、間接的に目的の不動産を所有することになります。手続きが比較的簡単で、時間もかかりにくいのがメリットですね。
会社分割
会社分割は、少し専門的な手法になります。これは、売り手企業の中から、目的の不動産に関連する事業だけを切り出して新しい会社を作り(新設分割)、その新会社の株式を買い手に譲渡する方法です。売り手企業に不動産以外の事業や資産が多くある場合に、「欲しい不動産だけを効率よく手に入れたい」という買い手のニーズに応えることができます。ただし、手続きが複雑で時間もかかる傾向にあります。
不動産M&Aでどれくらい税金が変わるの?
不動産M&Aの最大の魅力は、やはり税金のメリットです。具体的にどれくらい変わるのか、不動産を単純に売却した場合と比較しながら見ていきましょう。
不動産を「売買」した場合の税金
会社が所有する不動産を売却すると、その利益(譲渡益)に対して法人税などが約30%~34%課税されます。さらに、会社を清算して残ったお金を株主(オーナー社長など)が受け取ると、そのお金に対して配当所得として所得税がかかります。所得額によっては最高で約55%もの税率になることもあり、手元に残るお金が大きく減ってしまう可能性があるんです。
不動産M&A(株式譲渡)の場合の税金
一方、不動産M&Aで会社の株式を売却した場合、株主(オーナー社長など)が得た利益(譲渡所得)にかかる税金は、所得税・住民税などを合わせて約20.315%(申告分離課税)です。会社に法人税がかからず、株主個人の税金だけで済むため、トータルで見ると手元に残る金額が大きく増えるケースが多いのです。これは非常に大きなメリットですよね。
買い手側の税金メリット
買い手側にも大きなメリットがあります。通常の不動産売買では、不動産の評価額に対して不動産取得税(評価額の3%~4%)や、所有権移転登記のための登録免許税(評価額の2%)がかかります。例えば5億円の不動産なら、単純計算で2,500万円以上の税金が必要になることも。不動産M&Aでは会社の所有者が変わるだけなので、これらの税金が原則かからず、初期費用を大幅に抑えることができます。
不動産M&Aのメリットを整理
ここまでの内容を踏まえて、売り手側と買い手側、それぞれの立場から見た不動産M&Aのメリットをまとめてみましょう。
売り手側のメリット
売り手側の最大のメリットは、やはり大幅な節税効果です。株式譲渡益にかかる税率は約20.315%と、法人税や配当所得にかかる税率より低く抑えられます。また、会社ごと譲渡するため、会社をたたむ際にかかる廃業コスト(登記費用、在庫処分費用など)が不要になるのも嬉しいポイントです。事業も一緒に引き継いでもらえれば、大切な従業員の雇用を守ることにも繋がります。
買い手側のメリット
買い手側は、先ほどお話しした不動産取得税や登録免許税がかからないという直接的な節税メリットが大きいです。これにより、不動産を割安な価格で取得できる可能性があります。また、通常の不動産市場には出てこないような優良な物件(企業の自社ビルなど)を手に入れられるチャンスがあるのも、不動産M&Aならではの魅力と言えるでしょう。
知っておきたい!不動産M&Aのデメリットと注意点
メリットの多い不動産M&Aですが、もちろん良いことばかりではありません。事前に知っておくべきデメリットや注意点もしっかりと確認しておきましょう。
売り手側のデメリット
一番のデメリットは、買い手を見つけるのが難しい場合があることです。不動産単体ではなく会社ごと引き受けてくれる相手を探す必要があるため、通常の不動産売買よりも相手が限定されます。また、M&Aの手続きは交渉から契約まで半年から1年以上かかることも珍しくなく、時間がかかる点も考慮しておく必要があります。
買い手側のデメリット
買い手側にとって最も注意すべきなのは、売り手企業の隠れたリスクを引き継いでしまう可能性があることです。例えば、帳簿には載っていない債務(簿外債務)や、従業員とのトラブル、過去の税務処理の問題など、不動産以外のマイナス要素もすべて引き継ぐことになります。そのため、契約前には専門家による徹底的な調査(デューデリジェンス)が不可欠です。
税務上の注意点
不動産M&Aは節税メリットが大きい反面、税務署から「租税回避行為」と見なされないよう注意が必要です。特に、所有期間が5年以下の土地が資産の総額の70%以上を占める会社の株式を売却する場合などは、株式の譲渡ではなく土地の短期譲渡と見なされ、税率が約39%と高くなる可能性があります。このような特殊なケースに該当しないか、事前に専門家へ相談することがとても大切です。
まとめ
不動産M&Aは、不動産の取得を目的として、その不動産を所有する会社ごと売買する手法です。通常の不動産売買と比べて、売り手・買い手双方に大きな税金面のメリットがあるのが最大の特徴です。売り手は手取り額を最大化でき、買い手は取得コストを抑えられます。ただし、買い手を見つける難しさや、会社が抱える潜在的なリスクを引き継ぐ可能性など、注意すべき点も存在します。不動産M&Aを成功させるためには、不動産とM&Aの両方に詳しい専門家のサポートを受けながら、メリットとデメリットを十分に理解した上で慎重に進めることが何よりも重要です。もし少しでもご興味があれば、まずは専門家に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
国税庁 No.1529 短期所有土地の譲渡に類似する株式等の譲渡
国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
不動産M&Aのよくある質問まとめ
Q.不動産M&Aとは何ですか?
A.不動産を所有する会社を、株式譲渡や事業譲渡などの手法を用いて会社ごと売買することです。不動産そのものではなく、会社を取引の対象とします。
Q.不動産M&Aと通常の不動産売買の違いは何ですか?
A.不動産売買は「不動産そのもの」を売買するのに対し、不動産M&Aは「不動産を所有する会社」を売買する点に大きな違いがあります。
Q.不動産M&Aのメリットは何ですか?
A.許認可の引継ぎ、節税効果(不動産取得税が不要など)、取引の迅速化などが挙げられます。また、従業員や取引先との契約もそのまま引き継げる場合があります。
Q.不動産M&Aのデメリットや注意点は何ですか?
A.帳簿に載らない簿外債務や将来発生しうる偶発債務を引き継ぐリスクがあります。そのため、専門家による詳細なデューデリジェンス(企業調査)が不可欠です。
Q.不動産M&Aではどのような手法が使われますか?
A.主に、会社の経営権を全て譲渡する「株式譲渡」と、特定の事業(不動産事業など)だけを譲渡する「事業譲渡」があります。対象や目的に応じて最適な手法が選択されます。
Q.不動産M&Aにはどのような費用がかかりますか?
A.専門家への仲介手数料やアドバイザリー費用、デューデリジェンス(企業調査)費用、契約書作成費用などが発生します。