事業承継を考えるとき、ご親族にお任せするか、別の方法を選ぶか、とても悩みます。実は最近、会社を上場させるIPOを事業承継の手段として選ぶ経営者さまが増えているんです。この記事では、IPOを活用した事業承継について、メリットや注意点などを分かりやすくお話ししていきます。
事業承継におけるIPOの役割と基礎知識
会社を次の世代へ引き継ぐ手段にはいくつかありますが、その中でもIPOは少し特別な役割を持っています。どのようなものなのか、一緒に見ていきましょう。
IPO(新規株式公開)とは何か?
IPOとは、まだ証券取引所に上場していない会社の株式を、新しく公開して誰でも自由に買えるようにすることを言います。これまでは経営者さまやごく一部の方だけが持っていた株式を、広く一般の投資家の方々に買ってもらうことで、会社の知名度や資金を集める力がぐんと上がる仕組みなんです。
事業承継の新しい選択肢としてのIPO
これまでの事業承継といえば、お子さまなどの親族に会社を譲るのが一般的でした。でも、後継者がなかなか見つからないことも多いですよね。そこで、IPOを行って会社をみんなの会社にすることで、社内や社外から広く優秀な経営のプロを後継者として迎えやすくなるんです。事業承継の選択肢を広げるための前向きなステップと言えますね。
親族内承継との決定的な違い
親族に引き継ぐ場合、会社の所有権である株式と経営権をセットでお渡しすることが多いです。一方、IPOでは株式を市場に公開するため、株式を持つ株主と会社を経営する社長を明確に分けることができるのが大きな違いです。
| 比較項目 | IPOによる事業承継 |
|---|---|
| 経営者の選び方 | 社内外の広い範囲から優秀な人材を抜擢できる |
| 株式の持ち方 | 市場を通じて多数の一般投資家へ分散される |
事業承継でIPOを選ぶメリット
IPOを目指すことには、会社にとっても経営者さまにとっても嬉しいメリットがたくさんあります。具体的にどのような良いことがあるのかをご紹介しますね。
後継者候補の選択肢がぐっと広がる
会社が上場すると、社会的な信頼性が高まり、優秀な人材が集まりやすくなります。そのため、親族や今の社員の中だけでなく、外部からも年収2,000万円から3,000万円クラスの素晴らしい経営プロフェッショナルをスカウトしやすくなるんです。この人に任せたいと思える方に出会える確率が高まるのは、大きな安心につながりますよね。
属人的経営から組織的経営への移行
創業社長さまのカリスマ性や勘で会社が動いている状態から、しっかりとしたルールや仕組みで動く組織的経営に変わることができます。IPOの審査では、社内の決済ルールなどが厳しくチェックされるため、社長さまがいなくても会社が自走できる素晴らしい組織に生まれ変わる良いきっかけになります。
資金調達力と社会的信用の向上
上場企業になると、銀行からの借り入れだけでなく、株式市場から直接、数億円から数十億円という大きな資金を集めることができるようになります。また、知名度が上がることで新しい取引先が数十社増えたり、新卒採用などで優秀な学生さんが来てくれやすくなったりと、会社がさらに大きく成長するための基盤が整いますよ。
事業承継でIPOを選ぶデメリットと注意点
もちろん、良いことばかりではありません。IPOには乗り越えなければならない壁もいくつかあります。事前にしっかりと知っておくことが大切です。
準備にかかる莫大なコストと時間
IPOの準備には、だいたい3年から5年ほどの長い時間が必要です。さらに費用もかかります。たとえば、外部の専門家に払う監査報酬として年間1,000万円から2,000万円程度、証券会社への手数料や社内体制を整えるためのシステム費用などで、上場するまでに合計で5,000万円から1億円近くのコストがかかることも珍しくありません。
| IPOにかかる主な費用 | 費用の目安金額 |
|---|---|
| 監査法人への監査報酬 | 年間1,000万円〜2,000万円 |
| 証券代行機関への手数料等 | 年間400万円〜800万円 |
上場後の社会的責任と情報開示義務
上場すると、会社の業績や重要な情報を、ルールに従って世の中にきちんと発表し続けなければなりません。これを適時開示と呼びます。3ヶ月ごとに決算を発表したり、株主総会をしっかりと運営したりと、これまでになかった事務作業や管理の手間が上場している限りずっと続くことになります。
買収リスクと経営権の変動
株式が誰でも買えるようになるということは、全く知らない投資家が会社の株をたくさん買う可能性もあるということです。場合によっては、想定していなかった相手から株式の過半数である51%以上を買い集められ、経営権を奪われる買収リスクもゼロではありません。経営を安定させるためには、信頼できる株主に株を持ってもらうなどの対策が必要です。
その他の事業承継手法との比較
IPO以外にも、事業承継にはいくつかの方法があります。それぞれの特徴を比べながら、ご自身の会社に一番合う方法を考えてみましょう。
M&A(第三者への売却)との違いと特徴
M&Aは、会社を別の企業などに買ってもらう方法です。M&Aの場合、買い手が見つかれば半年から1年程度で素早く承継が完了することが多いです。一方で、買い手企業の文化に合わせなければならず、これまでの会社の雰囲気や理念が変わってしまう心配があります。IPOは自社の独立性を保ちながら成長できる点が大きな違いですね。
社内での事業承継との違い
今いる役員や従業員に会社を譲る方法もあります。この場合、会社の事業をよく知っている人に任せられるので安心ですが、株式を買い取るために数千万円から数億円といった莫大な資金をその従業員が用意しなければならないのが最大の壁になります。IPOであれば、そうした個人の資金負担を心配する必要がありません。
親族内承継との違い
先ほども少し触れましたが、親族内承継はお子さまなどに会社を譲る一番身近な方法です。理念や想いを引き継ぎやすい反面、後継者の育成に5年以上の時間がかかったり、相続税として多額の現金(例えば株式の評価額が5億円なら約2億円の税金など)を納めなければならない場合があったりします。
IPOに向けた具体的な準備と流れ
もしIPOを目指そうと決めたら、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。大まかな流れを分かりやすくご説明しますね。
外部専門家の選定と内部統制の構築
まずは、会社の財務状況を正しくチェックしてくれる専門機関や、上場に向けたアドバイスをしてくれる証券会社を見つけることから始まります。そして、社内のルールをしっかりと整え、誰がやっても経理や業務の間違いが起きないような仕組みを作っていきます。
資本政策と事業計画の策定
次に、誰にどれくらいの株式を持ってもらうかという資本政策を立てます。これは一度決めるとなかなかやり直しがきかない重要なポイントです。同時に、これから先3年間の間に売上を10億円から30億円にどう伸ばしていくかという、具体的な事業計画を数字で細かく作り上げます。
上場審査に向けた体制づくり
準備が整ってきたら、証券取引所の厳しい審査を受けます。会社の過去の業績だけでなく、将来性や、労働基準法などの法律をしっかり守っているかなど、数え切れないほどの項目をチェックされます。これを無事にクリアして初めて、晴れて上場となります。
まとめ
事業承継の手段としてIPOを選ぶことは、会社をさらに大きく成長させ、創業者さまに依存しない強い組織を作るための素晴らしい選択肢です。5,000万円以上のコストや3年以上の時間はかかりますが、それ以上の信用や優秀な人材といった宝物を手に入れることができます。他の方法ともじっくり比べながら、一番幸せな未来の形を見つけてくださいね。
事業承継とIPOのよくある質問まとめ
Q.事業承継においてIPOを選ぶ最大のメリットは何ですか?
A.社会的な信用が高まり、優秀な後継者候補を社内外から広く探しやすくなることです。また、社長個人の手腕に頼る経営から、ルールに基づいた組織的な経営へと生まれ変わることができます。
Q.IPOの準備にはどれくらいの期間と費用がかかりますか?
A.一般的に準備期間として3年から5年程度必要です。また、監査報酬や証券会社への手数料などで、合計5,000万円から1億円近い費用がかかることが多くなっています。
Q.親族内承継とIPOの違いは何ですか?
A.親族内承継は株式と経営権をセットで親族に引き継ぎますが、IPOは株式を市場に公開するため、株式を所有する株主と会社を経営する社長を分けて考えることができる点が大きな違いです。
Q.IPOとM&Aではどちらが早く事業承継できますか?
A.一般的にはM&Aの方が早く、買い手が見つかれば半年から1年程度で完了することが多いです。IPOは準備に3年以上の期間がかかるため、長期的な計画が必要になります。
Q.上場することによるデメリットはありますか?
A.四半期ごとの決算発表など、情報を定期的に公開する義務が生じ、事務負担やコストが増加します。また、株式を広く公開するため、予期せぬ相手から買収されるリスクも発生します。
Q.従業員に会社を譲る場合とIPOはどう違いますか?
A.従業員に譲る場合、株式を買い取るための多額の資金をその従業員が用意しなければならないのが難点です。IPOであれば市場から資金を集めるため、個人の資金負担を気にする必要がありません。