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事業税の見込計上とは?法人成りや廃業時に損しないための具体的な計算方法と申告手順

2025-08-30
目次

個人事業主の方が法人成りをしたり、事業を廃業したりする際、税金の手続きで悩むことはありませんか。実は、事業を辞めた年の確定申告では事業税の見込計上という特別な手続きを行うことで、納める税金を大きく減らせる可能性があります。通常は翌年に支払う個人事業税を、前倒しで廃業した年の必要経費に含めることができるお得な制度です。この記事では、見込控除の具体的な計算方法や要件、確定申告での注意点をわかりやすく解説します。

事業税の見込計上(見込控除)の基本的な仕組み

事業税の見込計上とは、個人事業主が廃業した年に限り、翌年納付すべき個人事業税の見込額を計算し、その年の事業所得の必要経費として計上できる制度です。通常、個人事業税は納付書が届いて支払った年の経費になります。しかし、廃業した翌年は事業を行っていないため経費として計上する先がありません。そこで、特例として廃業した年の確定申告で見込額を計算して経費にすることが認められています。

翌年の経費にできない理由と特例の必要性

原則として、税金が必要経費になるタイミングは「納付が確定した日」または「実際に支払った日」です。事業を継続していれば、翌年の8月と11月に支払う事業税をその年の経費にできます。しかし、法人成りなどで廃業すると翌年は個人事業の所得がゼロになるため、せっかく支払った事業税を経費として差し引くことができず、結果として所得税や住民税を払い過ぎてしまうことになります。これを防ぐために事業税の見込計上が必要になります。

見込控除を適用するための具体的な要件

事業税の見込計上を行うには、事業所得が事業主控除額である年間290万円(月割計算あり)を超えていることが前提です。事業所得が290万円以下の場合はそもそも個人事業税が課税されないため、見込控除を行う必要はありません。また、廃業した年の確定申告書を提出する際に、経費としてあらかじめ計算した金額を含めて申告を済ませておく必要があります。

適用は義務ではなく任意

事業税の見込控除は、必ず行わなければならない義務ではありません。適用するかどうかは納税者の任意です。ただし、所得税率が最も低い税率の5%だとしても、経費が増えることで所得税や住民税(一律10%)、国民健康保険料などの負担が下がるため、基本的には適用したほうが手元に残るお金は多くなります。

事業税の見込計上の具体的な計算方法

事業税の見込計上額は、専用の計算式に当てはめて算出します。少し複雑に見えますが、順を追って計算すればご自身でも求められます。業種によって事業税率が異なるため、まずはご自身の業種の税率(3%、4%、5%のいずれか)を確認しましょう。ここでは最も一般的な税率5%の業種を例に解説します。

見込控除額を求める計算式

個人事業税の見込控除額は、以下の計算式で算出します。「(廃業した年の事業所得金額 + 青色申告特別控除額 - 事業主控除額) × 事業税率 ÷ (1 + 事業税率)」となります。事業所得金額は、事業税を見込計上する前の金額を使います。

事業主控除額の月割計算に注意

事業主控除額は年間で290万円ですが、年の途中で廃業した場合は営業していた月数に応じて月割計算を行います。計算式は「290万円 ÷ 12ヶ月 × 営業月数」です。例えば、4月30日に廃業した場合、営業月数は4ヶ月となるため、事業主控除額は「290万円 ÷ 12ヶ月 × 4ヶ月 = 96万6,667円(1,000円未満切り上げのため96万7,000円)」となります。

実際の計算シミュレーション(税率5%、4月末廃業の場合)

具体例で計算してみましょう。4月30日に廃業、事業税率5%、事業所得が500万円、青色申告特別控除が65万円だったとします。まず、事業所得と青色申告特別控除を足した565万円から、先ほど計算した月割の事業主控除額96万7,000円を引きます。残りの468万3,000円に税率の5%(0.05)を掛け、それを「1+0.05(1.05)」で割ります。結果は約22万3,000円となり、この金額が廃業年の経費として追加できる見込控除額です。

項目 計算例の金額
事業所得+青色申告特別控除 5,650,000円
事業主控除額(4ヶ月分) 967,000円
差引金額 4,683,000円
見込計上額(÷1.05) 約223,000円

確定申告時の手続きと必要書類

見込計上額を計算したら、実際に廃業した年の確定申告書にその金額を反映させます。ここでは、申告書への具体的な記入方法や、もし手続きを忘れてしまった場合の対処法について解説します。

収支内訳書や青色申告決算書への記入

計算した見込控除額は、青色申告決算書や収支内訳書の「租税公課」の欄に記入します。摘要欄には「事業税見込控除額」と記載しておくと、税務署に対しても何のための経費か明確に伝わります。その他の経費と合算して最終的な事業所得を算出し、確定申告書第一表の事業所得欄に転記します。

見込計上をし忘れた場合の更正の請求

もし、廃業年の確定申告で見込計上をするのを忘れてしまった場合でも諦める必要はありません。翌年、実際に都道府県から個人事業税の納税通知書が届き、税額が確定した日の翌日から2ヶ月以内であれば、更正の請求という手続きを行うことができます。これにより、納め過ぎた所得税を還付してもらうことが可能です。

法人成り時の事業税見込計上の注意点

法人成り(個人事業主から株式会社や合同会社になること)の場合、単なる廃業とは異なる点に注意が必要です。法人成りは、個人事業を廃業して新たに法人を設立するという形をとるため、個人と法人の税金手続きを明確に分ける必要があります。

個人の廃業日と法人の設立日の明確な区分

法人成りをする場合、事業税の見込計上を含めた個人の確定申告は「1月1日から廃業日」までの期間で計算します。法人の設立日以降に発生した売上や経費はすべて法人のものとなるため、個人の決算には含めません。廃業日までの所得を正確に計算しないと、見込計上額も間違ってしまうため、銀行口座の入出金日ではなく実際の取引日を基準に明確に区分しましょう。

消費税の処理にも要注意

個人事業主時代に消費税の課税事業者だった場合、法人成りする際に個人から法人へ事業用の資産(パソコンや車両など)を売却(譲渡)したとみなされ、そこに消費税がかかることがあります。この資産譲渡による収入は事業所得に含まれるため、事業税の見込計上額を計算する際の基準となる所得にも影響を与える可能性があります。漏れなく申告するよう注意してください。

事業税の支払い時期と経理処理

見込計上を行った後、実際に翌年になって納付書が届いた際の処理方法についても理解しておきましょう。見込計上はあくまで見込みであるため、実際の納付額と差額が生じることがあります。

実際の納付額との差額調整

見込計上した金額と、翌年実際に届いた納付書の金額が完全に一致しないことがあります。しかし、少額の差額であれば、すでに廃業しており翌年の個人事業としての収入や経費の計算がないため、原則として修正申告などを行う必要はありません。ただし、極端に計算を間違えており過大に経費計上していたような場合は、税務署から指摘を受ける前に修正申告を行いましょう。

納付時の経理処理は不要

廃業した年に全額を経費として見込計上しているため、翌年の8月や11月に実際に個人事業税を支払った際には、新たな経費としての経理処理は一切必要ありません。支払いは個人のプライベートな資金(法人成りしている場合は役員報酬など)から納付するだけで完了となります。

まとめ

事業税の見込計上は、個人事業を廃業する年や法人成りをする年にぜひ活用したい節税制度です。通常なら翌年に支払う個人事業税を、前倒しで廃業年の必要経費にできるため、所得税や住民税の負担を適正に抑えることができます。事業所得に青色申告特別控除を足した額から月割の事業主控除を引いて計算するなど、少し手間はかかりますが、金銭的なメリットは大きいです。もし確定申告時に計上し忘れても、後から更正の請求ができるため安心してください。正確な計算と漏れのない手続きで、損をしないようにしっかりと準備を進めましょう。

参考文献

国税庁 事業を廃止した場合の事業税の特例
国税庁 No.2072青色申告特別控除

事業税の見込計上に関するよくある質問まとめ

Q.事業税の見込計上とは何ですか?

A.個人事業を廃業した年に、翌年支払う予定の個人事業税を前倒しで見積もり、廃業した年の経費として計上できる制度です。

Q.事業税の見込計上は義務ですか?

A.義務ではなく任意ですが、適用することで所得税や住民税の負担を減らせるため、手元に残る資金が多くなるメリットがあります。

Q.どのような人が見込計上の対象になりますか?

A.廃業した年の事業所得が事業主控除額(年間290万円、年の途中の場合は月割)を超えており、個人事業税が課税される見込みの人が対象です。

Q.確定申告で見込計上を忘れたらどうなりますか?

A.翌年に事業税の納付書が届き、税額が確定した日の翌日から2ヶ月以内であれば更正の請求を行い、後から経費にして還付を受けることができます。

Q.見込計上額と実際の納付額に差があった場合はどうしますか?

A.見込計算のため少額のズレが生じるのは一般的であり、原則として修正申告などの追加手続きは不要です。

Q.法人成りした場合、事業税の支払いは法人のお金で行いますか?

A.個人事業税は個人の税金であるため、法人成り後であっても法人のお金ではなく、個人の資金(役員報酬など)から支払う必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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