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互助会の積立金は相続税申告でどう扱う?葬儀費用の控除も解説

2024-11-30
目次

故人が生前に葬儀費用として互助会に積み立てていた場合、相続税の申告でどう扱えば良いのか悩んでいませんか?互助会の積立金は相続財産になるのか、葬儀費用として控除できるのか、契約者によって扱いが異なるため注意が必要です。この記事では、互助会の収支を相続税申告書でどう表現するか、葬儀費用の控除について、具体例を交えながら分かりやすく解説します。

そもそも互助会とは?

互助会とは、将来の結婚式やお葬式などの冠婚葬祭に備えて、毎月一定の掛金を積み立てていくサービスのことをいいます。多くの場合は保険とは異なり、満期になっても現金で受け取れるわけではありません。積み立てた掛金に応じて、会員価格で葬儀などのサービスを受けられる「権利」を購入する、というイメージが近いかもしれませんね。いざという時の大きな出費に備えられるため、利用されている方も多い制度です。しかし、この「権利」という点が、相続の際には少し注意が必要なポイントになります。

互助会の積立金は相続税の対象?

「故人が積み立てていたものだから、そのまま葬儀費用として使って終わり」と考えてしまうかもしれませんが、税金の計算上はそう単純ではありません。故人が契約者となって積み立てていた互助会の権利は、「相続財産」として扱われます。なぜなら、その権利は故人が生前にお金を支払って得た価値のあるものだからです。そのため、預貯金や不動産と同じように、まずは相続財産としてきちんと評価し、申告書に記載する必要があります。

相続財産としての評価方法

では、互助会の権利はいくらの価値として評価すればよいのでしょうか。一般的には、相続開始時点(亡くなった日)で解約した場合に戻ってくる「解約返戻金」の金額で評価します。もし解約返戻金がない契約の場合は、すでに支払った掛金の総額などを基に評価することもあります。
正確な評価額を知るためには、加入している互助会に直接問い合わせて、「被相続人が亡くなった時点での解約返戻金の額がわかる証明書」などを発行してもらうのが最も確実です。相続手続きの一環として、忘れずに確認しましょう。

相続税申告書への記載方法

評価額がわかったら、相続税申告書に記載します。具体的には、「第11表 相続税がかかる財産の明細書」の「その他の財産」の欄に記載するのが一般的です。
例えば、以下のように記入します。

  • 種類:互助会契約に関する権利
  • 細目:〇〇互助会(積立金)
  • 所在場所等:〇〇互助会 本店所在地
  • 数量:1口
  • 単価・価額:500,000円(解約返戻金の額)

このように、他の財産と同じようにきちんとリストアップすることが大切です。これを忘れてしまうと、申告漏れを指摘される可能性があるので注意してくださいね。

互助会を利用した葬儀費用の相続税申告での扱い

さて、ここからが本題です。互助会の積立金を葬儀費用に充当した場合、相続税申告でどのように収支を表現すればよいのでしょうか。これは、互助会の契約者(掛金を支払っていた人)が誰だったかによって、扱いが大きく変わります。とても重要なポイントなので、しっかり確認していきましょう。

契約者が故人(被相続人)の場合

最も一般的なのが、亡くなったご本人が契約者だったケースです。この場合の考え方を、具体例で見てみましょう。

【例】

  • 葬儀費用の総額:250万円
  • 互助会の積立金からの充当額:50万円
  • 相続人が葬儀社に直接支払った額:200万円

この場合、相続税の申告では、以下の2つの処理を両方行う必要があります。

  1. 互助会の権利(解約返戻金相当額の50万円)を相続財産として計上する。
  2. 葬儀費用として、実際に支払った200万円ではなく、葬儀費用の総額である250万円を遺産総額から控除する。

「財産として50万円を足して、費用として250万円を引く」ということですね。結果的に、差し引き200万円分が控除されるのと同じ効果になりますが、申告書の上では財産と葬儀費用(債務)の両方を正しく記載することがルールです。

項目 金額の扱い
相続財産 互助会の権利(評価額50万円)をプラス計上
控除できる葬儀費用 葬儀費用総額(250万円)をマイナス計上

契約者が相続人(喪主など)の場合

次に、契約者が故人ではなく、喪主を務める長男など、相続人だったケースを見てみましょう。この場合、扱いは少しシンプルになります。

【例】

  • 葬儀費用の総額:250万円
  • 互助会の積立金からの充当額:50万円(相続人名義の契約から)
  • 相続人が葬儀社に直接支払った額:200万円

この場合の処理は以下の通りです。

  1. 互助会の権利は、もともと相続人自身の財産なので、故人の相続財産には含めません。
  2. 葬儀費用として、葬儀費用の総額である250万円を遺産総額から控除できます。

故人が契約者だった場合と比べて、相続財産に50万円が加算されない分、課税対象となる遺産が少なくなり、結果として相続税の負担が軽くなる可能性があります。契約者が誰になっているかは、必ず確認しましょう。

項目 金額の扱い
相続財産 計上しない(相続人自身の財産のため)
控除できる葬儀費用 葬儀費用総額(250万円)をマイナス計上

注意!葬儀費用として控除できるもの・できないもの

互助会を利用したかどうかに関わらず、相続税の計算では「葬儀費用」として遺産総額から差し引けるものと、そうでないものが法律で決められています。これを間違えると、税務調査で指摘されてしまう可能性もあるので、しっかり区別することが大切です。

控除できる費用の具体例

基本的には、お葬式そのものに直接必要だった費用が対象となります。迷ったら、「これがないと葬儀ができなかった」と考えられるかどうかで判断してみてください。

控除できる費用の種類 具体例
葬儀そのものにかかる費用 通夜・告別式の会場費、設営費、飲食代、遺影写真代など
宗教者への支払い お布施、読経料、戒名料、お車代、御膳料など
その他、葬儀に直接関連する費用 火葬料、埋葬料、納骨費用、遺体の運搬費用、死亡診断書の発行費用、お手伝いいただいた方への心付けなど

控除できない費用の具体例

一方で、以下の費用は葬儀費用として控除することはできません。特に香典返しや法要の費用は間違えやすいので注意しましょう。

控除できない費用の種類 具体例と理由
香典返しの費用 いただいた香典は非課税なので、そのお返し費用も控除の対象外となります。
墓地・墓石・仏壇などの購入費用 これらは祭祀財産といい、相続税が非課税のため、関連する費用も控除できません。
初七日や四十九日などの法要費用 これらは葬儀ではなく、その後の供養にあたるため対象外です。(ただし、告別式と一緒に行う繰り上げ初七日法要で、費用が葬儀代金と区別できない場合は控除できることもあります)
その他 死因を特定するための解剖費用、遠方からの参列者の交通費や宿泊費など

領収書がないお布施などはどうする?

お寺にお渡しするお布施や、葬儀社スタッフへの心付けなど、領収書が発行されない費用も少なくありません。「領収書がないと控除できないのでは?」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。領収書がなくても、支払いの事実が客観的にわかる記録があれば、葬儀費用として控除を認められます。

メモに残しておくべき項目

慌ただしい葬儀の最中ですが、支払いをしたらすぐにメモを取る習慣をつけましょう。税務署にきちんと説明できるよう、以下の項目を記録しておくことをお勧めします。

  • 支払った日付
  • 支払先の名称(例:「〇〇寺」など)
  • 支払った金額
  • 支払いの内容(例:「お布施として」「お車代として」など)

これらの情報を手書きのメモやスマートフォンのメモ機能などに残し、他の領収書と一緒に大切に保管しておきましょう。この一手間が、後の相続税申告でとても役立ちます。

まとめ

互助会を利用した際の相続税申告について、ポイントを整理しましょう。

  • 故人名義の互助会の権利は相続財産として申告が必要です。
  • 互助会を使った葬儀費用の扱いは契約者が誰かで変わります。
  • 契約者が故人の場合:権利を相続財産に計上し、葬儀費用の総額を控除します。
  • 契約者が相続人の場合:権利は相続財産に含めず、葬儀費用の総額を控除します。
  • 葬儀費用として控除できるものとできないものの区別をしっかり行いましょう。
  • 領収書のないお布施なども、支払いの記録メモがあれば控除の対象になります。

互助会の扱いは少し複雑に感じるかもしれませんが、仕組みを理解すれば正しく申告することができます。もし判断に迷うことがあれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

互助会の相続税申告に関するよくある質問まとめ

Q.故人が加入していた互助会は、相続税の申告対象になりますか?

A.はい、相続財産として申告の対象となります。互助会に加入する権利は「契約上の地位」とみなされ、相続財産に含まれます。相続開始時点での解約返戻金相当額などで評価します。

Q.互助会を葬儀で利用しました。相続税申告書にはどう書けばいいですか?

A.まず互助会の権利を相続財産として計上します。同時に、その権利を使って支払った葬儀費用を「債務・葬式費用」として相続財産から控除します。結果的に相殺されることが多いですが、両方の記載が必要です。

Q.互助会の権利は、相続税申告書のどこに記載しますか?

A.相続税申告書の第11表「相続税がかかる財産の明細書」の「その他の財産」の欄に記載します。財産の名称を「互助会加入権(〇〇互助会)」などとし、評価額を記入してください。

Q.互助会を解約して解約返戻金を受け取りました。このお金はどう扱いますか?

A.解約返戻金は、故人から承継した相続財産です。相続税の申告が必要な場合は、他の預貯金などと同様に相続財産として申告書に記載する必要があります。

Q.互助会の評価額はどのように計算すればよいですか?

A.相続開始日(亡くなった日)時点の「解約返戻金相当額」で評価するのが一般的です。互助会に問い合わせて、相続開始日時点での解約返戻金額を確認し、その金額を証明する書類を入手してください。

Q.互助会の名義変更だけ済ませてまだ使っていません。この場合も申告は必要ですか?

A.はい、必要です。相続税の申告は、相続開始時点での財産状況に基づいて行います。実際に利用したかどうかや名義変更のタイミングにかかわらず、故人が所有していた権利として相続財産に計上する必要があります。

事務所概要
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