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亡くなった親の銀行口座解約、必要書類は?手続きをわかりやすく解説

2025-07-29
目次

大切なご家族が亡くなられた後、深い悲しみの中、さまざまな手続きに追われることになります。その中でも、亡くなった親の銀行口座の解約は、相続において避けては通れない大切な手続きの一つです。手続きと聞くと「なんだか難しそう…」「書類がたくさん必要で大変そう…」と感じてしまうかもしれません。でも、ご安心ください。この記事では、銀行口座の解約手続きに必要な書類や流れを、できるだけ分かりやすく、順を追って解説していきます。この記事を読めば、落ち着いて手続きを進めることができるはずです。

まず初めにやるべきこと:銀行への連絡と口座凍結

親御さんが亡くなられたら、まず最初に行うべきことは、取引のあった銀行へ死亡の事実を連絡することです。連絡をすると、その口座は「口座凍結」という状態になります。これは、亡くなった方の財産を保護し、相続人が確定するまで誰も預金を引き出せないようにするための重要な措置です。公共料金などの引き落としも止まってしまうので、必要に応じて契約先に連絡し、支払い方法の変更手続きも進めましょう。
連絡をしないまま預金を引き出してしまうと、借金などのマイナスの財産も含めてすべて相続する「単純承認」と見なされ、後で相続放棄ができなくなる可能性もあるため、注意が必要です。

銀行口座の解約手続き、4つのパターンと必要書類

銀行口座の解約手続きは、故人が遺言書を残しているか、また相続人同士で話し合う遺産分割協議書があるかによって、必要な書類や手順が変わってきます。ご自身の状況がどのパターンに当てはまるかを確認し、それに合った準備を進めましょう。

【パターン1】遺言書があり、遺言執行者がいる場合

遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は、手続きが比較的スムーズに進みます。遺言執行者が中心となって、解約手続きを進めることになります。

必要書類 説   明
遺言書(原本) 自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の「検認済証明書」が必要です。公正証書遺言の場合は不要です。
亡くなった方の戸籍謄本 死亡の事実が記載されているものが必要です。
遺言執行者の印鑑証明書 発行から6ヶ月以内のものを用意しましょう。
預金を受け取る方の実印と印鑑証明書 遺言執行者とは別に、預金を受け取る相続人のものも必要になる場合があります。
亡くなった方の通帳・キャッシュカード等 紛失した場合は、その旨を銀行に伝えましょう。
銀行所定の払戻請求書 銀行の窓口でもらえます。遺言執行者の実印を押印します。

【パターン2】遺言書があり、遺言執行者がいない場合

遺言書はあるものの、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員で手続きを行うか、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう必要があります。ここでは、相続人全員で手続きを行う場合の必要書類をご案内します。

必要書類 説   明
遺言書(原本)と検認済証明書 公正証書遺言以外は、家庭裁判所の検認手続きが必要です。
亡くなった方の戸籍謄本 死亡の事実が記載されているものが必要です。
相続人全員の戸籍謄本 相続関係を確認するために必要です。
預金を受け取る方の印鑑証明書 発行から6ヶ月以内のものを用意しましょう。
亡くなった方の通帳・キャッシュカード等 見つからない場合は銀行に相談してください。
銀行所定の払戻請求書 銀行の窓口でもらえます。預金を受け取る相続人の実印を押印します。

【パターン3】遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、「遺産分割協議書」を作成します。この協議書に基づいて、銀行は手続きを進めてくれます。

必要書類 説   明
遺産分割協議書(原本) 相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 相続人を確定させるために必ず必要になります。
相続人全員の戸籍謄本 現在の戸籍謄本が必要です。
相続人全員の印鑑証明書 発行から6ヶ月以内など、銀行によって有効期限が定められています。
亡くなった方の通帳・キャッシュカード等 手元にあるものをすべて持参しましょう。
銀行所定の払戻請求書 預金を受け取る代表相続人の実印を押印します。

【パターン4】遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合は、法定相続分に従って分けるか、相続人全員の同意のもとで手続きを進めることになります。この場合、銀行所定の書類に相続人全員が署名・捺印する必要があります。

必要書類 説   明
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 相続人を確定させるために必要です。集めるのに時間がかかることもあります。
相続人全員の戸籍謄本 現在の戸籍謄本が必要です。
相続人全員の印鑑証明書 手続きに参加する相続人全員分が必要です。
亡くなった方の通帳・キャッシュカード等 故人の口座に関するものはすべて用意しましょう。
銀行所定の払戻請求書 相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

※上記は一般的な例です。金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、必ず事前に取引銀行に確認してください。

必要書類の入手方法と注意点

相続手続きで特に準備が大変なのが「亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」です。本籍地を何度も変更している場合、それぞれの市区町村役場から取り寄せる必要があり、時間がかかることがあります。2024年3月からは、最寄りの市区町村役場で全国の戸籍謄本をまとめて請求できる「広域交付制度」も始まっていますので、活用すると便利です。

また、印鑑証明書は、多くの銀行で発行後3ヶ月または6ヶ月以内と有効期限が定められています。手続きに行く直前に取得するのが安心です。

急な出費に!遺産分割前の預貯金払戻し制度

「葬儀費用など、すぐにお金が必要なのに口座が凍結されて困った…」という場合のために、「預貯金の仮払い制度」があります。これは、遺産分割協議が終わる前でも、相続人が単独で一定額の預金を引き出せる制度です。

引き出せる金額には上限があり、以下の計算式で求められる金額か、150万円のどちらか低い方の金額となります。

(相続開始時の預金残高)× 1/3 ×(払戻しを求める相続人の法定相続分) ≦ 150万円

例えば、預金残高が900万円で、相続人が配偶者と子供2人だった場合、配偶者が単独で引き出せる額は以下のようになります。

計算式 900万円 × 1/3 × 1/2(配偶者の法定相続分) = 150万円
払戻し可能額 150万円(上限額)

この制度は金融機関ごとに利用できるので、複数の銀行に口座があれば、それぞれの銀行で手続きが可能です。ただし、引き出したお金の使い道は他の相続人にきちんと説明できるように、領収書などを保管しておきましょう。

手続き全体の流れと完了までの期間

亡くなった親の銀行口座を解約するまでの、大まかな流れをまとめました。

  1. 銀行へ連絡:電話または窓口で死亡の事実を伝え、手続きの案内と必要書類を受け取ります。
  2. 遺言書の確認・遺産分割協議:遺言書の有無を確認し、なければ相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
  3. 必要書類の収集:戸籍謄本や印鑑証明書などを市区町村役場で取得します。
  4. 銀行窓口で手続き:集めた書類と銀行所定の請求書を提出します。来店予約をしておくとスムーズです。
  5. 払戻しの実行:書類に不備がなければ、通常1週間から2週間程度で指定した相続人の口座に預金が振り込まれ、解約手続きは完了です。

まとめ

亡くなった親の銀行口座の解約は、必要書類が多く、少し複雑に感じるかもしれません。しかし、一つひとつの手順を落ち着いて進めていけば、必ず完了できます。

まずは、取引のあった銀行へ連絡し、ご自身の状況(遺言書の有無など)に合った必要書類を確認することから始めましょう。戸籍謄本の収集には時間がかかる場合があるので、早めに準備を始めるのがポイントです。もし手続きに不安があったり、時間がなかったりする場合は、銀行の相続専門窓口や専門家に相談することも一つの方法です。この記事が、あなたの大変な時期の助けになれば幸いです。

【参考文献】
法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)
国税庁:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

亡くなった親の銀行口座解約手続きのよくある質問まとめ

Q. 亡くなった親の銀行口座を解約するのに、最低限必要な書類は何ですか?

A. 一般的には、①亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、②相続人全員の現在の戸籍謄本、③相続人全員の印鑑証明書、④遺産分割協議書または遺言書、⑤亡くなった方の通帳・キャッシュカードなどが必要です。金融機関によって異なる場合があるため、事前に確認しましょう。

Q. 遺言書や遺産分割協議書がない場合は手続きできませんか?

A. 手続きは可能です。その場合、銀行所定の相続届出書に、相続人全員が署名・捺印(実印)し、全員分の印鑑証明書を提出する必要があります。

Q. 通帳やキャッシュカード、届出印が見つからない場合はどうすればよいですか?

A. 紛失した場合でも手続きは可能です。銀行にその旨を伝え、所定の紛失届などを提出します。届出印が不明な場合も、相続人代表者の実印で手続きできることが多いです。

Q. 口座はいつ凍結されるのですか?

A. 銀行が口座名義人の死亡の事実を知った時点で、口座は凍結されます。親族などからの申し出によって知ることが一般的です。一度凍結されると、相続手続きが完了するまで入出金や引き落としは一切できなくなります。

Q. 相続人が複数いる場合、手続きは誰がすればよいですか?

A. 相続人の代表者一人が窓口で手続きを行うのが一般的です。ただし、手続きには原則として相続人全員の同意と、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要になります。

Q. 銀行が遠方にあるのですが、郵送で手続きできますか?

A. 多くの金融機関では、郵送での相続手続きに対応しています。まずは取引支店に電話をして、相続が発生した旨を伝え、手続き方法や必要書類の送付を依頼しましょう。

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対応責任者
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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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