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任意後見・成年後見・家族信託を徹底比較!あなたに最適な老後対策は?

2025-05-03
目次

将来、もし認知症などで判断能力が衰えてしまったら、大切な財産の管理はどうなるんだろう…?そんな不安を解消するために、「任意後見」「成年後見(法定後見)」「家族信託」という3つの制度があります。でも、名前は似ていても中身は全然違うんです。今回は、この3つの制度をわかりやすく比較しながら、あなたにピッタリの備えを見つけるお手伝いをしますね。

任意後見・成年後見・家族信託ってどんな制度?

まずは、それぞれの制度がどんなものなのか、基本的なところから見ていきましょう。どれも、判断能力が不十分になったときの財産管理や生活をサポートするための大切な仕組みです。

任意後見制度とは

任意後見制度は、ご自身が元気で判断能力がしっかりしているうちに、「将来、もしものことがあったら、この人にお願いしたい」と、ご自身の財産管理や身の回りの手続き(身上監護)を任せる相手(任意後見人)を自分で選んで契約しておく制度です。この契約は、公証役場で「公正証書」という正式な書類にする必要があります。そして、実際に判断能力が低下したときに、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することで、契約の効力がスタートします。

成年後見(法定後見)制度とは

成年後見制度(法定後見)は、すでにご本人の判断能力が低下してしまっている場合に、ご家族などが家庭裁判所に申し立てを行い、本人をサポートする人(成年後見人など)を裁判所に選んでもらう制度です。ご本人の判断能力のレベルに応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つのタイプに分かれます。ご家族が後見人になりたいと希望しても、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いのが特徴です。

家族信託とは

家族信託は、ご自身の財産を、信頼できるご家族に託して、契約で決めた目的に沿って管理・運用してもらう制度です。財産を託す人を「委託者」、管理を任される家族を「受託者」、信託された財産から利益を受け取る人を「受益者」(多くは委託者本人)と呼びます。裁判所が関与しないため、契約内容を自由に決められ、柔軟な財産管理ができるのが大きな特徴です。元気なうちから財産管理をスタートさせることもできます。

3つの制度を徹底比較!一目でわかる違い

それぞれの制度の概要がわかったところで、次は具体的な違いを比べてみましょう。何がどう違うのか、表で見るとスッキリ理解できますよ。

比較表で見る全体像

比較項目 任意後見制度
家族信託 成年後見(法定後見)制度
利用開始のタイミング 本人の判断能力が低下した後
契約時など、元気なうちからでも可能 本人の判断能力が低下した後
財産管理を任せる人の選び方 自分で選べる
自分で選べる 家庭裁判所が選任する
裁判所の関与 あり(任意後見監督人を選任・監督)
原則なし あり(後見人を選任・監督)
管理できる範囲 財産管理 + 身上監護
財産管理のみ(身上監護は不可) 財産管理 + 身上監護
財産管理の柔軟性 低い(財産の現状維持が基本)
高い(契約内容次第で積極的な運用も可能) 非常に低い(財産保護が最優先)
取消権の有無 なし
なし あり(本人が不利な契約をした場合に取り消せる)

それぞれのメリット・デメリットは?

どの制度にも良いところと、少し注意が必要なところがあります。ご自身の希望と照らし合わせながら、メリットとデメリットをしっかり確認しましょう。

任意後見制度のメリット・デメリット

メリット
・信頼できる人を自分で後見人に選べます。
・財産管理だけでなく、介護施設の契約などの身上監護も任せられます。
・公的な制度なので、後見監督人によるチェック機能があり安心です。

デメリット
・家庭裁判所の監督下にあるため、財産の使い道が制限され、柔軟な対応が難しいことがあります。
・不動産の売却や投資など、積極的な資産活用は原則としてできません。
・任意後見監督人への報酬が、制度を利用している間ずっと発生します。

成年後見(法定後見)制度のメリット・デメリット

メリット
・判断能力が低下してしまってからでも、唯一利用できる制度です。
・後見人には「取消権」があるため、ご本人が悪質な訪問販売などで不利な契約をしてしまっても、後から取り消すことができます。
・家庭裁判所が監督するため、不正が起こりにくい仕組みになっています。

デメリット
・後見人をご家族が希望しても、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるケースが多く、希望通りになるとは限りません。
・財産は本人のためにしか使えず、例えば家族のための生前贈与や相続税対策などは一切できません。
・専門家が後見人になると、月々の報酬が高額になることがあります。

家族信託のメリット・デメリット

メリット
・契約内容を自由に設計でき、不動産の売却やアパート建築など柔軟で積極的な財産管理が可能です。
・裁判所が関与しないため、手続きがスムーズで、家族の意思を反映させやすいです。
・自分が亡くなった後の財産の承継先だけでなく、その次の承継先まで指定できます(二次相続対策)。
・後見制度に比べて、継続的なコスト(ランニングコスト)を抑えられます。

デメリット
・財産管理に特化した制度なので、介護施設の契約などの身上監護はできません
・後見制度のような「取消権」はないため、詐欺などから本人を守る機能はありません。
・信頼できる家族がいることが前提で、受託者の権限が強いため、家族間でトラブルになる可能性もゼロではありません。

費用はどれくらい違うの?

制度を利用するにあたって、費用のことも気になりますよね。最初にまとまった費用がかかるもの、毎月継続して費用がかかるものなど、それぞれ特徴があります。

任意後見・成年後見の費用

後見制度は、家庭裁判所への申立て費用と、継続的にかかる専門家への報酬が主な費用です。

初期費用
・申立て費用:収入印紙や郵便切手代などで約1万円~2万円。
・鑑定費用:本人の判断能力の鑑定が必要な場合、5万円~10万円程度が追加でかかります。
・専門家への依頼料:申立て手続きを司法書士などに依頼する場合、10万円~20万円程度が目安です。

ランニングコスト
・後見人・監督人への報酬:管理する財産の額によりますが、月額2万円~6万円程度が一般的です。この費用が、ご本人が亡くなるまでずっと続きます。

家族信託の費用

家族信託は、最初の契約設計時に専門家への報酬がかかりますが、その後のランニングコストは抑えられることが多いです。

初期費用
・専門家へのコンサルティング料:信託契約の設計や書類作成を依頼する費用で、信託する財産の0.5%~1.5%(最低報酬額30万円~)が目安です。
・公正証書作成費用:公証役場に支払う手数料で、信託財産の額に応じて数万円~10万円程度です。
・登録免許税:不動産を信託する場合にかかる税金で、土地は固定資産税評価額の0.3%、建物は0.4%です。

ランニングコスト
・原則としてかかりません(受託者である家族に報酬を支払わない場合)。信託監督人など、監督役を専門家に依頼する場合は、別途報酬が必要になります。

あなたに合う制度はどれ?選び方のポイント

ここまで見てきた違いを踏まえて、どんな方にどの制度が向いているのか、選び方のポイントをまとめました。

積極的な資産運用や相続対策をしたいなら「家族信託」

「所有しているアパートの建て替えを考えている」「将来、自宅を売却して施設に入りたい」「自分の次の代だけでなく、孫の代まで財産の渡し方を決めておきたい」など、財産を柔軟に動かしたり、次の世代へのスムーズな承継を考えたりしている方には、家族信託が最も適しています。

生活全般のサポート(身上監護)もお願いしたいなら「任意後見」

「財産管理も心配だけど、病院の入院手続きや介護サービスの契約なども任せたい」「身近に頼れる家族がいないので、専門家にしっかりサポートしてほしい」というように、財産だけでなく生活面でのサポートも重視する方は、任意後見制度が安心です。

すでに判断能力が低下している場合は「成年後見(法定後見)」

残念ながら、ご本人の判断能力がすでに低下しており、事前の対策が間に合わなかった…。この場合は、成年後見(法定後見)制度が唯一の選択肢となります。口座の凍結や不動産の売却ができないといった問題を解決するために、速やかに家庭裁判所に申し立てを行いましょう。

良いとこ取りも可能?「家族信託」と「任意後見」の併用

実は、「家族信託」と「任意後見」は併用することができます。例えば、積極的な財産管理は「家族信託」で行い、家族信託ではカバーできない身上監護や、信託に入れていない預貯金の管理を「任意後見」で補うという使い方が可能です。それぞれの制度の弱点を補い合えるため、より万全な対策をしたい方にはおすすめです。ただし、手続きが複雑になったり、費用が余計にかかったりする点には注意が必要です。

まとめ

任意後見、成年後見、家族信託は、どれもあなたの老後の安心を支える大切な制度ですが、目的や仕組みが大きく異なります。ご自身の財産をどうしたいのか、誰に何を任せたいのか、そして何よりご自身の判断能力がはっきりしているうちに、ご家族とよく話し合って準備を始めることが何よりも重要です。どの制度が自分に合っているか迷ったら、ぜひ一度、司法書士などの専門家に相談してみてくださいね。あなたとご家族にとって、最善の選択ができるよう、きっと力になってくれますよ。

参考文献

任意後見・成年後見・家族信託のよくある質問まとめ

Q.「任意後見」「成年後見」「家族信託」の最も大きな違いは何ですか?

A.判断能力がある「前」に本人が契約相手を選べるのが「任意後見」と「家族信託」、判断能力が低下した「後」に家庭裁判所が後見人を選ぶのが「成年後見」です。自分で備えるか、事後に対応するかが大きな違いです。

Q.判断能力があるうちにしかできない手続きはどれですか?

A.「任意後見」と「家族信託」は、ご自身の判断能力がはっきりしているうちに契約を結ぶ必要があります。一方、「成年後見」は判断能力が不十分になった後に、親族などが家庭裁判所に申し立てて開始する制度です。

Q.財産管理をお願いする相手を自分で選べますか?

A.「任意後見」と「家族信託」では、将来の支援者や財産を託す相手を、ご自身で信頼できる家族などを選ぶことができます。一方、「成年後見」では家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも希望の人が選ばれるとは限りません。

Q.財産を柔軟に活用したい場合、どの制度が向いていますか?

A.「家族信託」が最も柔軟です。本人の生活費確保に加え、資産の組み換えや積極的な活用なども契約内容次第で可能です。成年後見制度は本人の財産保護が最優先のため、資産活用には厳しい制限があります。

Q.自分が亡くなった後の財産の引き継ぎまで決められますか?

A.「家族信託」であれば可能です。信託契約の中で、ご自身が亡くなった後に財産を誰に引き継がせるかを指定できます。任意後見・成年後見はご本人の死亡とともに契約が終了するため、相続手続きは別途必要になります。

Q.費用面での違いはありますか?

A.初期費用は、契約内容を設計する「家族信託」が比較的高くなる傾向があります。一方、「成年後見」や「任意後見」は、監督人や後見人への報酬が本人が亡くなるまで継続的に発生します。どちらが良いかは状況により異なります。

事務所概要
社名
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対応責任者
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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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