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企業型確定拠出年金を退職数年後に受領!所得税は?再就職した場合も解説

2024-12-17
目次

退職後、すぐに企業型確定拠出年金を受け取らずに数年間運用を続ける方も多いですよね。でも、「退職から数年後に受け取るときの税金ってどうなるの?」「もし再就職したら、税金の計算は変わる?」と疑問に思うこともあるでしょう。受け取り方やタイミングを少し工夫するだけで、手取り額が大きく変わることもあります。この記事では、企業型確定拠出年金を退職数年後に受け取る場合の所得税について、再就職した場合のケースも含めて、わかりやすく解説していきます。

企業型確定拠出年金の受け取り方と税金の基本

まずは基本から確認しましょう。企業型確定拠出年金の受け取り方には、大きく分けて3つの方法があります。どの方法を選ぶかによって、かかる税金の種類や計算方法が変わってくるんですよ。ご自身のライフプランに合わせて、最適な方法を選ぶことが大切です。

一時金で受け取る場合:「退職所得」

企業型確定拠出年金を一度にまとめて受け取る方法です。この場合、受け取ったお金は「退職所得」として扱われます。退職所得は、長年の功労に報いるため、税金の負担が軽くなるように設計されています。具体的には「退職所得控除」という大きな控除が適用されるのが特徴です。

退職所得の計算式は以下のようになります。
(収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得の金額

この計算式からもわかるように、控除額を差し引いた後、さらに金額が半分になるので、税負担がかなり軽減されるんですね。

年金形式で受け取る場合:「雑所得」

分割して毎年少しずつ受け取る方法です。この場合、受け取ったお金は「雑所得」として扱われ、公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)と同じ区分になります。

毎年受け取る年金額の合計から「公的年金等控除」を差し引いて所得を計算し、他の所得(例えば、再就職先の給与所得など)と合算して全体の所得税が決まります。これを総合課税といいます。他にお給料などの所得が多いと、税率が高くなる可能性があるので注意が必要です。

一時金と年金を組み合わせて受け取る場合

一部を一時金で、残りを年金で受け取る方法です。この方法を選ぶと、「退職所得控除」と「公的年金等控除」の両方のメリットを活かせる可能性があります。ただし、勤務先の規約によってはこの方法が選べない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

退職後すぐに受け取らない場合の所得税

確定拠出年金は、退職後すぐに受け取らず、運用を続けることができます(これを「運用指図者」といいます)。そして、原則60歳から75歳までの好きなタイミングで受け取りを開始できます。では、退職から数年経ってから受け取る場合、税金の計算はどうなるのでしょうか?

基本的な考え方は変わらない

退職から数年後に受け取る場合でも、税金の基本的な考え方は同じです。一時金なら「退職所得」、年金なら「雑所得」として計算されます。重要なのは、いつ、どの所得と合わせて計算されるか、という点です。

退職所得控除の計算方法

一時金で受け取る場合の「退職所得控除額」は、確定拠出年金の掛金を拠出した期間(加入者期間)に基づいて計算されます。会社の勤続年数ではないので注意してくださいね。

具体的な計算方法は以下の通りです。

掛金拠出期間 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 拠出期間年数 (80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (拠出期間年数 – 20年)

会社の退職金と企業型確定拠出年金を受け取るタイミングに注意!

退職時に会社から退職金も支給される場合、企業型確定拠出年金を一時金で受け取るタイミングが非常に重要になります。なぜなら、「退職所得控除」を効率よく使うためのルールがあるからです。

同じ年に受け取る場合

会社の退職金と企業型確定拠出年金の一時金を同じ年に受け取ると、両方の収入を合算して退職所得控除を一度だけ適用します。このとき、控除額の計算に使う勤続年数は、会社の勤続年数と確定拠出年金の加入期間のうち、長い方の年数が採用されます(重複期間は調整されます)。もし、合算した金額が退職所得控除額を大きく超えてしまうと、税金の負担が重くなる可能性があります。

年をずらして受け取る場合(重要ルール)

退職所得控除を最大限に活用するために、受け取る年をずらす方法があります。ここには重要なルールがあります。

前の退職金を受け取ってから、次の退職金(確定拠出年金一時金など)を受け取るまでの期間によって、控除額の計算が変わるのです。

受け取る順番 知っておきたいルール
先に会社の退職金、後に確定拠出年金一時金 19年以上空けないと、勤続期間の重複部分が控除額の計算から除外され、税制上不利になる可能性があります。
先に確定拠出年金一時金、後に会社の退職金 5年以上空けることで、それぞれの退職所得控除を満額使える可能性が高まります。(前年以前4年内の退職金が対象となるため)

つまり、会社の退職金を受け取った後すぐに確定拠出年金の一時金を受け取ると、税金の負担が増える可能性が高いということです。ご自身の状況に合わせて、どちらを先に、どのくらい期間を空けて受け取るのがベストか、シミュレーションすることが大切です。

退職後に再就職した場合の所得税

退職後、数年経ってから別の会社に再就職した場合、確定拠出年金の受け取りはどうなるのでしょうか?

再就職先に企業型DC制度がある場合

前の会社の確定拠出年金資産を、再就職先の確定拠出年金制度に移換(移す)することができます。この場合、資産は継続して運用され、将来、再就職先を退職するときに、その会社の退職金と一緒に受け取ることを検討することになります。移換すれば、受け取るまで課税はされません。

再就職先に企業型DC制度がない場合

再就職先に制度がない場合、前の会社の確定拠出年金資産はiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換することになります。iDeCoに移換した場合も、受け取るまでは課税されず、運用を続けられます。

注意点として、退職後6ヶ月以内に移換手続きをしないと、資産は「国民年金基金連合会」に自動移換されてしまいます。自動移換されると、運用は行われず、管理手数料だけが引かれ続けてしまうので、必ず手続きを忘れないようにしましょう。

再就職後の給与と確定拠出年金を年金で受け取る場合

もし再就職してお給料をもらいながら、60歳以降に確定拠出年金を年金形式で受け取る場合、給与所得と確定拠出年金の雑所得が合算されて所得税が計算されます。

所得が増えるとその分、所得税率が高くなったり、社会保険料に影響が出たりする可能性があります。年金で受け取る場合は、再就職先の給与額も考慮して、受け取り始める時期や年間の受取額を検討するのが賢明です。

具体的なケースでシミュレーション

少し複雑なので、具体的な例で見てみましょう。
【条件】

  • 企業型確定拠出年金加入期間:25年
  • 企業型確定拠出年金資産額:1,000万円
  • 退職後、再就職はせず、5年後に一時金で受け取る場合(他に退職所得なし)

退職所得控除額の計算

加入期間が25年(20年超)なので、計算式は `800万円 + 70万円 × (25年 – 20年)` となります。

800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円

このケースでは、退職所得控除額は1,150万円です。

所得税の計算

課税対象となる退職所得を計算します。

(収入金額1,000万円 - 退職所得控除額1,150万円) × 1/2 = 0円(マイナスのため)

収入金額が控除額を下回っているので、課税対象となる所得は0円です。つまり、所得税・住民税はかかりません。このように、退職所得控除は非常に強力な制度なんです。もし、この方が会社の退職金を直前に受け取っていた場合、この控除額が満額使えず、税金が発生していた可能性があったわけですね。

まとめ

企業型確定拠出年金を退職数年後に受け取る際の所得税について解説しました。最後にポイントをまとめます。

  • 受け取り方には「一時金(退職所得)」と「年金(雑所得)」があり、税金の計算方法が異なる。
  • 退職から数年後に受け取る場合でも、税金の基本ルールは同じ。一時金なら掛金拠出期間で退職所得控除を計算する。
  • 会社の退職金と企業型確定拠出年金一時金を受け取る際は、タイミングが非常に重要。期間を空けることで税負担を軽減できる可能性がある。
  • 再就職した場合は、資産を新しい会社の企業型確定拠出年金やiDeCoに移換するのが一般的。受け取るまで課税されない。
  • 再就職後の給与がある状態で年金受給すると、総合課税となり税率が上がる可能性があるので注意が必要。

ご自身の状況によって最適な受け取り方は異なります。退職金の額や再就職の予定などを考慮し、必要であれば専門家に相談しながら、じっくりと受け取りプランを立てていきましょう。

参考文献

国税庁: No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

国税庁: No.2732 退職手当等に対する源泉徴収

国税庁: No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき

退職後の企業型確定拠出年金受け取りと税金のよくある質問まとめ

Q.退職後数年経ってから確定拠出年金を受け取る場合、税金の種類は何になりますか?

A.一時金で受け取る場合は「退職所得」、年金形式で受け取る場合は「雑所得」として扱われます。受け取り方によって税金の計算方法が大きく異なります。

Q.企業型確定拠出年金を一時金で受け取る際、退職から数年空いても「退職所得控除」は使えますか?

A.はい、使えます。退職所得控除の計算に使われる「勤続年数」には、確定拠出年金の加入期間が算入されます。そのため、退職から受け取りまでに期間が空いても控除の対象となります。

Q.再就職後に前職の企業型確定拠出年金を受け取る場合、退職所得控除の計算はどうなりますか?

A.前職の企業型確定拠出年金を受け取る際の退職所得控除は、前職の勤続年数(または確定拠出年金の加入期間)に基づいて計算されます。現在の職場の勤続年数とは別に扱われます。

Q.会社の退職金と企業型確定拠出年金の一時金を数年ずらして受け取る場合の注意点は?

A.前の退職金を受け取ってから一定期間内に次の退職一時金を受け取ると、退職所得控除の計算で勤続年数の重複期間が調整される場合があります。これにより控除額が減ることがあるため注意が必要です。

Q.企業型確定拠出年金を一時金で受け取った場合、確定申告は必要ですか?

A.金融機関へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で課税が完了するため基本的に確定申告は不要です。未提出の場合や、他の所得がある場合は確定申告が必要になることがあります。

Q.企業型確定拠出年金を年金形式で受け取る場合、再就職していると税金は高くなりますか?

A.年金形式での受取額は「雑所得」となり、再就職先の給与所得と合算して所得税が計算されます。所得の合計額によっては税率が高くなる可能性があるため、確定申告が必要です。

事務所概要
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