2027年以降に適用が予定されている「新リース会計基準」。これによって、今まで資産計上していなかったリースも「使用権資産」として計上することになります。そうなると気になるのが「この使用権資産に償却資産税は課税されるの?」という疑問ですよね。結論から言うと、基本的には課税されませんが、契約内容によっては注意が必要です。この記事では、使用権資産と償却資産税の関係を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
そもそも償却資産税ってどんな税金?
償却資産税について考える前に、まずは基本をおさらいしましょう。償却資産税とは、会社や個人事業主が事業のために使っている土地や家屋以外の「償却資産」に対してかかる税金のことです。これは固定資産税の一種で、毎年1月1日時点で所有している資産が対象になります。
償却資産税の対象になる資産とは?
償却資産税の対象になるのは、事業用の機械、備品、車両運搬具など、時間の経過とともに価値が減少していく資産です。具体的には、パソコン、コピー機、工場の機械、社用車、お店の陳列棚などが挙げられます。これらの資産を持っている場合、資産が所在する市区町村に申告する必要があります。
課税されるのはいくらから?税率は?
すべての償却資産に税金がかかるわけではありません。課税標準額の合計が150万円未満の場合は、償却資産税は課税されません。150万円以上になると、その課税標準額に対して税率1.4%が課税されます。申告は毎年1月31日までに行う必要がありますので、忘れないようにしましょう。
償却資産税の対象にならない資産
一方で、償却資産税の対象にならない資産もあります。代表的なものを表にまとめました。
| 対象にならない資産の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 土地・家屋 | 事務所の土地や建物(これらは固定資産税の対象です) |
| 自動車税・軽自動車税の対象となるもの | 乗用車やトラックなど |
| 無形固定資産 | ソフトウェア、特許権、営業権など |
| 少額の減価償却資産 | 取得価額が10万円未満で、一括で経費計上したもの |
| 一括償却資産 | 取得価額が20万円未満で、3年間で均等償却するもの |
| 生物 | 牛、馬、果樹など(ただし観賞用、興行用のものは除く) |
これらの資産は、償却資産税の申告対象から外れますので、覚えておきましょう。
新リース会計基準と使用権資産
今回の本題である「使用権資産」は、新リース会計基準の導入によって登場する考え方です。これまでの会計ルールと何が違うのか、なぜ使用権資産が出てくるのかを見ていきましょう。
新リース会計基準とは?
新リース会計基準は、国際的な会計基準(IFRS)に合わせるために導入される新しいルールです。これまでは、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分けて、会計処理が異なっていました。しかし、新基準ではこの区別をなくし、原則としてすべてのリース取引で、借り手が資産と負債を計上することになります。この時に計上される資産が「使用権資産」です。
「使用権資産」って何?
使用権資産とは、簡単に言うと「リース契約によって、特定の資産を一定期間使用できる権利」のことです。例えば、オフィスを5年間借りる契約をした場合、その5年間オフィスを使う権利を資産として貸借対照表に計上します。これまでは費用として処理していた賃料も、使用権資産という資産を計上し、減価償却していく形に変わります。
本題:使用権資産に償却資産税はかかるの?
さて、ここからが本題です。会計上、資産として計上される「使用権資産」ですが、償却資産税の対象になるのでしょうか。税金のルールと会計のルールは必ずしも一致しないため、注意が必要です。
原則:償却資産税の納税義務者は「所有者」
償却資産税のルールで最も重要なポイントは、納税義務があるのは、毎年1月1日時点での資産の「所有者」であるという点です。つまり、誰がその資産を法的に所有しているかが判断基準になります。リース契約の場合、資産を実際に使っているのは借り手ですが、多くの場合、所有権は貸し手(リース会社)にあります。
結論:基本的には課税されない
使用権資産は、あくまで「資産を使う権利」を会計上の資産として計上したものです。資産そのものの所有権が借り手に移るわけではありません。そのため、新リース会計基準で計上した使用権資産について、借り手が償却資産税を申告・納税する必要は基本的にありません。納税義務は、資産の所有者である貸し手(リース会社)にあります。
注意!借り手が申告するケースもある
原則として借り手に納税義務はありませんが、例外的に借り手が申告・納税しなければならないケースも存在します。それはどのような場合なのでしょうか。
所有権が移転するリース契約の場合
リース契約の中には、「リース期間が終了したら、その資産を無償または格安で借り手に譲渡する」という条件が付いているものがあります。このような所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する場合、税法上は実質的に分割払いで資産を購入したのと同じと見なされます。このケースでは、資産の所有者は借り手と判断され、借り手に償却資産税の申告・納税義務が発生します。
契約内容の確認が重要
つまり、償却資産税の課税対象になるかどうかは、会計処理の方法(使用権資産を計上するかどうか)ではなく、リース契約の内容によって決まるということです。新リース会計基準が適用された後も、この税法上の考え方は変わりません。契約書をよく確認し、「所有権が最終的に誰のものになるのか」を把握することが非常に重要です。
| リース取引の種類 | 償却資産税の納税義務者 |
|---|---|
| 所有権移転ファイナンス・リース | 借り手 |
| 所有権移転外ファイナンス・リース | 貸し手(リース会社) |
| オペレーティング・リース | 貸し手(リース会社) |
新リース会計基準導入後の税務上の取り扱い
新リース会計基準が導入されても、法人税や消費税などの税務上の取り扱いは、基本的に従来の考え方を引き継ぎます。会計と税務で処理が異なる部分が出てくるため、その調整が必要になります。
法人税の考え方は変わらない
法人税法上は、新リース会計基準が導入された後も、リース取引を「売買取引とされるリース(所有権移転ファイナンス・リースなど)」と「賃貸借取引とされるリース(オペレーティング・リースなど)」に分けて考えます。会計上はすべてのリースで使用権資産を計上しますが、税務上はオペレーティング・リースなどは従来通り支払リース料を損金として処理します。そのため、会計上の減価償却費や支払利息と、税務上の支払リース料との差額を税務申告で調整(申告調整)する必要があります。
税務申告が複雑になる可能性
このように、会計と税務で考え方が異なるため、経理担当者の負担は増える可能性があります。特に、これまでオペレーティング・リースとして処理していた契約が多い会社は、税務調整の対象となる取引が増えることになります。どのリース契約がどの区分に該当するのかを正確に管理し、適切な申告調整を行うことが求められます。
まとめ
今回は、使用権資産と償却資産税の関係について解説しました。最後にポイントをまとめます。
- 償却資産税の納税義務者は、資産の「所有者」です。
- 新リース会計基準で計上する使用権資産は「使う権利」であり、所有権ではないため、原則として借り手に償却資産税は課税されません。
- 例外として、リース期間終了後に所有権が借り手に移る契約(所有権移転ファイナンス・リース)の場合は、借り手に納税義務があります。
- 課税の判断は会計処理ではなく、リース契約の内容で決まります。
- 新基準導入後も税法上の考え方は変わらないため、会計と税務の差異を調整する「申告調整」が必要になります。
新リース会計基準の適用に向けて、自社のリース契約の内容を改めて確認し、どの資産が償却資産税の対象になるのか、税務申告でどのような調整が必要になるのかを今のうちから準備しておくことが大切です。
参考文献
No.6163 リース取引についての消費税の取扱いの概要|国税庁
使用権資産と償却資産税のよくある質問まとめ
Q.使用権資産とは何ですか?
A.新リース会計基準で導入される考え方で、「リース契約によって資産を一定期間使用できる権利」を会計上の資産として計上したものです。
Q.使用権資産に償却資産税はかかりますか?
A.原則としてかかりません。償却資産税は資産の「所有者」に課税されますが、使用権資産はあくまで「使用する権利」であり、所有権は貸し手(リース会社)にあるためです。
Q.どのような場合に、借り手が償却資産税を支払うのですか?
A.リース期間終了後に、資産の所有権が無償または格安で借り手に移る「所有権移転ファイナンス・リース取引」の場合です。この場合、実質的な所有者は借り手とみなされ、納税義務が生じます。
Q.償却資産税の申告はいつまでに行う必要がありますか?
A.毎年1月1日時点の資産状況について、その年の1月31日までに資産が所在する市区町村へ申告する必要があります。
Q.償却資産税がかからないのは、資産の合計額がいくら未満の場合ですか?
A.課税標準額の合計が150万円未満の場合は、償却資産税は課税されません。
Q.新リース会計基準が導入されると、税務申告はどう変わりますか?
A.会計上はすべてのリースで資産計上しますが、税務上は従来のリース区分の考え方を引き継ぐため、両者の差異を調整する「申告調整」が必要になり、申告が複雑になる可能性があります。