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償却資産税の申告とは?市町村の把握方法と対象資産を徹底解説

2025-06-12
目次

事業を始めたばかりの方や、経理を担当し始めた方にとって、「償却資産税」は少し馴染みが薄いかもしれませんね。「毎年1月に申告が必要って聞いたけど、そもそも何?」「どうして市町村はうちの会社の資産を知っているの?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。この記事では、償却資産税の申告の基本から、市町村がどのように課税対象を把握しているのかまで、わかりやすく解説していきます。

償却資産税の申告って、そもそも何?

償却資産税とは、固定資産税の一種です。固定資産税というと、土地や家屋(建物)にかかる税金というイメージが強いですが、実はそれだけではありません。会社や個人事業主が事業のために使っている機械や備品なども「償却資産」として固定資産税の課税対象になるんです。そして、この償却資産について、「私たちの会社はこんな資産を持っていますよ」と市町村に知らせる手続きが「償却資産税の申告」です。

なぜ申告が必要なの?

土地や家屋は、法務局で登記されているため、市町村は登記情報を見れば誰が何を所有しているか把握できます。しかし、パソコンや機械などの償却資産には、そのような登記制度がありません。そのため、市町村は誰がどんな事業用資産を持っているのかを把握することができないのです。そこで、地方税法第383条という法律で、資産の所有者自身が毎年その内容を申告する義務が定められています。この申告に基づいて、市町村は税額を計算しているんですね。

誰が申告するの?

申告が必要なのは、毎年1月1日(賦課期日といいます)の時点で、事業のために使用できる償却資産を所有しているすべての法人や個人事業主です。例えば、工場を経営している会社、飲食店を営む個人事業主、アパートや駐車場を貸しているオーナーさんなども対象になります。事業をしていれば、ほとんどの方が何かしらの償却資産をお持ちのはずなので、自分には関係ないと思わずに一度確認してみるのがおすすめです。

いつまでに申告すればいいの?

償却資産税の申告は、毎年1回です。1月1日現在の資産の所有状況を、その年の1月31日までに、資産が所在している市町村(東京23区の場合は都税事務所)へ申告する必要があります。申告期限は毎年同じなので、忘れないようにスケジュールに組み込んでおきましょう。

どんなものが「償却資産」になるの?

償却資産とは、簡単に言うと「土地と家屋以外の、事業に使うことができる資産」で、法人税や所得税の計算をするときに減価償却費として経費に計上するものを指します。会社の固定資産台帳に載っている資産の多くが該当すると考えてよいでしょう。

償却資産の具体例

償却資産には様々な種類があります。業種ごとの主な例をまとめてみました。

資産の種類 具体例
構築物 舗装路面、看板(広告塔)、門、塀、外構工事、受変電設備、独立した煙突など
機械及び装置 各種製造設備、クレーンなどの建設機械、機械式駐車設備、ポンプなど
車両及び運搬具 フォークリフトなどの大型特殊自動車(自動車税・軽自動車税の対象にならないもの)
工具、器具及び備品 パソコン、コピー機、応接セット、陳列ケース、医療機器、ルームエアコン、レジスターなど

テナントが取り付けた内装も対象になる?

はい、対象になります。オフィスや店舗を借りている方が、ご自身の事業のために取り付けた内装・造作や建築設備(例えば、パーテーション、業務用エアコン、厨房設備、内部の電気配線など)は、建物の所有者ではなく、それを取り付けたテナント(賃借人)の方の償却資産として申告が必要です。意外と見落としがちなポイントなので、注意してくださいね。

償却資産に当てはまらないもの

一方で、次のような資産は償却資産の申告対象にはなりません。

  • 自動車税(種別割)や軽自動車税(種別割)が課税される自動車や軽自動車、フォークリフトなど
  • ソフトウェア、特許権、実用新案権などの無形固定資産
  • 創立費、開業費などの繰延資産
  • 取得価額が10万円未満で、税務会計上一時に損金算入したもの
  • 取得価額が20万円未満で、税務会計上3年間で一括償却したもの

少額な資産も申告は必要?

「少額な資産なら申告しなくていいんですよね?」という質問をよく受けます。これは半分正解で、半分は注意が必要な点です。国税(法人税・所得税)のルールと、地方税である固定資産税のルールが少し違うため、混同しないようにしましょう。

申告が不要になる少額資産のケース

原則として、税務会計の処理方法によって申告の要否が決まります。以下のケースでは、償却資産税の申告は不要です。

取得価額 税務会計上の処理
10万円未満 一時に損金算入(または必要経費として処理)
20万円未満 3年間で一括して均等償却(一括償却資産として処理)

【注意!】少額でも申告が必要なケース

注意が必要なのは、「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」を適用した場合です。これは、取得価額が30万円未満の資産について、年間合計300万円まで即時に全額を損金算入できるという、法人税や所得税での特例制度です。
この特例を使って経費にした資産は、国税上はメリットが大きいですが、償却資産税では課税対象となり、申告が必要になります。この違いを知らずに申告漏れとなってしまうケースが非常に多いので、ぜひ覚えておいてください。

市町村はどうやって課税対象となる償却資産を把握しているの?

「申告しなくてもバレないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、市町村は適正で公平な課税を実現するために、様々な方法で資産の情報を把握しています。その仕組みを見ていきましょう。

納税者からの「申告」が基本

まず大前提となるのが、先ほどから説明している所有者からの「申告」です。地方税法で定められたこの申告制度が、市町村にとって最も重要な情報源となります。提出された申告書の内容をもとに、課税台帳が作成されます。

国税情報の閲覧

市町村は、納税者からの申告内容が正しいかを確認するため、税務署に保管されている国税の申告情報を閲覧することが法律で認められています(地方税法第354条の2)。具体的には、法人税の申告書に添付されている「別表十六(減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)」や、個人事業主の所得税の青色申告決算書にある「減価償却費の計算」のページなどを確認し、償却資産の申告内容と矛盾がないかをチェックしています。

実地調査

地方税法第353条及び第408条に基づき、市町村の職員が事業所に直接訪問して調査を行うことがあります。これを「実地調査」と呼びます。調査では、固定資産台帳などの帳簿書類を確認したり、実際にどのような資産が事業で使われているかを現地で確認したりします。特に、長年申告がない事業者や、申告内容に疑問点がある場合、新規に事業を始めた法人などに対して行われることがあります。

その他の情報収集

上記以外にも、市町村は様々な情報を活用しています。

  • 法務局の商業登記情報から、新しく設立された法人を把握する。
  • 飲食店の営業許可や建設業の許可など、他の行政機関からの許認可情報を参考にする。
  • 航空写真や地図情報を活用して、大型の構築物(看板や鉄塔など)の設置状況を確認する。
  • ホームページや求人情報など、公開情報から事業内容や設備投資の状況を推測する。

このように、市町村は多角的な方法で情報を集め、申告内容の確認や申告漏れの発見に努めているのです。

申告しないとどうなる?

償却資産の申告は法律で定められた義務です。もし申告を怠ったり、意図的に資産を隠して申告したりすると、ペナルティが課される可能性があります。

過年度への遡及課税

調査などで申告漏れが発覚した場合、その資産を取得した翌年度に遡って税金が課されることになります。地方税法第17条の5の規定により、原則として過去5年度分まで遡って課税される可能性があります。もし、偽りや不正な行為によって税金を免れようとしたと判断された場合は、最大で7年度分まで遡及されます。

延滞金や過料の可能性

遡って課税された税金には、納付が遅れた日数に応じた延滞金が加算されます。さらに、正当な理由なく申告をしなかった場合には、地方税法第386条に基づき、10万円以下の過料が科されることもありますので、必ず期限内に正しく申告しましょう。

まとめ

償却資産税の申告は、毎年1月1日時点の事業用資産を所有者が自ら申告する、とても大切な手続きです。市町村は、その申告内容を基本としながらも、国税情報の閲覧や実地調査といった様々な方法で資産の状況を把握し、公平な課税の実現に努めています。申告漏れは、後から発覚すると過去に遡って課税され、延滞金も発生するなど、かえって負担が大きくなってしまいます。毎年1月31日の申告期限を守り、正しく資産を申告することが、健全な事業運営の第一歩と言えるでしょう。

参考文献

償却資産税の申告に関するよくある質問まとめ

Q.償却資産税の申告はいつまでに行う必要がありますか?

A.償却資産税の申告期限は、毎年1月1日時点の資産状況を、その年の1月31日までに資産が所在する市町村へ申告する必要があります。

Q.どのようなものが償却資産税の対象になりますか?

A.土地や家屋以外の事業用資産で、法人税や所得税の計算で減価償却の対象となるものが該当します。例えば、パソコン、コピー機、応接セット、看板、工場の機械などが対象です。

Q.償却資産税の申告をしないとどうなりますか?

A.申告をしなかった場合、地方税法に基づき延滞金が課される可能性があります。また、市町村の調査により資産が把握された場合、過去に遡って課税されることもあります。

Q.資産の合計額が150万円未満なら申告は不要ですか?

A.いいえ、課税標準額の合計が150万円未満の場合は免税点となり課税されませんが、申告は必要です。資産を所有している限り、毎年申告する義務があります。

Q.市町村は、申告していない償却資産をどうやって把握するのですか?

A.市町村は、法人税申告書や所得税申告書の添付書類(減価償却資産の明細など)を閲覧したり、税務調査や現地調査を行ったりすることで、申告漏れの資産を把握することがあります。

Q.少額の資産(10万円未満など)も申告対象になりますか?

A.取得価額が10万円未満で、税務会計上「消耗品費」などとして一括で経費処理したものは申告対象外です。ただし、30万円未満の資産を特例で一括損金算入した場合などは申告が必要になるため注意が必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。