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共有ゴミ捨て場は私道評価できる?通り抜け不可な土地の相続税評価

2025-12-07
目次

複数人で共有しているゴミ捨て場。通り抜けはできないけれど、相続税の申告で「私道」として評価額を下げられる可能性があるのか、気になりますよね。相続は多くの方にとって身近な問題ですが、特に土地の評価は複雑でわかりにくいものです。今回は、そんなゴミ捨て場となっている共有地の相続税評価について、具体的な条件や評価方法、そして評価を有利に進めるためのポイントを、できるだけ専門用語を使わずにわかりやすく解説していきます。

ゴミ捨て場は「私道」として評価できるの?

結論からお伝えすると、ご状況によっては私道として評価できる可能性があります。ただし、そのためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。「ゴミ捨て場として使っているから」という理由だけでは、残念ながら私道としての評価は認められにくいのが実情です。相続税の評価では、その土地が法律上、そして実態としてどのように利用されているかがとても重要なポイントになるんです。

私道評価が認められるための基本的な考え方

相続税の財産評価において、なぜ私道が通常の宅地よりも低く評価されるかというと、その土地が公共の用に供されていて、所有者であっても自由に利用することに制限があるからです。つまり、自分だけのものではなく、多くの人が通行できる「道路」としての性質を持っていることが大前提となります。ご相談のケースのように、ごみ収集ボックスが置かれていて通り抜けができない場合、この「不特定多数の者の通行の用」という条件をどう解釈するかが大きな焦点になりますね。

「通り抜けできない」は不利な条件?

はい、通り抜けができない「袋小路」のような土地は、不特定多数の人が自由に通り抜けられる私道とは異なると判断されやすいです。国税庁の指針では、誰でも通れる「通り抜け私道」は公共性が非常に高いとされ、評価しない(つまり評価額ゼロ)ことになっています。一方で、袋小路のように特定の居住者だけが利用する「行き止まり私道」は、宅地としての評価額の30%で評価されることになっています。ご相談のケースは、この「行き止まり私道」に該当するかどうかが、評価減を受けられるかどうかの分かれ道となります。

ゴミ捨て場としての利用実態が重要

今回のケースでは、ゴミ捨て場として近隣住民が利用しているという実態があります。しかし、通り抜けはできず、ごみを捨てる際に一歩足を踏み入れる程度、とのことですね。この場合、「特定の者の通行の用に供する」という私道の定義にぴったり当てはまるか、税務署の判断が分かれる可能性があります。単に「共有の土地(ごみ集積所)」とみなされるのか、それとも「私道(行き止まり私道)」として利用制限があるとみなされるのかで、評価額が大きく変わってくるんです。

私道評価の具体的な条件と判断基準

では、どのような場合に私道として評価が認められるのでしょうか。国税庁が公表している財産評価基本通達というルールを基に、具体的な判断基準を見ていきましょう。すべてのケースで明確な基準が示されているわけではありませんが、過去の事例から評価のポイントを整理することはできます。

国税庁が示す私道の評価方法

国税庁は私道の評価について、その利用状況に応じて以下のように定めています。この基準に照らし合わせて、お持ちの土地がどちらに該当しそうか、まずは考えてみましょう。

種類 利用状況
通り抜け私道 不特定多数の者の通行の用に供されているもの(評価額:ゼロ円)
行き止まり私道 もっぱら特定の者の通行の用に供されているもの(評価額:宅地としての評価額の30%相当額

ご相談のケースは、利用者が近隣住民という「特定」の人たちではあるものの、その利用目的が「通行」にあたるかが重要なポイントになります。もし「行き止まり私道」として認められれば、評価額を7割も圧縮できることになります。

「通行の用」に該当するかの判断

一番の課題は、ごみを捨てるために一歩足を踏み入れるという行為が、税法上の「通行」と認められるかどうかです。過去の判例などでは、単に特定の設備を利用するためだけの一時的な立ち入りは「通行」とは異なると判断されることもあります。もし、その土地がごみ収集ボックスを置くためだけのスペースで、道路としての形状や機能を持っていない場合、残念ながら「私道」ではなく「ごみ集積所用地」として通常の宅地評価になる可能性も十分に考えられます。

「私道」と認められなかった場合の評価

もし、税務署との協議の結果、私道としての評価が認められなかった場合、その土地はどのように評価されるのでしょうか。評価額を少しでも適正なものにするための他の方法がないか、あきらめる前に確認しておきましょう。

原則は「宅地」としての評価

私道と認められない場合、原則としてその土地は通常の宅地として評価されることになります。つまり、路線価が定められている地域であれば「路線価方式」で、定められていない地域であれば「倍率方式」を使って評価額を計算します。お持ちの土地は共有持分とのことですので、計算された土地全体の評価額に、ご自身の持分割合を掛けて相続税評価額を算出します。

利用価値が著しく低い宅地としての減額

ただし、まだ望みはあります。「利用価値が著しく低い宅地」として評価額を減額できる可能性があるんです。例えば、ごみ捨て場であることによって、すぐ隣の土地と比べて騒音や悪臭、衛生面での問題があり、土地の利用価値が客観的に見て著しく低いと証明できれば、10%程度の評価減が認められるケースがあります。これには、現地の写真やごみ収集の頻度、周辺住民への影響などを具体的にまとめた資料を揃え、税務署にきちんと主張することが大切です。

評価を有利に進めるための準備

相続税の申告で、ごみ捨て場となっている土地の評価を少しでも有利に進めるためには、事前の準備が欠かせません。どのような準備をすれば、税務署に対して説得力のある説明ができるのか、具体的なステップをご紹介します。

現況を証明する資料を集める

まずは、その土地が実際にどのように利用されているかを客観的に示す資料を集めましょう。口頭での説明だけではなかなか伝わりません。

  • 写真: ごみ収集ボックスの設置状況、土地全体の様子、近隣住民が利用している状況などがわかる写真
  • 公図や測量図: 土地の形状や道路との位置関係がわかる図面
  • 利用状況の説明書: いつから、誰が(近隣の何世帯が)、どのように利用しているのかを時系列でまとめた書類

これらの資料は、税務署に評価の根拠を説明する際に非常に有効な武器となります。

専門家(税理士)への相談

土地の評価、特にこのような判断が難しいケースでは、相続税に強い税理士に相談することが最も確実で安心な方法です。経験豊富な専門家は、過去の裁決事例や地域の慣習などを踏まえ、私道評価の可能性や、「利用価値が著しく低い宅地」としての減額申告の妥当性を客観的に判断してくれます。申告書に税理士の意見書を添付することで、税務署からの信頼性も格段に高まります。

共有持分であることの注意点

今回ご相談の土地は複数人での共有持分とのことですね。共有持分ならではの注意点についても、最後に確認しておきましょう。

評価額と固定資産税の負担

相続税の評価額は、これまで説明した方法で計算した土地全体の評価額に、ご自身の持分割合を乗じて計算します。同様に、毎年市区町村から請求される固定資産税も、基本的には持分割合に応じて負担することになります。もし、その土地が「公衆用道路」として市区町村から認められ、非課税の適用を受けていれば固定資産税はかかりませんが、課税されている場合は納税通知書で税額を確認しておきましょう。

将来のトラブルを避けるために

ごみ捨て場のような共有地は、日々の清掃当番や修繕費用の負担などをめぐって、共有者間でトラブルに発展しやすいという側面もあります。せっかくのご近所付き合いがこじれてしまっては悲しいですよね。相続を一つのきっかけとして、管理方法や費用負担に関するルールを共有者間で話し合い、簡単なものでも良いので書面で取り決めておくと、将来の無用なトラブルを防ぐことができますよ。

まとめ

共有持分のごみ捨て場が私道として評価できるか、という少し難しいテーマについて解説しました。最後に、今回の重要なポイントをまとめます。

  • 通り抜けできないごみ捨て場は、「行き止まり私道」として宅地評価額の30%で評価される可能性があります。
  • ただし、その利用が「通行の用」に供されているかが厳しく判断され、単なる「ごみ集積所用地」として通常の宅地評価をされる場合も多いのが実情です。
  • 私道評価が難しい場合でも、「利用価値が著しく低い宅地」として10%程度の評価減を主張できる可能性があります。
  • 有利な評価を受けるためには、現況写真などの客観的な資料を揃え、相続税に詳しい税理士に相談することが成功への近道です。

土地の評価は専門的な知識が求められる分野です。ご自身だけで判断に迷う場合は、決して無理をせず専門家の力を借りて、後悔のない適切な相続税申告を行いましょう。

参考文献

No.4622 私道の評価|国税庁

「土地評価のあらまし」|国税庁

ゴミ捨て場の土地評価に関するよくある質問まとめ

Q.ゴミ捨て場として利用されている共有地は、相続税評価で「私道」になりますか?

A.通り抜けができない場合、原則として私道としての評価は難しいです。私道評価の重要な要件は「不特定多数の者の通行の用に供されている」ことですが、ゴミ捨て場としての利用は通常「通行」とは見なされません。

Q.近隣住民がゴミを捨てるために土地に立ち入りますが、これでは私道評価はできませんか?

A.ゴミ捨てという特定の目的での立ち入りは、一般的な「通行」とは解釈されにくいため、その事実だけでは私道評価の要件を満たすのは困難です。

Q.私道として評価されるための具体的な要件は何ですか?

A.主に、①不特定多数の者の通行の用に供されていること、②所有者が通行を制限していないこと、③客観的に見て道路としての形状を有していること、などが挙げられます。

Q.通り抜けできないゴミ捨て場は、どのように評価されるのでしょうか?

A.私道評価が適用されない場合、原則として通常の宅地として評価されます。ただし、利用がゴミ捨て場に限定されているという状況を考慮し、評価額が一定割合減額される可能性はあります。

Q.土地が共有名義であることは、私道評価に影響しますか?

A.共有名義であること自体は、私道評価の可否を直接左右する要因ではありません。評価はあくまで土地の利用実態に基づいて判断されます。

Q.私道評価が認められない場合、評価額を下げる方法は他にありますか?

A.利用状況(ゴミ捨て場としての利用制限など)を理由に不動産鑑定士による評価を取得する方法や、自治体への寄付を検討するなどの方法が考えられます。詳しくは専門家にご相談ください。

事務所概要
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税理士 島本 雅史

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