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共有名義の相続登記は危険?メリット・デメリットとトラブル回避策

2026-01-20
目次

ご家族が亡くなられて不動産を相続することになったとき、「相続人みんなで公平に分けたい」という思いから共有名義での相続登記を検討される方は少なくありません。一見、公平で円満な解決策に見えますが、実は将来的に大きなトラブルの火種になってしまう可能性があるんです。この記事では、共有名義で相続登記をするメリットとデメリット、そして起こりうるトラブルとその回避策について、分かりやすく解説していきますね。

共有名義の相続登記とは?基本的な考え方

まず、共有名義での相続登記がどのようなものなのか、基本的なところから押さえておきましょう。難しく考えずに、ゆっくり読んでみてくださいね。

共有名義と「共有持分」って何?

不動産を複数の人で所有することを「共有」といい、その名義で登記することを「共有名義の登記」と呼びます。例えば、一つの土地を兄弟2人で相続した場合、土地を物理的に半分に分けるのではなく、「その土地に対する権利を2分の1ずつ持つ」という形で所有します。この各々が持つ権利の割合のことを「共有持分(きょうゆうもちぶん)」と言います。

なぜ共有名義で相続登記をするの?

共有名義が選ばれる主な理由には、以下のようなケースが考えられます。

  • 遺産が自宅不動産くらいしかなく、公平に分けるのが難しい。
  • 相続人同士の話し合い(遺産分割協議)がまとまらないため、ひとまず法律で定められた割合(法定相続分)で登記しておく。
  • 相続人全員が「将来もこの家を売らずにみんなで維持していこう」と合意している。

特に、相続人同士の関係が良好な場合に、「揉めたくないから」という理由で安易に共有名義を選んでしまうことが多いようです。

2024年4月から相続登記が義務化されました

これまで任意だった相続登記ですが、2024年4月1日から義務化されました。これは、所有者不明の土地が増えて社会問題になっていることが背景にあります。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。共有名義にするかどうかにかかわらず、相続登記そのものは必ず行わなければならない手続きになった、ということを覚えておいてくださいね。

共有名義で相続登記を行うメリット

デメリットが強調されがちな共有名義ですが、もちろん良い面もあります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

相続人間の公平感を保ちやすい

最大のメリットは、相続人間の公平性が保たれることです。特に、法律で定められた「法定相続分」どおりの持分で登記すれば、誰も損得がないため、不平不満が出にくくなります。「誰か一人だけが多くもらうのは納得できない」といった状況では、円満な解決策の一つになり得ます。

遺産分割協議が不要な場合もある

法定相続分どおりに共有名義で登記する場合、相続人の一人から単独で申請することができます。この場合、相続人全員の合意を証明する「遺産分割協議書」や全員分の印鑑証明書が不要になるため、手続きを比較的スムーズに進めることができます。話し合いが長引きそうな場合の、一時的な措置として利用されることもあります。

維持管理にかかる費用負担を分散できる

不動産を所有していると、毎年固定資産税がかかりますし、修繕が必要になればその費用も発生します。共有名義であれば、これらの費用を共有持分の割合に応じて全員で負担することになるため、一人当たりの金銭的な負担を軽くすることができます。

要注意!共有名義の相続登記のデメリットとトラブル事例

ここからが特に重要なポイントです。共有名義は、時間が経つにつれて様々な問題を引き起こす可能性を秘めています。具体的なデメリットと、よくあるトラブルの例を見ていきましょう。

不動産の売却や活用が自由にできない【全員の同意が必要】

共有名義の不動産は、たとえ自分の持分があっても、一人だけの判断で自由に扱うことはできません。何かアクションを起こす際には、他の共有者の同意が必要になります。

不動産全体を売却・解体・大規模リフォームする(変更行為) 共有者全員の同意が必要です。
第三者に賃貸する(管理行為) 持分割合の過半数の同意が必要です。

例えば、兄弟3人(持分3分の1ずつ)で相続した家を売りたくなった場合、自分以外の兄弟2人のうち、一人でも反対すれば売却はできません。「お金が必要だから売りたい」「もう管理が大変だから手放したい」と思っても、他の共有者の同意が得られなければ、身動きが取れなくなってしまうのです。

共有者の死亡で権利関係がさらに複雑化する

これが最も深刻な問題かもしれません。共有者の一人が亡くなると、その人の持分はさらにその相続人に引き継がれます。例えば、兄弟3人で共有していた不動産で、長男が亡くなったとします。長男に妻と子供2人がいれば、長男の持分(3分の1)がその3人に相続され、共有者は合計5人に増えてしまいます。このように、世代交代が進むにつれてネズミ算式に共有者が増えていく可能性があります。会ったこともない親戚まで共有者になってしまうと、いざ売却しようとしても、全員の同意を取り付けるのは非常に困難になります。

固定資産税の支払いで揉めやすい

固定資産税の納税通知書は、共有者全員に送られてくるわけではなく、代表者の一人にまとめて送付されます。そのため、まずは代表者が立て替えて支払い、後から他の共有者にそれぞれの負担分を請求するのが一般的です。しかし、中には「自分は住んでいないから払いたくない」と言い出す人が現れたり、連絡が取れなくなったりして、費用の回収でトラブルになるケースが後を絶ちません。

共有関係の解消に高額な費用がかかることも

「やっぱり共有はやめて、誰か一人の名義にしたい」と思っても、簡単にはいきません。共有関係を解消するには、他の共有者から持分を買い取る(売買)か、無償で譲ってもらう(贈与)ことになります。しかし、売買や贈与には、相続時よりも税率の高い譲渡所得税贈与税がかかる可能性があります。後から解消しようとすると、余計な税金や手続きの費用がかかってしまうのです。

共有名義の相続トラブルを回避するための具体的な方法

では、どうすればこのようなトラブルを避けられるのでしょうか。相続の前と後、それぞれのタイミングでできる対策をご紹介します。

【生前の対策】遺言書で分割方法を指定する

最も効果的なのは、不動産の所有者が生前に遺言書を作成しておくことです。「この不動産は長男に相続させる」といったように、誰がどの財産を相続するのかを明確に指定しておけば、そもそも共有状態になることを防げます。他の相続人との不公平感をなくすために、「長男に不動産を渡す代わりに、次男には預貯金を多く残す」といった配慮も盛り込むと、より円満な相続につながります。信頼性の高い公正証書遺言を作成しておくことをお勧めします。

【相続後の対策】換価分割・代償分割を検討する

相続が始まってからでも、共有名義を避ける方法はあります。それが「換価分割」と「代償分割」です。

換価分割(かんかぶんかつ) 不動産を売却して現金に換え、その現金を相続人同士で分ける方法です。物理的に分けられない不動産も、お金にすれば公平に分けられます。
代償分割(だいしょうぶんかつ) 相続人の一人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して、その人の相続分に見合う現金(代償金)を支払う方法です。不動産を残したい場合に有効ですが、代償金を支払うための資金力が必要になります。

これらの方法は、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば行うことができます。

【相続後の対策】現物分割で土地を分ける

もし相続する財産が広い土地であれば、土地を複数の区画に分ける「分筆(ぶんぴつ)」を行い、それぞれの土地を各相続人が単独で所有するという方法もあります。これを「現物分割」といいます。ただし、分筆することで土地の価値が下がってしまったり、建築基準法などの制約で自由に分けられなかったりする場合もあるため、専門家への相談が必要です。

共有名義の相続登記|手続きの流れと費用

実際に相続登記を進める場合の流れと、かかる費用の目安についても知っておきましょう。

手続きの簡単な流れ

相続登記は、一般的に以下の流れで進めます。

  1. 相続人の調査・確定:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めて、誰が相続人になるのかを確定させます。
  2. 遺産分割協議:相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意内容を「遺産分割協議書」にまとめます。
  3. 必要書類の収集:戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書など、登記に必要な書類を集めます。
  4. 登記申請書の作成・提出:法務局に提出する登記申請書を作成し、集めた書類と一緒に提出します。

これらの手続きはご自身で行うことも可能ですが、書類収集や作成が複雑なため、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

必要になる費用の目安

相続登記には、主に以下のような費用がかかります。

登録免許税 登記を申請する際に国に納める税金です。計算式は「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%」です。
司法書士への報酬 手続きを依頼した場合の費用です。不動産の数や評価額にもよりますが、5万円~15万円程度が一般的な目安です。
その他実費 戸籍謄本や住民票などの書類を取得するための費用で、数千円から1万円程度かかることが多いです。

まとめ

共有名義での相続登記は、一見すると公平で円満な解決策に思えますが、将来にわたって不動産の活用を制限し、かえって親族間のトラブルを引き起こす大きなリスクをはらんでいます。「とりあえず共有で」と安易に決めてしまう前に、一度立ち止まって、本当にそれが最善の方法なのかを考えてみることが大切です。不動産をどうしたいのか、将来誰が管理していくのかを相続人同士でしっかりと話し合い、換価分割や代償分割など、他の選択肢も検討してみてください。もし判断に迷ったり、手続きに不安を感じたりした場合は、相続に詳しい司法書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

参考文献

法務局:相続登記の申請をされる相続人の方へ

国税庁:No.4102 相続税がかかる場合

共有名義の相続登記に関するよくある質問まとめ

Q.共有名義で相続登記するメリットは何ですか?

A.法定相続分通りに登記することで、相続人間の公平感を保ちやすいのがメリットです。また、遺産分割協議がまとまらない場合でも、法定相続分での登記は相続人の一人から申請できるため、手続きを一旦完了させることができます。

Q.共有名義で相続登記するデメリットや注意点はありますか?

A.最大のデメリットは、不動産の売却やリフォームなどを行う際に、共有者全員の同意が必要になることです。一人でも反対すると実行できず、将来的なトラブルの原因になりやすい点に注意が必要です。

Q.共有名義の不動産でよくあるトラブルはどんなことですか?

A.共有者の一人が認知症になったり、連絡が取れなくなったりして意思確認ができず、売却したくてもできないケースが典型的です。また、共有者が亡くなるとその相続人に権利が引き継がれ、共有者が増えて権利関係が複雑化するトラブルも多く見られます。

Q.相続した不動産を共有名義にした後、売却はできますか?

A.共有者全員の同意があれば売却できます。ただし、自分の持分だけを売却することも可能ですが、買い手を見つけるのは非常に困難です。不動産全体を売却するには、全員の協力が不可欠です。

Q.共有名義で相続登記をする場合、費用は誰が負担しますか?

A.法律で明確な決まりはありませんが、一般的には共有者全員で持分割合に応じて負担するか、代表者が立て替えて後で精算するケースが多いです。事前に誰がどのように負担するか話し合っておくと、後のトラブルを防げます。

Q.共有名義の状態を解消するにはどうすればよいですか?

A.共有者間で話し合い、他の共有者の持分を買い取る、不動産全体を売却して代金を分ける、などの方法があります。話し合いで解決しない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起して分割する方法もあります。

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