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共有相続の土地は小規模宅地の特例の減額分を配分できる?

2026-02-16
目次

大切なご家族が亡くなり、実家の土地を配偶者とお子様などで共有して相続することになった場合、「小規模宅地等の特例」の計算方法について疑問を持つ方はとても多いです。特に、配偶者には最低でも1億6,000万円まで非課税になる手厚い配偶者控除があるため、その分、特例による土地の評価額の減額枠をお子様へ優先的に配分して、家族全体の相続税を少しでも安くしたいとお考えになるのは当然のことです。しかし、この特例には厳格なルールが存在します。ここでは、共有名義で土地を相続した際の特例適用の仕組みや、お子様に有利に特例を使わせるための正しい遺産分割の方法について、具体的な金額を交えながら優しく分かりやすく解説していきます。

小規模宅地等の特例を共有で相続する場合の基本ルール

実家の土地を複数人で共有して相続する場合、特例の適用には「誰が、どれだけの割合(持分)を取得したか」がとても重要になります。まずは基本となるルールをしっかりと確認していきましょう。

特例の減額分は特定の相続人に配分できる?

結論から申し上げますと、特例で減額できる評価額を、実際の共有持分に関係なく特定の相続人へ自由に配分することはできません。小規模宅地等の特例は、土地を取得した人ごとに「特例の要件を満たしているか」を判定し、その人が取得した持分面積に対してのみ適用される仕組みになっています。そのため、例えば「土地は配偶者とお子様で半分ずつ(2分の1ずつ)共有するけれど、特例の80%減額の効果はすべてお子様に割り当てる」といった計算は税務署には認められません。

共有持分に応じた特例適用の計算方法

共有で相続した場合、土地全体の面積にそれぞれの持分割合を掛けた面積が、各相続人が取得した面積として計算されます。例えば、面積が300㎡、評価額が1億円の土地を、配偶者とお子様で2分の1ずつ共有したとしましょう。この場合、配偶者が150㎡(5,000万円分)、お子様が150㎡(5,000万円分)を取得したことになります。もしお二人とも特例の要件を満たしているなら、それぞれ自分の150㎡について80%の減額を受け、評価額を1,000万円ずつに下げることができます。

配偶者控除との関係とよくあるお悩み

配偶者は「配偶者の税額軽減」という制度により、法定相続分または1億6,000万円のどちらか大きい金額まで相続税がかかりません。そのため、配偶者が取得する財産については、わざわざ小規模宅地等の特例を使って評価額を下げなくても、最終的な税金がゼロになるケースがほとんどです。だからこそ、「配偶者の持分に特例を使ってももったいないので、特例の恩恵はお子様に譲りたい」というお悩みが多く発生します。しかし、持分に応じた適用しかできないため、お子様に特例の効果を集中させたいのであれば、遺産分割の方法自体を工夫する必要があるのです。

土地を共有相続すると特例はどう適用されるか

土地を共有名義にした場合、誰と一緒に共有するかによって特例の適用結果が大きく変わってきます。ここではいくつかのパターンに分けて見ていきましょう。

同居親族と別居親族で共有した場合

亡くなった方と同居していたお子様(同居親族)と、別居してマイホームに住んでいるお子様(別居親族)が、土地を半分ずつ共有して相続したとします。この場合、同居しているお子様は「特定居住用宅地等」の要件を満たしやすいため、自分の持分(2分の1)については80%の減額を受けられます。しかし、マイホームを持っている別居のお子様は特例の要件を満たさないため、残りの2分の1の持分については減額が全く適用されず、そのままの評価額で相続税が計算されてしまいます。

配偶者と子供で共有した場合の具体例

配偶者と同居のお子様で、面積400㎡の土地を半分ずつ(2分の1ずつ)共有するケースを考えてみましょう。配偶者は無条件で特例が使え、お子様も同居要件を満たすため特例が使えます。しかし、居住用の特例には「限度面積330㎡まで」という上限があります。この場合、配偶者の取得分は200㎡、お子様の取得分も200㎡となり、合計で400㎡になります。限度面積の330㎡を超える部分は80%減額の対象にはなりませんので、どの部分に優先して特例を適用するかを選択して申告することになります。

面積制限と持分による按分の注意点

先ほどの例のように、限度面積である330㎡を超える広い土地を共有した場合、相続人の間で「誰の持分から優先して特例を適用するか」を合意して決めることができます。ここが唯一、ご家族で選択できる部分です。配偶者は配偶者控除でどうせ税金がかからないのであれば、限度面積330㎡のうち、まずは同居のお子様の取得面積(200㎡)に特例をフル活用し、残りの130㎡分だけを配偶者の取得面積に適用する、といった計算を行うことで、ご家族全体の相続税を賢く抑えることが可能になります。

子供に特例の影響を大きくするための遺産分割方法

減額枠だけをお子様に配分することができない以上、お子様に小規模宅地等の特例を最大限活用させるためには、「土地をお子様が多く取得する」か「お子様の単独名義にする」しかありません。そのための遺産分割の方法をご紹介します。

子供の単独所有にする現物分割

もっともシンプルで効果的なのが、実家の土地と建物をお子様が100%単独で相続する「現物分割」です。お子様が同居要件(または家なき子要件)を満たしていれば、330㎡までの面積全体に対して80%の減額を一人で受けることができます。配偶者には、預貯金や有価証券など、他の財産を優先的に相続してもらうことで、バランスを取ります。配偶者控除を使えば、預貯金をいくら受け取っても1億6,000万円までは税金がかからないため、家族全体の負担を大きく減らせます。

代償分割を活用して現金を渡す方法

「実家以外の財産が少なく、お子様が土地を単独で相続すると、配偶者の取り分が減って不公平になってしまう」という場合に便利なのが代償分割です。これは、お子様が土地を単独で相続する代わりに、自分のポケットマネー(固有の現金)から配偶者に対して「代償金」を支払う方法です。お子様は特例をフル活用して土地の評価額を下げることができ、配偶者は代償金を受け取ることで生活資金を確保できるため、非常に合理的な解決策となります。

換価分割は特例の対象外になるリスクあり

土地を売却して、その代金を家族で分け合う「換価分割」という方法もありますが、これには大きな注意が必要です。小規模宅地等の特例(特定居住用)を適用するためには、原則として「申告期限(亡くなってから10ヶ月)までその土地を所有し、住み続けていること」が要件となります。申告期限が来る前に土地を売却して換価分割をしてしまうと、特例の要件から外れてしまい、評価額の80%減額が受けられなくなるため、結果として多額の相続税が発生してしまう可能性があります。

共有名義で相続する際に潜む3つのリスク

「どう分けるか揉めたくないから、とりあえず共有名義にしておこう」と考える方もいらっしゃいますが、不動産の共有は将来的に大きなトラブルの種になります。ここでは3つの代表的なリスクをお伝えします。

売却や建て替え時に全員の同意が必要

土地を共有名義にすると、その土地を売却したり、建物を解体して建て替えたり、あるいは担保に入れてローンを組んだりする際に、共有者全員の同意(実印と印鑑証明書)が必要になります。たとえ持分がほんの数パーセントであっても、反対する人が一人でもいれば、土地を動かすことは一切できなくなってしまいます。将来、介護施設に入る資金を作るために家を売りたくても、お子様の一人が反対して売れない、といった悲劇がよく起こります。

将来の二次相続で権利関係が複雑化する

配偶者とお子様で共有した場合、数年後に配偶者が亡くなる(二次相続)と、配偶者の持分がさらにその子供たちへ細かく分割されます。世代が進むにつれて共有者がねずみ算式に増え、面識のない親戚同士で土地を共有することになりかねません。こうなると、いざという時の合意形成は不可能に近く、誰も手出しができない「塩漬けの土地」となってしまいます。

税務調査で同居実態が厳しくチェックされる

共有名義でそれぞれが小規模宅地等の特例を受けようとする場合、税務署は「本当に要件を満たしているか」を一人ひとり個別に厳しくチェックします。特に「同居していたかどうか」は重要な調査ポイントです。住民票だけを移していて生活の実態がなかったり、光熱費の支払いが別々で生活空間も完全に分かれているような二世帯住宅のケースでは、特例の適用が否認され、後から多額の追徴課税を求められるリスクが高まります。

小規模宅地等の特例を最大限に活かすポイント

特例を確実に適用し、家族全員が納得のいく相続にするための重要なポイントを整理しておきましょう。

配偶者の税額軽減との併用バランス

お伝えしてきた通り、配偶者には1億6,000万円の非課税枠があります。この強力な枠と、小規模宅地等の特例をどう組み合わせるかが節税の鍵です。配偶者が特例を使うと、せっかくの配偶者控除の枠を無駄遣いしてしまうことになります。将来の二次相続(配偶者が亡くなった時の相続)のことも見据えて、実家の土地はなるべく特例を使えるお子様が相続し、配偶者は減額されない現金などを相続して生活費に充てる、というプランを立てることが理想的です。

申告期限までの遺産分割が必要

小規模宅地等の特例を適用するためには、原則として相続税の申告期限(亡くなった日の翌日から10ヶ月以内)までに、遺産分割協議が成立していることが絶対条件です。「誰がどの土地をどれだけ相続するか」が決まっていなければ、特例を適用した申告はできません。万が一揉めてしまって期限に間に合わない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」という特別な書類を税務署に提出しておくことで、後から分割がまとまった際に特例を受ける余地を残すことができます。

遺言書による事前対策の重要性

共有によるトラブルを防ぎ、特例を最も有利なお子様に確実に使わせるためには、生前に「遺言書」を作成しておくことが何よりの対策です。遺言書で「自宅の土地建物は長男に相続させる。預貯金は配偶者に相続させる」としっかりと指定しておけば、遺産分割協議で揉めることもなく、スムーズに名義変更と特例適用の申告へ進むことができます。ご家族への優しさとして、元気なうちから対策を考えておくことをおすすめします。

まとめ

小規模宅地等の特例は、土地の評価額を最大80%も減額できる非常に強力な制度ですが、その減額枠を共有持分に関係なく特定の相続人に配分することはできません。配偶者控除があるため、お子様に特例の恩恵を集中させたいとお考えの場合は、安易に共有名義にするのではなく、お子様が単独で土地を相続する「現物分割」や「代償分割」を検討することが大切です。共有名義は将来的な売却のハードルが上がるだけでなく、二次相続で権利関係が複雑になるなど、多くのリスクを抱えています。ご家族の状況に合わせた最適な遺産分割の方法を見つけるためには、相続に精通した専門家と一緒に慎重にプランニングを進めていくことが成功への近道です。

参考文献

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

国税庁 No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

小規模宅地の特例と共有相続のよくある質問まとめ

Q.小規模宅地等の特例の減額枠は、共有持分に関係なく特定の相続人に配分できますか?

A.配分することはできません。特例は土地を取得した各相続人の持分に応じて個別に適用されるため、減額枠だけを他の相続人に譲渡や配分することは認められていません。

Q.配偶者控除があるため、子供に特例の効果を集中させるにはどうすればよいですか?

A.子供に特例の効果を集中させたい場合は、土地を子供の単独名義で相続(現物分割)するか、代償分割を活用して子供が土地を取得し、配偶者へは代償金や預貯金を渡す方法が有効です。

Q.実家の土地を同居の子供と別居の子供で共有した場合、特例はどうなりますか?

A.同居の子供は適用要件を満たせば自身の持分について特例(80%減額)を受けられますが、別居の子供(家なき子要件を満たさない場合)の持分には特例が適用されず、通常の評価額で計算されます。

Q.面積が広い土地を共有した場合、誰の持分から優先して特例を適用できますか?

A.特例の限度面積(居住用は330㎡)を超える場合、相続人の間で誰の取得部分に優先して特例を適用するかを自由に選択して申告することができます。

Q.実家を共有名義で相続するリスクは何ですか?

A.将来の売却や建て替え時に共有者全員の同意が必要になる点や、二次相続が発生した際に共有者が増えて権利関係が複雑になるリスク、税務調査で同居実態が厳しくチェックされる点などが挙げられます。

Q.特例を受けるための期限や手続きの注意点はありますか?

A.原則として相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月以内)までに遺産分割が成立している必要があります。間に合わない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出が必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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