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【図解】半血兄弟の相続分は半分?全血兄弟との違いと相続税を解説

2025-03-17
目次

ご家族の中に、お父様かお母様のどちらか一方だけが同じ「半血兄弟(はんけつきょうだい)」がいらっしゃる場合、遺産の分け方や相続税がどうなるのか、少し複雑で分かりにくいですよね。「みんな平等に分けるの?」「相続できる割合が少ないって本当?」など、たくさんの疑問が浮かぶかもしれません。この記事では、全血兄弟と半血兄弟の相続分の違いや、それが相続税にどう影響するのかを、具体的な例をあげながら、できるだけ専門用語を使わずに優しく解説していきます。相続で揉めないための大切なポイントもご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

全血兄弟と半血兄弟とは?まずは基本を知ろう

相続の話を進める前に、まずは「全血兄弟」と「半血兄弟」という言葉の意味をしっかり確認しておきましょう。この違いが、相続分を計算する上でとても重要になります。

全血兄弟(ぜんけつきょうだい)とは

全血兄弟とは、お父様もお母様も同じ兄弟姉妹のことをいいます。一般的に「兄弟姉妹」というと、この全血兄弟をイメージされる方が多いと思います。

半血兄弟(はんけつきょうだい)とは

半血兄弟とは、お父様かお母様のどちらか一方だけが同じ兄弟姉妹のことです。例えば、お父様が再婚して生まれたお子様がいる場合、前の奥様との間のお子様と、後の奥様との間のお子様は、お父様は同じですがお母様が違うので「異母兄弟(いぼきょうだい)」となります。これも半血兄弟の一種です。逆にお母様が再婚した場合は「異父兄弟(いふきょうだい)」となります。

どんな場合に半血兄弟が発生するの?

半血兄弟は、現代の多様な家族の形の中で生まれることがあります。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 親が離婚した後にそれぞれ再婚し、新しいパートナーとの間にお子様が生まれた場合
  • 配偶者と死別した後に再婚し、新しい家庭でお子様が生まれた場合
  • 結婚関係にない男女の間にお子様が生まれ、その後、男性または女性が別の方と結婚してお子様が生まれた場合

【重要】半血兄弟の相続分は全血兄弟の半分になるケース

ここが一番大切なポイントです。半血兄弟の相続分は、「誰が亡くなったか」によって、全血兄弟と同じになる場合と、半分になる場合があります。まずは、半分になってしまうケースから見ていきましょう。

兄弟姉妹が相続人になる場合

亡くなった方(被相続人)に、お子様やお孫さん(法律用語で「直系卑属」といいます)がおらず、ご両親や祖父母(同じく「直系尊属」といいます)もすでに亡くなっている場合、その方の兄弟姉妹が相続人になります。このように、兄弟姉妹が相続人になるとき、半血兄弟の相続分は全血兄弟の相続分の2分の1になると法律(民法第900条4項)で定められています。

具体例で計算してみよう(遺産6,000万円の場合)

言葉だけだと分かりにくいので、具体的な例で計算してみましょう。

【状況】

  • 亡くなったAさんには配偶者も子も親もいない
  • 相続人は、Aさんと同じ両親から生まれた兄Bさん(全血兄弟)と、父親だけが同じ弟Cさん(半血兄弟)の2人
  • 遺産は6,000万円

この場合、全血兄弟である兄Bさんの相続分を「2」とすると、半血兄弟である弟Cさんの相続分は「1」となります。つまり、2:1の割合で遺産を分けることになります。

相続人 計算式と相続額
兄Bさん(全血兄弟) 6,000万円 × 2/3 = 4,000万円
弟Cさん(半血兄弟) 6,000万円 × 1/3 = 2,000万円

このように、兄弟姉妹が相続するケースでは、相続分に大きな差が出ることがあります。

半血兄弟でも全血兄弟と同じ相続分になるケース

次に、半血兄弟であっても相続分が変わらない、つまり全血兄弟と同じ割合で相続できるケースについてご説明します。これも「誰が亡くなったか」がポイントです。

親が亡くなった場合(子が相続人になる場合)

亡くなったのがご自身の親である場合、状況は全く異なります。お父様が亡くなった場合、相続人は配偶者(お母様)とお子様たちですよね。このとき、お父様から見れば、前妻との間の子も、後妻との間の子も、等しく「自分の子」です。そのため、お子様たちの間に全血・半血の関係があったとしても、相続においては全く関係なく、全員が同じ割合で相続することになります。

具体例で確認しよう(遺産6,000万円の場合)

こちらも具体的な例で見てみましょう。

【状況】

  • 亡くなったのは父親Xさん
  • 相続人は、妻Yさんと、前妻との間の子Aさん、そして妻Yさんとの間の子Bさんの3人
  • 遺産は6,000万円

この場合、まず配偶者である妻Yさんが遺産の半分を相続します。残りの半分をお子様たちで均等に分けます。子Aさんと子Bさんは異母兄弟(半血兄弟)ですが、父親Xさんの子であることに変わりはないので、相続分は同じです。

相続人 計算式と相続額
妻Yさん(配偶者) 6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
子Aさん(前妻の子) (6,000万円 × 1/2)÷ 2人 = 1,500万円
子Bさん(後妻の子) (6,000万円 × 1/2)÷ 2人 = 1,500万円

このように、親の遺産を相続する際は、半血兄弟という理由で相続分が減ることはありませんので、安心してくださいね。

全血と半血で相続税はどう変わる?

相続分が違うということは、支払う相続税にも影響が出てきます。相続税がどのように決まるのか、その仕組みと合わせて見ていきましょう。

相続税の計算の仕組み

相続税は、いきなり個人の相続分から計算するわけではありません。まず、亡くなった方の遺産総額から「基礎控除」という非課税枠を差し引いて、税金がかかる対象額(課税遺産総額)を計算します。基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

この計算で残った金額に対して相続税がかかります。そして、計算された相続税の総額を、実際に財産を受け取った割合に応じて、各相続人が分担して支払う仕組みになっています。

相続分が少ないと相続税も安くなる?

その通りです。相続税は、最終的に自分が受け取った財産の額に応じて負担します。そのため、兄弟姉妹が相続人になるケースで、半血兄弟であるために相続分が全血兄弟の半分になった場合、負担する相続税額もそれに伴って少なくなります。たくさん財産をもらう人は、その分税金の負担も大きくなる、というシンプルな考え方ですね。

要注意!兄弟姉妹が相続すると相続税が2割加算に

ここで一つ、とても大切な注意点があります。亡くなった方の財産を相続するのが、配偶者や子、親以外の人(兄弟姉妹や甥・姪など)である場合、その人の相続税額が2割増しになるというルールがあります。これを「相続税額の2割加算」といいます。

これは、全血兄弟・半血兄弟の区別なく適用されます。ですから、兄弟姉妹として相続する場合には、もともとの税額が高くなる可能性があることを覚えておきましょう。

半血兄弟との相続トラブルを防ぐための3つの対策

半血兄弟がいる相続では、お互いに面識がなかったり、関係が疎遠だったりすることも多く、遺産分割で話し合いが難航するケースも少なくありません。そうしたトラブルを未然に防ぐために、生前にできる対策を3つご紹介します。

対策1:遺言書を作成する

最も有効で確実な方法が「遺言書」の作成です。遺言書があれば、法律で定められた相続分(法定相続分)とは異なる割合で財産を遺すことができます。「お世話になった長男に多く遺したい」「疎遠な兄弟には渡したくない」といった、ご自身の意思を明確に残せます。また、遺言書があれば、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が不要になるため、相続手続きがスムーズに進み、争いを避けることにも繋がります。

対策2:生命保険を活用する

生命保険の死亡保険金は、受取人に指定された人の固有の財産とみなされるため、原則として遺産分割の対象にはなりません。特定の誰かに確実に財産を渡したい場合に非常に有効な手段です。また、死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、相続税対策としてもメリットがあります。

対策3:生前にコミュニケーションをとる

もし可能であれば、生前のうちに関係者とコミュニケーションをとっておくことも大切です。なぜこのような財産の分け方をしたいと考えているのか、ご自身の想いや考えを伝えておくことで、いざ相続が起きたときの誤解や感情的な対立を和らげることができます。直接会うのが難しくても、手紙などで気持ちを伝えておくのも一つの方法です。

まとめ

今回は、全血兄弟と半血兄弟の相続における違いと、相続税への影響について解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 兄弟姉妹が相続人になる場合、半血兄弟の相続分は全血兄弟の半分になります。
  • 親が亡くなって子が相続人になる場合は、全血・半血に関係なく相続分は同じです。
  • 受け取る財産の額が少ないほど、負担する相続税額も少なくなります。
  • 兄弟姉妹が相続する場合は、相続税が2割加算される点に注意が必要です。
  • 関係が複雑な場合ほど、トラブル防止のために「遺言書」の作成が非常に有効です。

相続は、法律や税金が複雑に絡み合う難しい問題です。特に半血兄弟が関わる場合は、慎重な対応が求められます。もしご自身で判断に迷うことがあれば、税理士などの専門家に相談することも検討してみてくださいね。

参考文献

全血・半血兄弟姉妹の相続に関するよくある質問まとめ

Q. そもそも「全血」「半血」の兄弟姉妹とは何ですか?

A. 両親が同じ兄弟姉妹を「全血兄弟姉妹」、片方の親だけが同じ兄弟姉妹を「半血兄弟姉妹」といいます。例えば、父親が再婚して前妻との間に子、後妻との間に子がいる場合、その子供同士は半血兄弟姉妹です。

Q. 半血の兄弟姉妹の相続分は全血の兄弟姉妹と同じですか?

A. いいえ、異なります。半血の兄弟姉妹の法定相続分は、全血の兄弟姉妹の2分の1と法律で定められています。

Q. 兄弟姉妹が相続人になるのはどのような場合ですか?

A. 亡くなった方(被相続人)に子供や孫(第1順位)がおらず、両親や祖父母(第2順位)もすでに亡くなっている場合に、第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。

Q. 半血の兄弟姉妹も代襲相続できますか?

A. はい、できます。相続人となるはずだった半血の兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子供(被相続人から見て甥・姪)が代わりに相続人になることができます。これを代襲相続といいます。

Q. 全血と半血で相続税の計算方法は変わりますか?

A. 相続税の総額の計算方法は変わりません。しかし、法定相続分が異なるため、各相続人が取得する財産額が変わり、結果として一人ひとりが納める相続税額に影響が出ます。

Q. 遺言書がある場合、半血兄弟姉妹の相続分はどうなりますか?

A. 遺言書がある場合は、法定相続よりも遺言の内容が優先されます。そのため、遺言書に記載された通りの相続となります。なお、兄弟姉妹には遺留分(最低限の相続割合を主張できる権利)はありません。

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