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厚生年金と厚生年金基金の違いとは?相続税申告への影響を徹底解説

2025-03-05
目次

ご家族が亡くなられた後の手続きは、心身ともに大変なことが多いですよね。特に年金制度は複雑で、「厚生年金と厚生年金基金って何が違うの?」「相続税の申告は必要なの?」と戸惑ってしまう方も少なくありません。この記事では、この二つの制度の基本的な違いから、相続税申告にどう影響するのかまで、一つひとつ丁寧に、分かりやすく解説していきます。大切な手続きをスムーズに進めるためのお手伝いができれば幸いです。

厚生年金と厚生年金基金の基本的な違い

まずはじめに、「厚生年金」と「厚生年金基金」が、それぞれどのような制度なのかを知ることから始めましょう。名前は似ていますが、運営する主体や制度の目的が大きく異なります。この違いを理解することが、相続税の取り扱いを理解する第一歩になりますよ。

厚生年金とは?

厚生年金は、国が運営する公的年金の一つです。日本の年金制度はよく3階建ての家に例えられますが、厚生年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」という1階部分の上にプラスされる、「2階部分」にあたります。会社員や公務員の方が加入し、老後の生活をより手厚く支えるための制度です。

厚生年金基金とは?

一方、厚生年金基金は、企業が従業員のためにより豊かな老後を提供することを目的に、国に代わって設立・運営していた私的年金(企業年金)です。厚生年金の一部(代行部分)を企業が国に代わって運用し、さらに企業独自の年金(プラスアルファ部分)を上乗せして支給する仕組みで、「3階部分」にあたります。ただし、法律の改正により2014年4月1日に新規設立が認められなくなり、多くの基金はすでに解散したり、別の企業年金制度へ移行したりしています。

違いを一覧表でチェック

二つの制度の違いを、簡単な表にまとめてみました。こうして見比べると、違いがよりはっきりと分かりますね。

項目 厚生年金
運営主体 国(日本年金機構)
位置づけ 公的年金(2階部分)
加入対象 会社員・公務員など
現状 現在も継続中の制度
項目 厚生年金基金
運営主体 企業が設立した基金
位置づけ 私的年金(3階部分)
加入対象 基金を設立した企業の従業員
現状 新規設立は停止。多くは解散・移行済み

亡くなったときに遺族が受け取れる給付金の種類

加入していた方が亡くなった場合、ご遺族が受け取れるお金があります。これも厚生年金と厚生年金基金では、名称や内容が異なります。相続税の話に進む前に、どのような給付金があるのかを確認しておきましょう。

厚生年金から受け取れる「遺族厚生年金」

厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、一定の要件を満たす遺族は「遺族厚生年金」を受け取ることができます。これは、家計を支えていた方を亡くした遺族の生活を保障するための制度です。亡くなった方の年金加入期間や、遺族の続柄・年齢などによって受給できるかどうかが決まります。

厚生年金基金から受け取れる「遺族給付金」

厚生年金基金に加入していた方が亡くなった場合は、基金の規約に基づいて「遺族給付金」が支給されることがあります。これは一時金で支払われることもあれば、年金形式で支払われることもあり、支給の条件や金額は各基金によって様々です。加入していた基金の規約を確認する必要があります。

受け取り忘れていた年金「未支給年金」

亡くなった方が、本来受け取るはずだったのに、亡くなったために受け取れなかった年金のことを「未支給年金」と言います。公的年金は後払い(偶数月に前2ヶ月分を支給)のため、必ずこの未支給年金が発生します。これは厚生年金、厚生年金基金のどちらにも存在する可能性があり、生計を同じくしていた遺族が請求して受け取ることができます。

相続税申告における厚生年金と厚生年金基金の取り扱い

ここからが最も大切なポイントです。遺族が受け取る年金や一時金が、相続税の申告でどのように扱われるのかを見ていきましょう。公的年金か私的年金か、という違いが課税の有無を分ける大きなポイントになります。

厚生年金の遺族厚生年金は相続税が非課税

まず、厚生年金から支給される遺族厚生年金は、遺族の生活保障という大切な目的があるため、相続税の対象にはなりません。また、毎年受け取る年金にかかる所得税も非課税です。したがって、相続財産として申告する必要は一切ありませんので、ご安心ください。

厚生年金基金の遺族給付金は原則、相続税の課税対象

一方で、厚生年金基金から支給される遺族給付金は、私的年金(企業年金)という位置づけのため、原則として「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。これは、亡くなったことを原因として受け取る財産であり、実質的に相続で財産を受け取ったのと同じとみなされるためです。ただし、基金が国の厚生年金を代行していた部分については非課税として扱われるなど、非常に複雑なケースもあります。そのため、まずは加入していた基金に課税対象となるかを確認することが重要です。

未支給年金の取り扱い

亡くなった方が受け取るはずだった「未支給年金」は、相続税の課税対象にはなりません。これは相続財産ではなく、請求して受け取った遺族固有の財産(一時所得)とみなされるからです。そのため、相続税の申告は不要ですが、受け取った金額によっては所得税の確定申告が必要になる場合があります。(一時所得には年間50万円の特別控除があります。)

「みなし相続財産」と非課税枠の適用について

厚生年金基金からの遺族給付金が「みなし相続財産」として課税対象になる場合、何か税金の負担を軽くする制度はないのでしょうか。ここでは、死亡退職金と同じように扱われるケースと、非課税枠について詳しく解説します。

みなし相続財産とは?

「みなし相続財産」とは、亡くなった方の本来の財産(預貯金や不動産など)ではないものの、亡くなったことをきっかけにご遺族が受け取る生命保険金や死亡退職金などのことを指します。これらは税法上、相続財産とみなして相続税の計算に含める決まりになっています。厚生年金基金からの遺族給付金も、この「みなし相続財産」の一つと考えることができます。

死亡退職金の非課税枠は使える?

相続税の対象となる厚生年金基金の遺族給付金は、亡くなった方の状況によって死亡退職金の非課税枠が使えるかどうかが変わります。これは非常に大きな違いですので、しっかりと確認しましょう。

亡くなった方の状況 取り扱いと非課税枠
年金の受給を開始する前に亡くなった場合 死亡退職金として扱われ、「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用できます。
年金の受給を開始した後に亡くなった場合 定期金に関する権利として扱われ、非課税枠の適用はありません。受け取る権利の評価額がそのまま課税対象となります。

このように、亡くなったタイミングで税金の計算が大きく変わる可能性があるため、注意が必要です。

相続発生後の具体的な手続き

実際に相続が発生した際に、どこでどのような手続きをすればよいのでしょうか。厚生年金と厚生年金基金では窓口が異なりますので、それぞれ確認しておきましょう。

厚生年金の手続き(年金事務所)

厚生年金に関する手続きは、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターが窓口です。まず「年金受給権者死亡届」を提出して年金の支給を止めます(日本年金機構にマイナンバーが登録されていれば、この届出は原則不要です)。その後、遺族厚生年金や未支給年金を受け取るための請求手続きを行います。

厚生年金基金の手続き(各基金または企業年金連合会)

厚生年金基金については、亡くなった方が加入していた基金に直接連絡し、死亡した旨を伝えて手続きを進めます。必要な書類や手続き方法は基金ごとに異なります。もし加入していた基金がすでに解散している場合は、年金の管理を引き継いでいる「企業年金連合会」が問い合わせ先となります。

手続きで準備する主な書類

手続きには、一般的に以下のような書類が必要となります。事前に準備しておくとスムーズです。

  • 亡くなった方の年金証書
  • 戸籍謄本(亡くなった事実と、請求者との続柄が確認できるもの)
  • 請求される方の住民票
  • 受け取りを希望する金融機関の通帳
  • マイナンバーカードまたは通知カード

※提出先によって必要書類は異なりますので、必ず事前に確認してください。

まとめ

今回は、厚生年金と厚生年金基金の違いと、相続税申告への影響について解説しました。最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

年金の種類 遺族への給付と相続税の取り扱い
厚生年金(公的年金) 遺族厚生年金は、遺族の生活保障が目的のため非課税です。相続税申告は不要です。
厚生年金基金(私的年金) 遺族給付金は、原則として「みなし相続財産」として課税対象になります。年金受給前に亡くなった場合は、死亡退職金の非課税枠が使える可能性があります。

このように、名前は似ていても、相続税の取り扱いは大きく異なります。特に厚生年金基金に加入されていた場合は、相続財産に含まれる可能性が高いため、申告漏れがないように注意が必要です。もし手続きで分からないことや、相続税申告で不安な点があれば、加入していた基金や税理士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権

国税庁 No.1605 遺族の方に支給される公的年金等

厚生年金と厚生年金基金の相続に関するよくある質問

Q.厚生年金と厚生年金基金の根本的な違いは何ですか?

A.厚生年金は国の公的年金制度の一部です。一方、厚生年金基金は、国の厚生年金の一部を代行し、企業が独自に上乗せ給付を行う私的年金制度でした(現在は新規設立不可)。運営主体が国か企業かの違いが大きいです。

Q.厚生年金は相続財産になりますか?

A.死亡後に支給される遺族厚生年金や未支給年金は、受取人固有の権利とみなされるため、相続税の対象となる相続財産には含まれません。したがって、相続税申告は不要です。

Q.厚生年金基金から受け取る死亡一時金は相続税の対象ですか?

A.はい、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、死亡保険金と同様に「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。

Q.厚生年金基金の死亡一時金と生命保険金の非課税枠は別々に使えますか?

A.いいえ、別々には使えません。死亡一時金と生命保険金を合計した金額に対して、「500万円 × 法定相続人の数」という一つの非課税限度額が適用されます。

Q.遺族厚生年金を受け取る場合、相続税の申告は必要ですか?

A.遺族厚生年金自体は非課税のため申告不要ですが、他の相続財産(預貯金、不動産、厚生年金基金の死亡一時金など)の合計額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。

Q.厚生年金基金制度は今どうなっていますか?

A.2014年4月以降、厚生年金基金の新規設立は認められておらず、多くの基金が解散または他の企業年金制度(確定給付企業年金など)へ移行しています。そのため、ご自身の加入状況を確認することが重要です。

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