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受取配当金の税金はいくら?確定申告で損しない3つの方法を解説

2025-02-24
目次

株式投資などで「配当金」を受け取ると、税金がかかることをご存知ですか?「税金はいくら引かれるの?」「確定申告は必要なの?」と疑問に思う方も多いかもしれませんね。実は、受け取った配当金の税金は、確定申告をすることで戻ってくる可能性があるんです。この記事では、受取配当金にかかる税金の基本から、お得になる確定申告の方法まで、分かりやすく解説していきます。

受取配当金にかかる税金の基本

株式の配当金や投資信託の分配金などを受け取ると、それは「配当所得」という所得の一種になり、税金がかかります。まずは、税率や税金が引かれる仕組みといった基本的な部分から見ていきましょう。

税率は合計20.315%

上場株式の配当金などにかかる税率は、所得税・復興特別所得税と住民税を合わせて合計20.315%です。内訳は以下のようになっています。

所得税および復興特別所得税 15.315%
住民税 5%

例えば、10万円の配当金を受け取った場合、税額は10万円 × 20.315% = 20,315円となります。実際にあなたの口座に振り込まれるのは、この税金が差し引かれた後の79,685円ということになります。

税金はいつ引かれる?源泉徴収の仕組み

「税金って自分で納めるの?」と不安に思うかもしれませんが、心配はご無用です。配当金が支払われるとき、証券会社などの金融機関があらかじめ税金を差し引いて(これを源泉徴収といいます)、私たちの代わりに国へ納めてくれています。そのため、基本的には何もしなくても納税は完了している状態なんですよ。

非上場株式や大口株主の場合は税率が違う?

注意点として、非上場株式の配当金や、発行済株式総数の3%以上を保有する大口株主が受け取る配当金の場合は、税金の扱いが少し異なります。この場合、所得税・復興特別所得税の20.42%だけが源泉徴収され、住民税は徴収されません。そのため、原則として確定申告が必要になりますので覚えておきましょう。

配当金の税金、確定申告は必要?3つの選択肢

源泉徴収によって納税は完了していますが、実は受け取った配当金の税金の納め方には3つの選択肢があります。どの方法を選ぶかによって、手元に残るお金が変わってくる可能性があるんですよ。

申告不要制度|何もしない(原則)

最もシンプルな方法が、この「申告不要制度」です。すでに20.315%の税金が源泉徴収されているので、あえて確定申告をしないという選択です。「特定口座(源泉徴収あり)」を利用していれば、株の売却益の税金も自動で計算・納税してくれるので、手間がかからず一番簡単な方法ですね。

総合課税|他の所得と合算して申告

2つ目は、確定申告で「総合課税」を選択する方法です。これは、配当所得を給与所得や事業所得など、他の所得と合算して全体の所得税額を計算する方法です。この方法を選ぶ最大のメリットは、後ほど詳しく解説する「配当控除」という税額控除が使える点です。所得が比較的少ない方の場合、この方法が一番お得になることが多いです。

申告分離課税|株式等の所得だけで申告

3つ目は、確定申告で「申告分離課税」を選択する方法です。こちらは、配当所得を給与所得などとは切り離し、株式の売却損益などと合算して税金を計算する方法です。税率は源泉徴収と同じ20.315%です。この方法のメリットは、株式の売買で損失(譲渡損失)が出ている場合に、その損失と配当金の利益を相殺(損益通算)できる点です。株の取引で損が出てしまった方には、有利な選択肢となります。

【節税テク1】配当控除でお得になるケース(総合課税)

確定申告で「総合課税」を選ぶと、「配当控除」という制度を利用でき、税金の負担を軽くできる可能性があります。ここでは、配当控除の仕組みと、どんな人がお得になるのかを見ていきましょう。

配当控除の仕組みとは?

配当金の元手は、企業が利益から法人税を支払った残りのお金です。その配当金を受け取った個人が、さらに所得税を支払うと、同じ利益に対して二重に税金がかかっていることになります。この「二重課税」の状態を調整するために設けられているのが配当控除です。確定申告で総合課税を選ぶことで、所得税や住民税から一定額を直接差し引くことができるんですよ。

どれくらいお得になるの?控除率をチェック

配当控除で差し引かれる金額は、あなたの所得金額によって変わります。所得税と住民税の控除率は以下の表の通りです。

<所得税の配当控除率>

課税総所得金額 控除率
1,000万円以下の部分 10%
1,000万円を超える部分 5%

<住民税の配当控除率>

課税総所得金額 控除率
1,000万円以下の部分 2.8%
1,000万円を超える部分 1.4%

配当控除を使った方がお得なのはどんな人?

結論から言うと、課税所得金額が695万円以下の方は、総合課税を選んで配当控除を受けた方が、何もしない(申告不要制度)よりも税率が低くなるため有利になるケースが多いです。課税所得金額ごとの実質的な税率を比較してみましょう。

課税所得金額 源泉徴収税率(申告不要) 総合課税の実質税率(配当控除後)
195万円以下 20.315% 約7.2%
195万円超~330万円以下 20.315% 約7.2%
330万円超~695万円以下 20.315% 約17.2%

※実質税率は、所得税率と住民税率の合計から配当控除率を引いて計算した目安です。
このように、特に所得が低い方ほど、配当控除のメリットは大きくなります。源泉徴収された税金が還付される可能性が高いので、ぜひ検討してみてください。

【節税テク2】株の損失と相殺するケース(申告分離課税)

年間の株式取引で、残念ながら損失が出てしまった…。そんなときは、確定申告で「申告分離課税」を選ぶことで、税金の負担を軽減できるかもしれません。その鍵となるのが「損益通算」と「繰越控除」です。

損益通算の仕組み

損益通算とは、同じ年に得た利益と損失を合算して、全体の所得を計算できる仕組みです。申告分離課税を選ぶと、株式の売却で出た損失と、受け取った配当金の利益を相殺できます。
例えば、A株の売却で30万円の損失を出し、B株から10万円の配当金を受け取ったとします。この場合、-30万円(損失) + 10万円(利益) = -20万円となり、その年の株式関連の所得はマイナスになります。その結果、配当金から源泉徴収されていた税金(10万円 × 20.315% = 20,315円)が全額還付されるのです。

損失を3年間繰り越せる「繰越控除」

もし、その年の損失が大きくて配当金と相殺しきれなかった場合でも、諦める必要はありません。「繰越控除」という制度を使えば、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益や配当金と相殺することができます。
ただし、繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年から継続して毎年確定申告をする必要があるので注意してくださいね。

確定申告するときの注意点

確定申告で税金が戻ってくるのは嬉しいことですが、いくつか注意点もあります。申告する前に、ご自身の状況に影響がないか確認しておきましょう。

国民健康保険料や医療費の自己負担額が増える可能性

確定申告をすると、申告した配当所得が「合計所得金額」に含まれます。この合計所得金額は、国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料、医療費の自己負担割合などを計算する際の基準になります。そのため、確定申告によって合計所得金額が増えると、これらの社会保険料などが上がってしまう可能性があります。税金は還付されても、それ以上に負担が増えては本末転倒ですよね。

扶養から外れてしまう可能性

配偶者控除や扶養控除の対象になっている方も注意が必要です。これらの控除には、対象者の合計所得金額に上限(例:配偶者控除は48万円以下)が設けられています。確定申告をした結果、合計所得金額がこの上限を超えてしまうと、扶養から外れてしまいます。そうなると、扶養している方の税負担が増え、世帯全体で見たときに手取りが減ってしまう恐れがあります。

まとめ

受取配当金の税金について、ご理解いただけたでしょうか。最後にポイントをまとめておきましょう。

  • 受取配当金には原則20.315%の税金がかかり、源泉徴収で納税が完了するため確定申告は不要です。
  • 節税を目指すなら確定申告を検討しましょう。方法は主に2つです。
    1. 総合課税:課税所得695万円以下の方なら「配当控除」で税金が安くなる可能性が高いです。
    2. 申告分離課税:株の取引で損失がある方は「損益通算」で税金の還付を受けられる可能性があります。
  • 確定申告をすると、国民健康保険料の増加や扶養から外れるといったデメリットも考えられます。還付される税額と増える負担額を比較して、総合的に判断することが大切です。

ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことで、大切なお金を守ることができます。もし判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

国税庁 No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

受取配当金の税金に関するよくある質問まとめ

Q.受取配当金の税金はいくらですか?

A.原則として、所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を合わせた、合計20.315%が源泉徴収されます。

Q.配当金を受け取ったら確定申告は必要ですか?

A.配当金は源泉徴収により納税が完了するため、原則として確定申告は不要です。ただし、確定申告をすることで税金が還付される場合があります。

Q.配当金を確定申告するメリットは何ですか?

A.総合課税を選択して確定申告をすると「配当控除」が適用され、税金が還付される可能性があります。また、株式等の譲渡損失と損益通算することも可能です。

Q.NISA口座で受け取った配当金に税金はかかりますか?

A.NISA(少額投資非課税制度)口座内で受け取った配当金は非課税のため、税金はかかりません。確定申告も不要です。

Q.配当金の税金の計算方法を教えてください。

A.税金の計算式は「配当金の金額 × 20.315%」です。この金額が配当金からあらかじめ差し引かれて支払われます。

Q.配当金の確定申告が不要なのはどんな場合ですか?

A.源泉徴収ありの特定口座で配当金を受け取り、確定申告をしないことを選択した場合や、NISA口座で受け取った場合は確定申告が不要です。

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