税理士法人プライムパートナーズ

合同会社の社員に対する事前確定届出給与の注意点と要件

2026-02-23
目次

合同会社を設立して経営を軌道に乗せていく中で、経営者ご自身や役員である社員に賞与(ボーナス)を支給したいと考える方は多いですよね。しかし、合同会社の社員に対する賞与は、正しい手続きを踏まないと会社の経費(損金)として認められず、結果として法人税が高くなってしまうリスクがあります。今回は、合同会社の社員に対する事前確定届出給与の注意点や、税務署への届出に関する具体的なルールについて分かりやすく解説していきます。

合同会社における事前確定届出給与の基礎知識

まずは、事前確定届出給与という制度の基本的な仕組みと、合同会社においてどのような位置づけになるのかを整理していきましょう。従業員の給料とは扱いが大きく異なるため、はじめに基礎をしっかり押さえておくことが大切です。

事前確定届出給与とはどのような制度ですか?

事前確定届出給与とは、会社の役員に対して「毎年7月10日に50万円を支給する」といったように、あらかじめ支払う日付と金額を具体的に決めておき、事前に税務署へ届け出ることで経費(損金)として認められる制度のことです。通常、役員に対する賞与は経費にできないという厳しいルールがありますが、この届出を正しく行うことで、例外的に経費として扱うことができるようになります。

定期同額給与などの他の役員報酬との違い

役員の報酬を経費にする方法には、事前確定届出給与のほかに「定期同額給与」と「業績連動給与」があります。それぞれの特徴を整理してみましょう。

役員報酬の支払い方法 具体的な内容と特徴
定期同額給与 毎月25日に30万円など、毎月同じ金額を支払う月給のことです。事前届出は不要です。
事前確定届出給与 12月10日に100万円など、決まった日に決まった額の賞与を支払います。税務署への事前の届出が必須です。
業績連動給与 会社の利益に応じて金額が変わる報酬です。上場企業などで使われ、一般的な非上場の合同会社ではほとんど使われません。

このように、一般的な合同会社であれば、毎月の基本給は定期同額給与を利用し、ボーナスを出したい場合に事前確定届出給与を利用するという使い分けになります。

合同会社の社員と一般的な従業員の違い

合同会社における「社員」という言葉は、日常会話で使う社員(従業員)とは意味が違います。合同会社での「社員」とは、会社にお金を出資している出資者であり経営者(役員)のことです。そのため、従業員のように労働基準法に基づいて自由に残業代やボーナスを出すことはできず、役員報酬の厳格な税務ルールに従わなければなりません。

合同会社特有の税務上の落とし穴と注意点

事前確定届出給与は、株式会社ではごく当たり前に使われている制度です。しかし、自由度が高い合同会社だからこそ、株式会社と同じ感覚で手続きを進めると税務上の落とし穴にはまってしまうことがあります。

株式会社の手続きとは何が違うの?

株式会社には法律上「株主総会」や「取締役の任期(たとえば2年や10年)」が明確に定められています。しかし、合同会社には法律で義務付けられた株主総会がなく、役員の任期もありません。このルールの違いが、事前確定届出給与の手続きに大きな影響を与えます。

項目 株式会社と合同会社の違い
報酬を決める会議 株式会社は「株主総会」で行いますが、合同会社には存在しないため、定款で会議の場を定める必要があります。
役員の任期 株式会社は原則2年などの任期がありますが、合同会社は無期限が原則です。ここも定款で区切る工夫が必要です。

定款への記載が絶対に必要となる理由

事前確定届出給与を提出する際の期限は、「役員の職務が開始した日から1か月以内」というルールがあります。合同会社は役員の任期がないため、いつから新しい職務が始まったのかを客観的に証明できません。職務の開始日が分からなければ提出期限も決められないため、税務署から経費として認めてもらえないのです。これを防ぐためには、会社設立時などに作成する定款(会社のルールブック)をしっかりと作り込んでおく必要があります。

事前確定届出給与を適用するための3つの必須条件

合同会社の社員に対して事前確定届出給与を使って賞与を支給するためには、定款にあらかじめ次の3つの具体的な条件を盛り込んでおかなければなりません。

定時社員総会に関する規定を設ける

合同会社には株主総会がありませんが、定款の中に「毎年事業年度の終了後2か月以内に定時社員総会を開催する」という規定を設けてください。この定時社員総会を、報酬を決定するための正式な会議の場として税務署に認めてもらうためです。

業務執行社員の任期を具体的に決める

任期がなければ職務の開始日が特定できないため、定款の中で「業務執行社員の任期は2年とする」あるいは「10年とする」といったように、明確な期間を定めてください。これにより、任期が更新される定時社員総会の日を職務の執行開始日として扱うことができるようになります。

報酬や賞与を支給する根拠を書面で残す

誰に、いつ、いくら支払うのかという法的根拠を明確にするため、定款に「社員の報酬や賞与は、総社員の同意によって決定する」という一文を入れておきましょう。そして、実際に金額を決めた際は口約束ではなく、必ず同意書や議事録といった書面を作成して会社に保管してください。

税務署への届出期限と具体的な手続きの進め方

条件が整ったら、いよいよ税務署へ「事前確定届出給与に関する届出書」を提出します。この提出期限は1日でも遅れると受け付けてもらえないため、スケジュール管理が非常に重要です。

提出期限に関する厳格なルール

届出書の提出期限は、設立の初年度と2年目以降で少し異なります。以下の期限のうち、いずれか早い日までに所轄の税務署へ提出してください。

会社の状況 税務署への届出期限
新しく会社を設立した初年度の場合 会社の設立日から2か月を経過する日まで
設立2年目以降の場合 定時社員総会の決議日(職務開始日)から1か月以内、または事業年度開始日から4か月以内のどちらか早い日

たとえば、3月決算の会社で5月20日に定時社員総会を開いた場合、そこから1か月以内である6月20日までに届出を行う必要があります。

1円単位のズレも許されない支給額の決定

届出書に記載する支給日と支給額は、後から変更できないものとして慎重に決めてください。「業績が良ければ100万円、悪ければ50万円にしよう」といった曖昧な書き方はできません。「12月15日にぴったり80万円を支給する」と正確に記載する必要があります。会社の口座残高や年間の利益予測をしっかり計算した上で、無理なく支払える具体的な金額を設定しましょう。

届出をした後にトラブルになりやすいリスク

事前確定届出給与は、ただ税務署に書類を出せば終わりではありません。実際に届出書に書いた通りの内容で支払いを実行する段階で、思わぬトラブルになることがあります。

支給日や金額がずれた場合のペナルティ

一番多い失敗が、資金繰りが厳しくて支給日に賞与が払えなかったり、届け出た金額より少なく支払ってしまったりするケースです。たとえば、100万円で届け出ていたのに、お金が足りず80万円だけ支給したとします。この場合、差額の20万円だけでなく、支給した80万円の全額が経費(損金)として認められなくなります。1日でも支給日が遅れたり、1円でも金額が違ったりするとペナルティの対象になるため、非常に注意が必要です。

業績悪化などで途中の金額変更が認められるケース

一度届け出た金額は原則変更できませんが、例外として変更が認められるケースがあります。それは、会社や役員の不祥事で行政処分を受けた場合や、経営状態が著しく悪化して銀行などの第三者から役員報酬の減額を強く求められた場合などです。単に「思ったより売上が伸びなかった」という自己都合の理由では変更が認められないので気をつけましょう。もし正当な理由で金額を変更する場合は、変更を決議した日から1か月以内に「変更届出書」を提出する必要があります。

合同会社の事前確定届出給与についてのまとめ

合同会社の社員に対する事前確定届出給与は、効果的な節税対策になる一方で、ルールが非常に厳格に定められています。株式会社とは異なり、まずは定款に「定時社員総会」や「役員の任期」に関する規定をしっかりと整備することが第一歩です。そして、届出期限を守り、届け出た日付と金額を1円の狂いもなく正確に支給することを徹底してください。会社の年間計画をしっかり立てて、無理のない範囲で賢く制度を活用していきましょう。

参考文献

国税庁:No.5211 役員に対する給与

合同会社の事前確定届出給与に関するよくある質問まとめ

Q.合同会社の社員に賞与を出す場合、事前確定届出給与の届出は必須ですか?

A.はい、合同会社の社員(役員)に賞与を支給して会社の経費(損金)に算入するためには、事前に税務署への届出が必須となります。

Q.事前確定届出給与の届出期限はいつですか?

A.原則として、定時社員総会などの決議をした日から1か月以内、または事業年度開始の日から4か月以内のどちらか早い日となります。

Q.予定していた支給日に資金が足りず、数日遅れて支給しても経費になりますか?

A.いいえ、届出書に記載した支給日と1日でもずれた場合、支給した賞与の全額が経費として認められなくなります。

Q.届出書に記載した金額より5万円少なく支給した場合はどうなりますか?

A.1円でも金額が異なるとルール違反となり、支給した全額が経費(損金)に算入できなくなります。必ず届出通りの金額を支給してください。

Q.合同会社には株主総会がありませんが、報酬はどうやって決定しますか?

A.合同会社では、定款に定時社員総会に関する規定を設け、そこで社員の過半数の同意や決議を行うことで報酬を決定します。

Q.業績が悪くなった場合、途中で支給額を減らすことはできますか?

A.単に売上が少し下がった程度では変更できません。取引先銀行から経営改善を求められるなど、著しい業績悪化の客観的な事実があれば変更できる場合があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /