税理士法人プライムパートナーズ

同族会社との定期借地権|権利金なし・通常の地代は税務署に否認される?

2024-12-09
目次

ご自身の土地を、ご自身が経営する同族会社に貸すケースはよくありますよね。特に「定期借地権」なら、契約期間が終われば必ず土地が戻ってくるので安心、権利金もいらないし、地代もそんなに高くなくていいだろう…なんて考えていませんか?実は、その考え方には大きな税務リスクが潜んでいるかもしれません。今回は、個人と同族会社との間で定期借地権契約を結ぶ際の、権利金や地代に関する税金の注意点について、わかりやすく解説していきますね。

個人と法人間の土地取引における税務の基本

個人と会社、特に社長個人とその同族会社との間の取引は、税務署がとても注意深く見ているポイントです。なぜなら、当事者同士で自由に条件を決められるため、不当に利益を移転して税金を安くしようとする行為(租税回避)が行われやすいと考えられているからです。そのため、第三者間の取引と同じように、客観的に見て妥当な条件で取引することが求められます。

「権利金の認定課税」とは?

土地を貸すとき、一般的には借主から地主へ「権利金」という一時金が支払われます。これは、土地を借りる権利(借地権)を設定するための対価です。もし、個人が同族会社に土地を貸す際に、この権利金を受け取らなかった場合、税務上は「会社は権利金相当額の利益を個人から無償で受け取った」とみなされてしまいます。これを「権利金の認定課税」といい、会社側で権利金相当額が利益として計上され、法人税が課されてしまうのです。

認定課税を避けるための2つの方法

この思わぬ課税を避けるためには、国税庁が認めている2つの方法のどちらかを選択する必要があります。権利金を受け取らない場合は、必ずどちらかの対策をとるようにしましょう。

回避方法 内容
相当の地代を支払う 権利金の代わりに、土地の価値に見合った高めの地代(相当の地代)を会社が個人に支払う方法です。
「土地の無償返還に関する届出書」を提出する 契約終了後、会社が地主へ土地を無償で返すことを約束し、その旨を記載した届出書を税務署に提出する方法です。

「定期借地権なら大丈夫」という誤解

「定期借地権は、そもそも更新がなく、契約期間が終われば必ず土地が更地で返還される契約なのだから、権利金のやり取りがなくても問題ないはず」と考える方が多くいらっしゃいます。しかし、税務の世界ではその考えは通用しないので注意が必要です。

なぜ定期借地権でも認定課税のリスクがあるのか

たとえ定期借地権であっても、契約期間中は、会社がその土地を使用して建物を建て、事業を行うことができます。税務上は、この「土地を利用する権利(借地権)」には経済的な価値があると考えます。権利金を支払わずにこの価値ある権利を得たということは、会社が経済的な利益を受けたことになり、通常の借地権(普通借地権)と同じように権利金の認定課税の対象となってしまうのです。

「無償返還の契約」と「無償返還の届出」は別物です

定期借地権の契約書に「期間満了時に無償で土地を返還する」という条項を入れるのは当然のことです。しかし、税務上で認定課税を回避するためには、当事者間で契約書を交わすだけでは不十分です。必ず、会社と個人の連名で「土地の無償返還に関する届出書」という書類を、会社の納税地を管轄する税務署に提出しなければ、その効力は認められません。この届出を失念すると、認定課税のリスクを負うことになります。

「通常の地代」と「相当の地代」の大きな違い

個人と同族会社間の土地賃貸では、「通常の地代」と「相当の地代」という2つのキーワードが非常に重要になります。どちらの地代を設定するかによって、課税関係が全く異なってきます。

相当の地代とは?

「相当の地代」とは、権利金の授受がない代わりに支払う、いわば権利金部分を含んだ高めの地代のことです。これを支払っていれば、権利金の認定課税は行われません。計算式は以下の通りです。

相当の地代(年額) = その土地の更地価額(※) × 6%

※更地価額は、時価ですが、課税上弊害がなければ、その土地の相続税評価額や過去3年間の平均額を使うことも認められています。

通常の地代とは?

「通常の地代」とは、権利金の授受がきちんと行われた場合に授受される、一般的な水準の地代を指します。土地全体の価値から、借主の権利である借地権部分を除いた、地主の権利(底地)部分に対応する地代とイメージすると分かりやすいでしょう。計算式は以下の通りです。

通常の地代(年額) = その土地の更地価額(※) × (1 – 借地権割合) × 6%

借地権割合は、路線価図で定められている60%や70%といった割合です。「相当の地代」と比べると、かなり低い金額になることがわかりますね。

ご質問のケースの税務リスクと正しい対策

それでは、今回のテーマである「定期借地権契約で、権利金の授受はなく、無償返還届出も出さず、通常の地代を支払う」というケースについて、税務上の結論を見ていきましょう。

結論:権利金の認定課税が発生する可能性が極めて高いです

このケースでは、権利金の認定課税を回避するための2つの要件、つまり「相当の地代の支払い」も「無償返還届出書の提出」も、どちらも満たしていません。
そのため、会社側で権利金相当額の受贈益があったとみなされ、多額の法人税が課されるリスクが非常に高くなります。これは、たとえ契約が定期借地権であっても変わりません。

どうすればよかった?正しい手続きの方法

このような事態を避けるためには、契約時に以下のいずれかの方法を選択する必要がありました。

対策1 「相当の地代」を支払う
内容 会社の資金繰りに余裕があれば、権利金の代わりに毎年「相当の地代」を支払うことで認定課税を回避できます。ただし、地主である個人側の不動産所得が増え、所得税や住民税の負担が重くなる点には注意が必要です。
対策2 「土地の無償返還に関する届出書」を提出する
内容 実務上、最も多く選択されるのがこの方法です。契約後、遅滞なく税務署に届出書を提出すれば、権利金の認定課税は行われません。地代は、固定資産税等の2~3倍程度のいわゆる「通常の地代」で問題ないとされています。これが最もシンプルで確実な方法と言えるでしょう。

まとめ

個人と同族会社との間で土地の賃貸借契約、特に定期借地権契約を結ぶ際のポイントをまとめます。

  • 定期借地権契約であっても、権利金の授受がない場合は「権利金の認定課税」のリスクがあります。
  • 認定課税を回避するには、「相当の地代を支払う」「土地の無償返還に関する届出書を提出する」のいずれかが必要です。
  • 「無償返還届出書」を提出せず、「通常の地代」のみを支払うケースは、税務上最も問題となりやすい組み合わせです。
  • 契約内容は、税務の専門家である税理士に事前に相談し、適切な手続きを踏むことが、将来の思わぬ税負担を防ぐために不可欠です。

安易な判断が、後々大きな追徴課税につながることもあります。大切な資産を守るためにも、慎重な対応を心がけてくださいね。

参考文献

個人と同族会社間の定期借地権に関するよくある質問まとめ

Q. 個人と同族会社で定期借地権を結ぶ場合、権利金は本当に不要ですか?

A. はい、定期借地権では契約終了時に土地が更地で返還されることが前提のため、権利金の授受は必要ありません。これにより、会社側の初期負担を抑えられます。

Q. 定期借地権なら「土地の無償返還に関する届出書」は提出しなくて良いのですか?

A. はい、不要です。「無償返還の届出書」は、権利金なしで土地を貸した場合に将来の借地権の認定課税を避けるために提出しますが、定期借地権ではそもそも借地権が残らないため届出は必要ありません。

Q. 地代は「相当の地代」ではなく「通常の地代」で問題ないのでしょうか?

A. はい、問題ありません。権利金の授受がない定期借地権契約の場合、一般的に授受される地代(通常の地代)で税務上認められます。「相当の地代(更地価額の年6%程度)」を支払う必要はありません。

Q. この方法の税務上のメリットは何ですか?

A. 会社側は権利金の認定課税を避けられ、高額な「相当の地代」を支払う必要もありません。個人側も、権利金の一時所得がなく、通常の地代収入を得られます。双方にとって税務上のメリットが大きい方法です。

Q. 定期借地権契約を結ぶ際に注意すべき点はありますか?

A. 公正証書などの書面で契約を締結することが必須です。また、契約期間は原則50年以上(事業用定期借地権の場合は例外あり)と定められています。契約内容を明確にし、専門家に相談することをお勧めします。

Q. 契約終了後、本当に土地は無償で返還されるのですか?会社に何か課税されますか?

A. はい、契約に基づき土地は無償で地主(個人)に返還されます。会社側は建物を収去して更地で返還する義務があります。この返還によって会社側に課税関係が生じることはありません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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