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固定資産税と償却資産税、二重課税?両方かかる・かからない資産を解説

2025-10-06
目次

事業で使う土地や建物、機械などには「固定資産税」がかかります。でも、似たような税金で「償却資産税」という言葉も聞きますよね。「この二つ、どう違うの?」「もしかして二重に課税されてる?」「どちらもかからない資産ってあるの?」と、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな固定資産税と償却資産税の複雑な関係を、分かりやすくスッキリ解説していきます。

そもそも固定資産税と償却資産税って何が違うの?

まず、一番大切なポイントからお話ししますね。「償却資産税」という独立した税金は、実は存在しません。償却資産税は、固定資産税の一部なんです。固定資産税という大きな枠の中に、「土地」「家屋」「償却資産」という3つの区分があるイメージです。では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

固定資産税(土地・家屋)とは?

一般的に「固定資産税」と聞いて多くの方がイメージするのが、この土地と家屋にかかる税金です。毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に課税されます。税額は、市町村が登記情報や現地調査をもとに評価額を算定し、その評価額に基づいて決定されます。私たちはその通知を待って納税するだけで、自分から申告する必要は基本的にありません。

償却資産税(固定資産税)とは?

一方の「償却資産税」は、固定資産税(償却資産)の通称です。こちらは、会社や個人事業主が事業のために使っている土地と家屋以外の資産が対象になります。例えば、パソコン、コピー機、工場の機械、お店の陳列棚などがこれにあたります。土地や家屋と大きく違うのは、納税者自身が毎年1月31日までに、所有している資産の内容を市町村に申告しなければならない点です。

二つの税金の関係まとめ

違いを分かりやすく表にまとめてみました。償却資産税が固定資産税の一種であることがよく分かりますね。

種類 内容
固定資産税(土地・家屋) 土地や建物などの不動産が対象。市町村が評価して課税額を通知してくれる(賦課課税方式)。
固定資産税(償却資産)
※通称:償却資産税
事業用の機械や備品などが対象。納税者が自ら資産内容を申告する必要がある(申告納税方式)。

固定資産税と償却資産税、両方かかることはある?

「同じ固定資産税なら、一つの資産に両方かかることはないよね?」と思いますよね。その通り、原則として二重課税はありません。しかし、実務上ではその判断が難しく、誤って二重に課税されてしまうケースも存在するので注意が必要です。

原則として二重課税はない

地方税法では、家屋として固定資産税が課税されているものに、重ねて償却資産税を課すことはないと定められています。例えば、建物(家屋)の評価額に含まれている電気設備を、誤って償却資産としても申告してしまうと二重課税になってしまいます。基本的には、どちらか一方にしか課税されないルールになっています。

注意!二重課税になりやすいケース

二重課税が起こりやすいのは、建物と設備の区別がつきにくい「建物附属設備」です。例えば、自分で建てた事務所に設置した空調設備や内装工事などが挙げられます。これらの設備が、建物の評価に含まれている(家屋として課税されている)にもかかわらず、償却資産としても申告してしまうと、二重課税が発生してしまいます。特に、自己所有の建物に後から大規模な設備投資や改修を行った場合に起こりやすいミスです。

もし二重課税に気づいたら?

「もしかして二重課税かも?」と思ったら、まずは市町村の資産税課などの担当窓口に相談しましょう。もし誤りが認められれば、修正申告や更正の請求といった手続きを行うことで、払い過ぎた税金が過去5年分まで還付される可能性があります。諦めずに確認することが大切です。

どっち?固定資産税と償却資産税の判断が難しい資産

二重課税を避けるためには、資産が「家屋」と「償却資産」のどちらに分類されるかを正しく知ることが重要です。特に判断が分かれやすい例を見ていきましょう。

建物と一体化している「建物附属設備」

建物附属設備は、家屋と一体となってその価値を高めているか、それとも独立した設備かで判断が分かれます。所有者が誰かによっても扱いが変わることがあります。

分類 具体例
家屋として評価されるもの 建物と構造的に一体となっている電気配線、給排水設備、衛生設備、一般的な空調設備など。建物所有者が設置したもの。
償却資産として申告するもの 特定の事業にのみ使われる動力源(受変電設備など)、独立したルームエアコン、事業用のボイラー、テナント(賃借人)が自費で設置した設備など。

例えば、テナントとして借りている店舗に、自分で業務用エアコンを設置した場合、そのエアコンは建物の所有者ではなくテナントの資産なので、テナントが償却資産として申告する必要があります。

テナントが行った内装工事や造作

お店を借りて内装工事をする場合、その工事費用は「償却資産」として申告するのが一般的です。壁紙の張り替え、カウンターの設置、間仕切りの設置といった「内部造作」は、建物の評価には含まれず、テナントの事業用資産とみなされるためです。これらを申告し忘れないようにしましょう。

固定資産税も償却資産税もかからない資産はある?

はい、中には固定資産税(土地・家屋)も償却資産税も、どちらもかからない資産が存在します。どのようなものが該当するのか見ていきましょう。

そもそも課税対象外の資産

以下の資産は、固定資産税の課税対象から外されています。

  • 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、営業権など、形のない資産。
  • 自動車税・軽自動車税の対象となるもの:事業で使う車やフォークリフトなど。
  • 生物:観賞用や興行用のものを除き、牛や豚などの生物は対象外です。

少額の減価償却資産の特例

事業で使う資産でも、取得した金額によって償却資産税の対象になるかならないかが変わります。これは会計処理の方法と連動しています。

取得価額と経理処理 償却資産税の課税
10万円未満(消耗品費などで一時に費用処理) 対象外
10万円以上20万円未満(3年間で均等に費用処理する「一括償却」を選択) 対象外
10万円以上30万円未満(中小企業者の特例で一時に費用処理) 対象になる(要注意!)

特に注意したいのが、青色申告をしている中小企業者等が使える「少額減価償却資産の特例」です。この特例を使って30万円未満の資産を一括で経費にしても、償却資産税の申告対象にはなるので、申告漏れがないようにしましょう。

免税点を下回る場合

所有している資産の合計額が一定の金額に満たない場合は、税金がかからない「免税点」という制度があります。

  • 土地:課税標準額の合計が30万円未満
  • 家屋:課税標準額の合計が20万円未満
  • 償却資産:課税標準額の合計が150万円未満

ただし、償却資産については、課税標準額が150万円未満で税金がかからない場合でも、市町村への申告は毎年必要ですので忘れないようにしてください。

申告で失敗しないためのポイント

最後に、固定資産税や償却資産税の申告で間違いを防ぐための大切なポイントを3つお伝えします。

家屋と償却資産の区分を正しく理解する

まずは、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に添付されている「課税明細書」をしっかり確認しましょう。そこに記載されている家屋の評価に、どの設備が含まれているかを把握することが、二重計上を防ぐ第一歩です。

迷ったら市町村の担当課に確認

「この設備は家屋?それとも償却資産?」と判断に迷ったときは、自己判断せずに必ず市町村の資産税課や税務課に問い合わせましょう。事前に相談することで、間違いのない申告ができます。

償却資産申告は毎年必要

償却資産税の申告は、資産の増減がない場合でも、毎年1月1日時点の状況を1月31日までに申告する義務があります。「去年と同じだからいいや」と申告を怠ると、延滞金や過料が科される場合もあるため、必ず期限内に申告しましょう。

まとめ

固定資産税と償却資産税の関係について、ご理解いただけたでしょうか。ポイントをまとめると以下のようになります。

  • 償却資産税は固定資産税の一部であり、土地・家屋以外の事業用資産にかかる税金です。
  • 原則として二重課税はありませんが、家屋と設備の区分が曖昧な場合に誤って二重申告してしまうリスクがあります。
  • ソフトウェアなどの無形資産や、取得価額が10万円未満の資産など、どちらの税金もかからない資産もあります。
  • 正しい申告のためには、資産の区分をしっかり理解し、不明な点は市町村に確認することが最も確実な方法です。

少し複雑に感じるかもしれませんが、仕組みを一度理解してしまえば、適切な税務管理につながります。この記事が、皆さんの疑問を解消する手助けになれば嬉しいです。

参考文献

国税庁 No.2210 必要経費の知識

国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

固定資産税と償却資産税のよくある質問まとめ

Q.固定資産税と償却資産税の違いは何ですか?

A.固定資産税は土地や家屋にかかる税金です。一方、償却資産税は会社や個人事業主が事業のために使用する機械、器具、備品などの「償却資産」にかかる税金です。どちらも市町村が課税する地方税です。

Q.一つの資産に固定資産税と償却資産税が両方かかることはありますか?

A.原則として、一つの資産に両方の税金が二重でかかることはありません。土地・家屋は固定資産税、事業用の機械などは償却資産税というように、資産の種類によって課税対象が明確に分かれています。

Q.建物に設置した事業用設備はどちらの税金がかかりますか?

A.建物と一体となり、家屋の価値を高める設備(電気設備、給排水設備など)は家屋として固定資産税の対象です。一方、事業主が所有し、事業のために後付けした特定の機械や装置は、償却資産税の対象となる場合があります。

Q.固定資産税も償却資産税もかからない資産はありますか?

A.はい、あります。例えば、事業用資産であっても取得価額が10万円未満の資産や、自動車税の対象となる車両、ソフトウェアなどの無形固定資産には償却資産税はかかりません。また、土地や家屋も課税標準額が一定額(免税点)未満の場合は固定資産税がかかりません。

Q.太陽光発電設備は固定資産税と償却資産税のどちらですか?

A.設置状況によって異なります。屋根材一体型のように家屋の一部とみなされる場合は、家屋として固定資産税の対象になります。一方、事業用の発電設備として地面や屋根の上に架台を設置して取り付ける場合は、償却資産税の対象となることが一般的です。

Q.個人事業主ですが、自宅兼事務所のパソコンは償却資産税の対象ですか?

A.事業用として使用しているパソコンは償却資産税の対象となります。ただし、取得価額が10万円未満であれば申告は不要です。また、家庭用と事業用で兼用している場合は、事業で使用する割合に応じて判断します。

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