事業で使う大切な資産には「固定資産税」がかかりますが、「償却資産税」としてご自身で申告が必要なものもありますよね。「この設備は固定資産税の対象なのかな?」「もし間違えて申告したら、税金を二重に払うことになってしまうの?」そんな不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、固定資産税と償却資産税の違いから、二重課税を防ぐための具体的な確認方法まで、わかりやすく解説していきますね。
そもそも固定資産税と償却資産税って何が違うの?
まず、よく耳にする「固定資産税」と「償却資産税」、この2つの関係性からご説明しますね。実は、これらは全く別の税金というわけではないんです。この関係性を知ることが、二重課税を防ぐ第一歩になりますよ。
固定資産税は3つの種類に分けられる
「固定資産税」とは、毎年1月1日時点で所有している固定資産に対して、その資産がある市町村(東京23区の場合は都)が課税する税金です。この固定資産は、大きく分けて次の3つの種類に分類されます。
| 土地 | 田んぼ、畑、宅地、山林など |
| 家屋 | 住宅、店舗、工場、倉庫など |
| 償却資産 | 事業のために使われる構築物、機械、器具備品など |
このように、償却資産も固定資産税の課税対象の一つなんです。
「償却資産税」は通称です
「じゃあ、償却資産税って何?」と疑問に思いますよね。実は、法律上「償却資産税」という名前の税金は存在しません。一般的に、先ほどの3種類のうち「償却資産」にかかる固定資産税のことを、わかりやすく「償却資産税」と呼んでいるんです。この記事でも、以降は通称の「償却資産税」として説明していきますね。
課税方法の違いがポイント
同じ固定資産税なのに、なぜ土地・家屋と償却資産が区別されるのでしょうか。それは、税額が決まるまでのプロセスが違うからです。
- 土地・家屋:市町村が評価額を計算して、納税額を通知してくれます(賦課課税方式)。納税者は送られてきた納税通知書に従って納付するだけです。
- 償却資産:資産の所有者が、毎年1月31日までに「こんな資産を持っていますよ」と市町村に申告します。その申告内容に基づいて税額が計算されます(申告納税方式)。
この「自分で申告する」という点が、うっかり二重課税をしてしまう原因になりやすいので注意が必要なんです。
固定資産税の対象資産、市町村は教えてくれるの?
「自分で申告するとなると、どの資産が対象か不安…」そう思いますよね。もちろん、市町村は納税者の疑問に答えてくれます。二重課税を防ぐためには、申告前にしっかり確認することがとても大切です。
納税通知書の「課税明細書」を確認しよう
毎年4月~6月頃に市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」には、「課税明細書」という書類が添付されています。まずは、この書類をじっくり見てみましょう。
ここには、市町村が「家屋」として評価し、固定資産税を課税している資産の内訳が記載されています。もし、あなたが償却資産として申告しようか迷っている資産がこの明細書に載っていれば、それはすでに家屋として課税されている証拠です。その資産を償却資産として申告してしまうと、二重課税になってしまいます。
判断に迷ったら「資産税課」に問い合わせを
課税明細書を見ても判断が難しい場合や、これから取得する資産については、その資産が所在する市町村の「資産税課」や「固定資産税課」といった担当部署に直接問い合わせるのが一番確実です。電話や窓口で相談に乗ってくれますよ。
問い合わせる際は、
- 資産の種類(例:業務用エアコン、内装工事など)
- 取得した時期と金額
- 設置状況(例:建物に埋め込まれている、床に置いているだけなど)
といった情報を具体的に伝えると、担当者の方も判断しやすくなります。
要注意!二重課税になりやすい資産とは?
特に、家屋と償却資産の区別がつきにくく、二重課税のリスクが高い資産がいくつかあります。ここでは、代表的な例をご紹介しますので、ご自身の資産と見比べてみてください。
家屋と一体の「建築設備」
最も間違いやすいのが、建物に取り付けられた「建築設備」です。建物と一体となって機能している設備は、家屋の評価に含まれていることが多いです。しかし、経理上は器具備品として計上されているため、誤って償却資産として申告してしまうケースが後を絶ちません。
| 家屋として評価されることが多い設備 | 建物付属の電気設備、給排水設備、衛生設備、ガス管、中央管理方式の空調設備、エレベーター、内装・内部造作など |
| 償却資産として申告が必要なことが多い設備 | 特定の事業(製造業、医療業など)にのみ使われる動力源や配線、ルームエアコン、独立した厨房設備、受変電設備(キュービクル)など |
どちらに分類されるかは設備の構造や設置方法によって変わるため、最終的には市町村への確認が不可欠です。
テナントが施工した内装や設備
お店などを借りて事業をされている場合、ご自身で内装工事をしたり、空調設備やパーテーションを設置したりすることがありますよね。これらの設備は、建物の所有者(大家さん)ではなく、取り付けたテナント(借主)が償却資産として申告する必要があります。これは申告漏れになりやすいケースなので、忘れないようにしましょう。
アスファルト舗装などの「構築物」
駐車場のアスファルト舗装や、敷地を囲うフェンス、事業用の看板(広告塔)などは、「構築物」として償却資産の申告対象となります。これらは土地の一部だと思われがちですが、土地とは別に評価される資産ですので、申告が必要です。
償却資産税として申告する資産・しない資産
ここで改めて、償却資産税の申告対象になる資産とならない資産を整理しておきましょう。
償却資産の対象になる主な資産
事業のために使用している、土地・家屋以外の有形固定資産が対象です。法人税や所得税の計算で減価償却の対象となるものが該当します。
- 構築物:舗装路面、門、塀、看板、外構工事など
- 機械及び装置:製造機械、クレーン、太陽光発電設備(事業用)など
- 船舶・航空機:ボート、飛行機など
- 車両及び運搬具:フォークリフトなどの大型特殊自動車
- 工具、器具及び備品:パソコン、コピー機、陳列ケース、応接セット、エアコンなど
償却資産の対象にならない主な資産
以下の資産は、償却資産税の申告対象にはなりません。
- 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、営業権など
- 自動車税・軽自動車税の対象となるもの:普通自動車や軽自動車など(※ただし、フォークリフトなどの大型特殊自動車は償却資産の対象です)
- 少額の減価償却資産:
- 取得価額が10万円未満で、一括で損金(必要経費)に算入したもの
- 取得価額が20万円未満で、3年間で均等に償却(一括償却)することを選択したもの
- 家屋として固定資産税が課税されているもの:これが二重課税を避けるための重要なポイントです。
もし誤って二重に申告してしまったら?
「もしかしたら、今まで二重に払っていたかもしれない…」と気づいた方もご安心ください。払い過ぎた税金は取り戻せる可能性があります。
修正申告と還付請求の手続き
誤りに気づいたら、速やかに市町村の担当部署に連絡し、償却資産の修正申告を行ってください。過大に申告していたことが認められれば、払い過ぎた税金が返還されます。地方税法という法律の規定により、原則として過去5年分まで遡って還付を請求することができます。
日頃から資産台帳を整備しておこう
このような間違いを防ぐためには、日頃から固定資産台帳を正確に管理することが何よりも大切です。資産を取得した際に、その資産が家屋の評価に含まれるものなのか、それとも償却資産として申告すべきものなのかを明確に区別して記録しておきましょう。税理士などの専門家に相談しながら、正しい資産管理を心がけることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。固定資産税と償却資産税の二重課税は、少しの注意で防ぐことができます。ポイントは以下の通りです。
- 「償却資産税」は、固定資産税の一種(通称)であると理解する。
- 土地・家屋は市町村が課税し、償却資産は自己申告するという違いを認識する。
- 申告前には必ず「課税明細書」をチェックする。
- 判断に迷ったら、ためらわずに市町村の「資産税課」に問い合わせる。
- 特に「建築設備」は二重課税になりやすいので要注意。
もし誤って申告してしまっても、還付請求が可能です。正しい知識を身につけて、適切な納税を心がけましょう。
参考文献
固定資産税と償却資産税の二重課税に関するよくある質問まとめ
Q.固定資産税(家屋)の対象に含まれている資産を、市町村は教えてくれますか?
A.はい。納税通知書に同封の「課税明細書」で確認できますが、より詳細な情報が必要な場合は、管轄の市町村(都税事務所)の固定資産税担当課に問い合わせることで、家屋の評価に含まれる設備の詳細を確認できます。
Q.なぜ固定資産税と償却資産税で二重課税が起こるのですか?
A.本来、家屋と一体として固定資産税の対象となるべき「家屋附属設備」(例: 受変電設備、空調設備など)を、誤って償却資産として申告してしまうことで発生します。固定資産税の評価に含まれていることを知らずに申告してしまうことが主な原因です。
Q.二重課税になっていないか確認するには、どうすればよいですか?
A.まず固定資産税の「課税明細書」を確認し、償却資産税の申告書控えと照らし合わせます。家屋と一体となっている設備を償却資産として申告している場合、二重課税の可能性があります。不明な点は市町村に問い合わせましょう。
Q.誤って償却資産税として二重に申告してしまった場合、どうすればよいですか?
A.償却資産税の「修正申告」を行うことで、払い過ぎた税金の還付を受けられる可能性があります。還付請求には期限(通常5年)があるため、誤りに気づいたら速やかに管轄の市町村に相談してください。
Q.建物に関連する設備でも、償却資産税の対象となるものは何ですか?
A.家屋と構造的に一体化しておらず、独立して事業の用に供することができる資産が対象です。例えば、テナントが取り付けた内装・設備や、移動可能な機械などが該当します。判断に迷う場合は市町村への確認が重要です。
Q.新築や増改築をした際に、特に注意すべき点はありますか?
A.新築や増改築後の家屋調査の際に、どの設備が家屋の評価に含まれたかを確認することが重要です。工事の見積書などから、償却資産として申告すべきものと家屋として評価されるものを明確に区別し、二重申告を防ぎましょう。