マイホームを建てたり、事業用の建物を新築したりすると「固定資産税」がかかりますよね。その際、「建築請負契約の見積書にある細かい項目、例えばシステムキッチンやエアコンまで、役所は把握して税金をかけているの?」と疑問に思ったことはありませんか?実は、固定資産税の評価は、私たちが思っているよりもっと大きな括りで行われているんです。この記事では、市区町村がどのように固定資産税の対象資産を把握しているのか、そして「家屋」と「償却資産」の違いについて、わかりやすく解説していきますね。
市区町村は建築見積書の細かい項目まで見ているの?
結論からお伝えすると、市区町村の職員が建築請負契約の見積書や請求書の一つ一つの項目をチェックして、それぞれを固定資産税の対象にするかどうかを判断しているわけではありません。多くの方が「この給湯器はいくらだから…」「このドアは…」というように、細かい部品ごとに税額が計算されていると思われがちですが、実際はもっと大きな枠組みで評価されています。
固定資産税の評価は「再建築価格方式」
家屋の固定資産税評価額は、「再建築価格方式」という方法で計算されます。これは、「評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点においてその場所に新築するとした場合に必要とされる建築費」を基準に評価する方法です。
具体的には、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、屋根、外壁、柱、内壁、天井、床、建具、建築設備などを評価し、それらを合計して家屋全体の評価額を算出します。つまり、個別の製品名やメーカー、購入金額ではなく、どのような資材がどれくらいの量使われているかで評価されるんですね。
家屋調査(実地調査)で何を確認するの?
新築や増改築をすると、市区町村の職員が「家屋調査」に訪れます。この調査では、建築確認申請の図面と実際の建物が合っているかを確認し、固定資産評価基準に基づいて評価額を算出するための情報を収集します。
調査員は、メジャーで寸法を測ったり、壁や床の材質、キッチンやお風呂、トイレなどの設備のグレードを確認したりします。この時、見積書そのものを見るのではなく、「どのような設備が設置されているか」を直接見て判断しているのです。例えば、キッチンの大きさや材質、お風呂の広さなどが評価のポイントになります。
見積書ではなく「建築概要書」などを確認
市区町村は、建築確認申請の際に提出される「建築確認申請書」や「工事届」、「建築概要書」といった書類から建物の基本的な情報を把握します。これらの書類には、建物の構造、床面積、主な資材などが記載されています。
家屋調査は、これらの書類を基に行われ、図面だけではわからない内装の仕上げや設備の状況などを確認するために実施されます。したがって、見積書の細かい項目ではなく、公的な建築書類と現地調査によって資産を把握している、というのが実態です。
固定資産税の対象になるもの、ならないもの
固定資産税は、土地、家屋、そして償却資産の3つが対象です。このうち、建物に関連するものでよく混同されるのが「家屋」と「償却資産」の区分です。何が家屋として一体で評価され、何が別の資産として扱われるのかを知っておくことが大切ですよ。
「家屋」として評価されるもの(建物と一体の設備)
家屋として評価されるのは、建物本体と構造上一体となっていて、家屋の効用を高める設備です。これらは「建物附属設備」と呼ばれ、家屋の評価額に含まれて固定資産税が課税されます。一度家屋として評価されると、その後は3年ごとの評価替えまで評価額は変わりません。
【家屋として評価される主な設備】
| 区分 | 具体例 |
| 電気設備 | 照明設備、一般的なコンセント、配線など |
| 給排水・衛生設備 | システムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台、トイレ、給湯器など |
| 空調設備 | 天井埋め込み式のビルトインエアコンなど |
| その他 | 床暖房、造り付けの収納など |
これらの設備は、個別の価格ではなく、その種類や規模に応じて家屋全体の評価額に加算されます。
「償却資産」として別途申告が必要なもの
一方で、家屋とは別に「償却資産」として扱われるものがあります。これは、土地や家屋以外の事業用資産で、減価償却の対象となるものです。個人が所有する住宅の場合、事業に使っていなければ基本的に償却資産税はかかりませんが、アパート経営や店舗併用住宅などの場合は注意が必要です。
償却資産は、所有者が毎年1月1日時点の状況を市区町村に申告し、それに基づいて固定資産税(償却資産)が課税されます。家屋と違い、毎年評価額が減価償却によって減少していくのが特徴です。
【償却資産として扱われる主なもの(事業用の場合)】
| 区分 | 具体例 |
| 構築物 | 舗装路面、門、塀、フェンス、広告塔、独立した外灯など |
| 機械及び装置 | 事業用の大型機械、受変電設備、機械式駐車設備など |
| 器具及び備品 | 事業用のパソコン、コピー機、応接セット、陳列棚、ルームエアコン(壁掛け型など) |
なぜエアコンは家屋と償却資産に分かれるの?
「エアコンはどっちなの?」という疑問はよく聞かれます。これはエアコンの種類によって扱いが変わる良い例です。
天井に埋め込まれているビルトインエアコンのように、建物と一体化していて簡単には取り外せないものは「家屋」として評価されます。
一方、壁掛け型のルームエアコンや窓に取り付けるタイプのエアコンのように、比較的簡単に取り外しができ、独立した資産としての性格が強いものは、事業用であれば「償却資産」として扱われます。個人宅のリビングについているエアコンは、事業用でなければ課税対象外です。このように、建物との一体性が判断の分かれ目になるんですね。
テナント(賃借人)が取り付けた内装や設備はどうなる?
お店やオフィスを借りて事業を始める際、テナント自身が内装工事を行ったり、事業用の設備を取り付けたりすることがありますよね。この場合、税金の扱いはどうなるのでしょうか。
テナント工事の資産は「償却資産」
テナント(賃借人)が自らの費用で取り付けた内装、造作、建築設備などは、テナントの「償却資産」となります。たとえ建物に固定されているものであっても、建物の所有者(大家さん)のものではなく、テナントの事業用資産とみなされるためです。
例えば、店舗の内装(壁紙、床材)、間仕切り壁、カウンター、厨房設備、看板、専用の照明設備などが該当します。これらは、テナントが償却資産として市区町村に申告する義務があります。
誰が税金を納めるの?
償却資産税を納めるのは、その資産の所有者です。したがって、テナントが取り付けた設備については、建物の所有者である大家さんではなく、テナント自身が納税義務者となります。
毎年1月31日までに、前年の1月1日時点で所有している償却資産の内容を、資産が所在する市区町村へ申告する必要があります。申告を忘れると、延滞金が加算されたり、遡って課税されたりすることがあるので注意しましょう。
国税(法人税・所得税)と地方税(固定資産税)の考え方の違い
資産の扱いについて、国税(法人税や所得税)と地方税(固定資産税)では考え方が少し異なる点があります。特に、少額の資産の扱いは注意が必要です。
少額資産の特例は固定資産税には適用されない
国税(法人税・所得税)の計算では、中小企業者等を対象に、取得価額が30万円未満の減価償却資産を一括で経費(損金)にできる「少額減価償却資産の特例」という制度があります。
しかし、この特例はあくまで国税上の話です。地方税である固定資産税(償却資産)では、この特例は適用されません。したがって、国税の申告で一括経費として処理したとしても、取得価額が10万円以上の事業用資産であれば、償却資産として申告し、固定資産税を納める必要があります。
この違いを知らないと、申告漏れにつながりやすいので、ぜひ覚えておいてくださいね。
減価償却の方法も違う
国税では、減価償却の方法として定率法や定額法などを選択できますが、固定資産税(償却資産)の評価では、原則として旧定率法(固定資産評価基準に定められた減価率)が用いられます。また、国税では月割りで償却計算を行いますが、固定資産税では前年中に取得した資産は半年分償却したものとして計算するなど、細かい計算方法にも違いがあります。
申告漏れがあった場合はどうなる?
もし償却資産の申告を忘れていたり、申告内容に誤りがあったりした場合はどうなるのでしょうか。
遡及課税と延滞金
市区町村は、税務署の資料を閲覧したり、実地調査を行ったりして、申告内容の確認をしています。その過程で申告漏れが発覚した場合、資産を取得した年の翌年度まで遡って課税されることになります。地方税法上、最大で5年度分(偽りその他不正な行為があった場合は7年度分)遡って課税される可能性があります。
さらに、本来納めるべきだった税額に加えて、延滞金も課されることになります。後からまとめて大きな金額を請求されることになるので、毎年正しく申告することがとても重要です。
まとめ
今回は、固定資産税の対象資産について、市区町村がどのように把握しているかを中心に解説しました。ポイントをまとめますね。
- 市区町村は、建築見積書の細かい項目単位ではなく、「固定資産評価基準」と「家屋調査」に基づいて、家屋全体を大きな括りで評価しています。
- 建物と一体で家屋の効用を高める設備(システムキッチン、ユニットバス等)は「家屋」として固定資産税の対象になります。
- 事業用の資産で、家屋とは独立しているもの(外構、看板、壁掛けエアコン等)は「償却資産」として別途申告と納税が必要です。
- 国税で30万円未満の資産を一括経費にしても、固定資産税(償却資産)では10万円以上であれば申告対象となります。
- 申告漏れは最大5年度分の遡及課税や延滞金のリスクがあるため、正しい申告を心がけましょう。
固定資産税の仕組みは少し複雑に感じるかもしれませんが、基本的な考え方を理解しておけば、家屋調査の際も納税の際も、安心して対応できますよ。この記事が、皆さんの疑問解消の一助となれば幸いです。
参考文献
国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
固定資産税・償却資産税の対象資産に関するよくある質問
Q. 市区町村は、建築工事の見積書を細かく見て固定資産税を決めているのですか?
A. 必ずしも見積書の全項目を1つずつ確認するわけではありません。家屋調査では、主に建物の構造、床・壁・天井の仕上げ材、建築設備(キッチン、バス、トイレなど)を現地で確認し、総務省が定めた「固定資産評価基準」に基づいて評価額を算出します。見積書は参考資料として提出を求められることがあります。
Q. 家屋と一体になっている設備はすべて固定資産税の対象ですか?
A. 原則として、建物に固定され、家屋の効用を高める設備(システムキッチン、ユニットバス、ビルトインエアコンなど)は家屋と一体とみなされ、固定資産税(家屋)の対象となります。取り外しが容易で、独立して機能するものは対象外となる場合があります。
Q. 一般的な家庭用の壁掛けエアコンは固定資産税の対象になりますか?
A. 一般的な家庭用の壁掛けエアコンは、取り外しが比較的容易であるため、通常は固定資産税(家屋)の対象外です。ただし、天井埋め込み型のビルトインエアコンのように、家屋と構造的に一体となっているものは家屋として評価され、固定資産税の対象となります。
Q. 事業用の建物に設置した設備は、固定資産税と償却資産税のどちらになりますか?
A. 事業用の建物の場合、建物と一体となっている建築設備(電気設備、給排水設備など)は家屋として固定資産税の対象です。一方、事業の用に供する機械や器具備品など、家屋とは独立して価値が評価されるものは償却資産税の対象となります。両者の区分は複雑なため注意が必要です。
Q. 駐車場のコンクリート舗装やフェンスなどの外構工事は固定資産税の対象ですか?
A. 土地と一体となって利用されるコンクリート舗装や砂利敷きなどは、通常、土地の評価に含まれ、家屋としての固定資産税はかかりません。ただし、屋根や壁のあるカーポートや独立した車庫は家屋として評価される場合があります。また、事業用の構築物(フェンス、舗装路面など)は償却資産税の対象となることがあります。
Q. 固定資産税(家屋)と償却資産税の違いを簡単に教えてください。
A. 固定資産税(家屋)は、土地や家屋そのものに対して課される税金です。一方、償却資産税は、会社や個人事業主が事業のために使用する構築物、機械、器具備品などの「償却資産」に対して課される税金です。家屋と一体とみなされる設備は固定資産税、独立した事業用資産は償却資産税の対象となります。