マイホームを考えるとき、土地を「借りる」か「買う」かは、とても大きな決断ですよね。特に、土地を借りる場合に聞く「権利金」は、一体いくらくらい支払うものなのか、見当もつかないという方も多いのではないでしょうか。また、「何年住み続けたら、買った方がお得になるんだろう?」という損益分岐点も気になるところです。この記事では、そんな土地の賃借に関する疑問をスッキリ解決します。権利金の相場から、借地と購入のどちらが有利になるのか、具体的な数字を交えながら分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
土地賃借の「権利金」って何?いくら払うの?
まずは、土地を借りる際に地主さんに支払うことがある「権利金」について、基本的なところからご説明しますね。これは、土地を借りて家を建てるという、借地契約を結ぶ上でとても重要なポイントになります。
権利金とは?礼金や保証金との違い
権利金とは、建物を所有する目的で土地を借りる権利、つまり「借地権」を設定するための対価として、借地人(借りる側)が地主さん(貸す側)に支払うお金のことです。一度支払うと、原則として返還されない一時金です。
お部屋を借りるときの礼金や保証金(敷金)と混同されがちですが、それぞれ意味合いが異なります。下の表で違いを確認してみましょう。
| 権利金 | 借地権という強い権利を設定するための対価。原則返還されません。 |
| 保証金(敷金) | 地代の滞納などに備えて預けるお金。契約終了時に問題がなければ、原則として返還されます。 |
このように、権利金は土地を利用する「権利」そのものに対する支払いで、返還されないという大きな特徴があります。
権利金の相場は?具体的な計算方法
気になる権利金の相場ですが、一般的には「借地権価格」が目安とされています。借地権価格は、以下の計算式で算出できます。
借地権価格 = 更地価格 × 借地権割合
例えば、更地(建物などが何もない状態の土地)としての価格が5,000万円で、その地域の借地権割合が60%の場合、権利金の相場は「5,000万円 × 60% = 3,000万円」となります。
この「借地権割合」は、土地の利用価値が高い都心部ほど高く、郊外にいくほど低くなる傾向があります。ご自身の検討している土地の借地権割合は、国税庁が公表している「路線価図」で確認することができます。路線価図には、道路ごとにアルファベットの記号が記載されており、その記号が借地権割合を示しています。
| 記号 | 借地権割合 |
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
地主さんから提示された権利金が妥当かどうか判断するために、ぜひ一度調べてみてくださいね。
権利金を支払わないケースと注意点
権利金の支払いは法律で義務付けられているわけではなく、あくまで昔からの慣習です。そのため、地主さんとの合意があれば、権利金を支払わずに土地を借りることも可能です。
ただし、注意しなければならない点があります。権利金の授受が一般的な地域で、例えば親族間での貸し借りなどを理由に権利金を支払わなかった場合、税務署から「権利金相当額の利益を贈与された」とみなされてしまうことがあります。これを「認定課税」といい、思わぬ贈与税が課せられる可能性があるので注意が必要です。
借地にかかる権利金以外の費用
土地を借りる際には、権利金という初期費用だけでなく、継続的に発生する費用や、特定のタイミングで必要になる費用もあります。契約してから慌てないように、全体像を把握しておきましょう。
毎月支払う「地代」
地代は、土地の使用料として地主さんに支払うお金で、家賃のようなものです。毎月払いの場合もあれば、年払いの場合もあります。地代の相場は、その土地の固定資産税・都市計画税の3倍~5倍程度、または更地価格の年額1%~2%程度が一般的ですが、これも地主さんとの契約によって決まります。
契約更新時に必要な「更新料」
借地契約には期間が定められており(最初の契約では30年)、期間が満了する際に契約を続ける場合は「更新」の手続きが必要です。その際に、地主さんへ支払うのが更新料です。更新料の相場は、更新時の更地価格の3%~5%程度とされています。
建替えや売却時に必要な「承諾料」
借地上に建てた家を建て替えたり、その土地を借りる権利(借地権)を第三者に売却したりする際には、地主さんの承諾が必要になります。その承諾を得るために支払うのが「承諾料」です。
一般的に、建替え承諾料は更地価格の3%程度、借地権を譲渡する際の承諾料(名義書換料とも言います)は借地権価格の10%程度が相場とされています。
借地 vs 購入!どっちがお得?損益分岐点をシミュレーション
「結局、借りるのと買うの、どっちがお得なの?」という疑問にお答えするために、具体的なモデルケースを使って、長期間でかかる総費用を比較してみましょう。
シミュレーションの前提条件
以下の条件で、50年間の総支払額を比較してみます。
| 土地の更地価格 | 5,000万円 |
| 借地権割合 | 60% |
| 固定資産税・都市計画税(年額) | 20万円(購入した場合) |
| 権利金 | 3,000万円(5,000万円 × 60%) |
| 地代(年額) | 50万円(更地価格の1%) |
| 更新料 | 150万円(更地価格の3%・30年目に1回更新と仮定) |
借地の場合の総支払額(50年間)
まずは、土地を借り続けた場合の50年間にかかる費用の合計です。
| 権利金(初期費用) | 3,000万円 |
| 地代(50年分) | 50万円 × 50年 = 2,500万円 |
| 更新料(1回分) | 150万円 |
| 合計 | 5,650万円 |
購入の場合の総支払額(50年間)
次に、最初に土地を購入した場合の50年間にかかる費用の合計です。(※購入時の諸費用は除く)
| 土地購入代金(初期費用) | 5,000万円 |
| 固定資産税等(50年分) | 20万円 × 50年 = 1,000万円 |
| 合計 | 6,000万円 |
損益分岐点の考察
このシミュレーションでは、50年間の支払総額だけを見ると、借地の方が350万円安いという結果になりました。しかし、ここで最も重要な違いがあります。それは、50年後に購入した場合は5,000万円(価格変動は考慮せず)の土地という資産が残りますが、借地の場合は何も残らないという点です。
この「資産が残るかどうか」を考慮すると、支払総額に多少の差があっても、購入の方が有利になるケースが多いと言えるでしょう。
では、支払額だけで見た場合の損益分岐点は何年くらいになるのでしょうか。購入と借地の初期費用の差額は2,000万円です。年間の維持費の差額は、地代(50万円)から固定資産税(20万円)を引いた30万円です。単純に計算すると「2,000万円 ÷ 30万円/年 ≒ 66.7年」となり、約67年以上住むと購入の方が総支払額は安くなります。ただし、これは更新料や金利、土地価格の変動を無視した簡易的な計算です。実際には、資産価値を考えれば、もっと早い段階で購入が有利になると考えられます。
借地のメリット・デメリット
数字だけでなく、それぞれの生活スタイルや考え方に合うかどうかも重要です。まずは借地のメリット・デメリットを整理してみましょう。
借地のメリット
- 土地を購入するより初期費用を大幅に抑えられる。
- 土地の固定資産税や都市計画税を支払う必要がない。
借地のデメリット
- 地代を永続的に支払い続ける必要がある。
- 契約更新の際に更新料が必要になる。
- 家の建替えや売却の際に地主の承諾が必要で、承諾料がかかる。
- 土地は自分の資産にはならない。
購入のメリット・デメリット
次に、土地を購入する場合のメリット・デメリットです。借地とは逆の側面が多くなります。
購入のメリット
- 土地が自分の資産になる。
- 地代や更新料などの支払いが一切不要。
- 建替え、増改築、売却などを自由に行える。
- 資産価値があるため、住宅ローンの担保として有利。
購入のデメリット
- 購入時の初期費用が高額になる。
- 毎年、固定資産税・都市計画税がかかる。
- 購入時に不動産取得税がかかる。
まとめ
土地の賃借における権利金は、その土地の価値を反映したもので、相場は「更地価格 × 借地権割合」で計算できます。借地と購入のどちらが有利かは、住む期間やライフプランによって異なりますが、長期的に見れば、資産として残る購入に軍配が上がることが多いでしょう。初期費用を抑えたい場合は借地、将来的な資産形成や自由度を重視するなら購入、という視点で考えるのがおすすめです。今回のシミュレーションやメリット・デメリットを参考に、ご自身の状況に合った最適な選択をしてくださいね。
参考文献
国税庁 No.3111 土地を貸し付けて権利金などをもらったとき
借地権と土地購入のよくある質問まとめ
Q.土地を借りる際の権利金とは何ですか?相場はいくらくらいですか?
A.権利金は、借地権を設定する対価として、借主が地主に支払う一時金です。返還されないのが一般的で、相場は地域や土地の価値により大きく異なりますが、更地価格の60%〜70%程度が目安とされています。
Q.なぜ権利金を支払う必要があるのですか?
A.地主が長期間にわたり土地の自由な利用を制限されることへの対価や、将来の地代収入を前払い的に受け取る意味合いがあります。借地人にとっては、強い効力を持つ借地権を得るための対価となります。
Q.権利金なしで土地を借りることはできますか?
A.権利金の授受は法律で義務付けられているわけではなく、あくまで商慣習です。そのため、当事者間の合意があれば権利金なしで契約することも可能です。ただし、その分、毎月の地代が相場より高めに設定されることがあります。
Q.土地を借りるのと買うのとでは、どちらがお得ですか?
A.一概には言えません。初期費用を抑えたい場合は借地が有利ですが、長期間利用する場合は総支払額が購入費用を上回る可能性があります。土地の価格、地代、固定資産税、金利などを考慮して総合的に判断する必要があります。
Q.借地と購入の損益分岐点は、具体的に何年くらいになりますか?
A.これはケースバイケースです。一般的に「(土地購入価格 − 権利金) ÷ (年間地代 − 年間固定資産税)」という簡易な計算式で目安を算出できます。例えば、購入価格5000万円、権利金3000万円、年間地代120万円、年間固定資産税20万円の場合、約20年が分岐点の一つの目安となります。
Q.長期的に見ると、最終的には購入した方が有利になることが多いですか?
A.20年、30年といった長期間で利用する場合、総支払額で考えると購入が有利になるケースが多いです。購入すれば資産として残りますし、地代の支払いが不要になります。ただし、購入には多額の初期費用と固定資産税の負担が続くため、ご自身の資金計画に合わせて慎重に検討することが重要です。