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土地評価の補正率、小数点以下の端数処理はいつ?計算方法を解説

2025-11-10
目次

相続税申告で土地の評価額を計算するとき、土地の形や条件に合わせて「補正率」という数字を使います。この補正率を計算すると、小数点以下の細かい数字が出てくることがよくあります。この小さな数字をどのタイミングで、どのように処理するかによって、土地の評価額、ひいては相続税額が大きく変わってしまうこともあるんです。今回は、この土地評価における補正率の端数処理について、いつ、どのように行うのかを分かりやすく解説していきますね。

土地評価で使う補正率と端数処理の基本ルール

土地の評価では、まず基準となる「路線価」に、その土地が持つ個性(奥行きの長さ、間口の広さ、形のいびつさなど)を評価額に反映させるため、様々な補正率を掛け合わせます。この計算の過程で小数点以下の数字が出てくるのですが、その処理方法にはルールがあります。どの補正率を使うかによってルールが異なる場合があるので、一つずつ確認していきましょう。

多くの補正率に共通する端数処理

奥行価格補正、間口狭小補正、不整形地補正など、土地評価でよく使われるほとんどの補正率には、共通の端数処理ルールがあります。それは、「小数点以下第2位未満を切り捨てる」というルールです。

これはつまり、計算結果の小数点第3位以下をすべて切り捨てて、小数点第2位までの数値にするということです。たとえば、計算した補正率が「0.9876…」となった場合は、「0.98」として扱います。

複数の補正率を適用する場合の注意点

土地によっては、形のいびつさ(不整形地補正)と間口の狭さ(間口狭小補正)など、複数のマイナス要因を考慮することがあります。このように複数の補正率を適用する場合、それぞれの補正率を計算して端数処理をするわけではありません。

正しい計算方法は、適用するすべての補正率を掛け合わせた後、その最終的な数値に対して一度だけ端数処理を行います。途中で処理してしまうと、最終的な評価額にズレが生じてしまうので注意が必要です。

【計算例】
不整形地補正率が0.95、間口狭小補正率が0.98の場合
0.95 × 0.98 = 0.931
この「0.931」に対して端数処理を行うので、最終的な補正率は「0.93」となります。

端数処理のタイミングは「補正率の確定時」

端数処理を行うタイミングは、「適用する全ての補正率を掛け合わせた後、その補正率の値を確定させるとき」です。そして、その端数処理済みの補正率を路線価や地積に掛けて、最終的な土地の評価額を算出します。

計算の流れは以下のようになります。

評価額 = 路線価 × (各種補正率を掛け合わせて端数処理した値) × 地積

この順番を間違えないようにしましょう。

【要注意】端数処理のルールが異なる補正率

ほとんどの補正率は「小数点以下第2位未満切り捨て」ですが、特に面積の大きな土地の評価で使われる補正率には、少し違うルールや歴史的背景があります。評価額への影響も大きいので、しっかりと確認しておきましょう。

地積規模の大きな宅地の「規模格差補正率」

三大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上の広い土地に適用される「地積規模の大きな宅地の評価」で使われるのが「規模格差補正率」です。この補正率も、原則通り、計算式で算出した後に小数点以下第2位未満を切り捨てます。

例えば、計算の結果「0.768622…」という数値が出た場合、小数点第3位以下を切り捨てて「0.76」を補正率として採用します。評価額への影響が非常に大きいため、この端数処理を忘れたり間違えたりすると、納税額に数百万円単位の差が生まれる可能性もあります。

(参考)広大地評価の「広大地補正率」

平成29年12月31日までの相続で適用されていた「広大地評価」では、「広大地補正率」が使われていました。これは現在の規模格差補正率の前身にあたる制度です。

この広大地補正率の大きな特徴は、端数処理を行わなかった点です。計算式で算出された小数点以下の数値を、そのまま評価額の計算に使っていました。例えば、計算結果が「0.5383」となった場合、この数値を丸めずにそのまま使います。これは、現行の規模格差補正率との決定的な違いであり、過去の相続案件などを見直す際には注意が必要です。

土地評価における補正率の端数処理ルールまとめ

ここまで解説してきた補正率ごとの端数処理ルールを、分かりやすく表にまとめました。どの補正率にどのルールが適用されるのか、計算する前に確認してみてください。

補正率の種類 端数処理のルール
奥行価格補正率、間口狭小補正率、不整形地補正率など一般的な補正率 小数点以下第2位未満切り捨て
規模格差補正率(地積規模の大きな宅地) 小数点以下第2位未満切り捨て
広大地補正率(平成29年12月31日までの相続) 端数処理なし

まとめ

土地評価における補正率の計算では、小数点以下の端数処理が評価額を左右する重要なポイントです。原則として「適用する補正率をすべて掛け合わせた後に、小数点以下第2位未満を切り捨てる」と覚えておきましょう。ただし、かつての広大地補正率のように例外も存在します。特に地積規模の大きな宅地の評価など、税額への影響が大きいケースでは、正しいタイミングで正確な端数処理を行うことが、適正な相続税申告には不可欠です。ご自身での計算に少しでも不安を感じる場合は、土地評価に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

土地評価の補正率計算における端数処理のよくある質問まとめ

Q.土地の評価で、複数の補正率を掛け合わせた結果、小数点以下が出た場合、いつ端数処理をしますか?

A.各補正率をすべて乗じた後の最終的な画地調整率で端数処理を行います。計算の途中で端数処理は行いません。

Q.補正率を計算した後の最終的な端数処理は、切り上げ、切り捨て、四捨五入のどれですか?

A.国税庁の財産評価基本通達に基づき、小数点以下第2位未満を切り捨てて、小数点以下第2位までの数値とします。

Q.奥行価格補正率や不整形地補正率など、複数の補正率を適用する場合、計算の順番はありますか?

A.補正率の計算に順番はありません。すべての補正率を乗じた最終的な数値に対して一度だけ端数処理を行います。

Q.なぜ計算の途中で端数処理を行わないのですか?

A.計算の都度端数処理を行うと、最終的な評価額に誤差が大きくなる可能性があるためです。正確な評価額を算出するために、最後に一度だけ処理するのがルールです。

Q.路線価に画地調整率と地積を掛けて算出した評価額に1円未満の端数が出た場合はどうなりますか?

A.最終的に算出された土地の評価額については、1円未満の端数は切り捨てます。

Q.補正率の端数処理について具体的な計算例を教えてください。

A.例えば、奥行価格補正率0.95、不整形地補正率0.92を乗じると0.874となります。この場合、小数点以下第3位の「4」を切り捨て、画地調整率は0.87として計算します。

事務所概要
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