税理士法人プライムパートナーズ

墓地の向かいの土地、相続税は安くなる?大きな土地の評価減を解説

2025-02-11
目次

ご家族から相続した大切な土地が、もし墓地の向かいにあったら、「この土地の価値はどうなるんだろう?」と不安に思われるかもしれませんね。実は、お墓の近くにある土地は、その特殊な環境から相続税を計算する際の評価額が低くなる可能性があるんです。これを「評価減」といいます。この記事では、墓地の向かいにある大きな土地の評価がどのように決まるのか、そして相続税を抑えるためのポイントについて、専門的な内容をできるだけ分かりやすく、丁寧にご説明していきますね。

墓地が隣接する土地の評価が下がる理由

まず、なぜ墓地の近くにある土地の評価額が下がる可能性があるのか、その理由から見ていきましょう。これは、多くの方が住まいを選ぶ際に、お墓がすぐ近くにある環境を避けたいと感じる心理的な要因が関係しています。このような一般的に避けられがちな施設のことを「嫌悪施設(けんおしせつ)」と呼び、その存在が土地の市場価値、つまり売買されるときの価格に影響を与えることがあるのです。相続税の評価額もこの市場価値を基にしているため、結果として評価額が下がることがあります。ただし、単に「墓地が近いから」という理由だけですぐに評価が下がるわけではなく、いくつかの条件をクリアする必要があります。

利用価値が著しく低下している宅地の評価とは

相続税の土地評価には、国税庁が定めた「利用価値が著しく低下している宅地の評価」という特別なルールがあります。これは、土地の周辺環境によってその土地の使いやすさや価値が大きく下がっている場合に、評価額を減額できるというものです。具体的には、線路沿いの騒音や日照を遮る大きな建物、そして今回テーマとなっている墓地のような「忌み(いみ)」を感じさせる施設などが原因で、土地の取引金額に影響が出ると認められる場合に適用されます。このルールに基づき、墓地に隣接する土地は評価額を10%減額できる可能性があるのです。

評価減が認められるための3つのポイント

墓地が近い土地の評価減を税務署に認めてもらうためには、いくつかのポイントを客観的に示す必要があります。最近の判断事例では、これらの証明が納税者側に求められる傾向が強まっていますので、しっかり押さえておきましょう。

  1. 心理的な嫌悪感が一般的に見て受忍できる限度を超えていること
  2. 周辺の類似した土地と比べて、実際に取引価格が下がっているという事実
  3. 土地の価格の基準となる「路線価」に、墓地が近いという状況がまだ反映(織り込み)されていないこと

これらの点を具体的に証明するのは簡単ではありませんが、評価減を主張する上で非常に大切な要素となります。

嫌悪施設の種類と具体例

土地の評価に影響を与える可能性のある嫌悪施設は、墓地以外にもいくつかあります。どのような施設が該当するのか、下の表で確認してみましょう。

施設の種類 具体例
心理的嫌悪施設 墓地、火葬場、刑務所、暴力団事務所など
環境汚染の可能性がある施設 ごみ焼却場、下水処理場、産業廃棄物処理施設など
騒音・振動・臭気が発生する施設 鉄道、高速道路、空港、工場、養豚場・養鶏場など

これらの施設がお持ちの土地の近くにある場合も、墓地と同様に評価減の対象となる可能性がありますので、一度確認してみることをお勧めします。

墓地による評価減の具体的な要件

それでは、具体的にどのような条件を満たせば、墓地が近いことによる評価減が認められるのでしょうか。すべての土地に適用されるわけではないため、一つひとつの要件を丁寧に確認していきましょう。

路線価に織り込み済みでないこと

評価減を考える上で最も重要なのが、「路線価に減価要因がすでに反映されていないか」という点です。路線価とは、主要な道路に面した土地1平方メートルあたりの評価額のことで、相続税を計算する際の基礎となります。もし、評価したい土地の前の道路の路線価が、墓地から少し離れた場所の路線価よりも明らかに低く設定されている場合、それは「墓地の影響はすでに価格に反映済み(織り込み済み)ですね」と判断され、追加での評価減は認められなくなります。国税庁のホームページで公開されている路線価図を見て、周辺の道路の路線価と比較してみることが第一歩です。

墓地の規模と認知度

評価減の対象となるのは、ある程度の規模があり、地域の誰もが「あそこはお墓だ」と認識しているような墓地です。例えば、個人のお屋敷の中にあるご先祖様のお墓や、地域の人でもほとんど知らないような小さな無縁仏などは、一般的に評価減の対象にはなりません。客観的に見て、社会的に「墓地」として認知されている規模や管理状態であることが求められます。

土地と墓地との距離

土地と墓地の物理的な距離も、もちろん重要なポイントです。「何メートル以内ならOK」といった明確な基準はありませんが、一般的に以下のようなケースでは評価減が認められやすくなります。

  • 土地が墓地に直接隣接している(裏側や両隣など)
  • 道路を一本挟んで真向かいにある

少し離れている場合でも、その土地のリビングの窓から墓地がはっきりと見える、というような状況であれば、評価減の可能性は残されています。逆に、間に他の建物があったりして存在をほとんど意識しないような場合は、減額を認めてもらうのは難しくなるでしょう。

評価減の割合と計算方法

もし評価減が認められた場合、一体どのくらい評価額が下がるのでしょうか。基本的な減額の割合と、具体的な計算例を見ていきましょう。

基本の減額割合は10%

墓地が近いことなどを理由とする「利用価値が著しく低下している宅地」の評価減は、原則として10%と定められています。この10%は、その土地が更地だった場合の評価額(自用地評価額)に対して適用されます。

【計算式】
自用地評価額 × (1 – 0.10) = 減額後の評価額

複数の減価要因がある場合は最大20%も

もし、お持ちの土地に「墓地が隣接している」という要因に加えて、「線路沿いで電車の騒音がひどい」といった別のマイナス要因も重なっている場合は、評価減の割合がさらに大きくなる可能性があります。このような場合、それぞれの減価要因(忌みによる10%+騒音による10%)を合わせて、最大で20%の評価減が認められた過去の事例もあります。ただし、これは非常に専門的な判断が必要になるため、税理士などの専門家への相談が不可欠です。

評価減の計算例

具体的な数字を使って、どれくらい評価額が変わるのかシミュレーションしてみましょう。

前提条件 内 容
土地の面積 300平方メートル
路線価 1平方メートルあたり20万円
自用地評価額 300㎡ × 20万円/㎡ = 6,000万円

この土地が墓地の真向かいにあり、10%の評価減が認められた場合、評価額は以下のようになります。

減額される金額:6,000万円 × 10% = 600万円
減額後の評価額:6,000万円 – 600万円 = 5,400万円

このように、評価額が600万円も下がることで、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があるのです。

評価減を適用するための手続きと注意点

墓地に近い土地の評価減を受けるためには、相続税の申告の際に、こちらからきちんと主張して手続きを行う必要があります。ここで注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

相続税申告書への記載方法

この評価減を適用する場合、相続税申告書に添付する「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」という書類に、その旨をはっきりと記載する必要があります。評価額を計算する過程で10%の減額を行ったことを示し、その理由を「摘要」などの欄に「墓地に隣接するため、利用価値が著しく低下している宅地として10%減価」といったように、誰が見ても分かるように書いておくことが大切です。

根拠資料の準備が重要

税務署に評価減を認めてもらうためには、「なぜ10%減額するのが妥当なのか」を客観的に示す根拠資料を添付することが非常に重要になります。以下のような資料を準備すると、主張の説得力がぐっと高まります。

  • 現地の写真:土地から墓地がどのように見えるかが一目で分かる写真
  • 住宅地図や公図:土地と墓地の位置関係が正確に分かる地図
  • 不動産鑑定士の意見書:専門家が「この土地は評価減が妥当だ」と証明する書類(費用はかかりますが、非常に効果的です)
  • 周辺の取引事例:墓地の近くの物件とそうでない物件の売買価格を比較できる資料など

税務署との見解の相違と更正の請求

この評価減のルールは、法律で細かく定められているわけではなく、国税庁の通達に基づく解釈によるものです。そのため、税務署の調査官によっては見解が異なり、残念ながら評価減が認められないケースもゼロではありません。もし、評価減を適用せずに一度申告してしまった場合でも、諦めないでください。相続の開始を知った日の翌日から5年10ヶ月以内であれば、「更正の請求」という手続きを行うことで、払い過ぎていた相続税を取り戻せる可能性があります。

大きな土地ならではの評価減との併用

今回のキーワードである「大きな土地」についても触れておきましょう。土地の面積が広い場合、それ自体が評価減の対象となる特例があり、これを墓地による評価減と組み合わせることで、さらに大きな節税効果が期待できます。

地積規模の大きな宅地の評価とは

一定の面積よりも広い土地は、「地積規模の大きな宅地の評価」という特例を適用できる可能性があります。これは、土地が広すぎると、そのままでは買い手が見つかりにくく、戸建て用に分割して売却する必要があるため、その際に必要となる道路(開発道路)の設置コストなどを評価額から割り引くという考え方です。適用できる面積の要件は地域によって異なり、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)では500平方メートル以上、それ以外の地域では1,000平方メートル以上の土地が対象となります。

墓地隣接の減価との併用は可能か

「地積規模の大きな宅地の評価」による減額と、「利用価値が著しく低下している宅地」としての墓地隣接による10%減価は、要件を満たせば原則として両方とも適用(併用)することが可能です。計算の順番としては、まず「地積規模の大きな宅地の評価」のルールで評価額を計算し、その算出された金額からさらに10%を減額するという流れになります。この二つの評価減を組み合わせることで、土地の評価額を大幅に引き下げられる可能性があるのです。

まとめ

墓地の向かいや隣にある大きな土地を相続した場合、その特殊な立地条件を理由に、相続税の評価額を下げられる可能性があります。重要なのは、「利用価値が著しく低下している宅地」として10%の評価減が認められるかどうかです。そのためには、路線価にその影響が織り込まれていないことを確認し、写真などの客観的な根拠資料を揃えてきちんと主張することが大切です。さらに、土地の面積が広い場合は「地積規模の大きな宅地の評価」との併用も視野に入れることで、相続税の負担を大きく軽減できるかもしれません。ただし、これらの土地評価は非常に専門的な知識と判断が求められます。ご自身だけで判断せず、必ず相続に詳しい税理士などの専門家に相談し、最適な方法を見つけてくださいね。

参考文献

国税庁  No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価

墓地周辺の土地評価に関するよくある質問まとめ

Q. 墓地が近いと、必ず土地の評価は下がりますか?

A. いいえ、必ず下がるわけではありません。その土地の路線価に墓地の影響がすでに反映されている(織り込み済み)場合や、客観的に利用価値が低下していることを証明できない場合は、評価減が認められないこともあります。

Q. 減額される割合はどのくらいですか?

A. 原則として10%です。ただし、すぐ近くを線路が通っていて騒音がひどい、など他の減価要因も重なっている場合は、最大で20%の減額が認められるケースもあります。

Q. どんな墓地でも評価減の対象になりますか?

A. いいえ、個人の敷地内にあるお墓や、非常に小規模でほとんど知られていないようなものは対象外となる可能性が高いです。地域の誰もが認識しているような、ある程度の規模を持つ墓地が対象となります。

Q. 評価減を適用せずに申告してしまいました。もう手遅れですか?

A. いいえ、まだ諦める必要はありません。相続が開始したことを知った日の翌日から5年10ヶ月以内であれば、「更正の請求」という手続きを行うことで、払い過ぎた税金の還付を請求できる可能性があります。

Q. 「地積規模の大きな宅地の評価」と併用できますか?

A. はい、それぞれの適用要件を満たしていれば併用できます。地積規模の大きな宅地の評価を適用して算出した価額から、さらに10%を減額することが可能です。

Q. 評価減を主張するために、自分で何を準備すれば良いですか?

A. まずは、ご自身の土地から墓地がどのように見えるかが分かる写真や、両者の位置関係がわかる住宅地図などを準備すると良いでしょう。ただ、評価減の適用は専門的な判断を要するため、相続に詳しい専門家へ相談することをおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。