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変死とは?突然の相続で慌てないための手続きと注意点を解説

2025-11-03
目次

ご家族が突然亡くなられるという大変な状況の中、深い悲しみに暮れる間もなく、様々な手続きを進めなければなりません。特に、亡くなられ方が「変死」であった場合、通常の死亡とは異なる手続きが必要となり、どうすれば良いのか戸惑ってしまう方も少なくありません。この記事では、変死とは何か、そしてその後の相続手続きはどのように進めれば良いのかを、順を追って分かりやすく解説していきます。いざという時に慌てないよう、一緒に確認していきましょう。

そもそも「変死」とは?

まず、「変死」という言葉についてご説明しますね。これは、医師が管理していない状況下での死亡で、病死や自然死であると断定できない死全般を指す言葉です。法律上の明確な定義があるわけではありませんが、一般的に犯罪の可能性が少しでも疑われる場合や、死因がはっきりしない場合に用いられます。具体的にどのようなケースがあるのか見ていきましょう。

変死の具体的なケース

変死と判断される可能性のあるケースには、以下のようなものがあります。

  • 自宅での孤独死(誰にも看取られずに亡くなること)
  • 交通事故や労働災害などの事故死
  • 自殺
  • 火災や水難事故による死亡
  • 原因がはっきりしない突然死
  • 事件性が疑われる死亡

このように、亡くなった状況や場所に不自然な点がある場合、警察が介入して調査が行われることになります。

変死と判断された場合の流れ

変死の疑いがあると、警察によって「検視」や「検案」が行われます。検視は検察官またはその代理人(警察官など)が、犯罪性の有無を調べるために遺体の状況を確認することです。検案は、医師が死因や死亡時刻などを医学的に確認することを指します。この過程で、より詳しく調べる必要があると判断されれば、ご遺族の承諾を得て「司法解剖」や「行政解剖」が行われることもあります。事件性がないと判断されると、医師から「死体検案書」が発行され、ご遺族に遺体が引き渡されます。

通常の死亡(自然死)との違い

通常の病死や老衰などの自然死との大きな違いは、誰が死亡を証明する書類を作成するかという点です。病院で亡くなった場合は、担当の医師が「死亡診断書」を作成します。一方、変死の場合は警察の検案を経て、監察医などが「死体検案書」を作成します。様式は同じですが、発行者が異なるのです。この「死体検案書」が、その後の死亡届の提出や相続手続きのスタート地点となります。

変死後の相続手続き【初期対応編】

死体検案書を受け取ったら、いよいよ具体的な手続きが始まります。期限が短いものもあるため、落ち着いて一つずつ進めていきましょう。

死亡届の提出と火葬許可証の取得

最初に行うべき手続きは、市区町村役場への「死亡届」の提出です。これは、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3ヶ月以内)に行う必要があります。死体検案書(または死亡診断書)の左半分が死亡届になっていますので、必要事項を記入して提出します。死亡届が受理されると、「火葬許可証」が交付されます。これがなければ火葬を行うことができませんので、非常に重要な書類です。

提出期限 死亡の事実を知った日から7日以内
提出先 故人の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場

遺体の引き取りと葬儀

警察での手続きが完了すると、遺体の引き取りの連絡が入ります。速やかに葬儀社を手配し、遺体を引き取ってもらいましょう。葬儀の日程や形式については、ご遺族で話し合って決めていきます。精神的にも大変な時期ですが、故人を偲ぶ大切な儀式ですので、悔いのないように進めたいですね。

世帯主の変更やライフラインの解約

故人が世帯主だった場合は、14日以内に「世帯主変更届」を役所に提出する必要があります。また、電気、ガス、水道、電話、NHKなど、故人名義で契約していたサービスの解約手続きも忘れずに行いましょう。公共料金の請求書や契約書類などを参考に、連絡先をリストアップしておくとスムーズです。

変死後の相続手続き【財産調査編】

葬儀などが一段落したら、本格的な相続手続きに入ります。まずは、故人がどのような財産を遺したのかを正確に把握することが重要です。

遺言書の有無を確認する

相続手続きの方向性を決める最も重要なものが「遺言書」です。まずは故人の自宅や貸金庫などを探し、遺言書がないか確認しましょう。もし、法務局で保管されていない自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、絶対に開封してはいけません。家庭裁判所で相続人立ち会いのもと内容を確認する「検認」という手続きが必要になります。勝手に開封すると5万円以下の過料に処される可能性があるので注意してくださいね。

相続人を確定させる

次に、誰が相続人になるのかを法的に確定させる必要があります。そのためには、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を全て集めなければなりません。本籍地が何度も変わっている場合は、それぞれの市区町村役場に請求する必要があり、時間と手間がかかる作業です。この戸籍謄本をもとに、法定相続人となる人を全員確定させます。

相続財産を調査する

相続財産には、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。これら全てを正確にリストアップしましょう。預貯金は金融機関に「残高証明書」を請求し、不動産は「名寄帳」や「登記簿謄本」を取り寄せます。借金については、自宅に届く請求書や督促状、信用情報機関への情報開示請求などで確認できます。財産調査は、後の遺産分割や相続税申告の基礎となる非常に大切なステップです。

相続方法の決定と遺産分割

財産の全体像が見えたら、次は相続人全員で遺産の分け方を決めます。ここでも重要な期限が登場します。

相続方法を選択する(3ヶ月以内)

相続の方法には、大きく分けて3つの選択肢があります。この選択は、相続の開始を知った日(通常は死亡日)から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があるため、迅速な判断が求められます。

単純承認 プラスの財産もマイナスの財産も全て無条件で引き継ぐ方法です。特別な手続きは不要で、3ヶ月を過ぎると自動的に単純承認したことになります。
相続放棄 プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない方法です。明らかに借金の方が多い場合に選択されます。家庭裁判所での申述が必要です。
限定承認 プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。借金がどれくらいあるか不明な場合に有効ですが、手続きが複雑なため、利用されるケースは少ないです。

遺産分割協議を行う

相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合う「遺産分割協議」を行います。相続人全員の合意が必要です。話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名・実印を押印します。この書類は、後の不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きなどで必要となる重要なものです。

相続税の申告と納付

相続する財産の額によっては、相続税を納める必要があります。これも期限が厳格に定められています。

相続税申告が必要になるケース

相続税は、必ずしも全員が支払うわけではありません。遺産総額が基礎控除額を超える場合にのみ、申告と納税の義務が発生します。基礎控除額は以下の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、相続人が配偶者と子供2人の合計3人だった場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。遺産総額がこの額を超えなければ、相続税の申告は原則不要です。

申告と納付の期限(10ヶ月以内)

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告先は、亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署です。納付は原則として現金一括払いです。期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されてしまうため、計画的に準備を進めることが大切です。

まとめ

変死の場合、警察の調査が入るなど初期の段階で通常とは異なる流れをたどりますが、その後の相続手続きの基本的な流れ(財産調査、遺産分割、相続税申告など)は同じです。しかし、突然の出来事で精神的な負担が大きい中、「3ヶ月以内」の相続方法の決定「10ヶ月以内」の相続税申告など、重要な期限が次々とやってきます。ご自身で手続きを進めるのが難しい、何から手をつけて良いか分からないといった場合には、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することも一つの有効な手段です。一人で抱え込まず、専門家の力も借りながら、一つ一つの手続きを確実に進めていきましょう。

参考文献

国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」

法務省「死亡届」

変死と相続手続きに関するよくある質問まとめ

Q. そもそも「変死」とは何ですか?普通の死亡と何が違うのでしょうか?

A. 変死とは、病死や自然死以外の、原因が不明な死亡や犯罪の疑いがある死亡を指します。警察による検視や検案、場合によっては司法解剖が行われ、死因が特定されるまで遺体は遺族に引き渡されません。

Q. 家族が変死と判断された場合、すぐに遺体を引き取って葬儀を行えますか?

A. いいえ、すぐには引き取れません。警察の捜査や検視・解剖が終了し、死体検案書(または死亡診断書)が発行されてから遺体の引き取りが可能になります。この手続きには数日から数週間かかることもあります。

Q. 変死の場合、相続手続きはいつから始められますか?

A. 死亡の事実を知った日から相続は開始されますが、具体的な手続き(戸籍の収集や遺産分割協議など)は、死亡届が受理され、故人の戸籍に死亡の記載がなされてから本格的に進めるのが一般的です。

Q. 変死者の相続手続きで、通常の相続と異なる特別な書類は必要ですか?

A. 基本的な必要書類(戸籍謄本など)は同じですが、死亡を証明する書類が「死亡診断書」ではなく「死体検案書」になります。この死体検案書を使って死亡届を提出し、その後の相続手続きを進めていきます。

Q. 孤独死などで発見が遅れた場合、相続放棄の期限(3ヶ月)はいつから数えますか?

A. 相続放棄の期限である3ヶ月は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算されます。したがって、変死により死亡の事実を知ったのが遅れた場合は、その知った日から3ヶ月となります。

Q. 賃貸物件で変死した場合、相続人は特殊清掃費用や損害賠償を負担する必要がありますか?

A. はい、相続人は故人の権利義務をすべて承継するため、賃貸物件の原状回復義務(特殊清掃費用など)や、家主に対する損害賠償責任も負うことになります。多額の負債がある場合は、相続放棄を検討する必要があります。

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