海外の不動産や外貨預金など、外貨建ての資産や負債をお持ちの方は、税金の申告時に日本円(邦貨)へ換算する作業が必要です。このとき、どの為替レートを使うかによって税金の額が変わるため、正しいルールを知っておくことが大切です。今回は、間違えやすいTTBやTTSの違いを中心に、外貨建資産や負債の邦貨換算ルールを分かりやすく解説します。
外貨建取引の換算ルールの基本
外貨を日本円に換算する際、金融機関の掲示する為替レートを使いますが、これには主に3つの種類があります。ご自身の取引がどれに当てはまるのかを確認しましょう。
TTM・TTS・TTBとは?言葉の意味を解説
まずは、よく目にする3つのアルファベットの意味を整理します。金融機関から見て「外貨を売るか、買うか」が基準になる点に注意してください。
| 為替レートの種類 | 意味と使い方 |
|---|---|
| TTM(仲値) | 取引の基準となる為替レート |
| TTS(電信売相場) | 金融機関が外貨を売る(円を外貨にする)レート |
| TTB(電信買相場) | 金融機関が外貨を買う(外貨を円にする)レート |
例えば、TTMが1ドル150円のとき、為替手数料が1円だとすると、TTSは151円、TTBは149円となります。
原則はTTM(仲値)での換算
所得税などの計算において、外貨建て取引を日本円に換算する際は、原則として取引をした日のTTMを使用します。日々の為替相場の基準となる数値を使うことで、公平な税金の計算ができるようになっています。
換算する日の為替レートがない場合の対処法
土曜日や日曜日など、金融機関が休業していて為替市場が開いていない日に取引をした場合はどうなるのでしょうか。この場合は、取引日より前で最も近い日の為替レートを使用します。日曜日が取引日であれば、直前の金曜日の為替レートを使って換算することになります。
所得税の確定申告における換算ルール
個人の確定申告において、外貨建ての所得がある場合の換算ルールを見ていきましょう。原則はTTMですが、継続して適用することを条件に例外も認められています。
収益・資産と費用・負債での違い
確定申告では、売上などの収益や資産はTTB、仕入などの費用や負債はTTSを使って換算する例外ルールを選ぶことができます。
| 換算の対象 | 使用できる為替レート |
|---|---|
| 収益や資産の換算 | TTB(電信買相場)を使用可能 |
| 費用や負債の換算 | TTS(電信売相場)を使用可能 |
このルールを使うと、収益を少なく、費用を大きく計上できる場合があるため、税金の計算上有利になることがあります。ただし、一度選んだら毎年継続して同じ方法を使う必要があります。
不動産所得などにおける例外ルール
不動産所得や事業所得、雑所得などでは、日々の取引のたびに換算するのが大変な場合があります。そのため、帳簿を外貨のまま作成しておき、年末の12月31日の為替レートで一括して1年分を日本円に換算する方法も認められています。また、その年の為替レートの平均値を使用することも可能です。
外貨預金の為替差損益の扱い
外貨預金を日本円に戻したときに発生する為替差益は、雑所得として総合課税の対象になります。例えば、1ドル100円のときに1万ドル(100万円)を預け入れ、1ドル150円のときに円に戻した場合、50万円の利益が出たことになります。この50万円は雑所得として申告しなければなりません。
相続税や贈与税における外貨建財産の換算ルール
被相続人から外貨建ての資産や負債を引き継いだ場合、相続税申告における換算ルールは所得税と少し異なります。
相続発生日の為替レートの選び方
相続税の計算では、原則としてお亡くなりになった日(相続開始日)の為替レートで換算します。このとき、預金や不動産などの相続資産についてはTTBを使用し、借入金などの相続債務についてはTTSを使用します。
納税義務者がいる場合
納税義務者がいる場合は、納税義務者の取引金融機関が公表している相続開始日のTTBレートを使用しなければなりません。別の銀行のレートの方が1ドルあたり1円有利だからといって、自由に他の銀行を選ぶことはできない決まりになっています。
海外不動産など金融機関が特定できない場合
一方で、海外に所有している不動産のように特定の金融機関と結びついていない財産の場合は、財産を取得した人が普段利用している金融機関の公表レートを使います。もし複数の金融機関を利用している場合は、その中から最も有利なレートを選んで計算することが可能です。例えば、A銀行のTTBが150.1円、B銀行のTTBが150.0円であれば、B銀行のレートを選んだ方が相続財産の評価額が下がり、相続税が安くなります。
法人の外貨建取引における換算ルール
会社が外貨建ての取引を行った場合も、基本的には個人と同じように換算のルールが定められています。
期中取引の換算と発生時換算法
法人が年度中に行った取引は、取引日のTTMで換算するのが原則です。これを発生時換算法と呼びます。例えば、1ドル140円の日に1万ドルの商品を売り上げた場合、140万円として売上を計上します。
期末に残った外貨建資産や負債の換算
決算日の期末に残っている外貨建ての売掛金や買掛金などは、決算日の為替レートで再評価する「期末時換算法」を使う場合があります。先ほどの1万ドルの売掛金が、決算日に1ドル150円になっていた場合、150万円に評価が上がり、差額の10万円は為替差益として会社の利益に計上されます。
為替レートを選ぶ際の具体的な注意点
換算ルールを適用するにあたって、いくつか気をつけたいポイントを解説します。
取引先金融機関の公表レートを継続適用
使用する為替レートは、普段取引しているメインバンクが公表しているものを継続して使うのが基本です。為替が変動したからといって、気分によってA銀行のレートを使ったり、B銀行のレートを使ったりすることはできません。
複数の為替レートがある場合
金融機関によっては、1日の中で為替レートを複数回更新することがあります。その場合は、取引が発生した瞬間のレートを使うか、その日の最終レートを使うかを選ぶことになります。これも一度決めたら継続して同じ基準で換算するようにしてください。
まとめ
外貨建資産や負債を日本円に換算する際は、TTM、TTS、TTBの違いを正しく理解しておくことが重要です。所得税の確定申告や相続税の計算など、税金の種類によって原則となるルールや例外が変わってきます。特に例外ルールを適用する場合は継続適用が条件となるため、ご自身の状況に合わせて最適な換算方法を選ぶようにしましょう。
参考文献
外貨建資産や負債の換算に関するよくある質問まとめ
Q.外貨建ての預金を相続した場合、どの為替レートで換算しますか?
A.相続開始日のTTB(電信買相場)を使って換算します。預けている金融機関が公表しているレートを使用してください。
Q.TTBとTTSの違いは何ですか?
A.金融機関から見て、外貨を買う(外貨を円にする)ときのレートがTTB、外貨を売る(円を外貨にする)ときのレートがTTSです。
Q.日曜日に外貨建ての取引をした場合、どの日のレートを使えばよいですか?
A.金融機関が休業していて為替レートがない場合は、取引日前の最も近い日(金曜日など)のレートを使用します。
Q.確定申告で外貨建ての経費を換算するときに有利な方法はありますか?
A.継続して適用することを条件に、費用や負債の換算にTTS(電信売相場)を使用することができます。
Q.海外不動産を相続したときの換算レートはどうやって選びますか?
A.特定の金融機関がない財産は、相続人が普段取引している金融機関の公表レートを使います。複数ある場合は、有利な金融機関のレートを選ぶことができます。
Q.外貨預金を円に戻して利益が出た場合、税金はどうなりますか?
A.外貨預金を円に換算して為替差益が生じた場合、雑所得として総合課税の対象となり、確定申告が必要になります。