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大規模修繕共済のメリット・デメリット!節税効果と注意点を解説

2025-01-30
目次

アパートやマンションの賃貸経営をしているオーナー様にとって、いつか必ずやってくるのが大規模修繕です。外壁の塗り替えや屋根の防水工事など、数百万から数千万円もの費用がかかることもあり、頭の痛い問題ですよね。これまでは、修繕費をコツコツ貯金しても、その積立金は「預金」とみなされ課税対象になっていました。そんなオーナー様の悩みを解決するために、2021年に「賃貸住宅修繕共済制度」がスタートしました。この記事では、この大規模修繕共済のメリットとデメリットについて、分かりやすく解説していきますね。

大規模修繕共済(賃貸住宅修繕共済)とは?

賃貸住宅修繕共済とは、全国賃貸住宅修繕共済協同組合が運営する、賃貸住宅オーナーのための共済制度です。将来必要になる大規模修繕の費用を、共済掛金として計画的に積み立てていく仕組みになっています。分譲マンションの「修繕積立金」のようなイメージに近いですが、賃貸住宅のオーナー様が利用できるのが大きな特徴です。この制度ができたことで、これまで難しかった「修繕のための積立金」を経費として計上できるようになりました。

加入できる対象物件

この共済に加入できる物件には、建物の構造や築年数に条件があります。基本的には賃貸経営に使われている住宅が対象で、オーナー様が個人か法人かは問いません。

対象となる物件の条件 ・個人または法人が所有する賃貸住宅
・木造・軽量鉄骨造:築50年以内
・RC(鉄筋コンクリート)造など:築60年以内
注意点 店舗などが併用された住宅の場合、店舗部分の床面積が全体の50%以下である必要があります。

補償の対象となる工事

制度が始まった当初は、補償の対象が外壁や屋根などに限られていました。しかし、2023年12月からは範囲が広がり、より多くの共用部分の修繕に対応できるようになっています。また、火災など不測の事態に備える補償も含まれています。

<修繕共済の対象工事例>

  • 屋根の塗装・防水・葺き替え
  • 外壁の塗装・タイル補修
  • 階段や廊下の鉄部塗装・防水
  • 給排水管の修繕・高圧洗浄
  • エレベーターや消防設備の修繕

<火災修繕共済>
火災、落雷、破裂・爆発によって建物に損害が生じ、修繕を行った場合に、1回の事故につき最大30万円の共済金が支払われます。

掛金の仕組みと共済期間

掛金の額は、物件の状況やオーナー様の希望に合わせて決めることができます。加入コースは主に2種類です。

戸数別モデルコース 物件の戸数に応じて、あらかじめ設定された掛金モデルから選びます。例えば、2~6戸の集合住宅であれば、月々の掛金は2万円~6万円程度が目安です。
長期修繕計画書作成コース 専門家が作成した長期修繕計画書を提出し、将来予測される修繕費用に基づいて掛金を算出します。よりご自身の物件に合った計画的な積立が可能です。

共済期間は10年以上50年以内で、1年単位で自由に設定できます。将来の大規模修繕のタイミングに合わせて計画を立てられるのが嬉しいポイントですね。

大規模修繕共済の4つのメリット

この共済制度には、賃貸経営を行うオーナー様にとって見逃せない、たくさんのメリットがあります。特に税金面でのメリットは大きいですよ。

共済掛金を経費に計上できる(節税効果)

最大のメリットは、なんといっても支払った掛金を全額経費として計上できる点です。これまで、銀行預金で修繕費を積み立てても、それはあくまでオーナー様の資産であり、経費にはなりませんでした。しかし、この共済を利用すれば、掛金は「損害保険料」などの勘定科目で経費にできます。これにより課税所得が減るため、所得税や住民税、法人税の節税につながります。これはキャッシュフローを大きく改善する効果が期待できますね。

計画的な大規模修繕が可能になる

共済に加入するプロセスで、ご自身の物件の将来的な修繕計画を具体的に考える良いきっかけになります。「長期修繕計画書作成コース」を選べば、専門家のアドバイスのもとで詳細な計画を立てることになります。これにより、「いつ頃、どのくらいの費用で、どんな工事が必要か」が明確になり、行き当たりばったりではない、計画的な建物メンテナンスが実現できます。

建物の資産価値を維持しやすくなる

共済に加入すると、代理店となる管理会社などが年に1回、建物の定期検査を実施してくれます。プロの目で定期的に建物の状態をチェックしてもらえるので、自分では気づきにくい劣化のサインを早期に発見できます。問題が小さいうちに対処することで、結果的に大きな修繕費用を抑えることにもつながり、建物を良好な状態で長く保つことができるため、資産価値の維持に直結します。

安定した賃貸経営につながる

大規模修繕は、一度に多額の資金が必要となるため、経営を圧迫する大きな要因です。この共済で計画的に備えておくことで、いざという時に「お金が足りなくて修繕できない」という事態を防げます。建物がきれいに保たれていれば、入居者様の満足度も高まり、空室リスクの低減にもつながります。急な出費に慌てることなく、安定した賃貸経営を続けやすくなるでしょう。

大規模修繕共済の4つのデメリット(注意点)

メリットが多い一方で、加入前に知っておくべき注意点もいくつか存在します。ご自身の状況と照らし合わせて、慎重に検討することが大切です。

掛け捨てであり返戻金がない

この共済は、貯蓄や投資を目的とした商品ではありません。あくまで万が一の修繕に備えるための「保険」のようなものです。そのため、掛け捨てが基本となり、契約期間の途中で解約したり、満期を迎えたりしても、これまで支払った掛金は戻ってきません。修繕の必要がなく、共済金を使わなかった場合でも返金はないので、その点はしっかり理解しておきましょう。

補償対象外の工事がある

共済金が支払われるのは、あくまで経年劣化などに対する「修繕」工事です。建物の性能や価値を向上させるような「グレードアップ工事」は補償の対象外となります。例えば、以下のようなケースは対象外になる可能性が高いです。

  • 一般的なウレタン塗装の外壁を、より高性能なフッ素塗料で塗り替える
  • もともとモニターが付いていなかったインターホンを、テレビモニター付きの最新機種に交換する

どこまでが「修繕」で、どこからが「グレードアップ」になるかは、事前にしっかり確認が必要です。

加入前に修繕が必要な場合がある

「そろそろ修繕が必要だから、共済に入って費用をカバーしよう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、加入前に行われる物件検査で、すでに修繕が必要な劣化箇所が見つかった場合、その箇所を自費で修繕しないと共済に加入できないルールになっています。あくまで「将来の」修繕に備えるための制度だということを覚えておいてくださいね。

長期修繕計画書の作成に手間がかかる

「長期修繕計画書作成コース」で加入する場合、当然ながら計画書の作成が必要です。これには、修繕箇所の洗い出しや工事費用の見積もりなどが必要となり、専門の業者に依頼するなど、ある程度の時間と手間がかかります。もちろん、この計画書自体が安定経営に役立つものですが、作成が手間に感じられる方もいるかもしれません。

メリット・デメリットの比較表

ここまでご説明した内容を、分かりやすく表にまとめてみました。

メリット デメリット(注意点)
支払った掛金を全額経費にでき、節税効果が高い 掛け捨てのため、解約しても返戻金がない
計画的な修繕計画を立てられる グレードアップ目的の工事は補償対象外
定期検査で劣化を早期発見でき、資産価値を維持しやすい 加入前に劣化が見つかると、先に修繕が必要になる
将来の大きな出費に備えられ、経営が安定する 長期修繕計画書の作成に手間がかかる場合がある

加入手続きの流れ

実際に大規模修繕共済に加入する際の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 共済代理店への相談:まずはお近くの共済代理店(多くの場合は賃貸管理会社などが担っています)に相談します。
  2. 物件チェックと計画書準備:代理店による物件の現状確認が行われます。必要に応じて長期修繕計画書を作成します。
  3. 申込手続き:申込書に必要事項を記入し、必要書類(建物の登記簿謄本など)を添えて提出します。この際、組合への出資金として1,000円が必要です。
  4. 加入完了:審査が通れば加入手続きは完了し、共済期間がスタートします。

まとめ

大規模修繕共済は、賃貸オーナー様にとって大きなメリット、特に掛金を経費計上できるという節税効果は非常に魅力的です。計画的な修繕によって建物の資産価値を維持し、安定した賃貸経営を目指す上で、とても心強い制度と言えるでしょう。一方で、掛け捨てであることや、補償対象に制限があるといったデメリットも存在します。ご自身の物件の築年数や状態、そして今後の経営計画などを総合的に考え、この共済制度が自分に合っているかどうかをじっくり検討してみてはいかがでしょうか。将来の安心のために、選択肢の一つとして知っておいて損はないはずです。

参考文献

No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁

大規模修繕共済のよくある質問まとめ

Q.大規模修繕共済とは何ですか?

A.中小企業等が所有する建物の大規模修繕に備えるための共済制度です。掛金を損金に算入しながら、計画的に修繕資金を準備できます。

Q.大規模修繕共済の最大のメリットは何ですか?

A.支払った掛金を全額損金または必要経費に算入できるため、高い節税効果が期待できる点です。節税と将来の資金準備を両立できます。

Q.大規模修繕共済にデメリットはありますか?

A.掛金の使途が大規模修繕に限定されることや、途中解約すると解約手戻り金が課税対象となる点がデメリットです。また、加入には一定の条件があります。

Q.掛金はいつでも自由に引き出せますか?

A.いいえ、引き出せません。掛金は、大規模修繕を実施する際に「共済金」として受け取るのが原則です。預金のように自由に引き出すことはできません。

Q.自社で積み立てる修繕積立金との違いは何ですか?

A.自社の修繕積立金は損金算入に制限がありますが、大規模修繕共済の掛金は全額を損金にできる点が大きな違いです。これにより、より高い節税効果が見込めます。

Q.加入後に建物を売却した場合、契約はどうなりますか?

A.建物の新しい所有者に契約を引き継ぐ(承継する)か、契約を解約するかを選択します。解約した場合は、受け取った解約手戻り金が益金として課税対象になります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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