亡くなったご家族が家の屋根に太陽光パネルを設置していたけれど、契約書を紛失してしまい、いくらで買ったかわからない…なんてこと、ありませんか?相続税の申告では、すべての財産を評価して金額を出す必要があります。もちろん、この太陽光パネルも例外ではありません。取得価額が不明だと、どうやって評価すればいいのか不安になりますよね。ここでは、取得価額がわからない太陽光パネルの相続税評価額の計算方法を、わかりやすく解説していきます。
太陽光パネルの相続税評価の基本
まず、太陽光パネルが相続税の計算上、どのような財産として扱われるかを知っておきましょう。太陽光パネルやその関連設備は、「一般動産」というカテゴリーに含まれます。車や家財道具などと同じ扱いだと考えてください。この一般動産の評価方法が、今回のポイントになります。
原則は「売買実例価額」で評価します
一般動産の評価の基本は、売買実例価額、つまり「中古品としていくらで売買されているか」という市場価格を基に評価することです。亡くなられた日(相続開始日)の時点で、相続した太陽光パネルと同じメーカー、同じ型番で、同じくらい使用されたものが中古市場でいくらで取引されているかを調べ、その価格を評価額とします。
ただ、太陽光パネルは自動車のように中古市場が活発なわけではなく、全く同じ条件のものを見つけるのはとても難しいのが現実です。そのため、この方法で評価できるケースはほとんどありません。
契約書がない場合は「再調達価額」で計算しましょう
売買実例価額がわからない場合、次に用いるのが「再調達価額」を基にした評価方法です。これが、契約書を紛失して取得価額が不明な場合の主な計算方法になります。
計算式は以下のようになります。
【計算式】再調達価額 − 減価償却費相当額 = 相続税評価額
「再調達価額」とは、もし今、相続した太陽光パネルと全く同じ新品を購入するとしたらいくらかかるか、という金額です。そして、そこから「減価償却費相当額」、つまり設置してから亡くなるまでの年数分の価値の減少分を差し引いて、現在の価値(相続税評価額)を算出します。
耐用年数を超えている場合はどうなるの?
太陽光パネルの法律で定められた耐用年数(法定耐用年数)は17年です。もし、設置から17年以上経過している場合は、計算上の価値はかなり低くなります。しかし、評価額がゼロになるわけではありません。計算した評価額が「再調達価額の5%」を下回る場合は、再調達価額の5%が評価額となります。まだ十分に使える状態であれば、最低限の価値は残っている、と考えるわけですね。
取得価額不明な太陽光パネルの評価額を計算する4ステップ
では、実際に「再調達価額」を使って相続税評価額を計算する手順を、4つのステップに分けて見ていきましょう。
ステップ1:太陽光パネルの情報を集める
まずは、評価の対象となる太陽光パネルの情報をできるだけ詳しく集めましょう。契約書がなくても、以下の場所を確認すれば情報が見つかる可能性があります。
- パネル本体やパワーコンディショナーに貼られている銘板(シール)
- メーカーの保証書や取扱説明書
- 電力会社との売電契約に関する書類
- 過去の確定申告書(売電収入を申告している場合)
ここで確認したいのは、メーカー名、型番、システム容量(kW数)、設置年月日などです。
ステップ2:「再調達価額」を調べる
次に、ステップ1で集めた情報をもとに、再調達価額を調べます。同じ製品が現在も販売されていればその価格を、もし製造中止になっていれば、同等の性能を持つ後継機種や類似製品の現在の販売価格を参考にします。
正確な価格を知るためには、太陽光パネルの販売・施工業者やメーカーに問い合わせて見積もりをもらうのが最も確実です。
ステップ3:「減価償却費」を計算する
評価額を出すために、価値の減少分である「減価償却費」を計算します。家庭用の太陽光パネルのような事業用ではない資産の場合、少し特殊な計算方法を使います。
【計算式】
再調達価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
計算に使う各項目は、以下の表を参考にしてください。
| 再調達価額 | ステップ2で調べた、同じ新品を購入した場合の価格です。 |
| 法定耐用年数 | 17年です。これに対応する旧定額法の償却率は0.059です。 |
| 経過年数 | 設置年月から相続開始年月までの期間を年単位で数えます。6ヶ月以上の端数は1年に切り上げ、6ヶ月未満は切り捨てます。 |
例えば、再調達価額が150万円、経過年数が10年の場合、減価償却費相当額は
1,500,000円 × 0.9 × 0.059 × 10年 = 796,500円 となります。
ステップ4:相続税評価額を算出する
最後に、ステップ2とステップ3の結果を使って、最終的な相続税評価額を計算します。
【計算式】
再調達価額 − 減価償却費相当額 = 相続税評価額
先ほどの例で計算してみましょう。
1,500,000円(再調達価額) − 796,500円(減価償却費相当額) = 703,500円(相続税評価額)
この金額が、相続税申告書に記載する太陽光パネルの評価額になります。もしこの計算結果が、再調達価額の5%(この例では75,000円)より低くなった場合は、75,000円を評価額とします。
設置ローンが残っている場合は債務控除を忘れずに!
もし、亡くなった方が太陽光パネルをローンで購入し、相続開始時点(亡くなった日)でまだ返済が残っていた場合、そのローン残高は相続財産から差し引くことができます。これを「債務控除」といいます。
プラスの財産である太陽光パネルの評価額と、マイナスの財産であるローン残高を両方とも申告することで、課税対象となる財産の総額が減り、結果的に相続税の負担を軽減できる可能性があります。ローン契約書や金融機関が発行する残高証明書などで、相続開始時点のローン残高を正確に確認し、忘れずに申告しましょう。
太陽光パネルが設置された家の敷地評価について
太陽光パネルが設置されていること自体が、家の敷地(土地)の相続税評価に直接影響を与えることは基本的にありません。ご自宅の屋根に設置されている場合、その敷地は通常通り「宅地」として、路線価方式または倍率方式で評価します。
相続後の名義変更手続きも必要です
太陽光パネルを相続したら、財産の評価だけでなく、その後の手続きも大切です。特に、電力会社との売電契約は亡くなった方の名義のままになっていますので、相続した方の名義に変更する必要があります。
また、発電設備の出力によっては、経済産業省(資源エネルギー庁)への「事業計画認定の変更届出」が必要になる場合があります。家庭用の一般的な設備(10kW未満)であれば、事後届出で済むことが多いですが、手続きについては電力会社や施工業者に確認しておくと安心です。
まとめ
契約書を紛失し、取得価額が不明な太陽光パネルの相続税評価は、少し複雑に感じるかもしれません。しかし、手順を追っていけば、ご自身でも評価額を計算することができます。
ポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 原則は中古市場での価格(売買実例価額)で評価しますが、見つからないことがほとんどです。
- その場合は、現在の新品価格である「再調達価額」を基準に計算します。
- 「再調達価額」から、設置してからの年数に応じた「減価償却費」を差し引いて評価額を算出します。
- 太陽光パネルの法定耐用年数は17年です。
- 設置ローンが残っていれば、「債務控除」として財産総額から差し引くことができます。
再調達価額の調査や減価償却の計算が難しいと感じた場合は、無理をせず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。正確な財産評価は、適切な相続税申告の第一歩です。安心して手続きを進めるためにも、ぜひ専門家の力を頼ってみてくださいね。
参考文献
太陽光パネルの相続税評価(取得価額不明)のよくある質問まとめ
Q.太陽光パネルの相続税評価は、契約書がなく取得価額が不明な場合どうすればよいですか?
A.取得価額が不明な場合は、相続開始時点での「再調達価額」を基に評価します。再調達価額とは、同じものを新品で取得する場合の費用です。メーカーや設置業者に見積もりを依頼して算出します。
Q.太陽光パネルの具体的な評価方法を教えてください。
A.「再調達価額 − 減価償却費相当額」で計算します。減価償却費は、再調達価額を基に、設置から相続開始までの経過年数に応じて計算します。
Q.太陽光パネルの法定耐用年数は何年ですか?
A.太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。この年数を基に減価償却の計算を行います。
Q.耐用年数を超えた古い太陽光パネルも評価が必要ですか?
A.はい、法定耐用年数(17年)を超えていても、売電などで価値がある場合は評価が必要です。評価額がゼロになるとは限りません。一般的には、再調達価額の5%程度の残存価額で評価することがあります。
Q.家屋の固定資産税評価額に太陽光パネルの価値は含まれていますか?
A.屋根置き型の太陽光パネルは、家屋と一体ではないため固定資産税評価額には通常含まれていません。償却資産として別途評価が必要です。ただし、屋根材一体型の場合は家屋の評価額に含まれている可能性があります。
Q.亡くなった後の売電収入は相続税の対象になりますか?
A.相続開始日(亡くなった日)までに発生していた未収入金は相続財産に含まれます。相続開始日以降に発生した売電収入は、相続人が得た所得(雑所得)となり、相続税の対象ではなく所得税の対象となります。